AS/400の29回目の誕生日と7つの光
今日は、AS/400の29回目の誕生日です。人間であれば、来年迎える30代についてあれこれ考えをめぐらしつつ、おそらく、若さの栄光に浴する最後の年を楽しんでいることでしょう。IBM iプラットフォームは決して若者とは言えませんが、まだまだもうろくしてしまう年齢でもありません。
中年期を向かえるこのプラットフォームが歩んで行く道筋を、明るく照らしてくれる7つの光についてお話しましょう。
すべてはアプリケーション次第
IT意志決定者が特定のコンピューター プラットフォームを使い始めるのは、そのプラットフォーム自体のためではなく、アプリケーションのためというのが一般的です。アプリケーションがサーバーの売り上げを促進するのです。
IBM iプラットフォームには、伝統的に、そのプラットフォーム上で稼働する数多くのアプリケーションがありました。そうしたアプリケーションの数は年月と共に減少してきました。その理由は様々あるのでしょうが、一番の理由は、IBM iサーバーを稼働する組織の数が減少したことにあると言えるでしょう。
今日、IBM iのショップはおおよそ100,000程度あるようですが、インストール ベースはピーク時の半分未満となっています。しかし、ここ数年については、データ上の裏付けがあるわけではありませんが、IBM iプラットフォームから他へのマイグレーションはペースダウンしているようです。それらの100,000のショップは、大半がこのプラットフォームを愛する頑固者だと言ってもよいでしょう。
ISVは、特定のプラットフォームをサポートする際、支出に見合う最大の価値を得られるかどうかについて検討する必要があります。そのため、よそに目を向けてしまうのというのも理解できる部分があります。しかし今日では、IBM iプラットフォームへの参入障壁はこれまでに比べて低くなっています。ISVのアプリケーションがJava、PHP、Python、Ruby、またはNode.jsで書かれているのであれば、IBM i上で稼働できます。RPGやCOBOLのような「ネイティブな」アプリケーションとして稼働するわけではありませんが、PASEランタイム環境を介しての稼働となります。
ISVは、今日、このプラットフォームに専心しているIBM iのショップの中にも、最新のアプリケーションを必要としているショップが一定数あるのだということを認識しておくべきです。
オペレーショナル アナリティクス
アナリティクスを実行することを目的としてIBM iサーバーを購入するショップはほとんどありません。ただしそれは、IBM iサーバーがデータ ウェアハウスまたはビジネス インテリジェンス アプリケーションを稼働できないということではなく、IBM iサーバーの中核的な強みは、トランザクション系の業務アプリケーションを稼働させることにあるということです。
肝心なのは、アナリティクスは今後のビジネス コンピューティングにとって極めて重要になるということです。アナリティクス こそが コンピューティングの未来だと言うこともできます。今日の企業に広まっている「何でも保存しておくべし」というスローガンのおかげで、アナリティクスは、伝統的なトランザクショナル アプリケーションに比べてはるかに大幅に、サーバーの新たな作業負荷を増加させています。IBMがIBM iをCognitive Systems部門へ移したのには理由があるのです。
勘違いしないでください。たとえすべての分析アプリケーションがIBM iで利用可能だったとしても、IBM iでHadoopベースのデータ レイクを稼働させたり、あるいは、Spark、Anaconda、またはIBM PowerAIの、機械学習やグラフ分析技術を利用してデータ マイニングを始めたりするだけのためにIBM iサーバーを購入しようとする企業はほとんどないでしょう。
より可能性が高いのは、アナリティクスがトランザクション アプリケーションに統合されるということです。オペレーショナル アナリティクスとして知られている、そのようなBIとトランザクションアプリケーションとの融合は、ビジネス エキスパートたちの日常業務の領域へアナリティクスのパワーを浸透させてゆく一助となります。
オペレーショナル アナリティクスがIBM iアプリケーションに対して与える潜在的影響は多大なものがあります。運送業者から、病院、銀行、小売業者まで、企業が持っているデータを自身でもっとうまく活用できるための方法は何百万通りもあります。さらに、顧客が自身のDB2 for iデータベースからのトランザクション データと、ソーシャル メディア データ、気象データ、またはサードパーティーのブローカーから購入したデータといった外部データとをミックスし始めると、潜在的影響はさらに大きくなります。
ビッグ データ アナリティクスは、すべての業界に影響を与えていますが、とりわけ重大な影響が及んでいるのはソフトウェア開発の業界です。一番人気のWebおよびモバイル アプリケーションの開発者は、常にアプリケーションの使用状況に関するデータを収集しており、ユーザー エクスペリエンスの最適化のためにそうしたデータを利用しています。こうした先進的なビッグ データ技術がIBM iで使用できない訳がありません。
新しい人材
IBM iインストール ベースは、引退の日が近付きつつある年季の入ったベビー ブーム世代でいっぱいであることはよく知られています。あごひげは、年々白くなってゆきます。それは、このプラットフォームの寿命の長さの証拠でもあり、ユーザー ベースの熱意が極めて高いことの証拠でもあります。
