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IBMiコラム2026.08.25

IBM i のウンチクを語ろう:その122
- 遂に登場! Power11新モデルS1112 -

安井 賢克 著

皆さん、こんにちは。ここしばらくはIBM i のアプリケーション開発におけるIBM Bobの意義をお客様向けに語ることが多かった中で、IBMはIBM Powerの下位モデル市場を放棄するのではないか、といった不安の声を耳にすることがありました。昨年7月にプロセッサ・グループP10以上のPower11搭載サーバーのラインアップを発表して以来、これまで音沙汰無しの状況が続いていたからなのでしょう。ボリューム・ゾーンである最下位モデルは2026年内には登場する予定であると認識はしていましたが、それ以上の詳細は何も明らかではありませんでした。今回のコラムでは、7月14日にようやく発表され同24日にGAを迎えた、プロセッサ・グループP05に属する新モデルPower S1112と、それを取り巻く製品動向をお話したいと思います。

まずはモデル番号が持つ意味を確認しておきましょう。最初の「S」はScale-out、旧来の言い方ですとローエンドに相当します。システム全体の処理能力を高めるための方法として、小型のサーバーを複数台構成する、という考え方に基づくもので、一台のサーバーを大型化するScale-upに相対する概念です。参考までにIBMではScale-up型のマシンをEnterpriseサーバーと呼んでおり、IBM Powerのモデル番号ではE1180のように、「E」を先頭に付しています。

続く2桁はプロセッサ世代を表しており、Power11搭載であることからそのまま「11」が続きます。旧モデルはここが「10」、さらに前のモデルでは「9」が「S」に続いていました。その次の「1」は搭載可能なプロセッサの最大ソケット数、すなわちプロセッサとしてパッケージングされた部品を1つだけ装備していることを表します。最後の「2」はラック搭載時の筐体の高さをU単位で表記したものです。1Uは1.75インチすなわち約4.445cmですから、S1112の高さは約8.9cmになります。また、モデル番号には表現されていませんが、ラック搭載時の筐体幅はラック幅の半分(ハーフワイド)と小型化しています。

モデル番号や筐体サイズの観点からもS1112はS1012の後継であるように見えますが、処理能力やシステム拡張性の観点においてはS1014の後継も兼ねています。ここは最下位にある2つのモデルが、以下のように位置付けられたと見なすべきなのだと思います。

S1012の1コア構成を除けば、S1012とS1014において搭載されるプロセッサは共通であり、サポートされるIBM i のプロセッサ・グループも4コア構成のP05と8コアのP10といったように同じでした。ただS1012のラック搭載時の高さはS1014の半分、幅も半分ですから、搭載可能なPCIeカード枚数やNVMeユニット数はおのずと制約されていました。要するに両モデルの違いはI/Oの拡張性の違いだったわけです。

Power11世代ではS1112とS1122がこれら2モデルの後継になるのですが、両者の違いは筐体の大きさの違いによるI/Oの拡張性だけではありません。モデルS1112ではIBM i に割り当てられる最大コア数は4でありプロセッサ・グループはP05、S1122では同様にIBM i の最大コア数は8でありP10、という違いがあります。ここで注目しておきたいのは、S1112に特有のIBM i 構成の考え方とそのメリットです。

S1112に搭載されるプロセッサには、4コアまたは10コアの2つのタイプがあります。IBM i P05における最大コア数4や、最大メモリ容量64GBという制約は従来と変わりはありませんが、S1112の4コアモデルはもちろん、10コアモデルにおいてもP05区画を構成できるようになりました。そして残りの6コアと、S1112に搭載されている64GBを超えるメモリ領域は、他OS区画に割り当てることができます。S1112のプロセッサ・グループP05は、マシン全体の構成ではなく、IBM i 区画に割り当てられる資源量に紐づけられているということです。

このことはIBM i に加えてAIXやLinuxなどのワークロードを単一サーバー上で共存させる場合に効果を発揮します。IBM i が必要とする資源量がP05の制約内に収まっていたとしても、他OS環境を追加で構成しようとしたら、サーバーの規模はP10になってしまうかもしれません。このままではIBM i 関連のソフトウェア料金が上がってしまうので、これを避けるためにはIBM i 専用のP05のサーバー1台に加えて、他OS用にもう一台をわざわざ購入しなければなりません。サーバーを統合する代わりにソフトウェア料金が高くなるのを許容するのか、ソフトウェア料金が高くなるのを嫌って二台体制にするのか、どちらかしか解決策はありませんでした。S1112におけるプロセッサ・グループP05の実装は、この懸念をクリアできるというわけです。

地味ながらこの機能は、IBM i が利用できるメモリ領域を、従来比で概ね最大28%増加させる効果をもたらすとされています。IBM Power上の各OS区画はファームウェアを前提にして稼働します。例えば64GBメモリを搭載するサーバー上にIBM i 区画を構成する時、最大で約14GBがファームウェアに占有されますので、IBM i がアクセスできるのは50GB程度に制限される可能性があります。S1112における搭載メモリ容量が64GBを超えているならば、ファームウェア用の14GBはIBM i 区画の外に配置できるようになります。結果的にIBM i 用のメモリサイズは、実質50から64GBに拡張されるというわけです。

