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IBMi海外記事2023.04.12

Db2 Web Query:単なる照会ツールではなく、それをはるかに超えるもの

Alex Woodie 著

Db2 Web Queryというのは、IBM i でブラウザからSQL照会を実行するためのツールに過ぎないと思い込んでしまうのも無理もないことなのかもしれません。結局、「Web」も「照会」も、名前として嘘をついているわけではありません。しかし、この製品名は、この多機能なアナリティクス アプリケーションの本当の姿を正しく伝えているとは言えません。IBM i のショップは、単に照会を実行するだけでなく、はるかに多くのことを行うことができるからです。

IBMのDoug Mack氏は、最新のバージョン2.4.0のアップグレードで、たくさんの新機能が加わった、Db2 Web Queryをテーマとする 先日のウェビナー で、こうした現実と思い込みとのギャップに取り組みました。長年IBMに在籍し、正式な肩書がTechnology Servicesグループ(旧Lab Services)の「Db2 for iコンサルタント」であるMack氏は、Db2 Web Queryの 事実上の プロダクト マネージャーです(ご承知の通り、名前を付けるということが、IBMの得意分野であったことはありません)。

Mack氏は、昨秋、ミズーリ州セントルイスで開催された COMMON NAViGATEイベントでの、Technology Servicesの同僚と、IBMの広報担当上級職員との会話を思い出しながら述べました。「広報職員がDb2 Web Queryについて尋ねていました。彼らは、その名前から、単なるQuery/400のブラウザベース バージョンであるに過ぎないと思い込んでいたということです」とMack氏はウェビナーで述べています。「本当に、機能のアピールが控えめ過ぎの製品名です。」

言うまでもなく、Query/400は、IBMが 2007年にDb2 Web Queryを発表する以前に、ほとんどのSystem i、iSeries、およびAS/400顧客が使用していた照会ユーティリティです。この製品は、長年にわたってミッドレンジ ボックスで提供され、結果として広く利用されるようになっています。しかし、旧式のグリーンスクリーン ツールと、はるかに新しいDb2 Web Queryとを見比べると、すぐに機能の大きな隔たりを見せつけられてしまいます。

Web Queryとを見比べると、すぐに機能の大きな隔たりを見せつけられてしまいます。 まず、Db2 Web Queryは、直接かそうでないかは別にして、Query/400の後継ではありません。実際、Db2 Web Queryはまったく異なる技術ツリーに由来します。Db2 Web Queryは、Javaで書かれ、元々はInformation Builders社(2020年に TIBCO 社が 買収 )によって開発されたWebFOCUSと呼ばれるビジネス インテリジェンス製品が全面的にベースになっています。IBMとTIBCO社の間のOEM関係は、買収後も継続しているため、Db2 Web Queryユーザーも潜在ユーザーも、一安心でしょう。

Mack氏によれば、Query/400が照会ツールであるのに対して、Db2 Web Queryは、それをはるかに超えるものだということです。同氏は、Db2 Web Queryを、IBM i でデータ ウェアハウスを構築し、ビジネス インテリジェンスおよびデータ アナリティクスの目的で使用するための本格的なプラットフォームであると説明します。

照会ツールと、ビジネス インテリジェンスおよびデータ ウェアハウジングとの比較
照会ツールと、ビジネス インテリジェンスおよびデータ ウェアハウジングとの比較
Db2 Web Queryは、単なる照会ツールではなく、それをはるかに超えるものです(画像提供: Doug Mack氏およびIBM)。

Mack氏によれば、単なる照会ツールと、アナリティクスまたはデータ ウェアハウジング ツールとで、違いが現れる来る機能がたくさんあるということです。まず、一般的な照会ツールでは、SQL照会を作成して、それらをサブミットする方法は提供されるかもしれませんが、それ以上のことは行いません。

「照会ツールを使用している場合は、基本的に、フリーフォームSQLステートメントを構築しているか、または、GUIにSQLステートメントを生成してもらっていることになります」とMack氏は述べています。「それを制御するためのメカニズムが備わっていません。暴走照会が発生するのはそうした環境です。」

一方、Db2 Web Queryは、より制御されたアドホックな環境を提供するとMack氏は述べます。それでも、ユーザーは自由に照会について作業を行い、レポートに表示される属性を変更することができますが、制御が放棄されるわけではないと彼は述べます。

同様に、照会ツールは、照会がサブミットされたら、照会の監視という点では、あまり行えることはありません。一方、Db2 Web Queryのような本格的なアナリティクス プラットフォームは、照会監視機能を備えています。

「照会ツールでは、実際、利用可能なものは何もありません。ただし、基礎となるデータベースで、プラン キャッシュのようなものを利用できるかもしれませんが、それをやろうとすると大変な作業になります」とMack氏は述べています。「Db2 Web Queryでは、およそ数十種類の組み込みのレポートが提供されているため、照会環境の管理に役立てたり、「最長照会を実行中なのは誰か?」のような質問への回答に役立てたりすることができます。

一般的な照会ツールと、機能の揃ったBI製品とを差別化するもうひとつの要因となるのが、セキュリティです。Query/400に組み込まれているセキュリティ機能はあまり多くありません。そのため、IBM i のショップでは、オブジェクトレベルのセキュリティを実装するか、または、出口点プログラムを使用して、データへの不正アクセスを防止する必要があります。

照会ツールと、ビジネス インテリジェンスおよびデータ ウェアハウジングとの比較
抽象化レイヤーの例:従業員データ
照会ツールと、ビジネス インテリジェンスおよびデータ ウェアハウジングとの比較
Db2 Web Queryの抽象化レイヤーは、一般的な照会ツールと比べた場合の重要な特長です。

