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IBMi海外記事2017.07.27

IBM i向けのGDRでディザスター リカバリーを強化

Alex Woodie 著

IBMは、来月、新たなディザスター リカバリー製品をIBM iのショップに向けて販売開始する予定です。Geographically Dispersed Resiliency(GDR)と呼ばれるこの新オファリングは、リモート マシン上に本番IBM i LPARを復旧するためのシンプルでお手頃な方法を企業に提供するように設計されています。IBMのレジリエンシー分野の権威であるSteve Finnes氏が、この新技術に関する詳細情報について『 IT Jungle 』に語ってくれました。

GDRは、基本的に1台のIBM iサーバーから、仮想マシン(VM)とも呼ばれる本番論理区画(LPAR)を取り出して、別のIBM iサーバー上で再始動することによってDRの保護機能を提供します。GDRスイッチに関わるVMは、ストレージ エリア ネットワーク(SAN)サーバー( IBM DS8000、SVC、またはStorwizeサーバー、あるいは EMC アレイのいずれか)上に置かれる必要があり、2つのアレイは地理的に分散させることができます。

Finnes氏は、GDRが、お手頃で使いやすいDRソリューションを求めるニーズに応える製品であると述べます。「とてもシンプルですが、きちんと仕事をしてくれます」とFinnes氏は述べます。「この技術により、まさしく1人のオペレーターでDRの再始動オペレーションを実行することができます。」

オペレーターは、PowerVCコンソールから、K-SYSと呼ばれるAIX LPARにコマンドを発行してGDRを操作します。「オペレーターは、K-SYS(制御システムの意)に対し、『サイト2で再始動します。』という意味のコマンドを発行します。それを受けてK-SYSは、ソース側の正常シャットダウンを実行し、ターゲット側で再始動を行います」とFinnes氏は述べます。「プロセス全体が非常にシンプルです。」

製品情報01

AIXおよびLinuxの顧客には昨年から利用可能であったこのソフトウェアは、いくつかの点でVMware社の人気製品Site Recovery Manager(SRM)に似ています。同製品は、多くのX86のショップにより、実際の災害発生時には本番環境を復旧するのに使用され、またDRのレディネス チェックを行うのに使用されています。 Finnes氏によると、DRプロセスのテストは、ビジネス レジリエンシーの分野における大きな重点項目であるため、DR対応のチェックはGDRの重要な部分となっているとのことです。「一般にDRサイトで行われているのはテストです。DRオペレーションが実行可能であることを確認するためにはテストを行う必要があるからです」と彼は述べます。「できることなら、ディザスター リカバリーを実際に使用しなければならない状況は起こらないのが何よりでしょう。誰の身にもそのような事態が降りかからないことを願うばかりです。しかし、あらゆるDRソリューションの最終的な目的は、実際に災害に襲われたときに、本当に復旧することができるという体制を整えておくことにあります。」

IBM iでは6月23日に利用可能となるこのGDR製品は、Live Partition Mobility(LPM)やPowerHAといった、多くのIBM iのショップにとってお馴染みの他のIBMオファリングのコンセプトや技術を借用しています。 GDRは、「コンセプト的にはLPMのいとこのようなものです。基礎部分が本質的に同じです」とFinnes氏は述べます。大きな違いは、LPMではVMを再始動できない点だと彼は述べます。

「GDRは、基本的に、IPLプロセスの手順を一通りこなします」とFinnes氏は述べます。「実際、それらのVMをオンザフライで作成し、プロセッサー コンプレックスにアップし、環境をロードし、そのターゲット ボックスで本番システムを再稼働します。」

GDRは、PowerHAからは独立した別個の製品ですが、PowerHAのデータ複製テクノロジーを借用しています。具体的には、本番環境のストレージ アレイからバックアップ環境のストレージ アレイへ実際にデータを送信するのに、メトロ ミラーおよびグローバル ミラー複製プロトコルを使用します。EMC環境では、GDRはSymmetrix Remote Data Facility(SRDF)複製プロトコルを使用します。 GDRの顧客は、本番システムとバックアップ システムが同じ構内または市内に位置しているときは、同期メトロ ミラー プロトコルを、両サイトが離れた場所にあるときは、非同期グローバル ミラー プロトコルを使用するでしょう。SRDFは、同期および非同期モードをサポートします。

