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IBMi海外記事2018.02.08

IBM i の2017年を振り返る

Alex Woodie 著

12月も中旬になりました。2017年にIBM iおよびミッドレンジ コミュニティ全体に起こった大きな出来事について振り返ってみましょう。2つのテクノロジー・リフレッシュやIBM i 7.1のサポート終了の発表から、買収劇やセキュリティ侵害事件まで、取り上げるべき多くの出来事がありました。

2017年も、何ということもなく穏やかに始まりました。

1月

IBMは、プラットフォームの名称を変更しないという良い方針を貫いてきました。実際、2008年以来、プラットフォーム名は変わっていません。先日、連続先発出場記録が途絶えたことが話題となった、ジャイアンツのクォーターバックのイーライ・マニング選手も認めるだろう連続記録と言えるかもしれません。しかし、IBM iが所属している部門の名称に関しては、IBMは現状でよしとしておくわけにはいかなかったようです。1月、Power Systems部門の名称はCognitive Systemsへと変わることが発表されました。

https://www.itjungle.com/2017/01/30/power-systems-now-cognitive-systems/

LUG(Large User Group)が気掛かりだったのはセキュリティでした。1月のLUGミーティングでは、セキュリティに関するトピックが最重要課題とされました。IBM iのセキュリティの専門家たちによる、マシンを適切に構成する方法について、および高いレベルのセキュリティ上の問題についてディスカッションが行われました。OpenSSLの「Heartbleed」脆弱性の記憶は、まだ比較的新しい記憶でしたが、Equifax社のハッキング事件はまだ起こっていませんでした。良い時代でした。

https://www.itjungle.com/2017/01/25/discussed-big-lug-meeting/

IBMが2010年に初めて出荷したIBM i 7.1には、残された時間がもうあまり長くないことはしばらく前から分かっていました。しかし、IBMがどのようにIBM i 7.1を終了させることを決意したのかについては1月になるまでは分かりませんでした。最新のTLS暗号化アルゴリズムのサポートに関してIBMは断固として拒んでいることを『IT Jungle』が知ったのは1月のことでした。取引先から旧式の暗号方式を拒絶されて、通信が行えなくなったIBM i 7.1のショップがあったにもかかわらず、IBMはこの古いOSには新しい暗号方式を追加しないことを明言しました。

(過去記事:「IBM i 7.1で利用できない暗号があるという問題」

2月

IBM i 7.2 TR6および7.3 TR2が導入された、今年最初のテクノロジー・リフレッシュ(TR)における一番の勝者は、Db2 for iデータベースだったようです。SQLにおけるJSONサポート強化に始まり、LISTAGG関数のような他の機能の追加を通じてもデータベースの機能強化が図られました。オープンソースの面では、新リリースにより、sync、Wget、およびcURLなどの新たなツールがもたらされ、その一方で、Javaベースのクライアント(Access Client Solutions)にも熱い愛情が注がれました。

https://www.itjungle.com/2017/02/20/sql-database-shine-next-tech-refresh-approaches/

IBMは、ミッドレンジ コミュニティの皆さんのことを愛しています。嘘偽りはありません。その証しにIBMは、今年のバレンタイン デーには、ミッドレンジ コミュニティの皆さんに愛を伝えるメッセージ カード、の代わりにプロセッサー カードを贈りました。小誌編集長のTPMが愛情を込めて「IBMini」と呼んでいる、スケールダウンされた単一ソケットPower S812です。Power S812は、IBMがスーパーチャージャードで、ターボパワードなPower8ラインアップにおいて提供してきたあれほどのプロセッシング パワーを、多くのIBM iのショップがまったく必要としていない(そして、そのためにお金をまったく使いたくない)という認識の高まりを受け入れたことの表われだったと言えそうです。Power9サイクルにおける早い時期に、このような考え方がより多く見られるようになるとよいと思います。

https://www.itjungle.com/2017/02/20/ibm-gives-midrange-valentines-day-processor-card/

