IBM i のクラウド移行を検討する際は、いきなり見積りから始めないこと
私たちはいつも、一見簡単そうに思える質問をされます。すなわち、「我が社のIBM i 環境をクラウドへ移行するのに費用はどれくらい掛かるでしょうか。」
これは価格についての質問のように聞こえますが、たいていは、そうではありません。コア、メモリー、ストレージ、または月額費用についての話を始める前に、答えるべきもっと重要な質問があります。すなわち、「そもそも、なぜクラウドを検討しているのですか。」
もしかしたら、Powerサーバーの刷新の時期が近付いているのかもしれませんし、データ センターの契約が終了しようとしているのかもしれません。あるいは、経験豊富なIBM i 管理者が退職しようとしているのかもしれませんし、ディザスター リカバリー戦略がビジネスのニーズに合わなくなっているのかもしれません。あるいは、組織がより広範なクラウドファースト戦略を採用して、IBM i が話題に上っているのかもしれません。
これらはまったく異なるビジネス問題であるので、自動的に同じクラウド アーキテクチャーへとつながるべきではありません。
クラウドは結論であるべきで、出発点であるべきではない
IBM Powerクラウド市場は大きく変わっています。IBM i およびAIXワークロードを組織独自のデータ センターの外で稼働するための選択肢は、かつてないほど増えています。それは喜ばしいことですが、より多くの選択肢があることで、要件ではなく、まず移行先から検討を始めることもより容易になっています。
マネージド プライベート クラウドへ移行するべきか、IBM Power Virtual Serverへ移行するべきか。ディザスター リカバリーをクラウドへ移行しながら、IBM i は今あるところに留まるべきか。ハイブリッド アーキテクチャーの方が合理的か。企業のAWS、Azure、VMware、またはより幅広いクラウド戦略は、どのように判断に影響を及ぼすのか。
これらは、アーキテクチャーに関する質問であって、製品に関する質問ではありません。Lightedge社では、クラウドは、アーキテクチャーについて検討した上での結論であるべきであって、検討の出発点であるべきではないと考えます。IBM Powerのワークロードがどこに属するかを決める前に、組織がどのようなことを実現しようとしているかを把握する必要があります。
ビジネス要因から始める
IBM i をクラウドに移行したいという話を顧客から聞いたときに、私たちが最初に尋ねる質問の1つは、簡単な次の質問です。「なぜ今なのですか」 答えからは、多くのことが分かります。
ハードウェアの刷新からは、ある種の判断が生み出されます。決められた期限によってデータセンターから退去する場合は、また別の判断が生まれます。IBM i スキルの不足は、基本的にインフラストラクチャーとはまったく関係ないかもしれません。課題となるのは、それを管理する人材を見つけることだからです。レジリエンスの問題は、どこかまったく別のところへつながるかもしれません。
企業から、「15分以上のデータ損失は許容できませんし、2時間以内に運用再開する必要があります」と言われた場合は、その要件はアーキテクチャーの決定要因となるはずです。単に本番環境をクラウド環境へ移行することで、ディザスター リカバリーの問題が自動的に解決されるわけではありません。
同じことは、クラウドファーストの号令についても当てはまります。「クラウドファースト」は、必ずしも「すべてを移行する」ことを意味するわけではありません。正解は、本番環境の移行、DRの移行、両方の移行であるかもしれませんし、あるいは、本番環境の一部をそのまま今あるところに残すことかもしれません。テクノロジーの判断は、ビジネス問題を理解すると、はるかに明確になります。
実際に今あるワークロードを理解する
組織がなぜ変更を検討しているのかを把握できたら、私たちはワークロードに目を向けることができるようになります。ここでも、クラウドの検討が順調に進まなくなる可能性があります。現在所有しているハードウェアから、クラウドでどのようなものが必要となるかが分かるというわけではないからです。
Power10に一定数のプロセッサーがインストールされているからといって、クラウド環境で同一の構成が必要となるわけではありません。私たちは、実際のプロセッサー使用率、メモリー要件、ストレージ容量および性能、オペレーティング システム レベル、増加パターン、バックアップ要件、およびアプリケーションの挙動の把握をまず考えます。また、ワークロードがいつピークに達するかを把握する必要もあります。月末会計報告を処理したり、季節的な需要の急増に対処したりしているIBM i 環境は、それらの期間には、平均的な火曜日の午後とはまったく挙動が異なります。
Lightedge社では、そうした発見プロセスは、IBM Powerクラウド環境を設計する上での重要な部分だと考えます。単に顧客の既存のハードウェア構成をクラウドで再現するのではなく、ワークロードそのものに目を向けて、現在、そしてビジネスが変化するにつれて、ワークロードが実際に必要とするものにのっとって設計を行います。
Lightedge社のIBM i Cloud顧客から、このような声が寄せられています。「Lightedge社は、私たちのすべての問い合わせに対応してくれました。また、社内で取り組んでいるビジネス ケースの作成で、必要なものを数値化する支援もしてくれました。」
良いクラウド アーキテクチャーは、ワークロードを理解することから始まります。単に既存のサーバーをどこか他のところで再現することではないのです。
IBM i が単独で稼働していることはめったにない
これは、IBM Powerクラウドについての判断で最も見落されがちな部分の1つであるかもしれません。IBM i は、コアERPまたはビジネス アプリケーションを稼働していることもあるかもしれませんが、何がそれに接続しているのでしょうか。
