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IBMiコラム2026.09.17

IBM i のウンチクを語ろう:その123
- BobにIBM i の今後を相談してみたら -

安井 賢克 著

皆さん、こんにちは。今回はユーザーとしての立場から、IBM BobにIBM i の今後について相談してみようと思います。Bobと言うと開発支援ツールといった側面に注目が集まりがちですが、備えているスキルはかなり幅広いものがあります。そこで多くの方が抱きがちな疑問や懸念を、そのままBobに投げ掛けたらどのような回答が返ってくるのかを見てみようというわけです。果たして説得力あるアドバイスをくれるのか、IBM i に関する理解という裏付けはあるのか、興味ありますね。

相手を評価してやろうという少々高飛車な発想ですが、IBM i に関する知見という点において、今回の相手はかなりの「強敵」です。いわゆるBobベース・モジュールという基本機能に加えて、Premium Package for i というIBM i のエキスパートのスキルが追加注入されています。ある程度のRAG機能も備えていて、限定的ながらIBMの各種ドキュメントを読みに行くことができますので、知識量においては勝負にならないでしょう。

敢えて何の条件も付けずに漠然とした問いを投げ掛けてみて、どのような反応が返ってくるのかを見てみたいと思います。使ったことのある方はご存知と思いますが、Bobには何種類かのモードと呼ばれる人格のようなものがあり、それぞれに得意技が割り当てられています。その中の一つにPlanモードがあって、IT関連の計画作りに役立てることができるとされています。あらかじめBobをこのモードに設定して、早速試してみましょう。

現在IBM i 搭載のPower S914を使用しています。次のサーバーを考えたいのですが、どうするのがお薦めですか?

BobはIBM i のハードウェア移行・次期サーバー選定に関する技術相談を受けたと認識して、「create-plan」、言わば計画策定という名のスキルを使うと宣言します。スキルとは何なのか説明を読んでも当初はなかなかわからなかったのですが、Bobが持っている参考書だと思えば良さそうです。要件を十分に見極めるまでは先に進んではいけない、から始まり、回答に根拠の無い情報を含めてはいけない、に至るまでの数多くの心掛けが規定されています。Bobの反応はこれに沿ったものになるようです。

Bob

現在の Power S914 の利用状況や移行の背景を教えてください。どのような観点でご検討されていますか?

  • 現在の S914 がリース/保守期限を迎えるため、次期機種を選定したい(コスト重視)
  • ワークロードが増加しており、パフォーマンスアップグレードを検討している(性能重視)
  • クラウド(IBM i on Cloud / Power Virtual Server)への移行も含めて幅広く検討したい
  • HA(高可用性)構成や DR 対策の強化も視野に入れている

いきなり回答を返すのではなく、まずは現状把握に努めようという姿勢は好ましいものがありますね。ここはハードウェアの製品寿命を理由とするシンプルなマシン置き換えを想定して、一番目の選択肢を選んでみます。なおS914は2018年に登場したPower9世代の古いモデルですから、搭載されているIBM i バージョンの保守終了日も考慮しなければなりません。このあたりも忘れることなく見極めようとするのか、チェックしたいと思います。

Bob

ありがとうございます。リース/保守期限によるハードウェア更改ですね。もう少し詳細を確認させてください。現在の S914 の構成規模を教えていただけますか?

  • CPW(処理能力)は比較的小さい(S914 の最小構成に近い)/ユーザー数も少数(~20名程度)
  • 中程度の構成(S914 の中間モデル)/ユーザー数は 20~100 名程度
  • S914 の上位構成(Core 数が多い)/ユーザー数は 100 名超
  • 詳細な構成は把握していない/IBM i のライセンスのみ把握している

システム規模によって検討内容も異なってくる、と理解しているようです。ここは典型的パターンとして一番目の選択肢「最小構成に近い」を選びます。さらに2回ほどやり取りを続けた結果、Bobは以下のとおり私が選択した内容をまとめてくれました。もちろんこの部分は実際の案件毎に違ってくるはずです。

Bob
項目 内容
現行機 PowerS914(最小構成に近い)
ユーザー数 ~20名程度(小規模)
OSバージョン IBM i 7.3 以前
アプリ スクラッチ開発(RPG/COBOL 等)
移行理由 リース/保守期限
検討方向 PVS(クラウド)も含めて検討

そのまま作業を進めてもらうと、提案内容がメリット・デメリット共に示されます。提案された選択肢は、オンプレミスの後継機Power S1014か、IBM Power Virtual Server(PVS)へのクラウド移行の二つでした。そしてどちらにおいても、IBM i バージョン7.3のサポート終了(EOS)が2026年9月であるために、IBM i 7.4または7.5へのバージョンアップは必要であることを指摘します。細かいことを言うならば、バージョン7.3の標準サポートは2023年に既に終了していて、2026年9月に終了するのは延長サポートです。このあたりはちょっと言葉足らずですね。

各選択肢のメリット・デメリットは、オンプレミスとクラウドの一般的な比較になっている点にも注目したいと思います。ざっくりとしたものではありますが、ここに指摘されているポイントは使いまわしができそうです。

