IBM、新たな機能でNavigator For i を強化
最新のテクノロジー リフレッシュで様々な新機能が加わったことで、IBM i プラットフォーム向けのWebベースの管理ツール、Navigator for i には変化が訪れました。Navigatorに新たに加わった機能のうち、目に付きやすいものとしては、拡張ジョブ スケジューラー(AJS: Advanced Job Scheduler)の完全サポートや、新たなセキュリティ ジャーナル データ マートのサポートの拡張などがあります。しかし、見落としてはならないものもあります。それは、旧Web Admin GUIの廃止(Navigatorで代替)や、およびPDIに対する機能強化などです。
Navigator for i は、IBM i サーバーの管理を行うための、IBMの戦略的なWebベースのコンソールです。この製品を使用することによって管理者は、データベース、ジョブ、メッセージ、プリンター、ユーザー、ネットワーク、セキュリティ、パフォーマンス、ファイル システム、バックアップ、およびハイ アベイラビリティーなど、IBM i スタックの様々なコンポーネントを監視および管理することが可能になります。
1995年に導入されたWindows専用のクライアントにルーツを遡る、この製品の年数を重ねたバージョンを置き換えるべく、IBMは、 2021年の秋に 、Navigator for i の新バージョンをリリースしました。Angular JavaScriptフレームワークなど、最新の技術を使用して構築されているため、New Nav(後にそう呼ばれるようになりました)は、外面的には斬新で速やかなユーザー エクスペリエンスを提供する一方、内部的な技術の全面刷新(CLコマンドの代わりに、SQLベースのIBM iサービスおよびRESTを使用)は、IBMの新たな方針とうまく噛み合うものとなっています。
リリース時点で、New Navは旧製品のほとんどの機能を備えていましたが、機能ギャップがいくつかあったため、IBMは、それ以降、そうしたギャップを埋めるべく取り組んできました。しかし、プラットフォームと対話処理する方法が変わっていることから、IBMは、従来の機能をすべて新製品で復元するわけではないとしています。
IBMが 先週発表した、IBM i 7.5 TR5およびIBM i 7.4 TR11による、この製品の機能強化には、注目すべきものがいくつかあります。たとえば、Navigatorには、どのライセンスが近く有効期限切れになるかなど、このプラットフォームにおけるIBMサブスクリプションおよびシステム製品ライセンスの状態を表示するモニター機能が追加されています。
ユーザーは、そうした情報をグラフィカルに確認することができます。上図のような赤色のパネルは、サブスクリプションまたはライセンスが有効期限切れになっていることを表します。また、ユーザーはそうしたデータを表形式で確認することもできます。有効期限切れになっているサブスクリプションまたはライセンスが1つ以上ある場合は、システムのホーム パネルでも表示されます。こうした情報を表示するためのしきい値は、「接続プロパティー」で設定できます。
Db2 for i データベースのパフォーマンスの問題を調査するためのツール、Performance Data Investigator(PDI)も、Navigator for i で注目が集まっているツールです。今回のリリースで、IBMは、PDIの収集サービスにいくつかの新たなデータ ポイントを追加しています。たとえば、アクティブ ジョブ数(Active Jobs Count)、事前開始ジョブ別のCPU使用率(CPU Utilization by Prestart Job)、ステータス別のジョブ数(Job Count by Status)、ステータス別の事前開始ジョブ数(Prestart Jobs Count by Status)、タイプ別のジョブ数(Job Count by Type)、およびサブタイプ別のジョブ数(Job Count by Subtype)などです。こうしたデータは、データベースのパフォーマンスの問題を調査する際に、より豊富なデータ集として有用なものとなるはずです。
また、IBMは、ASP(Auxiliary Storage Pool: 補助記憶域プール)に関するより多くの情報を表示する、新たなASPグラフを開発しました。たとえば、各独立ASPまたはユーザーASPのビジー率、利用率、および応答時間の内訳を時系列で表示します。これらのグラフは、新しいMonitorベースのSMASPファイルを活用し、Monitorsパッケージで利用可能だとIBMは述べています。