今日のIBM Power環境は、通常は、WindowsおよびLinuxシステム、VMware、パブリック クラウド プラットフォーム、SaaSアプリケーション、API、ファイル転送、レポート ツール、セキュリティ プラットフォーム、ユーザー、顧客、およびビジネス パートナーと対話処理を行っています。それらの依存関係を理解しないままIBM i を移行すると、遅延、ネットワーク接続性、アプリケーション性能、セキュリティ、およびコストに関する問題が引き起されることもあります。
だからこそ、「IBM i はどこで稼働するべきでしょうか」という質問は適切ではありません。「どのようなアーキテクチャーが、ワークロード全体を最もよくサポートするでしょうか」と尋ねるべきです。
多くの組織では、答えは次第にハイブリッドになりつつあります。IBM i がある環境で稼働している一方で、そのデータを利用しているアプリケーションはどこか他の場所で稼働しているかもしれませんし、本番とディザスター リカバリーが、異なる場所で稼働しているかもしれません。コアとなるレコードのシステムがIBM Power上のままであっても、AWSやAzureがアプリケーション戦略の一部になるのかもしれません。
目的は、すべてのワークロードを1つのクラウドに押し込めることではありません。様々な部品を連携して機能させることです。
何を所有し続けたいかを判断する
もうひとつ、インフラストラクチャーについての検討の際に、時折、見落とされてしまう質問があります。すなわち、「あなたのチームは、実際のところ何を管理したいですか」という質問です。
IBM i をクラウドへ移行することで、物理ハードウェアを所有する責任はなくなりますが、必ずしもその環境の運用の責任がなくなるわけではありません。監視、オペレーティング システム管理、パッチ適用、バックアップ、セキュリティ、ハイ アベイラビリティー、ディザスター リカバリー、容量管理、トラブルシューティング、および進行中の最適化について、これまで通り、誰かが考える必要があります。
そうした専門知識を内部的に保持するのが合理的な組織もあります。また、そうした責任のより多くをマネージド サービス プロバイダーに移譲することが、そもそもクラウドを検討している主な理由の1つだという組織もあります。
そうした違いは、オプションや価格設定を比較するときに大事です。2つのクラウド提案が、まったく異なる運用モデルを提供していながら、書面上は同じように見えることもあります。
DRを追加機能とみなしてはならない
また、Lightedge社では、レジリエンスについては、すでに本番アーキテクチャーが設計された後ではなく、初期のアーキテクチャーについて話をしている段階で検討することを顧客に推奨しています。リカバリー環境はどこで稼働するのか。データはどのようにして複製されるのか。実際のRPOおよびRTO要件はどのようなものか。リカバリー プロセスのオーナーは誰か。文書化された手順書はあるか。リカバリーはどれくらいの頻度でテストされているか。
そして、おそらく一番大事なのは、ビジネスを復旧させることができるのか、単にデータの第2コピーがあるというだけなのかということです。
Lightedge社では、バックアップ、ディザスター リカバリー、および本番アーキテクチャーを一連の検討課題と見なします。クラウド マイグレーションは、レジリエンスを向上させるための機会であって、単に既存の環境を再配置することではありません。
次のハードウェア刷新の先を考える
おそらく、組織が犯しがちな最大の間違いは、今の課題のみを解決してよしとすることです。Powerサーバーが更新の期限を迎えるためにクラウドへの移行を検討している場合は、この機会を利用してより長期的な視点で将来について考えてみることです。
今後5年の間に、ビジネスはIBM i にどのようなことを期待するか。環境は拡大するか。アプリケーションはモダナイズされるか。AWSまたはAzureへ移行するサービスは増えるか。AIは、IBM i データにアクセスするための新たな方法を要求するか。組織は、IBM i スキルおよび後継者育成について懸念があるか。買収またはデータ センターの変更はありそうか。
これらの質問すべてに対して完璧な答えが必要というわけではありませんが、答えが変化するにつれて適応することができるアーキテクチャーを構築するべきです。
より良い出発点
したがって、IBM i をクラウドへ移行することを検討している場合は、見積もりを依頼することから始めてはなりません。以下の7つの質問から始めます。
- なぜ、今、クラウドを検討しているのか。
- どのようなビジネス問題を解決しようとしているのか。
- ワークロードが実際に必要としているのはどのようなものか。
- どのようなシステムおよびアプリケーションがIBM i に依存しているのか。
- 実際のレジリエンス要件はどのようなものか。
- 自分たち自身で何を引き続き管理したいのか。
- 5年後、この環境はどこに置かれている必要があるのか。
Lightedge社では、このようなアプローチを通じてIBM Powerクラウドについての検討を行っています。
Lightedge社は、パブリック クラウド プラットフォームへの接続性およびIBM i ワークロードが依存している周辺インフラストラクチャーを含め、マネージド クラウドおよびハイブリッド アーキテクチャーにわたってIBM Power環境をサポートします。しかし、目的はすべての顧客を同じアーキテクチャーにはめ込むことではありません。目的は、ワークロード、ビジネス要件、運用モデル、および長期的な戦略を理解することです。その上で、そうしたワークロードがどこに属するかを判断します。
一番重要な判断は、IBM i がクラウドへ移行することができるかどうかではないからです。移行することはできるのです。
本当の判断は、移行によってどのようなことを実現したいかです。
Lightedge社では、組織がクラウドおよびハイブリッド アーキテクチャーにわたってIBM Power環境を評価、移行、および管理する支援を行っています。詳細は、Lightedge社サイト(lightedge.com/IBM)をご覧ください。