私たちは皆、IBM iはデータ ベース管理者を必要としないことを知っています。付きっきりでデータベースの面倒をみることが必要なUnixおよびWindowsボックスとは異なる点です。しかし、データベース エンジニアを雇い入れるよう求められる日が来ると、誰が思っていたでしょうか。統合化が進んだDb2 for iデータベースは複雑化し、高機能化しているため、小規模および大規模ショップは熟練したデータベース エンジニアをチームに加えることを本気で検討すべきだとするIBMerたちの声は大きくなっているようです。

https://www.itjungle.com/2017/02/15/hire-ibm-database-engineer/

3月

デジタル トランスフォーメーションという言葉は、様々な意味で使える、響きのよいフレーズです。テクノロジー系のマーケターたちが、今使っているITギアが古過ぎて時代の進歩から取り残されてしまう、と思い込ませるために好んで口にしているのをよく耳にします。あるいはそうなのでしょうか。イントラWebを深く掘り下げることで、過度な宣伝文句の背後にある論理的根拠を探り、端的に分かりやすい形で、親愛なる読者の皆様の前に提示することを試みたつもりです。

https://www.itjungle.com/2017/03/08/ibm-shops-know-digital-transformation/

IBM iに対する要望をどのようにしてIBMに伝えているでしょうか。IBMに技術上の要求事項を伝える方法には、様々なやり方がありますが、ユーザー グループやベンダー団体を通じて行われるのが一般的のようです。しかし、今年始め、IBMは、個人ベースで利用可能な、最新の要望提出プロセスを初めて公開しました。IBM RFE Communityと呼ばれるこのWebベースのフォーラムでは、ユーザーが新たな機能を提案したり、それらの提案に対して投票したりすることもできます。透明性が高く、ミッドレンジ コミュニティのまとまりを高めるのに役立ったことからすると、RFE Communityは、このプラットフォームに起こった今年最良の出来事の1つと言えるかもしれません。

https://www.itjungle.com/2017/03/15/vote-new-ibm-functionality-rfe-community-program/

「IBM i Marketplace Survey」のリリースは、調査を実施するHelpSystems社にとって春の恒例行事のようなものとなっています。今年の調査では、IBM iのショップの「jumpiness」(他プラットフォームへの目移り)に関しての詳細な統計データをはじめとして、我々の計り知れないほど貴重なプラットフォームに関する有益なデータが大量に提供されました。一言で言うとすれば、IBM iのショップは、近頃はあまり「jumpy」ではなくなっている(他へ目移りしなくなっている)、ということになるでしょうか。つまり、このプラットフォームから他のプラットフォームへの移行をあまりしたがらなくなっているということのようです。

https://www.itjungle.com/2017/03/22/ibm-base-not-jumpy/

4月

4月は雲の多い月です。雨もよく降ります。そしてその雨が、あの美しい5月の花々を育てます。IBMは、そのような古くからの言い習わしが心に響いたのかどうかは分かりませんが、クラウド プロバイダーに特別価格でIBM iを提供する新たなプランを発表しました。ただし、それ以外のインストール ベースには適用外でした。どうやら、IBMはマネージド サービス プロバイダー(MSP)に対するOSライセンス コストについて大目に見ることで、クラウドへのロイヤルティーを高めようとしたかったようです。

https://www.itjungle.com/2017/04/03/msps-get-monthly-ibm-pricing-not-everyone/

毎年、PowerTech社は「State of Security」レポートを発表しています。そして、毎年、そのレポートの内容はぞっとするものです。今年のレポートでは、強力なパスワード、スーパーユーザーを少なくする、ネットワーク アクセスおよび出口プログラムの管理といった、通常、求められているレベルのセキュリティ対策なしで稼働しているIBM iのショップがどれほど多いかについて詳しく述べられています。2018年には、そうした状況が改善することが望まれます(心からそう願います)。

https://www.itjungle.com/2017/04/24/state-ibm-security-seven-areas-demand-attention/

5月

IBMはこの月、IBM i 7.1からの撤退を公式に発表しました。顧客は、2018年4月30日までに、年を重ねたオペレーティング システムから移行するか、テクニカル サポートなしでやって行くかを選ぶことになります。年を重ねたIBM i 7.1にとっては前々から織り込み済みのことであり、顧客により新しいOSへ移行するよう促すための必要な措置だと言えるでしょう。

https://www.itjungle.com/2017/05/22/say-sayonara-ibm-7-1-next-spring/

5月中旬、WannaCryランサムウェアが世界中の何十万台ものコンピューターに被害を与え、世界全体が突然のショックに見舞われました。少なくとも我々の知る限りでは、被害を受けたIBM iサーバーは1台もなかったようです。しかし、この事件は、マルウェアが危険かつ検知が難しい新たな局面に入ったことを知らせる警鐘となりました。

(過去記事:「WannaCryについてIBM iのプロが知っておくべきこと」)