また、IBMは、Liam Allan氏のCode for IBM i プラグインのおかげでIBM i の世界に旋風を巻き起こすこととなった、Microsoft社のオープンソースのブラウザベースのIDE、VS Code向けの新機能もいくつか追加しています。今回のリリースでIBMは、「SQLの表示」パネルに、VS Codeを直接起動してSQLを実行する新たなオプションを追加しています。
「VS Codeがシステムに接続されている場合は、SQLが実行されます」とIBMは述べています。そうでない場合は、VS CodeでそのSQLが表示されてエディターが開きます。この機能は、Code for IBM i でDb2 for IBM i 拡張機能を使用するとIBMは指摘しています。Db2 for IBM i 拡張機能の最小バージョンは1.4.0ですが、IBMでは1.4.1を推奨しています。
また、Navigatorには、拡張ジョブ スケジューラー(AJS: Advanced Job Scheduler)の機能も追加されています。NavigatorでAJSを監視する機能は、IBMが提供するのにしばらく時間が掛かった機能の1つでした。IBMは、 春のTRで、AJSの機能の追加に関して大きく前進しました。新たなリリースで、すべてのAJSの機能がNavigatorで提供されることになったとIBMは述べています。
IBMは、ここ数年間、監査ジャーナルでどのようなことが起きているかを理解しやすくすることに努めてきました。たとえば、2024年春のTRで導入された、セキュリティ イベントの分析を強化するためのデータ マートを、Navigatorで起動する機能などもその一例です。
最新のオペレーティング システムのアップデートで、Navigatorには、監査ジャーナルから個々の項目タイプ特有の情報を返す、AUDIT_JOURNAL_xx表関数のサポートなど、新たな監査ジャーナル機能が加わります。また、データ マート コンテンツの制御を強化するユーザー定義のフィルタリング機能や、暗号化コプロセッサーの構成および管理のサポートも、顧客にとって有用となるでしょう。
IBMは、NavigatorのMTU(Memorandum to Users: ユーザーへのメモ)ブックマーク機能の強化を行っています。具体的には、出荷時のMTUブックマークを復元するとIBMは述べています(ちなみに、2024年10月の最新のMTUは こちらで確認することができます)。
今回のリリースは、ユーザーが、ワークロード、アプリケーション、およびシステム環境の設定値のカタログを簡単に作成する方法を提供する、Administration Runtime Expert(ARE)に機能強化をもたらします(2010年に初めて導入)。新たなTRで、IBMは、基本的な編集および再構築機能を含む、新たなテンプレートのサポートを追加します。
IBMは、IBM i 環境でのネットワークのWebベースの管理機能に対していくつか変更を行っています。IBMは、旧Web Admin GUIを段階的に廃止し、それをNavigator内の機能に置き換えるとしています。これは、時間を掛けて段階的に導入されるということです。IBMは、Web Admin GUIのサービス終了をいつ発表するかは決まっていないと、 こちらのサポート ドキュメントで述べています。
その一環で、IBM i 7.5 TR5および7.4 TR11で、ネットワークを管理するための新機能がいくつかNavigatorにもたらされます。まずは、サーバー プロパティーおよびロギング プロパティーの表示および修正のサポートです。また、ユーザーは、すべてのHTTPサーバー(Apacheによって稼働されるもの)をリストするページを表示して、それらを開始、停止、または構成するコマンドを発行できるようになりました。ユーザーは、IASおよびIWSのページでJava Webアプリケーション サーバーのリストを表示することもできます。それらのページでは、ユーザーはサーバーを開始および停止、またはログ ファイルを表示することができるとIBMは述べています。
IBMは、IBM i でTLS(トランスポート レイヤー セキュリティ)を構成するための新たなウィザードも追加しています。また、ユーザーは、IBM i に導入される新たなCertificates Store Table(証明書ストア テーブル)から、セキュリティ証明書の処理を行うこともできます。
最後に、Navigatorでのモニタリング ジョブの機能に対するいくつかの変更があります。Javaの非互換性の問題のために、ユーザーはNavigatorの旧バージョンから新バージョンへモニター ジョブを移行できないとIBMは述べています。IBM i 7.5 TR5および7.4 TR11でのNavigatorの新リリースでは、モニター ジョブは、Java 11または17を利用します。
Navigatorのアップデートについての詳細は、 こちらでご覧になれます。