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IBMi海外記事2025.07.09

「watsonx Code Assistant for i 」のパブリック プレビューが間もなく利用可能に

Alex Woodie 著

今週のCOMMON POWERUp 2025カンファレンスで、IBMは、「IBM watsonx Code Assistant for i 」の姿を少しだけ明らかにしました。「IBM watsonx Code Assistant for i 」(WCA for i )は、IBMが1年前に初めて話題にし始めたAI搭載コーディング アシスタント(RPG Code Assistant)の新たな名称です。WCA for i のパブリック プレビューが、近々、テスト ユーザー数を限定して利用可能となり、さらに、今年後半にはGA(一般利用可能)となる見込みだということです。

今月、IBM i コーディング コパイロットには、いろいろと進展があったようです。IBM Think カンファレンス開催中の5月7日には、IBMの2人の幹部が、その時点ではプライベート プレビュー段階だったWCA for i について発表する ブログ記事を投稿 しています。また、この2人のバイスプレジデントが投稿した記事には、IBM i プロフェッショナルがこの限定パブリック プレビューを申し込むためのリンクも掲載されています( こちらでアクセスできます)。

今週、アナハイムで開催されている COMMON POWERUp 2025カンファレンスでは、WCA for i に関するさらに多くの情報が明らかにされています。IBM i CTOのSteve Will氏と、IBMのIBM i アプリケーション開発ツール担当リードのEdmund Reinhardt氏は、WCA for i に関するいくつかのセッションを行いました。それらのセッションでは、 1年前に POWERUp 2024で初めて明かされたRPGコーディング コパイロットの計画はほぼ変更なく順調に進んでいるものの、課題も残っていることが明らかにされています。

WCA for i は、watsonxおよびGraniteモデルを基盤として構築されています。

1年前、この製品には、コード説明、コード生成、およびテスト ケース生成という、3つの主要目標がありました。7月に始まるWCA for i のベータ リリースでは、それらの目標の1つ目、すなわち、コード説明機能が実現されます。残りの2つの目標は、これまで通り、年末に向けてのロードマップに載っています。

このソフトウェアは、4つのタイプのコード説明を実現しようとしています。すなわち、プログラマー向けの詳細説明、ビジネスレベル サマリー、用法の説明、およびドキュメント化(ソース コード本体へ挿入、または抜粋してドキュメントにまとめる)の4つです。

「WCA for i は、コード説明の方法として、様々な選択肢を提供します」とWill氏は述べています。「たとえば、新人の開発者が、あるコードがどのような処理をしているのかRPGのベテラン開発者に尋ねたいという場合には、そのコードについての詳細説明を選ぶことができ、そうすると、ベテラン開発者の代わりにWCA for i が説明してくれます。プロンプトを作成する必要はありません。プロンプトは自動的に作成され、チャット ウィンドウに詳細説明が表示されます。」

WCA for i のプレビュー版は、VS Code向けのプラグインとして機能し、クラウドまたはオンプレミスで稼働するIBM Graniteモデルを利用します。Will氏によると、現時点ではRDi でのWCA for i のサポート予定はないそうです。

Reinhardt氏によれば、IBMがGraniteモデルにフィードしてきたRPGコードは1,000万行以上に上るということです。この製品を必要とされるレベルに引き上げるために、IBMは、さらに多くのRPGコードの提供を求めています。IBMは、WCA for i を改善するために、特に、古いRPG II、RPG III、およびRPG OPM(オリジナル プログラム モデル)のソース コードの提供を顧客に求めています。

対応が必要な古いRPGコードのほとんどは、固定フォーマットRPGおよび非ILEであり、それこそが、まさにIBMが顧客に提供を求めているコードです。古い、醜いコードであればあるほど、AIのトレーニングには望ましいようです。「トレーニングの成果を向上させるためにコードが必要なのです」とReinhardt氏は述べています。「困惑するくらいに醜いコード、それこそが、まさに私たちが必要としているものなのです。」

WCA for i 製品のロゴ

WCA for i は、学習曲線を短縮することによって、新人RPGプログラマーを支援するのとともに、ベテラン プログラマーの支援にもなるとWill氏は述べています。「WCA for i により、これらの開発者は見たことのないコードを理解できるようになります。多くの時間を費やして自力で知識を習得するよりも、より迅速かつ完全に理解することができるのです」と、Will氏は TechChannel「You and i 」 ブログ で記しています。「まるで、経験豊富なプログラマーに、作業を手伝って(アシストして)もらっているかのような感覚です。」

