IBM、ようやく2026年最初のIBM i テクノロジー リフレッシュを発表
さて、いつもより少し長く時間が掛かりました 。先週、IBMはようやく、2026年最初のIBM i テクノロジー リフレッシュを発表し、IBM i 7.6 TR2および7.5 TR8を構成する一群のアップデートを正式に公開しました。ほんの3か月先には秋のTRが控えていると思われる中で、これら2つの新たなTRに関する吉報と言えるのは、GA(一般提供開始日)が今週の金曜日であるということです。
2010年にTRサイクルに移行して以降、IBMは、毎年、春(通常は4月)に1つ、秋(通常は10月)に1つという形で、1年に2つの大型アップデートをIBM i コミュニティに提供してきました。今年は、少し違った展開でした。IBMは4月に、わざわざTRの遅れについて 事前に知らせて くれています。
遅れた理由は実に単純です。すなわち、IBMは、新たなTRを発表する前に、新たなエントリーレベルのPowerサーバーを発表したいと考えていました。TRを提供する理由の1つは、OSに新たなハードウェアのサポートを追加することであるため、IBMは、来たるIBM i の新リリースで、まだ実在していないハードウェアのサポートを追加することはできませんでした。IBMは、7月15日水曜日に、新たな「Bonnell+」 Power S1112エントリー サーバーを正式に発表しました。2026年夏のTRの発表と同じ日です(どうやら火曜日から日付が変わって水曜日のようです)。
Power S1112については、Timothy Prickett Morganによる こちらの記事をご覧ください。しかし、本記事では、新たなTRについて全般的に見てみようと思います。今後数週間の間に、最も重要な機能について、さらに深く掘り下げる予定です。
7.5 TR8および7.6 TR2の新機能
IBMは、夏のTRで、あっと驚くような新機能は提供しませんでした。むしろ、幅広くオペレーティング システムと関連機能およびライセンス製品全体にわたって、段階的な機能強化を行っています。
以下では、2026年夏のTRの中でも注目すべき機能をカテゴリー別に見て行きます。
セキュリティ:IBMは、IBM i 7.6 TR2で、Bring Your Own Key(BYOK: 独自の鍵の持ち込み)機能を追加しました(IBM i 7.5以前のリリースでは利用できません)。BYOKは、IBMの一元管理されたクラウドベースの鍵管理サービス、IBM Cloud Key Protectを介してIBM i Cryptographic Servicesで利用可能になります。
「これは、実際は、クラウドでIBM i を稼働しようとしていて、外部鍵管理への対応というコンプライアンス要件を抱えるユーザーを対象としています」と、夏のTRに関する先週のウェビナーで、IBMのIBM i セキュリティ アーキテクト、Tim Mullenbach氏は述べています。「それは、オンプレミスで稼働するオプションでもあります。」
IBMは、統合されたSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバーで、OAuth 2.0のサポートを追加しました。この機能(IBM i 7.4以降のすべてのOSで利用可能)は、IBM i のメールを最新のメール認証の業界標準に適合させます。
「SMTPチームは、OAuthタイプの機能を使用して認証を行えるようにするために、サーバーの強化に精力的に取り組んできました。これは、GoogleやOffice 365など一部の大手メール サーバー プロバイダーからの要件のようなものです」とMullenbach氏は述べています。「サポートするメール サーバー プロバイダーが多くなるにつれて、もっと多くのものが入ってくるでしょう。これは、セキュリティ環境が変化し続ける中で非常に重要な機能です。私たちも、その変化に合わせて継続的に進化していく必要があります。」
また、IBMは、自動的に Common Vulnerabilities and Exposures (CVE: 共通脆弱性識別子)データベースに問い合わせを行い、ユーザーの特定のIBM i リリースに影響を及ぼすCVEを返す、新たなSQLサービスも提供します。具体的に言えば、SYSTOOLSの表関数である、新たなCVE_INFO関数は、そのシステムに影響を及ぼす可能性のあるCVEのリストを、詳細情報(脆弱性の名称、公表日、およびCVSS深刻度スコアなど)とともに返します。
