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IBMi海外記事2024.07.10

IBM、2024年春のIBM i テクノロジー リフレッシュを公開

Alex Woodie 著

IBMは本日、IBM i プラットフォーム向けの最新のテクノロジー リフレッシュを公開しました。6月14日に利用可能となるIBM i 7.5 TR4および7.4 TR10 では、Merlinバージョン2、NavigatorおよびACSの新機能、セキュリティの向上、RPGの2つの機能強化、HAおよびDRの機能強化、および数多くの新たなSQLベースのデータベース サービスなど、様々な機能強化が顧客に提供されることになります。

IBM i 7.5 TR4および7.4 TR10の発表は、後述する新機能に加えて、思いがけない理由で重要な意味を持っています。すなわち、小規模な顧客を対象に、オペレーティング システムのソフトウェア サブスクリプション方式への移行が開始されるということです。

本日より、P05およびP10ティアの特定のPower10サーバーを取得する顧客は、新たなIBM i サブスクリプションを取得するか、永続ライセンスからIBM i サブスクリプションへの移行が必要となります。移行の料金方式については、4月2日にIBMがアナウンスを行っています( こちらの記事を参照)。

IBMがIBM i で提供している新機能には、誰にでも、それぞれ何かしら良いものがあります。まずは、Merlinから見てみましょう。

Merlin 2.0

IBMが2022年5月にリリースした、IBM i におけるアプリケーション開発および変更管理向けのブラウザ ベース環境であるMerlinには、大きな変化が訪れます。正式名称を「IBM i Modernization Engine for Lifecycle Integration」と言うMerlinは、VS Codeベースの開発環境と、 ARCAD Software社のDevOpsソフトウェアが組み合わされてできたものであり、すべてコンテナ化された Red Hat OpenShift環境で稼働します。

Merlinバージョン2.0は、「重要な意味を持つアップグレードです。私たちが稼働している、基礎となっている一部のコンポーネントについては特に重要です」と、IBMのTim Rowe氏(アプリケーション開発およびシステム管理担当IBM i ビジネス アーキテクト)は述べています。「Eclipseベースの環境から、全面的なDev Spaces(OpenShift向けの クラウドベースの開発サービス )での稼働へと移行しつつあります。」

「また、VS Code for iプロジェクトもフルに活用しています」とRowe氏は、Liam Allan氏によって開発されたオープンソースの Code for i プラグインにも言及します。Allan氏はしばらく前にIBMの一員に加わり、現在は正式なチームを率いて、そのプラグインおよび各種コンポーネントの開発(Db2 for i向けのデータベース拡張機能や、2023年初頭に VS Codeに登場した デバッガーなど)に携わっています。それらは、すべてMerlin 2.0で利用可能です。

また、Merlinの再来に伴って、Transformer、Builder、およびObserverなど、ARCADツーリングの最新リリースももたらされます。最後に、同製品は、OpenShiftのシングル ノードで稼働できるようになりました。これにより、セットアップおよび管理が簡素化され、Merlinがより小型のPowerマシンで稼働することも可能になります。

Navigator for i

IBM i のWebベースの管理者インターフェース、Navigator for iにも、今回のTRで新機能が加わります。 2021年秋に大幅な刷新が行われたNavigatorにとっての、今回のTRの目玉となるのは、Administrative Runtime Expert(ARE)コンソールの追加です。

「そのインターフェース(ARE)は、これまでいた場所からNavigatorへと移動を始めています」とRowe氏は述べています。「今後も、さらに多くのそうした古いインターフェースが、Navigatorに向かって歩み始めることになるでしょう。」

Navigatorに対する機能強化には、その他にも、モダンな見た目にするためのGUIの修正、サインオン プロンプトの改善、ネットワーキングの改善、Performance Data Investigator(PDI)の機能強化、Advanced Job SchedulerでのiASP(独立補助記憶域プール)のサポート、モニター ジョブでのJava 11および17のサポートなどがあります。

ACS

新たなTRには、IBM i の強力な多機能ツール、Access Client Solutions(ACS)の最新リリースも含まれます。 新バージョン1.1.9.5のリリース(先月、出荷開始)でIBMが大きく取り上げた新機能の1つに、「SQLスクリプトの実行」へのVisual Explainの追加があります。

