IBM i の2023年を振り返る
もうじき1年の終わりを迎えるにあたって、『 IT Jungle 』の記事アーカイブの中から、2023年に公開した728本の記事のいくつかの見直しをする時期となりました。この記事では、2023年のIBM i に関する重大ニュースを振り返ってみたいと思います。
1月
毎年恒例のFortra社のIBM i 市場調査によれば、IBM i プロフェッショナルの1番の懸念事項は、 またしてもセキュリティだったということです(これで6年連続です)。1月に発表された 最新のIBM Champion に、IBM i コミュニティから約90名のメンバーが認定されました(2023年は全体で839名を認定)。JuliaがIBM i に導入されるのか。 そのような噂が1月には流れていましたが、残念ながら、そのオープンソースのプログラミング言語のサポートは実現しませんでした。2022年秋にCommon Europeによって開催された「Loopbackハッカソン」イベントが大盛況だったことを受け、COMMON North Americaも、1月に 同様のイベントを開催しました 。ChatGPTの人気は1月にはまさに高まり始めていたところでしたが、ミッドレンジに対する避けられない影響については、 すでに詳しい検討を行っていました。
2月
IBMは、バレンタインデーに合わせて、Power9およびPower10サーバーでの、IBM i の現行リリースの 新たなサブスクリプション料金プランを発表しました 。IBM i デバッガーが、Rational Developer for IBM i から ようやく切り離され 、Liam Allan氏によって開発された超人気のVSCodeベースの開発環境、Code for IBM i で利用可能となりました。Silent Signal社のセキュリティ リサーチャーが、ある銀行のシステムで実施した現実世界での侵入テストの結果を紹介しています。これは、 今後見つかり得るIBM i のセキュリティ脆弱性を予告するものとなっています。Fortra社は、GoAnywhere MFTのゼロデイ脆弱性を 修正するべく対応に追われました 。Power10のアップグレード サイクルが 好転し始め 、Power Systemsの売上が増加した一方で、予言者たちは、2023年の全体的なIT支出は あまり堅調ではなさそうだ と予測しました。
3月
IBM i インストール ベースが年数を経ているものだということは誰もが分かっていましたが、IBM i 市場調査のデータから、 私たちが思っている以上に年数を経ていることが明らかになりました。IBMは、メモリー価格の引き上げなど、一部の製品について 価格調整を行いました。LANSA社は、同社では初となる ビジネス インテリジェンス ツールを発表しました。IBMは、IDC社による2つの調査レポートを大々的に取り上げました。ひとつの調査レポートでは、IBMのサポートが 業界最高レベルであることが示されており、もうひとつの調査レポートでは、 「最新の状態に保たれている限り」、IBM i はまったく前途有望であると述べられています。
4月
IBMは、 4月11日に、IBM i 7.4および7.5向けのテクノロジー リフレッシュを発表しました。IBM i Navigatorに対する機能強化をはじめとして、データベースおよびアプリケーション開発向けの新機能等が追加されました。1週間ほど後に、COMMONは、コロラド州デンバーで毎年恒例の POWERUp 2023カンファレンスを開催しました 。一方、好調なストレージ売上が、第1四半期における Power Systemsの売上増 に一役買うこととなりましたが、世界全体のIT支出は 引き続き弱含みでした。
5月
PowerVMに、 極めて深刻なセキュリティ脆弱性が見つかり、IBM i、AIX、およびLinuxオペレーティング システムのPower Systems顧客が影響を受けました。Remain Software社は、 コーディング作業を支援するためにChatGPTを取り入れた最初のIBM i ISVとなりました。一方、Fortra社は、 20周年を迎える「State of IBM i Security」レポートを発表し、セキュリティは今もなお喫緊の課題であることを裏付けしました。IBMは、年次カンファレンス「Think」で、新たなデータ アナリティクスおよびAI製品ライン、 「watsonx」を発表しました。その頃から、「watsonx your business(watsonxでビジネスを飛躍させる)」という、どこかピンとこないキャッチフレーズをよく耳にするようになりました。
6月
この月の大きなニュースは、1988年6月に発表された AS/400の待望の35周年記念日 でした。IBMは、楽しくもあり、得るところの多い一連のオンライン イベントや対面イベントを開催して、この記念日を祝いました。IBM iについて肯定的な見方をしていたIDCレポートのリリースに続けて、IBMは、 さらに好意的なレポートをリリースしました(こちらはForrester社のコンサルタント ビジネスによる調査レポート)。IBM iにおける 一連のセキュリティ脆弱性のうちの1件目が、Silent Signal社によって公式に明らかにされました。これは、このオペレーティング システムのDDM(分散データ管理)コンポーネントの脆弱性でした。