「これは私にとって個人的にも関心のある領域であり、SQL関数やRESTfulサービスの機能を使用して、IBM i に関するCVEをより簡単に把握できる方法を模索してきました。そのため、これは私たちの第一歩です」と、IBMのDb2 for i データベース アーキテクトのScott Forstie氏は述べています。「IBMの開発チームの私たちの多くにとって、これは大きな尽力を必要とする取り組みでした。したがって、それが実現されることは非常に喜ばしいことです。」
データベース:IBMは新たなリリースで、Db2 for i に対するいくつかの機能強化を行い、SYSTOOLSおよびQSYS2合わせて17の新規のIBM i サービスを追加し、10以上のIBM i サービスを機能強化しました。これは予想通りのことです。IBM i サーバーの主要な役割は、データベース マシンであることだからです。
しかし、注目を集めているIBM i サービスが1つあります。Forstie氏は、ウェビナーで13分間を費やして、そのIBM i サービスについて取り上げました。すなわち、新たなCREATE_DATA_JOURNAL_READERスカラー関数です。これは、ジャーナリングされたデータベース ファイルに対して行われた変更をより理解しやすくします。
「ここでの考え方として、ジャーナリングされたデータベース ファイルに対する挿入、更新、および削除は、結果的に何のジャーナルに記録されるでしょうか?データ ジャーナルです」とForstie氏はウェビナーで述べています。「しかし、それらのジャーナル項目を見てみても、項目固有のデータが16進形式であるため、行イメージを理解し、それらで何かを行うことは非常に困難です。そのため、このヘルパー関数を作成しました。これは、データまたはジャーナル項目を理解したいと思う任意の表に対するヘルパー関数を自動生成してくれます。」
たとえば、ユーザーが「Toy Story library」という名前のファイルでなされた変更について詳しく知りたいという場合、データが16進形式であることを気にする必要はありません。CREATE_DATA_JOURNAL_READERスカラー関数によって作成されるヘルパー関数を呼び出すだけで、読みやすい形式でデータを生成することができるからです。
「ミネソタのこの冬はとても長く寒かったです」とForstie氏は述べています。「しかし、このCREATE_DATA_JOURNAL_READERなど、いくつかの素晴らしいものがそこから生み出されたのです。」
Access Client Solutions:IBMは、現在、ACSバージョン1.1.9.13を提供しており、2026年夏のTRの一部としてそのバージョンが含まれています。これは画期的なリリースであるようには思えませんが、ACSの「SQLスクリプトの実行」コンポーネント内でのSQL Error Logging Facility(SELF)のサポートなど、いくつかの新機能も含まれています。システムワイド コントロール、ジョブレベル コントロール、およびログ照会に関連するSQLなど、SELFをサポートする7つの新たなSQL用例が追加されています。
また、Forstie氏のデータベース チームは、「SQLスクリプトの実行」にさらにいくつかのセキュリティ関連のSQL用例も追加しています。すなわち、誰がIFSルートまたは/QOpenSysサブディレクトリーにオブジェクトを作成したのか、どのIFS第1レベル ディレクトリーおよびサブディレクトリーが攻撃の対象になりやすいのか、およびIFSホーム ディレクトリーのオーナーが誰なのかを判定するためのSQLです。
「私たちACSチームは、ACSに新たなSQLサービスの用例を追加することに懸命に取り組んできました。そして、私たちが尊重してきたことの1つは、IBM i のセキュリティ態勢を評価するためにどのようにSQLを使用することができるかを示すことです」とForstie氏は述べています。「私はこれを「IBM i へのさらなるセキュリティの注入」と呼んでいます。この特定の攻撃ベクトルに対して、SQLを使用していくつかのレベル チェックを行うことにより、自分のIBM i がどのような状態になっているのかを確認することができます。」
ACSのすべてのアップデートのリストは、 こちらで参照することができます。
Navigator for i :BYOK、OAuth 2.0、およびCVE SQLサービスなど、上述した新機能のいくつかは、Navigatorカラムに表示されます。IBM i 向けの主要なシステム管理インターフェースであるため、多くのセキュリティ関連の機能には、Navigatorでアクセスすることができます。
