2023年秋のIBM i テクノロジー リフレッシュには、誰にとっても何かしら良いものがある
予想されていた通り、昨日、IBMは秋のIBM i 向けテクノロジー リフレッシュ(TR)を発表しました。アップデートが利用可能になるのは11月17日ということです。IBMは、2023年秋のTRサイクルの一環で、新たな製品は発表しませんでしたが、IBM i 7.5 TR3および7.4 TR9では、誰に対しても何かしら喜ばしいものを提供しているということです。
今回のリリースでは、IBM i 環境を構成している多種多様な製品に、それぞれかなり意義深い機能強化がもたらされます。Navigator for iまたはACSで過ごす時間が長いという方は、いくつかの新機能を目にすることになるでしょう。データベースに機能強化のないTRはありませんでしたが、7.5 TR3および7.4 TR9でも、その伝統に変わりはありません。それから、新たなSQLベースのIBM i サービスと、新たなDb2 for iサービス(同じくSQLベース)も忘れてはなりません。そして、新たなRPG命令コードもあります。さらには、SYSTOOLSを愛用しているユーザーにとっては、これまでで一番お気に入りのTRとなるかもしれません。
「今回のTRでは、ありとあらゆる製品分野で、実に様々なものが提供されています」と、IBMのIBM i プロダクト マネージャー、Alison Butterill氏は述べています。「誰にとっても何かしら良いものがあります。印刷にこだわりのある方なら、こちら。RPGプログラマーの方なら、こちら。RDiが大好きという方なら、こちら、というように。そして、Power HAにもDb2 MirrorにもBRMSにも何かがあります。全体にわたって、かなり品揃え豊富となっています。新規の製品はありませんが、誰にとっても、とっておきの何かがたくさんあります。」
データベースの機能強化
IBM i 7.5 TR3および7.4 TR9の数多くの機能強化の中で一番重要なものを挙げるように言われて、Butterill氏はデータベースの新機能とSYSTOOLSへの追加機能と答えています。Db2 for i ビジネス アーキテクトのScott Forstie氏が最初に挙げたデータベースの新機能は、AES 256暗号化を使用するための新たな組み込み関数でした。
「SQLを使用してデータを暗号化および復号化する方法は、これまでもありました」と彼は述べています。「しかし、今回、はるかに強力な暗号化スカラー関数が加わりました。」
SQLベースのRESTfulサービス向けに、HTMLをエンコードおよびデコードするための新たなCLOBベースのスカラー関数が、このデータベースに追加されました。IBMは、RESTサービス向けにHTMLバイナリー ラージ オブジェクト(BLOB)をエンコードおよびデコードする機能をすでに提供しており、今回のリリースで、キャラクター ラージ オブジェクト(CLOB)へ拡張されます。
Forstie氏のもうひとつのお気に入りは、DUMP_PLAN_CACHEプロシージャーに対する追加機能でした。このプロシージャー(SQLプラン キャッシュ内のSQLステートメントの詳細を捕捉するために使用できる)には、ユーザーが特定のSQLステートメントの詳細のみを捕捉できるようにする新たなフィルターが加わりました。
「データベース エンジニアは、SQLプラン キャッシュとのインタラクションを自動化しやすくなり、プラン キャッシュがどうなっているのか、どのような照会が最も高負荷なのか、どうしてそれが最も高負荷になっているのかについて理解を深めることができます」と彼は述べています。
数多くの新規のIBM i サービス(オペレーティング システム全体にわたって、様々なタスクを処理し、CLコマンドおよびAPIの代替となるSQLベースの関数)のうちの1つに、ジャーナルからのデータに基づいて保留中のトランザクションについての詳細情報を返す新たな表関数があります。
「コミットメント定義処理(WRKCMTDFN)コマンドは、確実に頼りになるCLコマンドです」とForstie氏は述べます。「そのCLコマンドの代わりに、DB_TRANSACTION_JOURNAL_INFOを使用できるようになります。そうしたトランザクションに関わるすべてのジャーナルを表示してくれるので、最も大事なこと、ロールバックのパーセンテージを確認できます。」
データベースでのトランザクションのロールバックの進捗状況を判断するのに有用だとForstie氏は述べます。たとえば、コミットメント制御がオンになっていて、データベース トランザクションが完了していない場合、そのトランザクションは、巻き戻し、あるいはロールバックされる必要があります。この新たなIBM i サービスは、そのロールバックにどれくらい時間が掛かるかを知らせてくれます。
「トランザクションの完全性が確保されている時間が分かるとよいでしょう」と彼は述べます。「さて、2分になるか、2時間になるか、あるいは2日になるか。」
SYSTOOLS
Db2 for i向けのSQLベースのツールのコレクションである、SYSTOOLSに対しては、数多くの機能が追加されています。Forstie氏が一番着目しているのは、GENERATE_SPREADSHEET(既存のデータベース ファイルを基にして、またはSQL照会を指定することによってスプレッドシートを作成するための新たなスカラー関数)と、SEND_EMAIL(IFSからの添付ファイル付きでメールを送信する処理を簡素化する新たなスカラー関数)です。
