GoogleがIBM i クラウド サービス開始目前、とWill氏が発言
ありとあらゆるとことろで使用されているPowerチップ タイプのシステムの残念な点の1つに、Powerアプリケーション向けのパブリック クラウド サービスが不足していることがあります。LinuxおよびWindowsのユーザーにはX86ワークロードを稼働できるパブリック クラウドが数多くありますが、IBM i、AIX、またはPower Linuxワークロードをホスティングする機会は、いわゆるプライベート クラウドに限られてしまっています。しかし、IBM i チーフアーキテクトのSteve Will氏によれば、そうした状況は近いうちに変わるかもしれないようです。
Googleが同社のパブリック クラウドでIBM i を稼働するということに関しては、IBMもGoogleも公式には何も発表していませんが、2週間前にテキサス州サンアントニオで開催されたCOMMONのPowerUpカンファレンスで、Will氏はこれら2つの巨大IT企業の関係性について実に率直に語りました。5月20日日曜日に「Future of IBM i」と題して行われたパネル ディスカッションでWill氏は、GoogleがIBM i サービスの提供を「開始する目前」であり、公式発表に備えて常にニュースをチェックするようにしておいたほうがよいと述べています。
これは驚きではないでしょうが、ニュースではあるでしょう。IBMとGoogleが OpenPower Foundationを通じて協働し始め、2014年にGoogleが同社のパブリック クラウド オファリングにおいてPower8プロセッサーを採用し始めて以来、Googleは、そうしようと思えば、IBM i オペレーティング システムおよびIBM i ワークロードを稼働できるだろうとの憶測は常に流れていました(このような取り決めにおいて制約要因となるのは、技術的能力ではなく、ビジネス上の利害関係であることが多いようです)。
Google-IBM i コネクションの憶測は止みません。今年の春、この巨大Web企業は、自社のシステムをPower9チップで構築することに加え、IBM製の新たなPower9ベースのPower Linuxサーバーを採用することにより、同社のユビキタス サーチ エンジンを稼働している一部のX86サーバーを置き換えることを発表しました。
Will氏によれば、Googleに、検索エンジン ワークロードを稼働するためのPower Systemsサーバーの使用から、Google Cloud Platform上でビジネス ワークロードを本番稼働するためのPower Systemsサーバーの使用へと移行させることは、両社の継続的関係における次の一歩に過ぎないということのようです。
「Google CloudでのAIXまたはIBM i の稼働について、Googleはまだ何も公式に発表していません」とWill氏はパネル ディスカッションで述べました。「しかし、彼らはクラウド企業であるために、中堅および大企業からそのコンピューティング業務の一部を移管してもらうことを目指しています。そうするためには、i、AIX、およびzでそれを稼働させなければならないでしょう。ですから、ニュースの中で注目すべきことは、いつ始まるかという点なのです。」
大企業に、メインフレームワークロードをホスティングする可能性というニンジンをぶら下げて、彼らのプライベート クラウド プロバイダーのX86ワークロードも取り込もうとするようですが、『IT Jungle』でも長年に渡って非常に多くのマネージド サービス プロバイダー(MSP)から同じような話を聞いており、また、それはWill氏がPowerUpショーで繰り返し述べたことでもあります。
しかし、そうした商慣習は、現時点でメインフレームワークロードをサポートしているパブリック クラウド プロバイダーがないというそれだけのことで、どのパブリック クラウド プロバイダーも対抗できない商慣習となってしまっています。IBMは、先日、IBM Cloud Privateへと改称された同社のSoftLayerクラウドで、IBM i ワークロードをサポートすることさえしていません。もっとも、そこではIBM i バックアップ データをBLOBとしてオブジェクト ストアに保存することはできます。また、IBM i バックアップは、Amazon Web Services S3オブジェクト システムに保存することもできます。
しかし、IBM i データまたはバックアップ ファイルを保存することと、実際にIBM i ワークロードを稼働することは別物です。Will氏によれば、パブリック クラウド プラットフォームでのIBM i ワークロードの稼働に関するこれらの制約事項は変わりそうだということです。
「企業にクラウドを販売できるようになることを望んでいるパブリック クラウド プロバイダーとのミーティングの予定は何件か入っています(Google以外で)」とWill氏は述べます。企業にクラウドをもたらすことは「こうしたスマートフォ上で実行するゲームを開発しているのであれば結構なことです。そうした業務は、多数の小型のWindows(あるいはLinux)サーバー上で行うことができます。ビジネスを行いたいのならば、メインフレームを稼働しなければなりませんし、iを稼働しなければなりません。そういうものなのです。結局のところ、今から3年後、Amazonにiオファリングがあるかどうかは分かりません(私はそうなるのではないかと思っていますが)。けれども、Googleがそうなる目前であることは分かっています。」
翌日の『IT Jungle』とのブリーフィングの際に、3番目にメジャーなパブリック クラウドであるMicrosoft Azureが、ゆくゆくはIBM i が稼働できるもうひとつの場所になるだろうかとWill氏に尋ねてみました。具体的な話はしなかったものの、そのような会談が持たれたことがあることを彼はほのめかしていました。
「まだすべてをサポートしていないからと言って、そうするつもりがないという訳ではありません」とWill氏はパネル ディスカッションで述べました。「弊社はGoogleとパートナーを組みました。Googleは弊社と組みたいと思い、Amazonはそう思わなかったからです。GoogleはPowerでうまくいきそうですか。そう尋ねる電話がAmazonから掛かってきます。しばしばです」とWill氏は続けました。「クラウド プロバイダーが顧客のもとを訪ねると、顧客は『ウチのiを連れて行ってもらえるなら、ウチのPC周りのものをクラウドに入れてもよいのだが』と言います。すると、今度は、クラウド プロバイダーが私のところへやって来て『さて、おたくのiはどのようにすればクラウドに入れられるのですか』と尋ねます。ともかく、ありがたいことです。」