また、IBMは、Navigatorの何百ものPDI(Performance Data Investigator)チャートのGUIの刷新も行いました。Navigatorおよび開発ツールを担当するアーキテクト、Tim Rowe氏によれば、Angularフレームワーク(Navigatorの現行バージョン、すなわち「New Nav」が使用しているもの)を使用するための、従来のDojoフレームワークからのチャートのアップグレードは、IBM i サーバーのパフォーマンスが経時的にどのように変化しているかについてユーザーが理解するのをより簡単にするということです。
「格段に分かりやすくなりました。実際にグラフを見て、グラフを表示したままデータを確認することができます」とRowe氏は述べています。「それは、モダンなWebインターフェースとして期待される通りに機能します。お気に入りのような機能さえ使用できるようになりました。」
また、Navigator内のCode for i データベース拡張機能のサポートのおかげで、ユーザーは、Jupyterノートブックでデータベース出力を表示できるようになりました。「Navigatorは、これらのJupyterノートブックの表示およびデータのやり取りをサポートするようになりました」とRowe氏は述べています。「単なる生データの表とは対照的に、棒グラフや折れ線グラフや円グラフのように、データを見やすく表現することができます。」
Navigatorのアップデートの詳細については、 こちらをクリックしてください。
Migrate While Active:IBMは、Migrate While Activeに対する大幅な改善を行いました。Migrate While Active(MWA)は、顧客がデータをPowerVSへ移行しながら、IBM i ワークロードを稼働し続けることを可能にするために 2024年10月 に発表された製品です。それ以降、この製品はオンプレミスのマイグレーションをサポートするように拡張されてきました。
MWAは、IBMの継続的可用性製品、Db2 Mirrorをベースにしていますが、Db2 Mirrorが使用する超低遅延のRoCE(RDMA Over Converged Ethernet)に対して、通信メカニズムとしてTCP/IPを使用します。
MWAは、従来の保存/復元、または仮想テープ方式の使用など、様々なレプリケーション メカニズムを使用して、ターゲット コピーを確立します。また、約1年前に追加された区画ミラーリングもサポートします。
今回のTRでIBMは、FlashCopyおよびGlobal Copyなど、外部ストレージベースのレプリケーション技術のサポートを追加します。「オンプレミスに留まって、マイグレーションを行わない場合は、FlashCopyが最も一般的な方法になると思われます」と、Steve Will氏からIBM i のチーフ アーキテクトの役職を引き継いだばかりのKris Whitney氏は述べています。
もうひとつ、MWAの機能強化として、オペレーティング システム アップグレードのサポートがあります。顧客は、MWAベースのマイグレーションの一部として、IBM i OSのアップグレードを行えるようになりました。「その2番目のシステムのそうしたコピーを作成した後で、ソース側で発生するすべての変更をトラッキングし始めます。これで、そのターゲット ノードに切り替えて、アップグレード作業を行うことができます」とWhitney氏は述べています。
また、MWAは、新たな「見積り機能およびユーザー エクスペリエンスの向上」ももたらします。これにより、顧客は移行の各段階をよりスムーズに計画し、進めることできるようになるとIBMは述べています。MWAの詳細については、 こちらをクリックしてください。
Code for i :幅広く使用されているこのWebベースの開発環境は、一年を通じて常にアップデートがなされています。IBMはTRのドキュメントで、SSH鍵パスフレーズのサポート、Code for i 本体での新たな「Context」ビュー、データベース拡張機能におけるスキーマ ブラウザの改善、RPGおよびCLのサポートの改善など、十数件のアップデートを取り上げています。Code for i に対する機能強化の詳細については、 こちらをクリックしてください。
前述したように、今後数週間の間に、2026年夏のTRについて深く掘り下げる予定です。差し当たっては、以下のIBM発表のドキュメントを参照してください。
- IBM i 7.6 TR2ソフトウェア発表レター
- (英語)IBM SupportサイトのIBM i 7.6 TR2に関する詳細情報
- IBM i 7.5 TR8ソフトウェア発表レター
- (英語)IBM SupportサイトのIBM i 7.5 TR8に関する詳細情報
