IBM i ショップの最大の懸念はサイバーセキュリティからスキル不足へ
さて、それはいずれ起きることでした。毎年恒例のFortra社の市場調査「 IBM i Marketplace Survey」で、IBM i コミュニティにおける最大の懸念事項として、サイバーセキュリティは9年連続でナンバーワンの座を占めてきましたが、とうとうその座を明け渡すことになりました。注目されているこの調査で、サイバーセキュリティに取って代わったのは、IBM i スキルでした。これは、これまでは後ろに控えていたものの、今やIBM i リーダーにとって最優先課題とみなさなければならなくなっている問題です。
毎年恒例のFortra社の「 IBM i Marketplace Survey 」は、IBM i コミュニティでどのようなことが起こっているのかを示す大まかなバロメーターの役割を果たすようになっています。今年で12年目となるこの調査で最も注目されている質問の1つに、「Top Concerns(最大の懸念事項)」という項目があります(ここでは調査回答者は最大の懸念事項を5つ挙げることになっています)。2017年以降は毎年、セキュリティは、他のどの懸念事項よりも多くの票を集めてきました。しかし、今年ついに、IBM i スキルがセキュリティを上回りました。
「2026 IBM i Marketplace Survey」調査(Fortra社が2025年末に実施)に回答した315名の回答者のうち、69%が最大の懸念事項としてIBM i スキルを挙げました。これは、2025年版の調査の60%(懸念事項の第2位でした)からの大幅な増加です。2020年まで振り返ってみても、それぞれ、2024年は65%、2023年は54%、2022年は53%、2021年は46%、2020年は45%で、IBM i スキルは一貫してトップ5の一角を占めていました(それ以前は、2019年の49%、2016年の38%など様々でした)。
7年間で24パーセント ポイントの増加は、何かが起こっていることの明確な指標です。ここしばらくの間、組織がIBM i プログラマー、管理者、およびオペレーターの後継者を見つけるのに苦労してきたのは明らかでした。IBM i スキルが懸念事項のトップに躍り出たことは、実際、長年にわたって多くの業界関係者の間では認識され、話題に上っていたことが確かめられたと見るべきです。
データの裏付けがあるわけではありませんが、IBM i プラットフォームを象徴するのは、主にベビーブーマー世代だと言われています。ベビーブーマー世代は、1946年~1964年に生まれた世代を指すとされています。ということは、最も若いベビーブーマーが今年で62歳になり、社会保障年金の受給資格を得ることになります。年金受給額を増やそうと退職を遅らせた人も、いずれは受給することになるため、今後数年間は、退職の流れはおそらく加速するでしょう。
IBM i チーフ アーキテクトのSteve Will氏は、この調査結果に驚きはないと述べています。「このコミュニティは、ずっとこの問題に悩まされてきました。IBM i スキルは、他のスキルに比べて見つけづらいということです」と、Will氏は2026年版「 IBM i Marketplace Survey 」の調査結果をテーマにした Fortra社のウェビナー で述べています。「皆さんもご存じの通り、それが実情です。そのことが、このプラットフォームでできるだけ物事を簡単にしようとしている理由の1つです。」
迫り来るスキルの問題が、IBMによって 現在開発が進められている エージェント型AIテクノロジー、Project Bobを推進する1つの要因になっているとWill氏は指摘しています。「コンピューター プロフェッショナルを採用して、IBM i での仕事のやり方を教えるのは比較的簡単です」とWill氏は述べます。「そうしたテクノロジーは、このようなスキル不足という難しい課題で本当に助けになります。本当に求めているのが、このプラットフォームでの10年の経験を有する人材であるとしたら、おそらく難しい課題のままでしょう。しかし、学ぼうとする意欲がある優秀な人材が、このプラットフォームで仕事をするのを支援することができるツールを探しているのであれば、お望みのものをご用意できるのです。」
IBM i コミュニティは、このプラットフォームに若手の人材を呼び込むべく、協調して取り組みを行ってきました。そうした取り組みが実を結んだものもあります。ここ2年の COMMON によるPOWERUpカンファレンスは、老人ホームの外出行事のような 雰囲気ではなく 、春休みの米国の大学のような 雰囲気だった ということです。IBM i プラットフォームでは安定した良い仕事にありつけそうだ。そのような情報が広まりつつあるようです。ただし、できればもっと速いスピードで広まってもらいたいものですが。
注:
Fortra社は、2022年に「セキュリティ」を「サイバーセキュリティおよびランサムウェア」に変更しています。
Fortra社は、2023年に「サイバーセキュリティおよびランサムウェア」を「サイバーセキュリティ」に変更しています。
Fortra社は、2022年に「エンタープライズ システム管理ツールおよびSLA管理」を「ITおよびビジネス オートメーション」に変更しています。