しかし、優れたテクノロジーは決して廃れてしまうことはありません。新世代のIBM iプロフェッショナルたちがバトンを受け継ごうとする兆しが見えてきています。IBMでは、Liam Allan氏、Lynell C. Constantine氏、Christian Kaddatz氏、Stephanie Rabbani氏、 およびその他の若い人材 を、フレッシュなIBM iのスタッフとしてメインのIBM iWebサイトで紹介しています。古参のスタッフが引退しても、このプラットフォームが信頼のおける人々に委ねられる目途は立っているわけです。
教育への注力
上記のスタッフの多くは、大学の教育課程を通じてこのプラットフォームについての手ほどきを受けています(全員ではありませんが)。これは、IBM iの未来をプロモーションする最良の方法の1つです。
しかし、行うべきことはもっとたくさんあります。IBM iコミュニティは、そうした次世代のIBM iプロフェッショナルを教育するためにもっと多くのことを行う必要があります。IBMは、IBM iのカリキュラムを大学に入れ込むよう十分手を尽くしているとは言えません。米国中を見渡しても、学生がIBM iの技術に触れることができる教育課程は、ほんの一握りの大学にしか設けられていないようです。
IBMは、教育への注力を倍増させることで、もっと多くの次世代IBM iプロフェッショナルの種をまいておく必要があります。良いモデルとしては、ウィスコンシン州にあるJim Buck氏のゲートウェイ テクニカル カレッジが挙げられます。数多くの優れたIBM iの新戦力を輩出しています。ただ、先日、Buck氏がその職を退くこととなったことは実に残念なことでした。
モダナイゼーションの推進
IBM iは古いテクノロジーであると言われているようです。IBM iコミュニティから見れば、たわごとに過ぎないことはよくわかっているのですが、それでもやはり、それが一般の認識のようです。
しかし、モダナイゼーションへの取り組みは、実を結び始めています。IBM i ISVコミュニティから提供されるツールのコレクションによって、システム、データベース、およびアプリケーションを高速化します。残念なことに、IBM iコミュニティの相当部分では、非常に古いハードウェア上で非常に古いリリースのOSを稼働しています。i5/OS V5R4を稼働しているのだとしたら、アップグレードが必要です。
アプリケーションもまた年を取りつつあります。問題となるのは、いつも5250のグリーンスクリーン アプリケーションに関してというわけではありません。確かに見栄えは良くありませんが、ある状況(たとえば、経験豊富なオペレーターによる注文入力など)ではGUIより好ましいこともあります。
しかし、古いコードが数多く存在していることについては疑問の余地はありません。顧客が率先して自身のシステムおよびアプリケーションをモダナイズするべき時が来ているのです。IBM i OSの最新リリースには、数多くの先進的な機能が備わっています。それらの機能を使用して、実際にIBM iプラットフォームがど れほど先進的であるかを世界に知らしめてほしいものです。
顧客の声の大きさ
IBM iプラットフォームは、ビジネス コンピューティング業界において独特な存在です。これほど熱意の高いユーザー グループは、他のどこにも見られません。ユーザーが自身をIBM iプロフェッショナルと自認しているという事実は、IBM iとその前身プラットフォームが、過去29年の間、どのようにしてそうした忠実な熱意を起こさせてきたかを示しています。
こうした熱意の高さは、人の心を引き付けるAS/400の遺産であり、それと同時に大きなセールス ポイントにもなっています。新米のCTOが、IBM iコミュニティのような、情熱的でひたむきなフォロワーのグループに出会ったら、どんなことを思うか想像してみてください。きっと、頑張ってIBM iを支えていこうと思うのではないでしょうか。
このプラットフォームでは、頂上に、声の大きなリーダーたちから成る強い集団が存在しています。Trevor Perry氏やAaron Bartell氏のような人物が、IBM iサーバーがどのようなことを行えるかを世界に知らしめる役割を果たしてくれています。それでも、もっと上を目指し、大きな声を上げたいと思うIBM iプロフェッショナルはもっとたくさん出て来ることが必要です。
IBMのリーダーシップ
IBM iプラットフォームには、他にはない独特な面が数多くありますが、その1つに、IBMという一企業によって主導されていることがありす。Windows、Linux、またはUnixの世界では、そのようなものはありません(メインフレームの世界ではありますが、それは別の話です)。
しかし、IBM iサーバーを再び偉大にするためには、IBMはもっと多くのことを行わなければなりません。IBM iサーバーは、あまりにも長い間、より広いITの世界にとって謎めいた存在であり続けてきました。IBMは、IBM iインストール ベースをメンテナンス収益の収益源と考えるのではなく、どのようにしてインストール ベースを拡げてゆくかについて考えるべきです。
伝えられるところによると、先日のCOMMONカンファレンスでIBMは、ISVに向けて 15年間のプラットフォームのロードマップを発表したそうです。そのロードマップは、もっと広い世界に向けて公開されるべきです。そうすることで、30回目の誕生日を前にしたこのプラットフォームに、長い実り多い未来が待っていることが示せるのですから。