「多くの人からスプレッドシートを求められます」とForstie氏は述べます。「とすると、スプレッドシートが出来たら、次はどうするでしょうか。」
NavigatorおよびACS
IBMは、Navigator for iなど、データベース以外の領域でも開発に取り組んでいます。Navigator for iは、IBM i サーバーの状態を映し出す様々な組み込みおよびカスタム ダッシュボードを表示するための新たなAngularおよびJavaScriptベースのユーザー インターフェースです。 2年前にリリースされました。
「Navigatorでは様々なことが起きています」とButterill氏は述べています。「信頼の置ける多くのアドバイザーの協力を得ながら、Navigatorに取り入れたかったすべてのものの優先順位について検討を重ねてきました。」
新TRでは、Navigatorに、新たなテーブル フィルター機能、DNSサポートの強化、および新たなIFS機能がもたらされます。印刷機能および実行管理機能にも機能強化がなされています。セキュリティの面では、システム値の追跡、監査ジャーナル、およびジョブ グループ向けの新機能が追加されています。
また、IBM i Access Client Solutionsの新リリースもあります。ACSバージョン1.1.9.3では、幅広く使用されている「SQLスクリプトの実行」の新機能、「例から挿入」の新たな用例、および最新のSQL標準との構文互換性チェックなどが加わります。
HAおよびDR
いくつかのライセンス プログラム製品(LPP)も、このTRサイクルで機能強化がなされています。PowerHAでは、特定のジョブ待ち行列の自動トラッキングを提供する新たなジョブ トラッキング機能が追加され、障害発生時のジョブの可視性が改善され、リカバリー時の失敗したジョブの再サブミットが簡素化されています。
IBMのバックアップ ユーティリティ、BRMS(Backup, Recovery, and Media Services: バックアップ・リカバリーおよびメディア・サービス)にも、HA環境向けの新たなIASPヒストリー同期機能、ユーザーのBRMS機能権限を把握する新たなプロシージャー、およびiSCSIで接続されたVTLデバイスとの統合性の向上など、いくつかの新機能が加わりました。
継続的可用性ソリューションを提供するDb2 Mirror for iには、この製品に対する新たなビューを管理者に提供する、GUIの新たな「ヘルス・センター」セクションや、ミラーリングされたデータ待ち行列の使用と再同期に関するアップデートなど、いくつかの新機能が加わっています。
開発ツール
最後に大事なものとして、開発者向けツールの機能強化があります。Rational Developer for i(RDi)9.8.0.1では、画面を見やすくするためのいくつかの微調整が施され、また、開発者がプログラムをドキュメント化するのに有用なiDocテンプレートに対するより詳細な制御機能が追加されています。
Rational Development Studio for i(RDS)に、新たな列挙型定義、DCL-ENUMでの修飾された名前付き定数のサポートや、ストリングから左端または右端の文字を返す新たなストリング組み込み関数、%LEFTおよび%RIGHTなど、新機能がいくつか追加されことは、RPG開発者にとって大きな朗報と言えるでしょう。
また、IBMは、この2年間で大人気になっている、Liam Allan氏(現在はIBMの一員)によって開発されたVS Codeプラグイン、Code for IBM i に対するいくつかの機能強化も推奨しています。『 The Four Hundred』の 月曜日の記事で取り上げた 、Code for i向けの新たなデータベース エクステンションに加えて、IBMは、他にもいくつかの機能強化を推奨しています。たとえば、Git内でのRPG、CL、COBOL、およびSQLのサポートの改善、バッチ デバッグ サポート、CLのサポートの改善、およびコンパイルせずにIDEからCLコマンドを実行する機能などがあります。
新リリースにどのような機能を取り入れるべきか決める上で、IBMは、様々なアドバイザリー カウンシルを大いに頼りにしたようです。また、IBM i ユーザー自身からも直接話を聞いて、 IBM Ideas Portalに寄せられた機能の要望を何十件も取り入れています。
今回のリリースで提供されたもののうち、何が残り、何が忘れ去れてしまうのでしょうか。それは簡単には言えないとButterill氏は述べます。
「新しいテクノロジー リフレッシュでも、新しいリリースでも、そこで提供されるもののうち、どれが個々のユーザーを動かしそうか予想するのは難しいことです」と彼女は述べます。「たとえば、「印刷機能のアップデートのおかげで、リモート出力待ち行列に送れるようになった」と言ってくださるユーザーもいるかもしれません。そう言ってもらえるなら、今回のリリースの苦労も報われるというものです。あるいは、「15年、RPGの列挙型を待っていたんだ」という声も聞こえるかもしれません。でも大丈夫です。ようやくお届けすることができたのですから。」
IBM i 7.5 TR3の発表レターは こちら で、IBM i 7.4 TR9の発表レター こちらでご覧になれます。