Fortra社は、2022年に「AI(人工知能)」を「AI(人工知能)および機械学習」に変更しています。
Fortra社は、2026年に「AI(人工知能)および機械学習」を「AI(人工知能)、生成AI、および機械学習」に変更しています。
IBM i スキルの問題(実際は人事の問題です)には、そこから派生するいくつかの問題があります。IBM i 教育を提供している4年制大学は、あるにしてもわずかであるため、コミュニティ カレッジや技術専門学校が、一部のIBM i 教育の提供を担うようになっています。また、IBM i スキルに関するトレーニングは、Jim Buck氏の imPOWER Technologies社、Dan Riehl氏の The 400 School社、およびBill Hansen氏の Manta Technologies社のような、民間企業による養成コースでも受講することができます。オープンなフレームワークおよびデータベースとともに、Node.JS、PHP、およびPythonのような、オープンな開発言語への移行により、IBM i で稼働するアプリケーションを作成することができる開発者の供給源は拡大しています。
IBM i スキルの問題が前面に出るようになるのにつれて、セキュリティに対する懸念は後退しているようです。2024年版の調査で、過去最高の79%でピークを迎えた後、セキュリティ(または「サイバーセキュリティ」。Fortra社の最新の用語です)は、2025年には77%に低下し、2026年版の調査では64%へと激減して、62%の「アプリケーションのモダナイゼーション」にすぐ近くまで迫られています。
「セキュリティがナンバーワンでないというのは、ある意味、良かったのかもしれません」と、Fortra社のテクニカル サービス担当シニア バイスプレジデントのTom Huntington氏はFortra社のウェビナーで述べています。「それは、顧客がIBM i におけるサイバーセキュリティの問題に対処しているか、あるいは対処したように感じているということだからです。」
もちろん、IBM i 上に今も存在している現実のセキュリティ上の懸念事項を軽視してよいわけではないとHuntington氏は述べます。IBM i プロフェッショナルは引き続き、出口点、セキュリティ ログ、安全なファイル転送、ランサムウェア、ウイルス、および多要素認証に注意を払っておく必要があると彼は述べます。
「現実から目を背けていて、すべて上手くいくと思い込んでいてはなりません。これらの課題および脅威は常に変化しているからです」と彼は述べています。「しかし、顧客がこれらのテクノロジーを導入しているというのは喜ばしいことです。」
Fortra社の「IBM i Marketplace Survey Results」レポートは、 こちらでアクセスできます。ウェビナーの動画は、 こちらでご覧になれます。
また、セキュリティに対する懸念が後退したことは、IBMが多要素認証(MFA)(特に、昨年IBMがIBM i 7.6に導入した組み込みのMFA機能)に対して行った投資が正しかったことの証明にもなっています。「セキュリティは、私たちの最大の投資領域の1つです」と、IBM i 開発担当チーフ エンジニアのKris Whitney氏はFortra社のウェビナーで述べています。
Whitney氏は、ポスト量子暗号やデータのコピーを保護する必要性など、新たに生まれた懸念領域を強調しています。「多くの顧客は、データのエア ギャップ コピーという概念を採用し、それらのコピーから復元を行えるようになっています。これは素晴らしいことだと思います。そして今では、彼らは、そうした復元機能を自動化しています。IBM i は、それを行えるように上手い具合にお膳立てされているのです。」
「アプリケーションのモダナイゼーション」に対する懸念は、2025年末にわずかに増加し、最大の懸念事項の質問で62%を占めています。「ハイ アベイラビリティ(高可用性)およびディザスター リカバリー(災害復旧)(HA/DR)」は、47%まで減少しました。2017年以降で最低の値です。「コンプライアンスおよび規制」に対する懸念は、1パーセント ポイント増加して39%となっています。
「AI(人工知能)、生成AI、および機械学習」は、42%へと急増しました(リストの第5位)。これは、1年で12パーセント ポイントの増加です。過去2年では24パーセント ポイントもの大幅な増加です。Fortra社が懸念事項のリストにAIを追加した2021年の時点では、AIは7%のみで、懸念事項リストの最下位でした。
AIは他の懸念事項に対処するのを支援するため、AIテクノロジーが進歩するにつれて、AIはグラフの左側へと移動し続けるだろうと、小誌『 IT Jungle 』代表のTimothy Prickett MorganはFortra社ウェビナーで述べています。
「今後について言えば、AIは来年にはナンバー3になり、その後はナンバー2になるのは間違いないでしょう」と彼は述べます。「ほとんどの場合、スキル不足やアプリケーションのモダナイズに対処するのに役立てることができる、ずっと優れたAIツール セットを手にすることになると思います。すべてがまとまって好循環が生まれるのです。」
