IBM i市場の現況と展望
Dan Burger 著
我々はIBM iの市場を分析した信頼できるデータをいままで見つけることができませんでした。しかしながら先月ご紹介したとおりHelpSystems社がIBMのミッドレンジのショップを対象に調査を実施し、その概要が公開されて市場の実態を垣間見ることができました。
今回はその概要に続いて調査結果のすべてが公開されたので以下のとおり市場の実情をご紹介してこの先を展望します。
弊社Guild Companies, Inc.(Webサイト名IT Jungle; http://itjungle.com/)は、IBM iコミュニティーの動向、向かっている方向、コミュニティーが抱いている懸案事項を明らかにするべく、テーマと質問を選択してHelpSystemsのレポートの作成を支援しました。内容はIBM iのコミュニティーがいま考えていること、及び行動をおこそうとしていることの双方を数値で表します。テーマにはモダニゼーション、ハードウエアとオペレーティングシステムのアップグレード、データの増量、ITイニシアティブ、スタッフと従業員のダイナミクス、コミュニティーがIBM iの将来に関して感じていることなどが含まれています。
HelpSystemsは、このレポートの表題を2015 IBM i Marketplace Survey Resultsとしています。
我々は市場の現状及び向かっている方向を示している価値の高いデータであると確信しています。組織の長期的な成功は責任者がいかに上手く将来のシナリオに対応した戦略を樹立するかに密接に結びつくと考えれば、このレポートは方向を定めるのに役立つことができる多くのツールのひとつです。ロードマップではありませんがトラフィックパターンを提供するものです。この調査に参加したショップと自社の職場を比較することが良い出発点になると思います。
この調査の回答者の約半分は2台~5台のPower Serverを使っているショップです。
約40パーセントが一台のサーバーで運営しています。ほぼ3分の2がIBM iの7.1を使っており、4分の1が6.1を使っています。60パーセント弱はPower7サーバーを稼働させており次いでPower5が多く使われています。従業員の数は、500人あるいはそれ以下が合計の44パーセントを占めており、500人以上1,000人以下が15パーセント、1,000人から5,000人以下が28パーセント、5,000人以上が18パーセントとなっています。
次にこの調査で確認された幾つかのトレンドに目を向けてみます。
最大の懸案事項
これらの懸案事項は、ITの目標を達成させるための能力に影響を及ぼす要素が含まれる重要なプロジェクトの優先順位よりも実際は上位に置かれる事項です。その事項の最上位はアプリケーションのモダニゼーションです。アプリケーションのモダニゼーションをリストの最上位に置いているショップのパーセンテージに加えて、その数字はモダニゼーションの意識に奮闘しているアプリケーション開発のベンダーたちと長い間この投資を決断しなかった顧客たちが究極的に投資に踏み切ったことによってこのビジネスが成長していることを立証するものです。アプリケーションのモダニゼーション市場がいかにヒートアップしているかの指標からアプリケーションのツールベンダーと変更管理ベンダーとの最近のパートナーシップ活動が覗えます。両者はグラフィカル・ユーザー・インターフェースを越えて現行のビジネスロジックの変更を含む開発に向かって備えています。もし、両者がモダニゼーションの活発化を認識していなければパートナーシップが相次いで生まれることはなかったと思います。
懸案事項リストで首位を競って注意を引くのはハイアベイラビリティーです。これは、現在の企業においてはダウンタイムが許されず、また事業継続が重要なアプリケーションとデータ資産の保護に依存する認識が強まっており、企業がWebとモバイルアプリケションに頼っている事実を示しています。IBMはバックアップシステムを容易に構築できるよう廉価で提供しています。またIBMは最近、管理サービスプロバイダーにインセンティブを与えて顧客にバックアップを提供することを推進しています。この種の製品は市場の指標と現況のリアクションに位置づけられます。
