様々な種類のクラウドに巨額の資金が流れ込む
そもそも最初から、様々な種類のクラウドがありました。確かに、Amazon Web Servicesは、2006年3月に、Simple Storage Service(S3)オブジェクト ストレージ サービスを開始し、すぐにElastic Compute Cloud(EC2)サービスが続きました。そして、サービスが製品名の一部であるかどうかを決めることができないとしても、AWSは、インフラストラクチャー サービス(IaaS)、次いでプラットフォーム(PaaS)およびアプリケーション ソフトウェア(SaaS)サービスが、生の仮想化されたハードウェア上で階層化される仕組みの土台を作りました。
最終的には、すべてがPaaSおよびSaaSへ向かうだろうし、IaaSは、それらのサービスのための利益の少ない基盤に過ぎなくなるだろうという見方は多かったようです。たとえば、Googleは、IaaSを求める人がいることや、AWS、Microsoft Azure、およびその他のクラウドによって提供されるインスタンスとよく似たインスタンスを提供するために、自らのCompute Engineプラットフォーム サービスの手直しが必要になることが信じられませんでした。それは、オンプレミスからクラウドへ移行するに際しても、簡単に捨て去ることができない独自のソフトウェア スタックがあるという企業は、まだまだ多い(数百万社)からです。そして、ハードウェアより上、アプリケーションより下のところで差別化することができると考えている企業は他にもまだあります。さらに、SaaSおよびPaaSサプライヤーでさえも、生のIaaSを購入する必要があります。
したがって、クラウド市場の分岐はまだ続きます。結局のところ、少なくとも、皆さんのITシステムの一部は、全体として平均的な分散を反映していると思われます。だからこそ、タイプ別のクラウド売上が経時的にどのように変遷しているかを知っておく必要があるわけです。
2022 | 2023 | 2024 | |
クラウド アプリケーション インフラストラクチャー サービス (PaaS:サービスとしてのソフトウェア) |
119,579 | 145,320 | 176,493 |
クラウド アプリケーション サービス (SaaS:サービスとしてのソフトウェア) |
174,416 | 205,221 | 243,991 |
クラウド ビジネス プロセス サービス (BPaaS:サービスとしてのビジネス プロセス) |
61,557 | 66,339 | 72,923 |
サービスとしてのクラウド デスクトップ(DaaS) | 2,430 | 2,784 | 3,161 |
クラウド システム インフラストラクチャー サービス (IaaS:サービスとしてのインフラストラクチャー) |
120,333 | 143,927 | 182,222 |
市場合計 | 478,315 | 563,592 | 678,790 |
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これらの数値データを少しばらして見て行きましょう。まず、クラウド セグメント全体としての伸びは、2023年にはかなり順調だと予測されており、また、2024年も同様との予測です。
Gartner社のアナリストは、今年のIaaS売上は19.6%増で1,439億ドルとなり、この市場の25.5%を占めると予測しています。2024年には、IaaS売上は26.6%増と加速して1,822億ドルに達し、市場の26.8%を占めると予測しています。
PaaS売上も同様で、2023年には21.5%増で1,453億ドルに達し、25.8%の売上シェアを占めます。PaaS売上は、来年も増加率が同じく21.5%で1,765億ドルに伸び、PaaSのシェアは少しだけ増えて26%になるとGartner社は予測しています。
SaaSは、長年にわたってクラウド市場で最大のシェアを占めてきました。SaaSには、アプリケーションがその上で稼働しているインフラストラクチャーおよびプラットフォーム サービスの両方が含まれるため、これはもっともだと言えます。そして、市場リサーチャーは、今年、SaaSは2,052億ドル(17.7%増のみ)を生み出し、2024年にはさらに増えて2,440億ドルをやや下回る程度までになる(18.9%増)と考えています。PaaSおよびIaaSは急増し、SaaSのシェアは非常にゆっくりと低下していますが、それでも市場の1/3をはるかに超えるシェアを占め、クラウド市場の最大のシェアとなっています。
BPaaS(サービスとしてのビジネス プロセス)は、2023年のクラウド売上全体の11.8%のシェアを占め、来年は10.7%になると予測されていますが、PaaS、SaaS、およびIaaSに比べてゆっくりとした伸び方となっています。DaaS(サービスとしてのデスクトップ)は、比較的小さい市場であり、ビジネス プロセス クラウドに比べて、伸び方が急ですが、コア クラウド セグメントほどには急速に伸びていないため、シェアは低下しています。
「クラウドは本質的に不可欠なものになっています」と、Gartner社のバイスプレジデント兼アナリストのSid Nag氏は、上図が掲載されている記事の中で述べています。「しかし、それは、クラウドの革新が停止したり、遅くなったりすることを意味するものではありません。もはやクラウド モデルがビジネスの成果を駆動するのではなくなっています。むしろビジネスの成果がクラウド モデルを形成するようになり、クラウド事業者にとって状況が変わってきています。」
これはまったくその通りです。たとえば、生成AI市場では、これによって、大規模言語モデルを訓練するためにNvidia社(そのうちAMD社)のGPUの採用を強いられてきただけではなく、低遅延、高帯域幅ネットワーキングのためにInfiniBandを採用したり、ネットワークおよびI/O仮想化、セキュリティ、およびネットワーク向けの一定のコレクティブ オペレーション機能をオフロードするためにNvidia社などからのDPUを採用したりすることも強いられてきました。また、生成AIは、IaaSサービスや、それらの上に乗っているPaaSおよびSaaSサービスの成長を促進してきたとも思います。多数のGPUにアクセスして大規模言語モデルを訓練するのは、最大規模のクラウドだけだからです。GPU供給が需要を満たせるようになると(現時点ではそうなっておらず、おそらく来年もそうならないでしょうが)、すべてが少しは正常化すると思われるため、PaaSおよびIaaSがSaaSを上回り始めると予測するのは理に適っていると思います。多くの企業は、自前でAIソフトウェア スタックをセットアップすることができません。そして、単にそうしたくないだけの企業もあります。彼らは、事前学習済みモデルを採用し、自身のデータに合わせてそれを再訓練すれば、すぐに生成AIを使い始められるのです。