GDRによるIBM i環境の復旧は、いくつかの点で、テープによるIBM i環境の復旧に似ています。「本質的にはまさにそのものです。実際、ターゲット サイトでそのVMのリブートまたはIPLを行います」とFinnes氏は述べます。「スクラッチ インストールを行い、このイメージからすべてをブート アップします。」 GDRでは、本番ボックスでVMを正しい順序で終了してから、新しい環境でスピンアップする必要があるため、リカバリーには多少時間を要することになります。「実質的には変則的なIPLプロセスの手順をこなすことになるため、(ハイ アベイラビリティーのロール スワップより)時間が長く掛かることになります」とFinnes氏は述べます。そして、IPLを完了するのに掛かる時間は、データベース サイズや他の要素によって異なる、とFinnes氏は付け加えました。

目標復旧時点(RPO)という観点からすると、GDRソリューションは、すべての作業データ、またはほとんどすべての作業データを復旧するという目的には非常に向いていると言えます。GDRがメトロ ミラーまたは同期SRDFデータ複製で構成される場合、RPOはゼロにまで短くすることができます。つまり、トランザクションがローカル マシン(またはローカル ストレージ サーバー、そこはVMが実際に動作する場所であるので)へ書き込まれると同時に、GDRで保護されます。 DRソリューションに期待される目標復旧時間(RTO)という観点からすると、GDRはあまり期待に添えるものとは言えなさそうです。GDRでのリカバリーは、実質的に本番IBM iシステムの変則的なIPLであるため、Finnes氏が前述したように、顧客がGDRを使って復旧処理を行うのには多少時間が掛かり過ぎてしまうかもしれません。

このような特徴から、GDRは、DRソリューションを探している顧客にとってちょうどよいソリューションになる可能性があります。「DRソリューションを求めている人がいるとすれば、比較的安価で使いやすいため、GDRはそのような人にとっては興味深いものとなるのではと思います」とFinnes氏は述べます。

GDRに関して注意しておくべき点は、IBMまたはEMCストレージ アレイへの投資と、K-SYSおよび仮想I/Oサーバー(VIOS)のようなAIXテクノロジーにおけるスキルが求められることです。大規模なIBM SANを持つIBM iのショップの多くではDS8000が好まれているため、PowerHAが使用されることが多いようです(また、PowerHAにはすでに包括的なハイ アベイラビリティーおよびDR機能が備わっています)。そのため、そうした大規模なIBM iのショップの間ではGDRの潜在市場は限られていると思われます。

「実際のところ、DS8000の顧客は、まさしくミッション クリティカルな、米国の産業界を代表するような企業ばかりです」とFinnes氏は述べます。「そうした企業がGDRをDRソリューションとして使用する理由はありません。彼らの場合、すでにクラスター内で包括的なHAおよびDRがセットアップされているため、DS8000のクライアントがこのようにGDRを使用することは想定していません。」

一方で、人気の高いStorwizeアレイを稼働している小規模なIBM iのショップの場合、PowerHAへの投資がなされる可能性はあまり高くありません。それだからこそ、GDRにとっての良い見込み客となり得るわけです。6月23日の時点で、SVCストレージ サーバー(IBM iのショップの間でまったく人気がありませんが)は、IBM i、Storwize、およびDS8000アレイとともに、GDRでサポートされるようになります。

また、IBMビジネス パートナーが、レプリケーションおよびリカバリー機能を提供するGDRとともに、IBMストレージ アレイ上に、サービスとしてのDR(DRaaS)オファリングを構築するという可能性もあります。Finnes氏は、近頃、数多くのDRaaSオファリングが登場するのを目にしていると述べます。そうした状況から彼は、GDRにとって良いチャンスが生まれるかもしれないと考えるようになっています。

PowerHAまたは論理複製テクノロジー上に構築されるハイ アベイラビリティー ソリューションと比べると、GDRは顧客にソフトウェアのライセンス コストの削減をもたらす可能性があります。顧客のアプリケーション ソフトウェアは同時に複数のマシンでアクティブにできず、セカンダリー システムは真の「コールド」バックアップとなるため(HAまたはクラスタリング テクノロジーでよく見られる「ウォーム」または「ホット」バックアップではなく)、GDRは、顧客のソフトウェア ライセンス要件を緩めることになるかもしれません。

GDRの標準価格は、「小型プロセッサー」の場合、1コアにつき1,020ドル、「中型プロセッサー」の場合、1コアにつき1,575ドルとされています。プロセッサーのサイズの定義については、IBMにお問い合わせください。

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