モダニゼーションとハイアベイラビリティーといったプロジェクトは、多くのITスタッフの現況の能力とレベルを越えたスキルが要求されます。ITスタッフの現在の能力はWindowsとUnixのショップのスタッフに比べると非常に低いレベルの状態です。ショップが少数のスタッフであり、またトレーニングの予算が最少あるいは皆無であるところから、ITの目標を達成するためにはISVあるいは独立コンサルタントの起用を余儀なくされています。49パーセントの回答者がIBMスキルの枯渇を懸案事項の三番目に挙げていることからこの全体像が浮き彫りになっています。
その他、高いランクに挙げられている懸案事項は、モバイルアクセス、データ量の増加及び絶えず迫られているIT費用の低減目標の一方で事業目的を達成しなければならないジレンマです。IT費用を低減しながら優先度の高い業務を遂行することのパラドックスを調査回答が明らかにしています。ITの目標を達成しつつある人々は、自分が成長しており、また真の優先事項が何であるかを理解している人々であることを示しています。すでに実装されているプログラムについての質問に対する回答は、最も多く達成されたプロジェクトとしてSQLデータベースアクセスを挙げています。SQLデータベースアクセス実装の高い数字は、データベースのモダニゼーションが、懸案事項のトップになぜか不思議にも現れていない優先事項であることを示しています。他のプロジェクトで「既に実装済」と回答されたものはアプリケーションモダニゼーション、従来から広く使われてきたQuery/400を超えたアナリティカル・インテリジェンス、及びドキュメント管理です。また調査は実装が最も少ないのは現時点でクラウドコンピューティングであることを示しています。
なお、この調査に参加したIBM iのショップの90%がこのプラットフォームが他のサーバーに比べて投資に対する見返りが大きいことを確信しています。
IBM iの将来展望
IBM iの支持者にとって、この調査は快いニュースとなっています。すなわち近い将来にこのプラットフォームを手放す計画を持っている組織は無いことを明示しています。90%の組織は現状維持です。ただ、このことは議論されるべき余地を残しています。すなわちこのプラットフォームは近代のコンピュータ環境には居場所の無い恐竜であると考えているのか否か、そしてそれから脱出しようとしているのか否かということです。ほぼ4分の1が他のプラットフォームへの移行が過去に話題になったが現在真剣に取り組んではいないと答えています。そのグループはIBM iが最善の選択であるとして満足しているのか、他のプラットフォームへの移行が単にリスクが大きいということで現状を維持しているのかは不明です。
マイグレーションの質問で明らかになったのは、もし過去に移行が決まっていればWindowsであったと68%が答えていることです。この事実はIBMのPower Systems部門にとっては危険信号です。IBMはPower上のLinuxに巨額の投資を行っており、Windows のワークロードをLinuxに移行しています。しかしながら約60%のIBM iのショップが自社の組織ではLinuxを稼働させないと答えています。IBM iと並行してPower上のLinuxを稼働させることを考えていると答えたのはわずか6%です。
最後の質問は投資に対する利得についてです。
94パーセントがIBM iは他のプラットフォームに比べて優れたROI(投資収益率)を提供してくれると確信しています。この調査に参加した人々の最も真実の指標であるかもしれません。これらの人々はIBM iプラットフォームのいわば熱狂者です。彼らが言っていることはIBM iに対する偏見ともいえます。これが十分な情報と教育された知識に基づくものか、他人の物よりも自分の物が良いとする偏狭な考えに基づくものか議論の余地があります。しかしながら最もビジネスコンピュータに忠実なプロフェショナルたちから生まれている偏見であることは事実です。彼らの実装と懸案はIBM i中心の大局観から生まれています。このプラットフォームに対する偏見を持っている人々によって大きく変わるものではなく、また非IBM iの大局観に姿を歪めるものでもありません。
この調査結果の全てはthis linkからダウンロードできます。私は氷山の一角に刻み目を付けたに過ぎません。このレポートの中にはIBM iのショップに携わる人にとって有用な情報がたくさん有ります。IBM iのショップでいま起きていることについての証を提供したいと考える人々、何を成し遂げることができるかについて揺るぎない主張を構築しようとしている人々、いまIBM i上で達成しつつある人々はこの資料を活用するべきです。なぜ企業はIBM iで走るのかについて疑問が生じたときこの資料はIBMが提供する何物にも優る、統計としての証を提供してくれます。