IBM iオープンソース担当ビジネス アーキテクトが描くプラン
エンタープライズ レベルのアプリケーション開発には、オープンソース言語の出る幕はない。信じられるでしょうか。これは、以前は衆知の事実とされていたことです。今となっては驚くばかりです。状況は変わりました。包括的なサポートやメンテナンスが利用できる、安定性のあるオープンソースのディストリビューションの数は、一般的に認識されている範囲をはるかに超えて増えています。大手企業、中堅企業、中小企業それぞれが、オープンソースを使用する相応の理由を見つけています。IBMでも、内部的な業務にオープンソースを使用しています。
読者の皆さんにとっても、オープンソースを使用するに値する理由があるはずです。
オープンソースに対する「大きなお世話だ」という反論にひるむ前に、現在、利用しているITが自分の業務のためにどう役立っているか、そして自分の業務にどういう影響を与えているかということに照らして、現状をよく見てみてください。そのITで先に進めますか?黒字化を目指しているときに、費用ばかりに目が行っていませんか。これらは単純な質問ですが、何度も自問自答してみるべき質問です。
「過去2年間、最大の新規開発分野の1つ、そしてアプリケーション開発の方法に影響を与える分野の1つは、オープンソースでした」と、オープンソースの提唱者であり、IBM iオペレーティング システム担当チーフ アーキテクトでもある、Steve Will氏は述べます。「i上のオープンソースについて議論している人々の数は著しく増えてきました。」
これは良い話であり、そして事実でもあります。しかし伸び率というのは、比較を始めたばかりで数が小さい時が一番良いものです。ほんの2、3年前なら、オープンソースに関心を持つIBM iのプロの人数は、スクールバス1台も満席にできないくらいだったでしょう。しかし、今では、IBM i OSS(オープンソース ソフトウェア) LinkedInグループには650人以上ものメンバーが参加しており、その他にも、IBM iオープンソースへの熱意の高まりを示す指標があります。5月7日~10日にフロリダ州オーランドでCOMMON Annual Meeting and Expositionの開催が予定されていますが、公式サイトのセッション ガイドonline session guideには、オープンソース関連のセッションが29件掲載されています。これは、Linuxのセッションを別にしても、カンファレンスの研修セッションの総数の10%近くに上ります。ちなみに、今年のLinuxセッションの数は、2016年のカンファレンスのLinuxセッション数より少ないようです。
Will氏がIBM iチーフ アーキテクトを務めてきた9年余りの間に、オープンソースを重要視する姿勢は着実に高まりました。昨年末、Will氏は、IBM iオープンソース担当ビジネス アーキテクトという新しい役職にJesse Gorzinski氏を選任しました。ビジネス アーキテクトという肩書は、技術と、IBMの業務や顧客およびパートナーの業務との連携に重点が置かれていることを反映したものです。オープンソース ソフトウェアは、以前は、アプリケーション開発およびシステム管理担当のIBM iビジネス アーキテクトのTim Rowe氏が担ってきた技術分野でした。
「プラットフォームの戦略は、より多くのオープンソースを取り入れることです」とWill氏は述べます。「オープンソースを従来型のアプリケーション開発から切り離すことは理にかなっていましたし、Jesseにはオープンソース分野の手腕があります。」
また、Gorzinski氏は、IBM i ISV Advisory Councilの共同座長も務めています。
「今日では、サーバー(たとえば、Apache HTTPサーバー)について話すにしても、(開発)言語について話すにしても、選択肢は多岐に渡ります」とGorzinski氏は述べます。「言語は、話題の中心的存在です。多くの関心を集めています。弊社のクライアントおよびビジネス パートナーは、これらの言語を活用して業務を行う方法を模索しています。」彼は、Webサービス、モバイル、およびその他のWeb関連技術を用いた、RPG、C、またはCOBOL投資のモダナイゼーションを例に挙げました。