Bob
選択肢 A:Power S1014(オンプレミス後継機)
S914 の直接後継機です。小規模 IBM i 環境向けに設計されています。

メリット

  • S914 からのデータ移行が最もシンプル
  • 初期コストの予測がしやすい(購入 or リース)
  • 既存ネットワーク・運用体制をそのまま継続可能

デメリット

  • ハードウェア調達・保守の運用負荷は継続
  • データセンター費用(電気代・スペース)も継続
選択肢 B:IBM Power Virtual Server(PVS)へのクラウド移行
IBM Cloud 上の Power 専用仮想サーバーで、IBM i をクラウドで動かす選択肢です。

メリット

  • ハードウェア管理・保守が不要
  • 従量課金のため初期投資を抑えられる
  • IBM i 7.5 へのバージョンアップと同時に実施しやすい
  • 将来的なスケールアップ・ダウンが柔軟

デメリット

  • 月額コストが長期的に積み上がる(5年以上で逆転する可能性)
  • ネットワーク回線品質への依存(レイテンシ)
  • IBM i 7.3 → 7.5 のバージョンアップ作業が必要(ただしこれはオンプレでも同様)
  • RPG/COBOL アプリのクラウド動作検証が必要

アップグレード先として最新のPower11プロセッサ搭載Power S1112と、IBM i の最新バージョンである7.6が登場していないのは気になりますね。Power S1112は先の7月末にGAを迎えたばかりで致し方ないのかもしれませんが、2025年4月に登場しているIBM i 7.6へのアップグレードが選択肢に出てこないのは違和感があります。ここはストレートにBobに聞いてみましょう。

あなたが把握している IBM の製品情報はいつまでになりますか?
Bob 私の学習データのカットオフは 2025年初頭頃です。ただし、最新のハードウェア発表は学習データに含まれないことがあります。

あっさりとした告白ですね。知識として持っている製品情報は1.5年ほど以前のものまで、というわけですから、IT投資計画立案にあたって、Bobの回答だけで判断するのは避けなくてはなりません。BobがIBM i 7.4または7.5を搭載するPower S1014を候補に挙げるのであれば、そこから先のIBM i 7.6搭載Power S1112へは人の判断で読み替える必要があります。今回のように製品寿命に基づくシステムの置き換えにおいては単純な置き換えで済みますが、例えばIBM i バージョンにおける機能の違いに着目したい場合は、あらためて製品情報をBobに伝えなくてはなりません。ここはBobを利用する際の注意点になりそうです。

現在のBobは、IBMのドキュメントを読みに行く程度の限定的なRAG機能(検索拡張生成-Retrieval Augmented Generation: 生成AIに外部情報検索を組み合わせて精度の高い回答を作る機能)は備えていますが、インターネット上の文書に幅広くアクセスできるようにはなっていません。将来構想の中にあるRAGサポートが実現されれば、状況は改善されるのではないかと勝手ながら期待している次第です。

インフラに関するやり取りはここまでとして、アプリケーションの方に視点を移してゆきましょう。IBM i 上ではRPGプログラムを稼働させている方が最多であることは統計的に明らかなのですが、一方で保守要員確保が困難になりつつある状況に懸念を抱いていて、このまま使い続けるのは正しい施策なのか、という悩みを抱えているものです。再びシンプルな投げ掛けから始めてみます。

現在の RPG プログラムはどうすれば良いですか
Bob

現在の RPG プログラムはどのような形式で書かれていますか?

  • OPM RPG(RPG III)や RPG/400 など旧形式が中心
  • ILE RPG(RPGLE / SQLRPGLE)が中心
  • OPM 旧形式と ILE RPG が混在している
  • どちらか把握していない

RPGの中のどの世代が採用されているのかを確認するところから始めよう、という発想は良いですね。この中にある「OPM」(Original Program Model)という用語は、「ILE」(Integrated Language Environment)の反意語にあたるのですが、市場にあまり浸透していないようなので、私自身は使わないようにしています。また、RPGⅢという言葉を使うのであれば、ILE RPGだけでなくRPGⅣも使って欲しかったです。そして、ILE RPGないしRPGⅣの機能強化版であるFF RPGを独立したテクノロジーと見なして、別途選択肢の中に加えた方が良いのではないかと思いました。プログラマにとっては、桁位置固定の独自構文と、JavaやPythonなど他の言語との親和性が高い構文との間には、大きな違いがあるはずですので。

日本においては技術的には保守的傾向が見られることから、1番目の選択肢を選びます。さらに規模感については「プログラム本数は多い(300本超)、大規模なシステム」、今後の方針については「現行のまま動けば良い(書き換えは極力したくない・コスト重視)」と回答を続けます。300本超を大規模なシステム、と表現していたのは違和感がありますが。

Bobの結論は以下でした。わざわざBobに相談しなくてもそういうものだと思っている、という方が大半かもしれません。ただ、念のために確認してくれているのは安心感につながります。

現在の RPG プログラムはどうすれば良いですか
Bob OPM RPG(RPG III / RPG/400)は、IBM i 7.5 でも、PVS 上でも引き続き実行可能です。書き換えは不要です。IBM i は後方互換性を非常に重視して設計されており、数十年前に書かれた OPM RPG でも最新環境でそのまま動くのが強みの一つです。

アプリケーション保守要員確保の懸念の有無がBobから問われなかったので、あっさりと上記結論に至ってしまったわけですが、ここはBobに疑問を投げかける必要がありそうです。

RPG3の保守要員の確保についてはどう考えれば良いですか
Bob

重要な課題ですね。状況を少し確認させてください。現在の RPG プログラムの保守体制はどのような状況ですか?