Db2 Web Queryは、オブジェクトレベルのセキュリティや、行および列レベルのセキュリティなど、データベースに組み込まれているセキュリティ機能に自動的に準拠するとMack氏は述べています。しかし、この製品は、ユーザーがアクセスを許可されているオブジェクトのみにアクセスするよう制限する追加のセキュリティ機能を備えており、さらなるセキュリティの強化を図ることができます。さらに、Db2 Web Queryは「かなり読み取り専用に近い環境」だと彼は述べます。「それ相応の知識がないと、Web Queryでデータベースへ書き戻す方法を把握することは難しいかもしれません。」

しかし、照会ツールとビジネス インテリジェンス製品の最大の違いは抽象化レイヤーだとMack氏は述べます。Query/400のような照会ツールでは、データベース エキスパートは、基礎となるデータ モデルの複雑さに対応することが求められます。また、生のデータからすぐに使用可能なインサイトを抽出するのに必要なデータベース結合やその他のエンティティを作成できるようになるためには、深いSQLの知識も求められます。かなり自力勝負ということになります。

しかし、Db2 Web Queryの抽象化レイヤーのおかげで、そうした深いレベルのデータベースおよびSQLの専門知識は求められなくなります。「抽象化レイヤーでは、異なるアプローチが取られます」とMack氏は述べています。「ほとんど誰でもレポート作成者になることができ、しかも、そうしたデータ モデルの複雑さについて理解している必要はありません。」

Db2 Web Queryは、「シノニム」と呼ばれる抽象化されたデータ エンティティを使用して、基礎となるデータの複雑性からユーザーが守られるようにする支援を行います。他のプラットフォームおよびツールではメタデータと呼ばれていますが、Db2 Web Queryのシノニムは、ユーザーが、複雑で乱雑なデータ(たとえばDb2 for iのパック日付フィールドなど)を、たとえば自然数の日付など、技術系でないユーザーが理解しやすいデータへ変換するのを支援します。「データベースの複雑性は覆い隠されることになります」とMack氏は述べています。

しかし、それだけではありません。フィールドの操作、SQL照会の設計、およびダッシュボード、レポート、KPIの作成に加えて、Db2 Web Queryがよくある照会ツールとは違うことの裏付けとなる機能は他にもまだまだあります。

たとえば、この製品には、ユーザーがOracleまたはSQL Serverデータベースなどの外部ソース システムからDb2 Web Query環境へデータを移動する支援する、DataMigratorと呼ばれるETL(抽出、変換、およびロード)ツールが組み込まれています。新たなバージョン2.4.0リリースで、IBMは、DataMigratorをアップデートして、Db2 for iから、 AWS Redshiftまたは Snowflakeなどのクラウド データ ウェアハウスへデータをストリームすることができるようにしています。さらにユーザーはDataMigratorを使用して、Db2 for iデータをApache Kafkaなどのリアルタイム メッセージ バスにロードすることもできます。

Apache Kafka

「Apache Kafkaについて耳にしたことがないという方でも、これからは耳にすることになるでしょう。クラウド データベースやクラウド サービスも含め、ほぼすべてのターゲットに、ソースからのデータを統合する方法として、多くの人々が使用しているからです」とMack氏は述べています。

DataMigratorはあまりよく知られていないとMack氏は述べています。「DataMigratorは隠れた宝石です」と彼は述べます。「前述の通り、Web Queryは照会ツールではありません。Web Queryはビジネス インテリジェンスであり、インフラストラクチャーでもあります。DataMigratorは、そのインフラストラクチャー コンポーネントということになります。」

Mack氏は、新たなDesignerコンポーネントに対するアップデートなど、Db2 Web Query 2.4.0における他のいくつかの新機能についても取り上げています(発表された際に こちらでも取り上げています )。Designerコンポーネントにより、顧客がダッシュボードおよびレポートをデザインするのに従来使用してきたレガシーなInfoAssistツールとの機能ギャップが徐々に埋まりつつあります。

「今後何回かのリリースでも、Designerツールに対する機能強化が追加される予定です」とMack氏は述べています。「かなり新しい機能です。それは、Info Assistを通じてレポートおよびチャートを作成する、従来型の手法を置き換えるものではありません。むしろ、InfoAssistを補完する機能です。」

2.4.0でのもうひとつの大きな変更は、組み込みの機械学習モデルをDb2 Web Queryのデータに適用するInstant Insightsが追加されたことです。データ サイエンティストを雇用したり、SQLが大好きなデータ アナリストのデータ サイエンス スキルをスキルアップしたりする代わりに、Instant Insightsは、たとえばデータの自動クラスタリングおよびクラス分類など、機械学習の有用な機能のいくつかを、アナリストがすぐに画面上で利用できるようにします。

Db2 Web Queryは、今年で16年目を迎え、さらなる発展に向け準備が整っているのは明らかです。市場での競争を勝ち抜くためには、データおよびデータ アナリティクスはますます欠かせないものになっています。Db2 Web Queryのような有能かつ多面的なアナリティクス プラットフォームがあることが、IBM i のショップの強みになるのは間違いありません。Db2 Web Queryは、IBM i 向けの唯一のビジネス インテリジェンス ツールというわけでも、無償というわけでもありませんが、競争の激しい市場環境に身を置く方にとっては、導入を検討するネイティブなIBM i 製品の最終候補リストに残っているべき製品であることは間違いありません。

これまでに行った中で「最高のウェビナーかもしれない」と述べている、Mack氏の TechChannel のウェビナーの動画も含め、Db2 Web Queryおよびバージョン2.4.0の詳細については、Db2 Web Queryのサポート ページ( www.ibm.com/support/pages/ibm-db2-web-query-i)を参照してください。

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