WCA for i 製品は、まだまだ準備万端とは言えないようです。火曜日に行われたReinhardt氏によるライブ デモでは、うまく動作しなかった機能もありました。すべての大規模言語モデルと同様に、AI製品はハルシネーションを起こします。「100%信頼できるものではありません」とReinhardt氏は述べています。しかし、コード説明機能は、比較的短時間で大量のコードをすぐに理解でき、ドキュメント化できるという点で、十分に有用だと彼は述べます。

IBMは、古いRPGコードに加えて、CLおよびCOBOLコードの提供も求めており、それらも、いずれWCA for i をトレーニングするのに使用されます。また、IBMは、顧客のSQLコードのサンプルも求めています。IBM i 向けのIBMバージョンのSQLは、OracleやSQL Serverのような他のSQL実装に比べて、より多くのISO規格に準拠しているとIBMは誇りに思っていますが、そのSQLは、主要なLLMがトレーニングを行ってきた、オープン市場においてLLMで広く利用されている他のSQLのバージョンと必ずしも同じではありません。「SQL on i は、SQLと同じであって同じではないため、SQL on i が必要なのです」と、昨日の朝のライブ デモでWill氏は述べています。

WCA for i をクラウドで稼働する顧客がほとんどだと思われますが、将来的にはオンプレミスで稼働することも可能になるようです。ただし、その場合は、厳しく規制された環境での使用ということになりそうです。Will氏によれば、他のWCA製品をオンプレミスで稼働する場合は、X86サーバーでOpenShiftおよびCloud Pak for Data環境が必要とされているということです。これは多くのIBM i のショップには無理なことであるため、IBMは、WCA for i がIBM i でネイティブに稼働するようにする方法を模索していると彼は述べています。Power11チップを補助するべく開発されているSpyreアクセラレーターが、これを実現するのに必要なコンピューティング リソースを提供し、Power11およびPower10チップ内蔵の行列エンジンによってこれを実現できる可能性があるということです。

POWERUp 2025でIBMが公開した新たなWCA for i 製品のスクリーンショット

IBMは、RPGソース コードの提供者となる組織および個人に関する情報の保護を重要視しています。情報漏洩を心配することなくコードを提供してもらえるようにするために、IBMは、すべてのプロジェクト コントリビューターが参照できるリポジトリーと、IBMのみが参照できるリポジトリーの、2つのリポジトリーに分けてRPGを保管しています。

WCA for i のパブリック ベータが近付くとともに、2つのことが明らかになっています。1つには、AIコパイロットの時代が到来し、競争力を保つために、IBM i 向けのコパイロットはすぐに不可欠なものになるということです。2つには、WCA for i の適用範囲は、今後、拡大して行くということです。実際、IBMは、顧客が納得できる形で、急速に台頭しているエージェント型AIの世界に適応する最善の方法を模索しています。

「WCA for i に求められていた様々なことについての理解が深まったため、そういう意味では、範囲は広がっています」と、Will氏は昨日のPOWERUpでのインタビューで『 IT Jungle 』に述べています。「しかし、十分に理解できていないことは、自分でもあらかじめ分かっていました。これまでに、このようなものを作ったことはありませんでした。そして、これらのことを行うために、どのようにモデルをトレーニングしたらよいのか学ぶ必要があることは承知していました。私たちが聞かされていたのは、まず1つのことを行うようにモデルをトレーニングして、それをある程度改良してからでないと、別のことを行うようにトレーニングするやり方は分からないということでした。したがって、そのことが、現在、コード説明に集中的に取り組んでいる理由の1つです。そして実際には、思っていたよりも順調に進んでいます。しかし、そうした生成機能に着手するまでには、少し時間が掛かることになりそうです。」

IBMは、今もなお、今年後半までにWCA for i でRPG生成機能を利用できるようにしたいとしています。さらに数か月以上掛かる可能性もありますが、秋のテクノロジー リフレッシュ(TR)は、発表する良いタイミングかもしれないとWill氏は述べています。しかし、1つ確かなことがあります。すなわち、IBMのAIの運命は、年に2回パッケージされてリリースされるものに縛られないということです。

「もう1年待ってから、もうひとつの大きなGAを行うようにするつもりはありません」とWill氏は述べています。「モデルをトレーニングし、それを使用するためのユーザー インターフェースを作成しながら、これらを公開するだけです。」

WCA for i の開発の進捗状況については、 こちらのGitHubサイトで確認できます。また、IBMが公開しているWCA for i の製品ページは、 こちらで参照できます。

【 訳注 】
WCA for i パブリック・プレビュー(ベータ版)利用は、上記「WCA for i 」製品ページの「待機リストに登録→」ボタンより申し込めます。

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