  • 社内に RPG3 を書ける担当者がいるが、高齢化・退職リスクがある
  • すでに社内に RPG3 を書ける担当者がおらず、外部ベンダーに依存している
  • 現在は保守できているが、今後の採用・育成が困難になると感じている
  • 保守要員は確保できているが、将来的な不安があるため対策を考えたい

今後の人材確保が困難になりそうだという懸念を想定して、1番目の選択肢を選びます。さらに追加で問われたので、保守の頻度はバグ修正や法や制度の改正に対応するための、年に数回程度の軽微なものだと回答してみます。

これに対してBobが提示した解決案は以下の4つでした。長くなるので明細は省いてありますが、タイトル部分だけでもBobの意図はおわかりいただけるものと思います。なお、「→」から右側は安井のコメントです。

  • 外部 SIer へ保守委託(現行 RPG3 のまま) → 恒久策になるかどうかはわかりませんが、少なくとも中期的には何とかなりそうです。
  • 社内担当者からのナレッジ移転+ドキュメント化 → ドキュメントを整備する必要性はわかりますが、その先どうするのかが示されていません。案としては中途半端だと思います。
  • ILE RPG(自由形式)への段階的移行 → 既存プログラムに修正が必要になる都度、FF RPGに移行するという案です。私は通常この案を推しています。
  • AI・モダナイゼーションツールの活用 → ツールで何をするのかが示されていません。例えばFF RPGへの移行手段を言っているのであれば、その旨を明示するべきたと思います。

ここで私自身も問われることの多い疑問をぶつけてみます。

S914 を Windows サーバーで置き換える案は妥当ですか
Bob

妥当ではありません。Windows サーバーは IBM i の代替にはなりません。以下の理由からです。

  • IBM i(AS/400)は、OS・データベース・ミドルウェア・開発環境が一体化した垂直統合プラットフォームです。Windows Server とは設計思想が根本的に異なります。仮に Windows へ移行しようとすると:
    • RPG プログラム 300本超をすべてゼロから再開発する必要がある
    • DB2 for i のデータ構造・物理ファイルの移行が必要
    • 業務ロジックの再実装・テストに数年規模の期間とコストがかかる
    • 「書き換えを極力したくない・コスト重視」という今回の方針と真逆の選択

「数年規模の期間とコスト」の根拠は示されていませんが、おそらく過去の事例によるものなのでしょう。指摘されている内容は概ね納得できるものです。Bobはこのあたりについて、あらかじめ十分にトレーニングされていたかもしれません。

一方でBobは逆の視点に対する配慮も示します。私自身もWindowsへの移行に対して、一般的には推奨できない旨を述べると、移行するのが妥当なケースは無いのかとお客様から問われることがあります。以下の指摘は私がいつもしている説明とほぼ同じです。

Bob Windows 移行が「選択肢になりうる」唯一のケース:もし将来的に IBM i 上の業務システムを全面刷新(パッケージ導入等)する計画がある場合は、そのタイミングで検討する価値はあります。ただしそれは「IBM i を Windows で置き換える」ではなく、「業務システムごと刷新する」という別の意思決定です。

以上Bobとのやり取りでした。Bobは相談相手になるか、という問いに対してシンプルに答えるならば、「条件付きYES」といったところでしょうか。現時点では最新の製品情報にアクセスできないのが大きな失点要因です。人がその点を補足しながら利用するのであれば、相談相手として悪くありません。特に現状把握を一歩ずつ進めてゆこうという姿勢や、選択肢を列挙する際にメリット・デメリットを明らかにする姿勢は好ましいと感じます。

他の生成AIも試したところ、漠然とした質問を投げかけると、あらゆる場面を想定した長い回答が一気に返ってくることがありました。情報としては十分に網羅されているのかもしれませんが、受け取った情報の中から該当するものを抽出するという作業を強いられるのは、逆効果ではないかという気もします。また、最新モデルであるPower S1112を視野に入れた回答を返してくるものもありました。今後Bobの機能強化が進んだら回答がどう変わるのか楽しみですね。

ではまた

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著者プロフィール

パワーシステム・エバンジェリスト

安井 賢克
やすい まさかつ

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社を経てベル・データ株式会社に入社。IBM 時代にエバンジェリストとして IBM i の優位性を社内外に訴求する活動を行う傍らで、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わりを論じる講座を担当しました。ベル・データ入社後も継続しているエバンジェリスト活動が米国 IBM にも認められ、2021 年以降 IBM Champion の称号を得ています。

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