今後数年間、IT支出の伸びは鈍化の予測
この2年は、新型コロナウイルス パンデミックの発生のせいで、IT組織にとって奇妙な2年でした。通常のパターンというものがあまりに多く壊れてしまったため、通常へ戻ることができると想像することさえ難しく感じられるときがあります。しかし、Gartner社のアナリストの言うことが正しいとすれば、2022年は、IT部門が、パンデミックによって引き起こされた問題のトリアージを行うのではなく、未来について再び考え始める年になるようです。そして、しばらくはIT支出の伸びがより控え目な時代、ということにもなるようです。
先週、Gartner社は、2021年のIT支出の修正値を発表するとともに、2022年の予測を更新し、2023年の予測を追加しました。最も興味深いことの1つは、全体的なIT支出は、2021年に見られた記録的な伸びからすると、多少、抑え気味になりそうだということです。2021年には、IT市場全体(デバイスおよび通信サービスを含む)が、9%増の4兆2,400億ドルに伸び、いわゆるコアIT市場(Gartner社のデータでは、データセンター システム、エンタープライズ ソフトウェア、およびITサービス)は、11.9%増の2兆100億ドルに伸びています。
最新のIT支出の数字(これは、年に2~3回発表されたときに、予測値と修正値に目を向けないと目にすることのない数字です)で、もうひとつ素晴らしいと思えたことは、パンデミックに見舞われた2020年の支出の低迷は、Gartner社や他の市場リサーチャーが予想していたほど、ひどくはなかったということです。IT全体の支出(PC、スマートフォン、およびタブレット、そして通信サービスに対する支出を含む)は、1.4%増の3兆9000億ドルに伸び、コアIT支出は、非常に堅調に4.8%増の1兆7900億ドルへ伸びています。
こうした過去のデータはどれも興味深いものであり、予測データに誤差は付き物ですが、1年のこの時期に誰もが知りたいと思うのは、未来はどうなるかということです。
「2022年は、CIOが未来を取り戻す年です」と、今回のIT支出予測をまとめた、Distinguished Analyst(特別栄誉アナリスト)の称号を持つ、Gartner社のリサーチ担当バイスプレジデント、John-David Lovelock氏は解説しています。「彼らはようやく、過去2年にわたったクリティカルな短期プロジェクトを乗り越えて、長期的なプロジェクトに焦点を合わせることができるようになりました。と同時に、スタッフのスキル格差、賃金インフレ、および人材獲得競争のせいで、CIOは、コンサルタント企業やマネージド サービス企業により多くを依存してデジタル戦略を推進することを強いられるようになりそうです。」
現時点での、2022年および2023年の予測を以下に示します(2023年の予測は初出です)。
世界的なIT支出予測(百万ドル)
2021年支出額 | 2021年増加率(%) | 2022年支出額 | 2022年増加率(%) | 2023年支出額 | 2023年増加率(%) | |
---|---|---|---|---|---|---|
データ センター システム | 216,337 | 11.4 | 226,475 | 4.7 | 237,021 | 4.7 |
エンタープライズ ソフトウェア | 604,946 | 14.4 | 671,732 | 11.0 | 751,937 | 11.9 |
デバイス | 787,417 | 13.0 | 813,699 | 3.3 | 804,253 | -1.2 |
ITサービス | 1,186,103 | 10.7 | 1,2739,737 | 7.9 | 1,391,742 | 8.8 |
通信サービス | 1,444,324 | 3.4 | 1,462,712 | 1.3 | 1,494,167 | 2.2 |
IT全体 | 4,239,127 | 9.0 | 4,454,354 | 5.1 | 4,679,119 | 5.0 |
増加率の点から見ると、2023年は2022年とよく似たものになりそうだとGartner社は予測しています。2022年は、全体的なIT支出で5.1%増の4兆4500億ドル、2023年にはやはり5%増の4兆6800億ドルに伸びるということです。
Lovelock氏は、2020年に起こった興味深い重大なある変化について指摘しています。それは、2020年は、クラウドベースのエンタープライズ アプリケーション ソフトウェアに対する支出が、オンプレミスのエンタープライズ ソフトウェアに対する支出を上回った初めての年であったということです。また、2025年までには、クラウド エンタープライズ ソフトウェアに対する支出が、オンプレミスのマシン上で稼働するソフトウェア ライセンスに対する支出の2倍になるとGartner社は予測しています。エンタープライズ ソフトウェアの増加分のほぼすべては、オンプレミスからクラウド アプリケーションおよびミドルウェアへの乗り換えによるものです。世界的なIT支出予測(百万ドル)
2021年支出額 | 2021年増加率(%) | 2022年支出額 | 2022年増加率(%) | 2023年支出額 | 2023年増加率(%) | |
---|---|---|---|---|---|---|
データ センター システム | 216,337 | 11.4 | 226,475 | 4.7 | 237,021 | 4.7 |
エンタープライズ ソフトウェア | 604,946 | 14.4 | 671,732 | 11.0 | 751,937 | 11.9 |
デバイス | 787,417 | 13.0 | 813,699 | 3.3 | 804,253 | -1.2 |
ITサービス | 1,186,103 | 10.7 | 1,2739,737 | 7.9 | 1,391,742 | 8.8 |
通信サービス | 1,444,324 | 3.4 | 1,462,712 | 1.3 | 1,494,167 | 2.2 |
IT全体 | 4,239,127 | 9.0 | 4,454,354 | 5.1 | 4,679,119 | 5.0 |
上の表から見て取れるように、データセンター システム(サーバー、ストレージ、およびスイッチング)に対する支出は、少なくともエンタープライズ ソフトウェアおよびITサービスの増加率と比べれば、安定的で、控え目な増加となりそうです。やはり、これも、部分的にはオンプレミスからクラウドへの移行によるものです。
参考までに、ITスタックの各分野に対する支出の伸びが、より分かりやすくなるようないくつかの比較を行ってみました。2012年と2021年(10年、間が空いています)のデータセンター システム支出を比較してみると、支出額は1.53倍に増えています。これに対してコアIT支出は1.55倍増でした。両者は、ぴったり同じような増え方でした。エンタープライズ ソフトウェア支出は、同じ期間で2.17倍に増えています。一方、ITサービス支出は1.33倍に増えているのみです。概して、コアITの市場分野は、IT市場全体に比べて3%~5%増え方が大きくなっています。また、市場規模が大きい通信サービスは、一貫して減少していましたが、2022年および2023年に向けて少し回復しつつあるようです。