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IBMi海外記事2024.08.08

フォートワースで漂ったIBM i に関する若さ溢れる楽観論

Alex Woodie 著

先月開催されたCOMMONの年次カンファレンスには、IBM i コミュニティが大挙して集まりました。もちろん彼らは、わざわざ蒸し暑い気候を求めて、テキサス州フォートワースまで車や飛行機でやって来たわけではありません。POWERUp 2024の参加者(総勢1,100名)は、このプラットフォームについて何か学ぼうとして、このイベントにやって来たのです。あえて言うなら「若い世代の時代」が始まりつつあるのかもしれません。

大事なことから始めるとすれば、まずは参加者数です。 COMMON では、1,000名ほどを目標としていました。春の年次カンファレンスの参加者数は、10年間のほとんどで、それくらいだったということです(ちなみに、秋のカンファレンスはより小規模なイベントです)。カンファレンスに実際に1,100名の参加者が集まったことは、COMMONの運営事務局にとって大勝利を意味します。フォートワース コンベンション センターという一流の大きな会場で、カンファレンスが盛大に開催されたということです(これまでに超満員の技術カンファレンスに参加したことがある方ならそう思われるでしょうが、大きな会場で多少ゆったり動ける余裕があるというのは悪いものではありません)。

しかし、予想よりも100名も多い参加者が集まったということは、IBM i の教育やスキルに対する需要が高まっていることの表われでもあり、これは喜ばしいことです。そして、確かなデータはないものの、POWERUp 2024の参加者は若い世代が多めのようだとコメントする参加者もいたようです。

カンファレンスには、お馴染みの顔触れも多かったものの、IBMのPower Systemsオファリング マネジメント担当バイスプレジデントのSteve Sibley氏は、多くの新たな顔触れにも目が留まったようです。

「辺りを見回せば、もちろん私のような年配者は何人もいます。しかし、新しい人もいます」と、テキサス生まれのSibley氏は、現場でのインタビューで『 IT Jungle 』に述べています。「新しい人たちがやって来るようになっています。そのことをきちんと示すことができる必要があるのです。」

5月20日月曜日の基調セッションが終わって最初に出くわした2人は、今回が初めてのCOMMONカンファレンスだったとSibley氏は述べています。「1人は1年前にIBM i を使い始めて、このプラットフォームが大好きになったそうです」とSibley氏は述べます。「もう1人は、新しい会社へ移ったばかりで、まさに今、IBM i を勉強中ということでした。」

Kisco社の呼び掛けによる、IBM i を使い始めた年にポラロイド写真を貼る企画。統計分析を行うまでもなく、古い世代と若い世代の両方が混ざり合っているのが見て取れます。

他のIBM i カンファレンスでも、若い世代の参加者が多めの傾向が見られると、COMMONの理事のMarina Schwenk氏は述べています。同氏はまた、あらゆる年齢の新規参入者をこのプラットフォームに温かく迎え入れるべく2年前に創設された、 New to IBM i (N2i)グループの共同創設者でもあります。

「今シーズンのカンファレンスでは、若く新しいIBM i プロフェッショナルの参加が増えています。WMCPAおよびNEUGCカンファレンスでは、どれくらい増えたか直に目にしました。そして、今年のPOWERUpカンファレンスでも、同じくらい若い世代を目にすることができて喜ばしい限りです」とSchwenk氏は述べています。

N2iおよび COMMON Education Foundation (CEF)はいずれも、このプラットフォームに新しい人材を迎え入れる上で重要な役割を果たしているとSchwenk氏は述べます。「学生やN2iプロフェッショナルにとっては、このプラットフォームでのキャリアの出発点となります。さらには、将来、成功を収められるかどうかの分岐点にもなるのです」と彼女は述べています。なお、N2iの運営は、Steve Riedmueller氏に引き継がれることになると彼女は付け加えています。

POWERUp Expoホールも、若々しい雰囲気に包まれていました。月曜日の夜のレセプションの際、Expo会場は、参加者でごった返していましたが、ベンダー53社(出展社数も予想以上でした)のブースの間の通路を歩き回る参加者の多くは、20代や30代であるように見受けられました。いつもは50代や60代が多いことからすると、大きな変化です。

RPGおよび開発をテーマとするセッションは、POWERUpでも参加者が多いのがいつものことですが、IBMのLiam Allan氏およびJesse Gorzinski氏がVS Codeについてプレゼンテーションを行ったセッションは超満員でした。VS Codeでデータベース拡張機能が利用可能になり、IBM i 開発者は、VS CodeでのDb2 for iへの接続を始めたくてウズウズしているようです。