さて、新製品が登場すれば、入れ替わりに古い製品が市場から退場するのは世の常です。ここでプロセッサ・グループP05に属する、IBM Power各モデルのライフサイクル(寿命)に目を向けてみたいと思います。Power8以降についてまとめてみると以下の通りになります。

モデル 発表 GA 営業活動終了 標準サポート終了
S814 2014/04/28 2014/06/10 2019/05/31 2024/05/31
S914
(9009-41A)
2018/02/13 2018/03/20 2021/01/29 2026/01/31
S914
(9009-41G)
2020/07/14 2020/07/24 2023/10/20 未発表
S1014 2022/07/12 2022/07/22 2026/07/31 未発表
S1012 2024/05/07 2024/06/14 2026/12/18 未発表
S1112 2026/07/14 2026/07/24 未発表 未発表

まずは今年の動きに注目してみましょう。既に過去の出来事なのですが、Power S914(9009-41A)の標準サポートは、今年の1月末をもって終了しています。このモデルを継続利用されている方は、延長保守サポートを契約する一方で、次期システムへの入れ替えを計画中のことと思います。まだの方は、急がれることをお勧めします。

なお、S914には別にマシンタイプ・モデル番号9009-41Gもあるのですが、こちらの方は9009-41Aに比べてGAが2年以上遅いことから、現時点で未発表ですが標準サポート終了もそれなりに遅いものと想定できます。両者はモデル番号末尾の違いから、前者を俗にAモデル、後者をGモデルと呼び分けています。技術的な違いはPCIeカードスロットの世代にあって、第3/4世代混在がAモデル、第4世代に統一されているのがGモデルです。

もう一つ気を付けておきたいのは、Power S1014の営業活動がつい先日の7月31日をもって終了したこと、さらにS1012の営業活動終了が年末の12月18日付けである旨が発表されたことです。S1012の営業活動は当面継続されるとは言え、Power10モデルを選択するべき明確な理由が無いのでしたら、より長い保守サービス期間が設けられるS1112を選択いただいた方が有利です。

この時に各モデルとIBM i バージョンの互換性が気になるところですが、これら3つのモデルに注目すると以下のとおりにまとめることができます。TR(テクノロジー・リフレッシュ)すなわち各IBM i バージョン用に提供されるPTFの集合体のレベルに違いがありますが、S1012とS1112をサポートするIBM i バージョンは共通であることがわかります。TRレベルに依存する制約が無くて、コストが大きく上振れしない限りは、敢えてこれからS1012を選択するべき理由は見当たらないように思います。

7.3 7.4 7.5 7.6
S1112 × 〇 TR12 〇 TR8 〇 TR2
S1012 × ○ TR10 〇 TR4
S1014 〇 TR12 〇 TR6

最後にIBM i の各バージョンのライフサイクルを確認しておきましょう。バージョン7.3以降に着目してまとめてみると、以下表のとおりになります。ちなみに7.2以前の全てのバージョンのサポートは終了済みです。

バージョン 出荷開始日
標準保守開始日
サービスレベル
の変更 *
延長サポート
終了日
追加延長サポート
終了日
7.6 2025/04/18 未発表 未発表 未発表
7.5 2022/05/10 未発表 未発表 未発表
7.4 2019/06/21 2026/09/30 2029/09/30 未発表
7.3 2016/04/15 2023/09/30 2026/09/30 2028/09/30
* 「サービスレベルの変更」は従来の「標準サポート終了」に相当する用語です。

注意しておきたいのは今年の9月一杯で、バージョン7.4のサービスレベルが変更される、すなわち標準サポートの提供が終了し延長サポートに入ることと、7.3の延長サポートが終了して「追加」延長サポートに入ること、の2点です。どちらにおいても継続的なサポートを得ることはできますが、出荷開始からそれぞれ7年以上・10年以上が経過しており、サポート契約されるお客様数も少ないので、料金が上がるのは致し方無いように思います。バージョン7.4については現行のSWMA料金が、基本と延長料金との合計で2.5倍に、バージョン7.3については現在3.5倍だった料金が4倍になります。早期に標準サポート中のバージョン、できれば最新のバージョン7.6へのアップグレードを検討いただければと思います。

ハードウェアであれソフトウェアであれ、メーカーであるIBMはIBM i に対する投資を継続しています。今年のこれまでのハイライトを挙げるとしたら、IBM Bobと今回取り上げた新モデルS1112といったところでしょうか。是非これらの最新テクノロジーを活用し、皆様のビジネスの発展に役立てていただければと願っております。

ではまた

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著者プロフィール

パワーシステム・エバンジェリスト

安井 賢克
やすい まさかつ

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社を経てベル・データ株式会社に入社。IBM 時代にエバンジェリストとして IBM i の優位性を社内外に訴求する活動を行う傍らで、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わりを論じる講座を担当しました。ベル・データ入社後も継続しているエバンジェリスト活動が米国 IBM にも認められ、2021 年以降 IBM Champion の称号を得ています。

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