「オープンソースを用いてRPGを活用できる新たな方法のおかげで、RPG開発が増加するケースがあります」と彼は述べます。「一般的に、モダナイゼーションを通じて行いたいことは、オープンソース言語およびフレームワークが提供するものと非常にうまく整合します。」
IBMの名誉のために言っておけば、IBMでは、DB2との通信を迅速化する、Node.jsおよびPythonからの統合ピースを提供してきました。また、スキルの面では、IBM iのショップが、RPGアプリケーションおよび関連するアプリケーション開発ツールをモダナイズする、大規模アプリケーション開発戦略への投資を増やしつつあることをGorzinski氏も認識しています。
「近頃では、ほぼ誰でもIBM iの開発者になれます。これこそが、それらの言語の大きなセールスポイントと言えます。学生たちは、そうしたオープンソースのスキルを身に着けて卒業してくるのです」と彼は述べます。「IBM i上でアプリケーションを記述している開発者の話では、オープンソース言語が利用可能でなかったら、そうはしていなかっただろうということです。Ruby、Python、PHP、Node、および最新のRPGは、RPG以外の開発者が理解できる言語なのです。」
Gorzinski氏は、IBM iのオープンソース ロードマップには鍵が3つあると述べます。
1つ目は、このプラットフォーム上で使用できるオープンソース技術を拡げ続けることです。特に、IBM iビジネスにとって最も有用となる分野においてです。2つ目は、クライアントやパートナーがそうした技術をさらに拡張および利用できるようにすることです。そのためには、おそらく、より多くの統合ピースの提供や、教育機会の拡充、および高レベルでのISVとの連携が必要となるでしょう。3つ目の鍵は、IBM iのオープンソース コミュニティを継続的に成長させていくことです。
IBMは、意見を聞くこと、助言すること、協働すること、優先事項を決めることを通じて、コミュニティにおける自身の役割を果たしています。
手の内はあまり明かしたくないようですが、Gorzinski氏は、Git(バージョン管理)、Perl、およびSQLiteに関して、近いうちに新たな発表があると述べています。
現在のIBM i開発コミュニティは、オープンソースのスキルはあってもIBM iのスキルはあまり持たないか、まったく持たない若い開発者よりも、新しい開発言語を学んでいるRPG開発者に関心を向けているようですが、Gorzinski氏はそれを、オープンソースがもたらす価値を認識している昔ながらのRPG開発者と、IBM iは初めてだが、IBM iシステム向けのコードの記述を学んでいる開発者との混在と説明します。
ある意味で、オープンソース開発は、Javaが初めてIBM AS/400開発の世界に食い込んできたときのことを思い出させます。当時、Javaは「外部の開発コミュニティ」でした。今では、新たな部外者集団に目を向ける部内者です。
「Java開発者たちは、ちょうど、かつてJavaに引き付けられたように、こうした新たなオープンソース言語に引き付けられているようです」とGorzinski氏は述べます。「その当時、Javaには、まさに最盛期を迎えたオープンソース スタイルのコミュニティがありました。JavaとRPGとの統合は大ブームとなりました。グラフ作成、レポート、およびWeb関連、すべてがJavaとの統合によって利用可能になりました。今、最盛期を迎えつつある言語は、PHP、Ruby、Node、およびPythonなのです。」
「Javaが大きくなった理由の1つは、企業が、Java開発者はますます増えると見て、そうしたスキルを業務に適用しようとしたからでした」とWill氏は述べます。「現在、我々が置かれているのは、それらの同じ企業が、最新の開発者および開発スキルを業務に適用することに関心を寄せているという環境です。Javaコミュニティは、RPGコミュニティと同様に、企業のニーズから成長したものなのです。
Javaコミュニティの100%が、新たなツールを受け入れ、それらを使う方法を学ぶだろうとは言いませんが、相当多くがそうすることでしょう。」
ビジネス プログラミングの将来は、1つの言語だけに依存することにはならないでしょう。どの言語を使うかは、タスクに最も適していて、メンテナンスが少なくて済み、サポートが容易かどうかという点で決められるようになるでしょう。