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IBMi海外記事2025.05.28

IBM i の移行と将来展望について、市場調査から読み取れること

Alex Woodie 著

Fortra社の毎年恒例のIBM i 市場調査が提供する価値の1つは、将来を占う指標の役割を果たすことです。たとえば、このプラットフォームから大量に離脱しようとしているなど、IBM iインストール ベースで何か変わったことが起きている場合、おそらく、それはデータに現れます。そのため、2025年版のレポートのデータを分析して、そのようなデータの変化を探すことは、意義のあることだと言えるでしょう。

2025 IBM i Marketplace Survey Results」からの良い知らせは、大量のマイグレーションが進行していることを示すデータはまったくないということです。企業は常にIBM i プラットフォームを出たり入ったりするものです。もっとも、近頃では、このシステムへ入って来るよりも、このプラットフォームから出て行く方が若干多いと思われます。しかし、2025年版のデータと過去5年間分のデータを比較すると、少なくともFortra社のアンケート調査では、明白な大きな変動は見られないようです。

Fortra社は、「Outlook for IBM i (IBM i の展望)」というセクションで、「コアとなるビジネス アプリケーションの何パーセントがIBM i 上で稼働していますか?」および「IBM i を今後どのように活用しますか」など、いくつか質問を尋ねています。また、IBM i から他のプラットフォームへすべてのアプリケーションを移行しようとしているとした回答者には、そうしたマイグレーションを予定している時期についても尋ねています(さらに、2024年版までは、古いIBM i アプリケーションの移行先プラットフォームは何かについても尋ねていました。これは、多い順に、SaaS、Windows、およびLinuxと並ぶのが通例でした)。

コアとなるビジネス アプリケーションの何パーセントがIBM i 上で稼働していますか?

図1.「コアとなるビジネス アプリケーションの何パーセントがIBM i 上で稼働していますか?」(出典:Fortra社 「2025 IBM i Marketplace Survey」)

IBM i のショップがIBM i 上で稼働しているアプリケーションの割合は、長年にわたってかなり安定しています。図1からお分かりのように、IBM i 上でアプリケーションのほぼすべて(76%~100%)を稼働しているショップのパーセンテージは、過去5年間、40%台前半付近で推移しており、ここ2年間は43%でした。アプリケーションの大半(51%~75%)をIBM i 上で稼働しているショップの割合は、わずかに減少しています。アプリケーションの半分以下(25%~50%)およびアプリケーションの一部のみ(25%未満)をIBM i 上で稼働しているショップは、ほぼ一定で、それぞれ15%未満でした。

これらの数字は、IBMのチーフ アーキテクトおよびIBM i のCTOのSteve Will氏にとっては驚きではなかったようです。

「クライアントの話を聞いたところでは、彼らは主要なビジネスをIBM i 上で稼働しています」と、「 Marketplace 」調査の結果を紹介するFortra社のウェビナーでWill氏は述べています。「確かに、主要なビジネスを他のどこかで稼働している割合の方が多いというクライアントも若干いるようですが、私たちが関わるクライアントの大半は、彼らのビジネスをIBM i 上で稼働しています。IBM i は、実質上、彼らにとってのより低コストのメインフレームなのです。したがって、それこそが、まさに私たちのクライアント ベースであり、だからこそ、統合された、高品質かつ高セキュリティのシステムを作り上げるべく懸命に取り組んでいるわけです。」

IBM i を今後どのように活用しますか?

図2.「IBM i を今後どのように活用しますか」 (出典:Fortra社 「2025 IBM i Marketplace Survey」)

IBM i プラットフォームの今後の活用プランに関しては、調査回答者のうちの堅実な45%は、現状を変更する予定はないと回答しています。昨年からは多少増加し、45%が同じように回答した2020年以降で最高値でした。IBM i をより一層活用する予定という回答は約20%でした。これは、IBM i ワークロードを増やしたいとした回答が12%だった昨年から、大幅な増加です。IBM i プラットフォームから他へ移行しようとしている顧客については、20%がそうする予定と回答しています。一部のワークロードをIBM i から他へ移行する予定とした回答は10%で、すべてのIBM i アプリケーションを移行する予定とした回答は8%でした。

