IBM、ハイブリッドのクラウドインフラで首位
IBMはハイブリッドとプライベート双方のクラウドのインフラ提供者として、2014年度における世界ランキングで首位となりました。最新の調査はIBMにおけるクラウドのインフラ事業がクラウド市場と同じペースで成長していることを示しています。しかしながら、インフラ提供に限定せずクラウドを総合で見た場合は業界で絶対的な力を持つAmazon Web Serviceと、成長著しい新興のMicrosoft Azureに大きく水をあけられての三位です。
IBMは自社の将来における重要な事業としてクラウドに注力しており、買収したSoftLayerクラウド部門と自社のGlobal Servicesグループが運営するデータセンターの構築に昨年12億ドルの投資を行っています。SoftLayerは現在データセンターを全世界に広げて40センターを運営しており、それらの全てが大都市の中心地に設置されているので利用する企業と消費者の密度が高い状態です。IBMは競合者たちよりも多くのデータセンターを保有しています。しかしながら、Amazon Web Service (AWS)とMicrosoftのクラウドは、コンテンツ・キャッシング機能の広大なネットワークを構えているので各々のクラウド上で稼働するアプリケーションの待ち時間が短くなっています。なお、IBMはBlueMixプラットフォームのクラウドソフトウエアに10億ドルの投資を行いました。このソフトは以前VMwareによって制御されていたオープンソースCloud Foundryプラットフォームのパッケージです。IBMは、オープンソースのApache Webサーバーをベースにして拡張したWebアプリケーション、WebSphereが過去15年間に示したような高収益をこのソフトウエアに期待しています。なお、IBMは長期を期間とするクラウドサービスの契約を40億ドル以上大企業と成約していることを明らかにしました。この成約額はSoftLayerの買収が一部寄与しています。SoftLayerは自身のSaaSアプリケーションを120種類以上持っており、2014年にクロージングされたときクラウド関連の収入は70億ドルの目標を達成していました。
Synergy Research Groupはクラウドのプロバイダーを収入と成長率でランク付けして調査レポートを発表しました。AWSは全世界における50億ドルのクラウド市場でマーケットシェア30%弱を占めて、5年来のシェア更新を行いました。Synergy Researchの算出はインフラストラクチャー・クラウド、プラットフォーム・クラウド、プライベート・クラウドのハードウエア、ソフトウエア、及びサービスが対象になっています。以下は、Synergy Research Group が発表した2014年第4四半期におけるクラウド・インフラサービスのマーケットシェアです(IBMがクラウドの数字に入れているSaaSは含まれていません)。
Synergy Researchによれば、2014年通年でクラウド・インフラサービスの全市場は48パーセント伸びて、全ベンダーによる総収入は160億ドルとなっています。
AWSが28パーセントで首位、Microsoftが10パーセント、IBMが7パーセント、Googleが5パーセント、Salesforce.comが 4パーセント、Packspace Hostingが3パーセントの順になっています。MicrosoftとGoogleが市場の成長率よりも大幅に高い成長率を示し、AWSとIBMは市場の成長率とほぼ同率です。
Synergy ResearchのチーフアナリストJohn Dinsdaleは「クラウドの導入に対する多くの現実の障壁や、予想されていた障壁は現在取り除かれ、AWSとMicrosoftによって築かれてきた勢がとりわけ貢献して、世界市場は強い成長軌道に乗っている。AWSとMicrosoftは過去にない大規模なサービスのポートフォリオを充実させたこと、及び2014年上半期に見られた熾烈な価格競争が落ち着いたことがプラス要因になっている」と説明しています。
IBMがPowerベースのマシーンにどのようにクラウドのインフラをマーケティングして行くか明確ではありませんが、これは年度計画の事項でしょう。IBMは顧客が自身のアプリケーションをデプロイできるパッケージソフトを発売する前に、クラウドにおけるPowerベースのサーバー・スライス上で稼働するWatsonコグニティブ・コンピューティング・アプリケーションを本格展開してきました。技術的に言えば、X86サーバーで稼働させることができないWatsonソフトウエアスタックは有りません。しかしながら、IBMはWatsonソフトウエアを稼働させるには、Power8システムの高いスレッドカウントとメモリー帯域幅がX86マシーンよりも適していることを強調しています。IBMは2014年の下半期にこれらのパッケージスライスを出荷し始めており、早期に導入した一部の顧客はSoftLayerデータセンターの特定された番号のマシーンにアクセスすることができました。
いま明らかになっていないのは、IBMはどのオペレーティングシステムとハイパーバイザーをSoftLayerクラウドの中のPowerベースシステム上でサポートするのかということです。PowerKVMハイパーバイザーはLinuxしかサポートしませんが、PowerVMハイパーバイザーはIBM i、AIX、及びLinuxをサポートします。SoftLayerの自社製クラウドコントローラーがOpenStackとKVMに繋がることを考えれば、LinuxとPowerKVMのサポートは明らかにスタートポイントであり、最も容易な出発点です。
しかながら、もしIBMがエンタープライズ分野の顧客に向けて真のハイブリッドコンピューティングを提供したいと欲するのであれば、最終的にはIBM iとAIXに向けた従量制のクラウド・インフラストラクチャー・サービスを提供しなければなりません。もちろん、この分野の市場をこれら2種類のIBMオペレーティングシステムに向けて地味にホスティングとクラウドビジネスを構築してきた種々のパートナーに譲ろうとしないのであれば、の話です。IBMより早くIBM iクラウドとAIXクラウドを構築していたビジネスパートナーを逆撫ですることなくこのビジネスを推進してゆくのは、IBMにとって繊細な神経を要するところです。IBMが進む道はIBM iとAIXのクラウドにどれくらい強い需要があるかに大きく依存します。他の選択肢はデータセンターで稼働するプロダクション・ワークロードのバックアップとディザスターリカバリーだけに留まるか、顧客のアプリケーションのありきたりのホスティングに留まるかです。
Rackspace Hosting社は、ライバルのSoftLayerがインフラストラクチャー・クラウドでPowerシステムによって何をしようとしているのかを静観してはいません。このホスティングとクラウドのプロバイダーはOpen Compute Projectに向けて設計し、寄贈するPowerベースのシステムの構築をコミットしています。内部的にクラウド上で使用しOpenStack クラウドコントローラーと統合します。RackSpaceは2010年7月NASAと共同でOpenStackに着手しました。RackSpaceがIBMを出し抜いてPowerベースのクラウドでマーケティングを行うことはいわばクーデーターです。Rackspaceがそのクラウド上でAIXとIBM iをホストすることなど有り得ないように思えます。しかしながら、思いもよらぬことが起きました。
ハイブリッドクラウドに関してふたつの異なる考え方があります。ひとつはプライベートのデータセンターとパブリッククラウドの分離を越えたアプリケーションの動きです。他のひとつは、パブリッククラウドを支配しているLinuxあるいはWindowsを稼働させるX86システムだけではなく、企業が自社の選択したシステム上にアプリケーションをデプロイできるアーキテクチャーをミックスして持つことです。双方がハイブリッドに関る事項です。IBMはこれを理解し、Rackspaceも明らかにこれを理解しています。