IBMは、Geographically Dispersed Resiliency(GDR)と呼ばれる新たなディザスター リカバリー サービスを発表しました。このサービスは、基本的には1台のIBM iサーバーから本番論理区画(LPAR)を取り出して、別のIBM iサーバー上でそれを再始動させるというものです。PowerVCコンソールから制御されるこのソフトウェアは、ハウスのAIXサイドからのものであり、実に使いやすいと、IBMは述べています。

(過去記事:「IBM i向けのGDRでディザスター リカバリーを強化」)

6月

6月21日、AS/400は29回目の誕生日を迎えました。コンピューター プラットフォームとしては、確かに長生きです。しかし、IBM iまたはその前身プラットフォーム上で稼働している組織は今でも100,000を超えているため、残りの人生はまだまだ長いように思われます。30歳の大台を前にして、このことがIBM iのショップにとって何を意味するのかについて、さらに詳しく見て行きます。

(過去記事:「AS/400の29回目の誕生日と7つの光」)

IBMは、最初のPower9サーバーのデリバリーに向けた取り組みを強化しつつありますが、それらのサーバーがIBM iを稼働しているところを目にすることはないでしょう。ただ、それはIBMの判断ミスではありません。それはスケール アウトLinuxワークロードの戦いを勝ち抜くためのIBMの戦略の一部だったということです。また、ゆくゆくは14nmチップがこのプラットフォームに導入されます。スケールアップ全盛の中、すさまじいことになるはずです。しかし、IBM iを稼働するSMP(対称型マルチプロセッサー)サーバーが、Powerの優先事項でないことは非常にはっきりしています。優先事項はスケール アウト ビッグ データとAIワークロードなのです。

https://www.itjungle.com/2017/06/05/ibm-aix-wont-get-power9-2018/

Db2 for iはIBM iサーバーの心臓部です。この月、Rimini Street社が、Db2 for iに関するオペレーショナルなbreak/fixサポート、診断およびトラブルシューティング、およびデータベースの構成のサポート サービスを提供開始することが発表され、IBM iのショップはDb2 for iデータベースのメンテナンスを行うための新たな選択肢を手にすることになりました。

https://www.itjungle.com/2017/06/26/db2-support-now-offered-rimini-street/

7月

IBM iのショップの間で、「ハイパーコンバージド インフラストラクチャー」というフレーズが頻繁に発せられることは、おそらくないようです。しかし、HCIというフレーズは、データ センターにギアを売り込むスマートな技術者たちの間での今はやりのフレーズです。大量の演算能力とストレージを用意して、高速接続でつなぎ、ソフトウェアを使用してすべてをビジュアライズします。これでHCIの出来上がりです。しかし、小誌編集長のTPMがいぶかるように、HCIは実際のところ、AS/400がずっと行ってきたものと、それほど異なるものなのでしょうか。アプローチには重大な違いがあり、それらを理解することは、このようなサーバービジネスがどこへ向かおうとしているのかを理解する助けになります。

(過去記事:「Power Systemsをハイパーコンバージドにする」)

たった2日間の間に、ハイ アベイラビリティー ソフトウェア プロバイダーのVision Solutions社は、一連の企業買収劇に何度も登場することになりました。Vision Solutions社は、プライベート エクイティ ファームによって買収された後、メインフレームおよびビッグ データ クラスター向けのETLプロバイダーのSyncsort社と合併することになります。さらに同社は、IBM iセキュリティ ソフトウェア企業のEnforcive社の買収も行いました。

https://www.itjungle.com/2017/07/10/vision-buys-enforcive-gets-sold-merged-syncsort/

8月

アウトソーシングはコスト削減のための一般的な方法になっていますが、周知の通り、IBMはその虜になっているようです。しかし、IBM iの領域にまでその波が及ぶことは予想していませんでした。少なくとも、このような形になるとは思いませんでした。8月の記事では、Rational Developer for i(RDi)、PowerHA System Mirror for i、およびBackup, Recovery and Media Services(BRMS)といった、いくつかの主要製品の開発をIBMがどのようにしてHelpSystems社へアウトソーシングしてきたかについてお話しました。またIBMは、Rocket Software社によって共同開発された、Cloud Storage Solutionsについても同じようなことを行っています。もしかすると、TIMI仮想マシンについても支援を必要とするのでしょうか。