VS Codeの隆盛が若い世代の動向にどの程度関係しているかについては、一考の価値があるでしょう。17歳の天才プログラマーとして、 若い世代によるIBM i 改革運動の代表格 だったAllan氏は、JavaベースのRDi環境に対する嫌悪感を声高に表明していました。ILE開発をVS Codeへ拡張した、彼のオープンソースのCode for i製品が爆発的な人気を得た後、IBMは賢明にも、Allan氏を常勤の開発者として迎え入れています。Gorzinski氏や他のアーキテクトとペアを組んでエンジニア チームを率いさせ、VS Codeを一級品に仕上げる任務を課しました。その任務は着々と進んでいるようです。

POWERUpでロデオマシンを乗りこなす若々しいカウボーイ(画像提供: COMMON)。

Fortra社の「2024 IBM i Marketplace Survey」によれば、VS Codeは、突如として現れて、IBM i IDEツール市場で 37%のシェアを占める までになりました(RDiは56%)。また、VS Codeは世界的にはナンバーワンのIDEでもあり、これも大事なことです。しかし、5年前に、ユーザーが無償のオープンソースのWebベースのIDEでフリー フォームRPGを書けるということが、IBM i の需要にどのような影響を及ぼすのだろうかと疑問に思っていたとしたら、答えは明らかになっているのかもしれません。

若い世代による改革運動は、迫り来るIBM i スキル不足の問題に対応するためには、まさにちょうど良い時期に起こったと言えます。ベビーブーム世代の退職による労働力人口減少の危機は現実のものとなり、IBM i およびSystem Zメインフレームの両方に影響が及んでいます。技術職の欠員を、「20年のRPG経験」、「SEUに習熟」といった、お決まりの項目すべてにチェックが入るような、同じく年配のプログラマーや管理者やアナリストを採用することで何とか凌いできた企業も、欠員補充に苦労するようになっています。

開発ツールの責任者であるIBMビジネス アーキテクトのTim Rowe氏にとっては、古いやり方が機能しなくなっていることは明白なようです。

「彼らは30年間、同じものを探し求めて、同じことを行ってきました」と、欠員補充しようとしているIBM i のショップについてRowe氏は述べています。「やはり、変えなければならないことがあるということです。環境、テクノロジー、物事のやり方が変わっているからです。IBM i での開発を1988年のように行う必要はなくなっているのです。」

また、正式なIBM i の教育プログラムの不足に対する取り組みに関して言えば、IBMは言葉だけでなく行動でも示しているようです。

何年もの間、IBM i を教えている大学は少数ながらもありましたが、最近では、その数は2校にまで減っています。ゲートウェイ テクニカル カレッジ(ウィスコンシン州ケノーシャ)と、セネカ ポリテクニック(カナダ、トロント)の2校のみです。しかし、IBMの、戦略的提携ソフトウェア パートナーシップ担当のディレクター、Gina King氏によれば、先日、 Power Skills Academy(ワークショップや、2年制および4年制大学を介してIBMテクノロジー カリキュラムの普及を図るIBMのプログラム)に、3校目となる大学が加わったということです。

POWERUp 2024会場の中央に位置するIBM i ブース。

「昨年より、私たちは COMMON Education Foundationと協働しており、また、 imPower Technologies社とも協働しています」とKing氏は述べています。「けれども、引き続き、重点を置いているのは大学です。ちょうど新たな大学が仲間に加わったところであり、IBM i カリキュラムがもうすぐ開講しようとしています。まさにこのIBM i カリキュラムこそが、私たちが積極的な展開を図ろうとしているものに他ならないのです。」

Real Vision Software社社長のMonty Chicola氏は、 母校のノースウェスタン州立大学(ルイジアナ州)に、IBM i のプログラムに加わるよう働きかけを行ったと『 IT Jungle 』に述べています。そうしたのは、数十年間、一緒に仕事をしてきたIBM i コミュニティにお返しをしたかったからだということです。

4年制大学がIBM i 教育プログラムの仲間に加わることは実に素晴らしいことではありますが、若い世代の躍動の多くは、大学の外側で起こっているようです。

一例を挙げるとすれば、5月20日のPOWERUpのオープニング セッションでは、 Kisco Systems社による、IBM i でのキャリアの支援を目的とする「Richard C. Loeberフェローシップ」の、第1期の受賞者であるCameron Stewart氏の表彰が行われました。 第2期のRCLフェローシップの応募期限は間近に迫っています。2年以上の職務経験のある方が対象で、受賞者には、Jim Buck氏の imPower Technologies 社によるRPGおよびIBM i 教育プログラムの無償受講や、POWERUpおよびNAViGATEへの無償招待といった特典が授与されるということです。

COMMONのイベントで感じられた若さ溢れる雰囲気は、今年の秋にも、味わえるチャンスが2回ありそうです。2つのNAViGATEイベントが予定されているからです。9月16日~18日にはフロリダ州ボニータ スプリングスで、11月4日~6日にはオンタリオ州トロントで、NAViGATEイベントが開催される予定です。なお、次回のPOWERUpは、2025年5月19日~22日、カリフォルニア州アナハイムのディズニーランド ホテルでの開催が予定されています。そこでまたお会いしましょう。

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