ACSへのVisual Explainの追加により、管理者は、様々なパフォーマンス問題の中でも特に、遅いSQL照会のトラブルシューティングや修正を一段と容易に行えるようになるはずです。

RPG

RPGの領域では、IBMは、Rational Development Studio(RDS)for iに備わるコンパイラーで、2つの新機能を提供しています。

1つ目は、データ構造および独立フィールドでのCONSTキーワードのサポートです。2つ目はSND-MSGの機能強化で、これまでとは別のメッセージ タイプを指定できるようになったとIBMは述べています。

SYSTOOLS

2023年秋に、IBMは、SYSTOOLSに対する 数多くの機能強化を提供 しました。その時に導入されたコマンド、関数、および機能群は、このデータベース内で幅広く活用されています。Db2 for iビジネス アーキテクトのScott Forstie氏によれば、それらの新機能についてのIBM i 顧客からの評価は上々だったということです。

「昨年、SYSTOOLSツールでビッグバンが起こりました。そのビッグバンは間違いなくコミュニティに響き渡ったようです」とForstie氏は述べています。「数多くのお便りをいただきましたし、ご意見もたくさん寄せられました。一言目は決まって「ありがとう」でした。そして二言目は、「もっともっと、さらにもっと」でした。」

たとえば、SYSTOOLSには、Db2データをスプレッドシートに変換するためのコマンドと、それらをメール送信するためのコマンドがあります。「GENERATE_SPREADSHEETは、いくつかの点で機能強化がなされており、SEND_EMAILでは、コミュニティの要望に応える形で、4点ほど機能強化がなされています」とForstie氏は述べています。

IBM i サービス

IBMは、来る2つのIBM i のリリースで、IBM i サービスを含めて、様々な新しいSQLベースのサービスを導入します。

その1つに、ユーザーが2つの異なるIFSオブジェクトまたはサブツリーを比較できるようにする、IFS向けの新たな比較機能があります。「2つの異なるIBM i にまたがって比較を行うこともできるので、SQLにとっても、データベースの外側にあるものへの適用という点でも、非常に革新的です」とForstie氏は述べています。

セキュリティおよびデータ マート

今回のリリースには、最新のNIST標準のサポートのための、暗号化コプロセッサーまたは暗号化サービス プロバイダー(CCA CSP)の改善など、いくつかのセキュリティ関連の機能強化があります。クラスター管理可能ドメインで借用権限がサポートされるようになりました。

また、春のTRでは、セキュリティ データ マートの追加ももたらされます。IBM i の監査ジャーナルは、数多くのセキュリティ ログ(またはジャーナル レシーバー)を生成します。そのため、スペースの制約上、顧客はそうしたデータを削除することになってしまうことがよくあります。専用のデータ マートがDb2 for i上で作成されることで、顧客は、セキュリティ データを保管して整理するための便利なスペースを確保できることになります。

「データ マートは、監査ジャーナル項目タイプ別に、長期間にわたって調査の対象にしたいデータを捕捉することができます」とForstie氏は述べています。「非常に使いやすいでしょうし、セキュリティ情報のより幅広い調査や分析が可能になるだけでなく、パフォーマンス特性も素晴らしいものになるでしょう。」

HAおよびDR

IBMは、高可用性ソリューション、PowerHAをいくつかの新機能によってアップデートしています。たとえば、新たなFlashSystem非同期ポリシー ベース レプリケーション機能、管理可能ドメインの統合の機能拡張、新たなSQLサービス、およびWebユーザー インターフェースの機能強化といった新機能が加わります。

IBM i のネイティブなバックアップ機能であるBRMSにも、3592-70Fテープ ドライブおよびメディアのサポートと、テープおよび仮想テープのソフトウェア データ圧縮のサポートという、2つのアップデートが行われています。

IBM i 7.5 TR4と7.4 TR10 で提供される新機能およびアップデートは、すべて同じ内容です。言い換えれば、一方のバージョンで利用可能であって、もう一方のバージョンでは利用できないといった機能はありません(これは普通のことですが)。IBMは、これらの機能を6月14日に提供開始する予定です。新機能の多くは、データベースの機能強化のように、グループPTFを通じて提供されます。

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