https://www.itjungle.com/2017/08/07/ibm-gets-development-help/

IBM iを稼働しているPowerチップをオーバークロックしてみてはどうでしょうか。Intelは10GHzに到達できませんでしたが、IBMはPower8およびPower9などのPowerラインで到達できるかもしれません。名目クロック スピードは約4GHzですが、はるかに高速に動作できます。IBM iのショップは伝統的なトランザクショナル ワークロード向けにはさらなるキャパシティーは必要としないかもしれませんが、どのくらい高速にコンパイルが実行されるかについては考えてみるとよいと思われます。

https://www.itjungle.com/2017/08/28/not-overclock-power-chips-ibm/

9月

IBMは、IBM iプラットフォームの方がより合理性が高いとする、TCO(総所有コスト)に関する新たなレポートを発表しました。この調査では3年間のTCOの比較が行われ、Power Systems上のIBM iおよびDb2 for iの組み合わせの3年間のTCOは43万ドルであり、X64プラットフォームにおけるWindows/SQL Server(120万ドル)およびLinux/Oracleデータベース(130万ドル)の組み合わせに対して圧勝ということでした。

(日本語版:「IBM i、TCOでの優位性が拡大との調査レポート」)

今度のPower9サーバーは、どのようなものになりそうでしょうか。結局のところ、Power9サーバーには、Power8を稼働している同クラスのサーバーの約2倍のパワーが搭載される、と予想されています。そのため、エントリーレベルのPower8サーバーで10,000 CPWだとすれば、IBM iワークロードを引き寄せるためにスケールダウンされたエントリーレベルのPower9ボックスというものに対する切実なニーズがあるということです。小誌編集長のTPMの提案をIBMは受け入れるでしょうか。動向を見守る必要がありそうです。

https://www.itjungle.com/2017/09/25/necessity-power-systems-911/

10月

秋のテクノロジー・リフレッシュ(TR)では、たとえば、DB2 for iにおけるJSONのパブリッシュのサポート、新たなNginx Webサーバー、新たなRDi機能、新たな暗号プロセッサー、Db2 Web Queryに対する機能強化など、IBM i 7.2および7.3向けの様々な新機能がもたらされました。

https://www.itjungle.com/2017/10/04/trs-ibm-7-3-7-2-enhancements-no-big-surprises/

1億4300万人分の個人データ侵害を引き起こした大規模なEquifaxハッキング事件の後で、ありとあらゆるセキュリティの専門家が、こうしていたら侵害を妨げただろうというさまざまな事後分析を提案しました。データベース暗号化を頼みにすることは、誰もが言う常套句になっていましたが、このIBM iのセキュリティの専門家は、それがそれほどの特効薬でないかもしれない理由について説明しています。

https://www.itjungle.com/2017/10/02/encryption-not-silver-bullet/

11月

Power9の出荷が目前に迫って来ているのを受けてIBMは、Power Systemsマスター リセラーおよび一般のリセラーに向けて、RPQ(見積依頼)スペシャル ビッド システムを急きょこしらえて、旧型のPower8ギアの値引き販売を行った模様です。

https://www.itjungle.com/2017/11/06/ibm-deal-prices-current-power8-compute-like-future-power9/

IBMは、Notes/Dominoの製品開発をHCL Technologies社に譲渡することを発表し、Notes/Dominoプラットフォームに新たな生命を吹き込みました。このインドの70億ドル企業が同製品の独占的権利を持つわけではありませんが、IBMは新たな機能の開発で明らかに同社を頼りにしているようです。

https://www.itjungle.com/2017/11/01/indian-firm-takes-notesdomino-development/

12月

IBM i 7.1は、2018年4月末に、メインストリーム サポートから外れます。しかし、IBM i 7.1のままでいくか、7.2へアップグレードするか決められないでいる顧客に対して、今月IBMが発表したように、延長サポート契約を購入するという選択肢がもたらされました。また、IBMは、PowerHA 7.1の延長サポート契約についても発表しました。

https://www.itjungle.com/2017/12/04/service-extension-outlined-ibm-7-1-powerha-7-1/

IBM iアプリケーションを「モダナイズする」方法には、数多くのやり方があります。Webおよびモバイル ユーザー インターフェースを作成することもできます。フリーフォームRPGを採用し、データベースを最新のSQLへ移行することもできます。すべてをクラウドにホスティングすることもできます。アナリティック機能をクラウドに統合することもできます。あるいは、もしあなたがIBM i ERPソフトウェア ベンダーのVAI社であるならば、それらすべてのことを行うことができます。

https://www.itjungle.com/2017/12/06/vai-covers-bases-modernization/

以上、2017年の『IT Jungle』の記事をもとに振り返ってみました。

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