IBM i に感謝を捧げるべき7つの理由
米国は様々な問題を抱えていますが、それでも米国人には感謝を捧げるべきことがたくさんあります。米国には、実に素晴らしい学校教育があり、強い米ドルがあり、そして世界の羨望の的となるテック業界があります。そして、我が国の人々の日々の暮らしの営みの中で、IBM i サーバーが果たしている役割は以前に比べて小さくなってはいるものの、それでも、このプラットフォームには、感謝を捧げるべき多くの理由があります。
来週、『IT Jungle 』は、感謝祭のため休刊となります。のんびり過ごして、七面鳥を頂きながら、何に対して感謝を捧げるべきか考えてみようと思います。そして、そのうちの1つが、IBM i であることは間違いありません。幸いなことに、前もって用意したリストがありました(ちょうど、感謝祭の集まりに義理の姉がいつも持って来てくれる出来合いのパイのようなものです)。
2022年の今、IBM i に感謝を捧げるべき理由としては、以下の7つがあります。
1.IBM i インストール ベース
IBM i のインストール ベースは、以前に比べると縮小しています。ある推計によれば、伝説的なIBM i の前身であるAS/400を稼働していた組織は250,000社あったということです。企業は年間支出額で数10億ドルを費やし、(貫禄ではかないませんが)売上高ではS/390メインフレームと肩を並べていました。
今日では、世界全体でIBM i を稼働している組織は100,000社に満たないとの見方が一般的です。確かに、多くの組織が、このプラットフォームから離れ、業界標準のプラットフォームまたはクラウドへ移っています。IBM i は、若手のテック リーダーたちから誤解され続けています。彼らはグリーンスクリーンIBM i アプリケーションを一目見て、プラットフォーム全体が負の財産であると思い込んでいるのです。
大丈夫です。このプラットフォームは、そこから離れないユーザーからのロイヤルティは盤石です。そして、彼らはこのプラットフォームを負の財産などではなく、その真の姿である、比類のないIT資産と捉えています。1対1対で比較してみれば、IBM i は総所有コスト(TCO)の点で、標準ベースのシステムに対して圧倒的に優位に立ちます。Windows Serverユーザーが、ウチの会社はWindowsで動いていると誇らしげに公言するのを最後に目にしたのはいつでしょうか。一度もないのではないでしょうか。
2.IBM i プロフェッショナル
IBM i プロフェッショナルは、IBM i を頼りに業務を運営している企業のために、明けても暮れても、雨の日も晴れの日も、一生懸命動き回る働き者です。このプラットフォームは、そのアップタイムおよびレジリエンスの高さが有名ですが、すべてを上手に回している有能な人材がいなければ何もできません。
IBM i プロフェッショナルは、ITの世界でも異色な存在です。日々の業務でマルチな能力を発揮しているからです。彼らは、開発者でもあり、ビジネス アナリストでもあり、オペレーターでもあり、IT消防士でもあります。「look at me」(得意顔のスペシャリスト)が主流のIT業界で、「フルスタック(マルチ スキル)」という言葉が最新の流行になる前から、IBM i プロフェッショナルはすでにフルスタックな人材でした。
しかし、退職するIBM i プロフェッショナルの後任探しがどれほど大変なことかと、数多くのIBM i のショップから声が上がっているように、当面は、人的資源もこのプラットフォームの大きな懸念事項です。IBM i プロフェッショナルは、このプラットフォームにおけるかけがえのない資源であり、真に感謝を捧げるべきです。
3.IBM i ユーザー グループ
IBM i コミュニティの強みの1つは、IBM i プロフェッショナルの結束を維持するのに一役買っている数多くのユーザー グループです。国内各地に散在する何十もの小規模なローカル ユーザー グループや、 OCEANのような大規模な地域的なユーザー グループ、そして COMMON や Large User Groupのような全国規模のユーザー グループもあります。米国外では、 COMMON Europe のようなグループや、日本のIBM i ユーザー グループ(旧称iSUC)が、大規模イベントや月例ミーティングを通じてIBM i コミュニティを結び付けています。
こうしたユーザー グループは、COVID-19パンデミックの時期には試練に見舞われました。対面式のミーティングや大規模イベントは中止せざるを得なかったからです。これらのグループの多くは、バーチャル イベントへと方向転換し、程度の差はあれ成功を収めてきました。Zoomミーティングにもメリットはありますが、優れた対面式のカンファレンスやミーティングから得られるメリットを全面的に再現することはできません。幸いなことに、これらのグループの多くはパンデミックを生き延び、対面式のミーティングを続けてきました。これは、コミュニティおよびプラットフォームの存続にとって極めて重要です。
4.IBM i の深い技術的ルーツ
IBMミッドレンジ サーバーは、かつて大手ERPベンダーのCEOに「 農場のマシン 」と評されたことがあります。これは褒め言葉ではありませんでした。もっとも、ミネソタ州ロチェスターのIBM Laboratoryの南側に広がる広大な農場の1人や2人の農場主の心は捉えたのかもしれませんが。
実のところ、IBM i サーバーは、ユーザーが望む程度に応じて、高機能なシステムとして使用することも、基礎的なシステムとして使用することもできます。確かに、そうしたければ、錆び付いた50年物の鋤のように扱うこともできますが、そのようなひどい扱いで酷使しても、IBM i サーバーは業務を処理し続けるでしょう。しかし、機会さえ与えれば、このプラットフォームは、地球上で最先端のアプリケーションを稼働することもできます。