7月
Silent Signal社は、下半期早々にIBM i における さらなる深刻なセキュリティ脆弱性 を明らかにし、今後、さらに多くの脆弱性が明らかになるおそれがあると予想しています。第2四半期の サーバー売上が安定を保っていた 一方で、IBMは、 数多くのPowerフィーチャー の営業活動の終了を発表しました。また、IBMは、IBM i システムの 標準配送プランを導入 し、顧客は新たなサーバーの配送コストを節減できるようになりました。Gartner社の新たなレポートで、大規模エンタープライズ企業は 2023年にITスタッフを増員する予定であることが明らかになりました。SEUに対しては、誰もが一言二言、言いたいことがあるようです。だとすれば、SEUの提供はそろそろ止めるべきではないでしょうか。この問い掛けは、IBM i コミュニティからの いくつかの興味深い反応を引き出しました 。一方、Rocket Software社は、 ITリーダーの安眠を妨げるもの についての調査を行いました(コーヒーの飲み過ぎは別にして)。
8月
IBMは、PowerVMハイパーバイザーのパッケージングの 変更を行いました 。ベース バージョンはなくなり、PowerVM Enterprise Editionのみとなりました。バンキング ソフトウェア プロバイダーのJack Henry社は、 「当面の」 IBM i のサポートを改めて表明しました。IBMビジネス パートナーによると、IBM i の 問題処理(WRKPRB) コマンドに関して問題が生じているということです。 Fresche社の新CEO、Joe Zarrehparvar氏 に、小誌編集長のTPMがインタビューを行いました。Briteskies社のセールスマン、Josh Bander氏が、IBM i の認知度を高めるための 簡単かつ効果的な方法を編み出してそれを実行に移しました 。一方、新たなレポートによると、 IT支出は実際に増加しているものの、それはインフレによるものということでした。
9月
IBMは、ローエンドのP05およびP10ティアでの サブスクリプションのみの料金方式 への移行を発表しました。 世界最大のテープ ドライブ(150TBの大容量)が、IBMと富士フイルムによって発表されました。IBMおよびそのパートナーのARCAD社によれば、 何百ものIBM i 顧客 が、Webベースのモダナイゼーション ツール、Merlinを採用しているということです。また、同IBM i ベンダーは、Merlinにコンポーネントを供給する契約が 独占契約であることを確認しました。一方、MGM Resorts社が、 「ビッシング」およびランサムウェア攻撃の被害に遭い 、カジノのいくつのシステムがダウンさせられました。最終的な被害額は1億ドル以上に上りました。
10月
10月10日に、秋のテクノロジー リフレッシュがIBMによって発表されました。あっと驚くような新機能はなかったものの、ちょっとした様々な機能強化が顧客に提供されました。その日のもっと大きなニュースは、Information Builders社(現在はTIBCO社傘下)からIBMがOEM供給されているアナリティクス ツール、 Db2 Web Queryの突然の終了発表であったかもしれません。思いも寄らないDb2 Web Queryの終了は、まだ詳細な説明がないこともあり、 多くの顧客を窮地に立たせることとなりました。最新の All400sコミュニティ調査の調査結果 が発表され、IBM iコミュニティの性質について、異なる見方が示されました。
11月
IBMのPower部門の新たなジェネラル マネージャー、Tom McPherson氏に、 小誌編集長のTPMがインタビューを行いました 。どうしたらよいのだろうと悩んでいる顧客に参考にしてもらうべく、 Db2 Web Queryの代替となり得る製品をいくつか紹介しました 。あまり明快でないIBMの財務データをTPMが解読したところによると、Power Systems売上は、第3四半期も 引き続き好調だった ということです。IBMは、PowerVM、PowerVCなど、様々なソフトウェア オファリングに対する いくつかの小さなアップデート をリリースしました。一方、IDCは2023年以降の 支出予測を引き上げました が、その判断は、ChatGPTおよび生成AIによって生み出された勢いに後押しされた面もあるようです。
12月
長年にわたってIBM iプロダクト マネージャーを務めてきたAlison Butterill氏が、29年間に及んだIBMでのキャリアに終止符を打ち、IBMを 退職することを発表 しました。後任は、これまでIBMでI/Oプロダクト マネージャーを務めていたDouglas Gibbs氏です。Fresche社は、IBMに倣って 、従来のライセンス方式からソフトウェア サブスクリプションへ移行することを発表しました。今年は、深刻なセキュリティ脆弱性の対応に追われる1年でしたが、12月に入っても、ACSおよびMerlinなど、中核的なIBM i製品における さらなる問題の発覚 が続きました。一方、SECは、重大なサイバーセキュリティ イベントについて、イベント発生後4日以内の開示を企業に求めることを発表しました。
今年は、このようなニュースをお伝えしました。つつがなく、楽しい年末年始休暇をお過ごしください。2024年も、どうぞよろしくお願いいたします。