図2でご覧のように、一部またはすべてのIBM i アプリケーションを移行する予定がある顧客のパーセンテージは、過去5年間、比較的一定で、約19%~23%の間で推移していました。概して、このプラットフォームから完全に離れたいと考える顧客に比べて、アプリケーションの一部のみを移行したいと回答している顧客の割合の方が少し多いようです。2023年に、Fortra社はこの質問に対する回答として、「IBM i には留まるものの、クラウドへ移行する」という新たな選択肢を導入しました。その選択肢を選んだ割合は10%~13%の間で推移しています。

いつIBM i から移行する予定ですか?

図3.「いつ移行する予定ですか」(出典:Fortra社 「2025 IBM i Marketplace Survey」)

IBM i プラットフォームから他への移行を予定しているとした回答者群(2025年は8%ですが、概して毎年約10%)に対しては、Fortra社はさらに、どのようなスケジュールでIBM i から離れる予定なのかという質問を尋ねています。この質問に対する回答は、ここ数年間で、大きく変わりました。

図3からお分かりのように、2020年には、この回答者群のうちの42%のショップが、2年以内にIBM i から離れたいと回答していた一方で、37%は2~5年先、そして18%は5年以上先と回答していました。概して、2020年~2022年についてはそのような傾向だと言えます。

しかし、2023年に何かが起こりました。この年、2年以内にIBM i から離れたいとする回答の割合が、突然、33%へと減少しています。そして、2~5年先とする回答は48%へと増加し、マイグレーションについてより長期的なスパンで考えるようになったと言えそうです。一方、5年以上先とする回答は7%のみとなりました。2025年には、移行を予定しているショップのちょうど50%が、2~5年以内にIBM i から離れる予定としている一方で、約39%がもっと短い期間内(2年以内)に離れたいとしています。長期的(5年以上先)に考えているショップの割合は、過去最低の4%でした。

こうした変化は、棒グラフの棒の色を見るとよく分かります。グラフの左側の1~3年目では青色の棒(2年以内)が抜きん出ていますが、右側の4~6年目ではオレンジ色の棒(2~5年先)が抜きん出ています。これらの数値からは、IBM i のショップのマイグレーション プランで何らかの変化が起こっていることが見て取れます。概して、支持を集めているのは、即座のマイグレーション(2年以内)や長期的なマイグレーション(5年以上先)ではなく、中期的なマイグレーションということです。

大多数のIBM i のショップが独自のアプリケーションを書いている(「 2025 Marketplace Survey」によれば70%)ことを踏まえると、こうしたマイグレーションを予定している期間が後ろ倒しになったことは、このプラットフォームから離れようという意欲が低下しているか、あるいは移行に対する対応力が低下していることを示しています。ご承知の通り、IBM i であれ、他のいずれかのアプリケーションであれ、コアとなるアプリケーションを移行することは簡単なことではありません。カスタム アプリケーションまたは高度にカスタマイズされたパッケージ アプリケーションである場合、そうしたカスタマイズされたすべての機能を複製するという課題はさらに難しくなります。

IBM DE(ディスティングイッシュド エンジニア)のWill氏は、毎年、これらのデータに目を通しています。「このプラットフォームから離れる予定と回答している回答者に目を向けると、彼らのほとんどはそうしません」と彼はウェビナーで述べています。「そうした状況が生まれがちなケースとして、このようなケースが考えられます。ある組織に、IBM i の価値を理解していない新しい指導者が着任し、ある種の方向性のようなものを定めます。それを踏まえて調査回答者は、新しい指導者はこのプラットフォームから離れる方針だと回答することになるわけです。私たちは、そうした多くの顧客と関わり合い、結局のところ、彼らを支援することになります。新しい指導者が、このプラットフォームによって彼らのビジネスにもたらされる価値を理解するようになると、最終的には、このプラットフォームから離れないというところに落ち着くという次第です。したがって、IBM i から他へ完全に移行すると回答している8%がどこから生まれるのか、私は見当が付きます。間違いありません。」

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