今のクールな若者たちは皆、クラウドでコンテナ化されたマイクロサービスを稼働しています。おそらくこれが、コンピューティングの「未来の姿」なのでしょう。これらのコンテナ化されたマイクロサービス アプリケーション、Dockerコンテナ、およびKubernetesスケジューラーの間の相互作用については、基本的に視界に入っていないことは気しないでください。そうしたタイプのアプリケーション パフォーマンス問題の処理に当たらなくて済むように祈り、また、現時点では、どのような直接的なやり方であれ、IBM i とKubernetesを混在させる ことをIBMは計画していない という幸運に感謝するだけです。
いやむしろ、結局のところ、老犬には、若犬に教え込まなければならない巧みな芸が、まだいくつか残っているということなのでしょうか。単一レベル記憶システムのおかげもあり、IBM i のアーキテクチャーは並外れて強固です。どうやら、そのことが、かなりの上層部の 目に留まったようです 。2020年に彼らは、引退していたFrank Soltis博士に、スーパーコンピューターおよびAIシステムをどのようにスケーリングしたらよいかについて方向性を尋ねたということです。なるほど、このアーキテクチャーが60年の年月を重ねても、今なお健在であるのには理由があるのです。
5.新たなWebおよびモバイル アプリケーション
コードへの投資を保護することは、IBMとそのミッドレンジ顧客にとっては両刃の剣となります。このプラットフォームでは40年前に書かれたコードでも今なお 稼働することが可能です 。それはとりもなおさず、このプラットフォームでは40年前に書かれたコードが今なお 稼働しているということです 。どうやら、善い行いをすると、厳しく罰せられるようです。
IBM i サーバー上には、古いアプリケーションを動かしている古びたコードがたくさんあります。これは非常に困った状況です。実際、IBM i サーバーが、農場に(おそらくはあの錆び付いた古びた鋤の横に)置き去りにされるべき「レガシー」マシンだという認識が広まった原因は、おそらくは、そうした古いコードにあるのはないでしょうか。
それだからこそ、私たちは皆、新たなWebおよびモバイル アプリケーション開発に感謝を捧げるべきなのです。PHP、Node.js、およびPythonなどのオープンソース テクノロジーを採用して新たなWebおよびモバイル アプリケーションを開発しているIBM i のショップは、IBM i インストール ベースにとっての真の希望の光です。
そうした古いグリーンスクリーンRPGIIIプログラムをこの先も稼働し続けることはできますが、ユーザーや顧客は、おそらく、使い慣れている他のモダンなアプリケーションのように動作するアプリケーションで作業したいと思うでしょう。それだけでも投資する価値はあるはずです。
しかし、思わぬ展開も考えられます。こうした新しいテクノロジーを採用することで、若手プログラマーをこのプラットフォームに引き込みやすくなります。また、IBM i のショップには、そうした若手プログラマーを、次の世代で切に必要とされることになるマルチな能力を備えた開発者兼アナリスト兼オペレーターへと育てるチャンスが増えることにもなります。これなら、顧客良し、従業員良し、オーナー良しの三方良しです。
6.IBM i ベンダー コミュニティ
インストール ベースと同様に、IBM i の独立系ソフトウェア ベンダー(ISV)コミュニティは、この10~15年で少し縮小しています。システム ユーティリティやビジネス アプリケーションを開発・販売するソフトウェア ハウスの数は、かつてほどではありません。
しかし、粘り強く耐え抜いてきた中核となるISVのグループはまだ健在です。彼らは困難にも柔軟に対応し、2008年~2009年の大不況の時期にも、2020年~2021年のCOVID経済シャットダウンの時期にも諦めることを良しとしませんでした。信念を曲げることなく、優れたソフトウェアの開発や、堅実なユーザー サポートの提供を続けました。
統合・合併もあり、ISVの数は減りつつあるものの、ベンダー コミュニティには新世代のリーダーシップが現れています。コンピューター プラットフォーム全体の強さは、その最も弱い部分によって決まりますが、独立系ビジネス オーナーたちの熱心な取り組みのおかげで、ISVコミュニティはIBM i の世界における最も弱い部分にはなっていません。
7.IBM本体
IBMほど長く歴史に名高い沿革を持つ企業は、国内にほとんどありません。また、過去100年間にわたってITビジネスを牽引してきた企業は、IBMの他にはありません。
しかし、ストライプのロゴが象徴的なこの企業にとって、今は一番良い時期というわけではありません。IBMのクラウドの競合企業の評価額が1兆ドルを超えるまでに急増している( Microsoft社は一時2兆ドルを超えました)一方で、IBMは約1,290億ドルに留まっています。
競争環境の激化や、オンプレミス機器から移行する流れにもかかわらず、このニューヨーク州アーモンクの企業は踏ん張っています。IBMは、Power10プロセッサーなど、最先端のハードウェアを開発し続けています。Power10プロセッサーでは、X86チップ ベンダーには夢見ることしかできないようなメモリー帯域幅を実現しています。IBMは、29年連続して、発行された新規特許の数で世界をリードしてきました。2023年1月に次のリストが発表されますが、そのカテゴリーでIBMがトップを譲ると思っている人はほとんどいないでしょう。
確かに、IBM i プラットフォームに関して言えば、IBMは、何度か疑問符が付く決断をしたこともありました。しかし、全体としては、このプラットフォームを前進させ続け、生き永らえさせるためにIBMが行っている仕事は、称賛されるべきものであり、感謝を捧げるべきものと言わざるを得ないでしょう。