IBM iのトレンド、懸案事項、および雑感
IBM iのショップでは、一般の人には想像もつかないようなことが多く起きています。そして、実際のところ、一部のIBM iのショップは、他のショップの案件の内容を知ると驚くかもしれません。「IBM i Marketplace Survey」は、そうした外の世界へ向けて開かれた窓の1つとなるものです。この調査は、3年連続で実施されてきました。『IT Jungle』でも、この調査について、そして調査結果が示すトレンドについて注目し、報告を行ってきました。それは、風の中に立てた指のように、IBM iのショップが向かう方向を示す最良の指標の1つとなっているからです。
今年のレポートでは、驚くような点がいくつかあります。まずは、何といっても、懸案事項のリストで、セキュリティが1位となったことでしょう。1年前、セキュリティは5番目でした。これは、企業の警戒心が高まったということであり、また、ボックスに書かれた名前だけでリスクを意識しないで済むわけではなく、セキュリティの問題にはきちんと立ち向かう必要があるのだという意識が高まったということでもあります。調査結果をざっと見てみれば、起こりつつあるいくつかのトレンドが見て取れます。いくつかは予想できるものですが、いくつかは不意をつかれたかのように感じられるものもあります。中でも目立ったものとしては、モダナイゼーション プロジェクト、ハイ アベイラビリティー、外部ストレージ、Linux on Power、および労働力の高齢化に伴うIBM iスキルの減少などが挙げられるでしょう。
「懸案事項のリストの上位をサイバーセキュリティとハイ アベイラビリティーが占めていることから、IBM iのショップが抱えている課題および取り組みは、IT業界全般で共通しているものだということが見て取れます」と、この調査の著者で、HelpSystems社の技術ソリューション担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、Tom Huntington氏は述べます。IBM iのセキュリティに関連する懸案事項は、対前年比で倍以上に増加しました。その一方で、IT環境の計画立案の際に、ハイ アベイラビリティー ソリューションについて検討するという調査回答者は20%増えています。
先週、HelpSystems社が主催したパネル ディスカッションのウェブキャストで、Huntington氏と、IBMのエグゼクティブ、Alison ButterillおよびIan Jarmanの両氏と、『IT Jungle』のTimothy Prickett Morgan編集長とで、今回のMarketplace Surveyの調査結果について意見を交わしました。
「HelpSystemsでは、セキュリティが重要視されるようになったことは驚きではありません」とHuntington氏は述べます。「IBM iはセキュリティについて定評がありますが、セキュリティという点から見ると、システム構成が適切に行われていないケースも数多く見受けられます。」
IBM iのショップのセキュリティ上の弱点は、あまり大きく取り上げられてきませんでした。1つには、X86プラットフォームの弱点がさんざん叩かれていたことで、iには焦点が当たらなかったためであり、また1つには、IBM iがもともと極めて障害に強いという、長年抱かれてきた誤解があったためです。しかし、HelpSystems社の1部門であるPowerTech社が13年連続で実施した調査で指摘されるように、IBM iは実際には格好の標的です。セキュリティの専門家の指摘によれば、IBM iは極めてセキュアにすることができますが、システムのセキュリティを確保する機能を適用するには、知識豊富なセキュリティ担当者が必要になるということです。こうした指摘が浸透してきているのかもしれません。あるいは、セキュリティを最大の懸案事項のリストのトップに押し上げるほど、攻撃が巧妙化されてきているのかもしれません。
最大の懸案事項のリストで、セキュリティのすぐ後に続くのは、ハイ アベイラビリティー(HA)です。
「今日のようなモバイル アクセスとソーシャル メディアの時代では、セキュリティは、どのプラットフォームでも、ほとんど誰にとっても最大の懸案事項になります」と、先週のウェブキャストの中でButterill氏は述べています。その一方で、「HAは、24時間365日稼働しているあらゆる企業にとって極めて重要です」とも付け加えています。
Marketplace Surveyが示すところでは、年々、HAの採用は漸増しているようです。昨年とそれ以前の年とを比べてみても、劇的な変化が見られるわけでもありません。しかし、Butterill、Jarman、Huntingtonの3氏は、HAの採用が今後急増していくと、意見が一致しているようです。
Butterill氏が述べたような、24時間365日稼働する組織はますます増えており、調査データによれば、IBM iのショップのおよそ50%はHAを備えていません。それに加え、可用性に対して関心が高まっていることを示す調査回答は20%増で、HAの導入については平均を超える増加のようです。これは、サービスとしてHAを提供するマネージド サービス プロバイダーにとってビジネス チャンスなのかもしれません。企業が社内でHAを処理することを望むのか、外注化したほうがよいと考えるのかについては動向を見守る必要があるようです。
Marketplace Survey参加企業の75%以上は、どのような形であれ、外部委託はまったく検討していないと答えているようです。この割合は、調査開始以来、変わりありません。
続いて最大の懸案事項のリストの第3位と第4位は、アプリケーションのモダナイゼーションとIBM iのスキルです。回答者の半数が、モダナイゼーションを最大の懸案事項に挙げており、また、一定のIBM iスキルを備えた新しい人材を見つけることは、数年に渡って1つの懸案事項となっていました。この点は、今でも回答者の40%以上にとって悩みの種となっているようですが、見たところ、ワークロードをマネージド サービス プロバイダーに外部委託することを検討するまでには至っていないようです。とりあえず、今のところはそのようです。
マネージド サービス プロバイダーは、一般には別個のデータセンターを利用するオフプレミスの選択肢とみなされていますが、ますます広まりつつあるスタッフ不足やスキル不足の問題の解決を支援するサービス機能の拡充を図ろうとしている独立系ソフトウェア ベンダー(ISV)も現れています。Huntington氏は、HelpSystems社がマネージド セキュリティ サービスを保持してきたのは、まさにそのためだと指摘しました。
最大の懸案事項として、IT支出の減少を挙げる回答が約30%ありました。これについては、Prickett Morganが注目し、一般的に、そして特にIBM iのショップにおいて、IT支出が減らされるに至る様々な要因を指摘しています。
「Power8世代の間に、処理能力は安価になりました。メモリー、ディスク、フラッシュの価格は下がっています。パーティションを利用する人が多くなり、自分で確保している容量または必要に応じて利用できる容量をうまく使い分けるようになっています」と彼は述べます。「さらに、IBM iプラットフォームは、他のプラットフォームと比べて、管理に必要な人員が比較的少なくて済むという定評があります。そのため、資源のほとんどは、モダナイゼーションやサードパーティ ソフトウェアの微調整といった、アプリケーション開発に向けられます。それでも、どれくらい支出を削減できるかについては、限界があります。」
2016年の調査における最大の驚きの1つは、Linuxがもたらしている変化でした。Linux on Powerは、昨年、調査に参加したショップの4.7%で導入されていました。今年は、その割合が9.1%へと急増しています。
「Windowsベースが減少していることに気付いている人は多くないと思います」とPrickett Morganは述べます。「数年前、X86プラットフォームでは、Windowsが75%、Linuxが25%の割合でした。それが今では60対40付近であり、65対35へ近づきつつあります。Linuxはすさまじい勢いで成長しています。理由の1つには、Linuxプラットフォーム向けに書かれたオープンソース ソフトウェアの採用が増えていることがあります。Linux on Powerの成長が後押しになっています。IBMは、Linuxがある程度の売上増加の牽引力になるべきだと確信していました。そうなることにより、IBMのビジネスの中の収益性の高い、成長分野であるプラットフォームにAIXおよびIBM iが存在できるわけです。それは誰もが望むことなのです。」