IBM i ビジネスはCOVIDの逆風を物ともしない、Will氏は語る
COVIDパンデミックは、米国企業および米国経済の様々な面に打撃を与えました。サーバー セールスにも、その影響は及んでいます。しかし、IBM i チーフ アーキテクトのSteve Will氏によれば、IBM i システムは、過去3四半期間で売上が増加しているということです。これに応じて、ロチェスターでは、IBM i 開発チームを強化するべく、ちょっとした採用ブームが起きているようです。
「2021年のIBM i ビジネスは、実のところ非常に好調です」と、5月24日の週に COMMON が開催したNAViGATEカンファレンスのプレゼンテーションでWill氏は述べています。「昨年の第2四半期は、かなりの落ち込みでした。クライアントに寄り添うことはできたものの、あまり売上にはなりませんでした。けれども、IBM i システムがこれほど多くのことを行えるのだということを、規模の大小を問わず、クライアントの多くが認識し始めたこともあり、実際、昨年第3四半期にはプラスに転じています。第4四半期もそれに続き、さらには今年の第1四半期も売上増を続けています。」
いつものことですが、 IBM は、Power Systems全体の売上に占めるIBM i の売上の内訳を明らかにしていません。Power Systems全体としての売上については、 4月の記事でお伝えしたように、今年の第1四半期は、対2020年同期比13%減でした(為替変動の影響を除く)。もっとも、Will氏にしても、IBM i の売上が増えた一方で、AIXおよびLinuxベースのPower Systemsサーバー(およびIBMが販売するストレージおよびその他の製品)の売上低迷が全体の数字を引き下げたという具体的なデータを示しているわけではありません。
サーバーのライフサイクルの終わりに近づいていることを考えると、そうした売上低迷は当たり前なのかもしれません。というのも、Power9ベースのサーバーは、年内にPower10チップ搭載の新たなPower Systemsサーバーに置き換えられる予定だからです(IBM i では2022年までPower10を待たされることになるようですが)。しかし、Will氏の言うところによれば、IBM i は、COVID-19とPower9の逆風を物ともせず、売上を伸ばしたということです。
「パンデミックが幸いしたと言っているわけではありません」とWill氏は述べます。「パンデミックへの対応に迫られたクライアントにとって、私たちのプラットフォームが適していたということです。このことは、過去数四半期間の売上増に表れています。ちなみに、そのことはIBM本社も十分に認識しています。つまるところ、このプラットフォームは、私たちがいつでもそうした対応に当たれるよう準備ができていたことが幸いだったということです。」
IBM i プラットフォームの伝統的な強みの1つに、X86ワークロードを吸収・統合できるということがありますが、その強みが、プラットフォームの売上増につながったとWill氏は述べます。
「Power9のライフサイクルの終盤を迎えながらも、3四半期連続で売上増です」と彼は述べています。「そして、そのような好業績の大きな要因は、このプラットフォームがどのようなことを行えるかをよくご存じの、皆さんのような方々がより多くのワークロードをIBM i に置くようになったことにあります。以前に使用していたプラットフォームに不満を抱いていたクライアントから、ある業務を受注しました。そして、このプラットフォームがそうした業務を問題なく処理できることを実感してもらうこともできました。」
Will氏が述べたように、最近のIBM i の好調ぶりは、972マイル東のニューヨーク州アーモンクにも伝わっているようです。IBMの経営トップから、Will氏と彼が率いるチームに対して、IBM i 開発チーム増員のゴー サインが出ています。
「IBMはIBM i から手を引こうとしているのではないか、と不安を抱いている人も多いようです」とWill氏は述べます。「そうした不安の払拭には、売上を伸ばし、多くの利益を生み出すのみです。そして、私たちが取り組んでいるのは、IBMの他のどの部門も取り組んでいない市場分野なのです。そうしたことも踏まえて、大幅に採用を増やすことができるようになったということです。」
NAViGATEでのプレゼンテーションの際、Will氏は2枚の写真を披露してくれました。1枚は2018年の写真で、ロチェスターのIBMの看板をバックに20~30人の新規採用者が写っていました。もう1枚は2020年の、ロチェスターと中国の35名の新規採用者によるZoomミーティングの画面です。これらの写真から伝わってくるのは、IBMがIBM i ビジネスに投資しているということです。
「ご存じの通り、私たちの開発チームは、ここ3年ほどの間に非常に多くの人材を採用してきました」とWill氏は述べます。「それは、IBMの、IBM i プラットフォームに対する大きな期待と覚悟の現れです。」
IBM i のロードマップは、2030年代にまでも伸びています。2021年中は、IBM i の大きなアップデートは期待しない方がよいとWill氏は述べていますが、近いうちのメジャー リリースが期待されています。
「ここのところ、メジャー リリースは3年間隔で行われています」と彼は述べます。「ということは、2019年に新リリースがあったのだとすれば、3を足した年が、次のメジャー リリースが出そうな年ということになります。」
「私は何かを発表したわけではありません」とWill氏は付け加えました。「私は、『出そうな年』と言っただけです。」
IBM i の短期的な将来像が具体化し始めたことで、Will氏も、このプラットフォーム(そしてプラットフォームの開発担当者)の長期的な将来像がどのようなものになり得るかについて、多少は自由に思いを巡らせるようになったようです。Will氏は、2007年7月以降、チーフ アーキテクトとしてIBM i の開発の陣頭に立ってきました。それ以前にも、ソフトウェア開発者、アーキテクト、およびストラテジストとして22年間IBMで過ごしています。実に、長い年月です。
Will氏は、自身のキャリアが終わりに近付いているという素振りはまったく見せませんでしたが、新たな顔触れとなるロチェスターの若手IBM i プロフェッショナルたちが、どのようなキャリア パスを辿って行くのかについて、そして、それらの若手開発者のうちの誰が、今後数十年間のIBM i の開発を率いることになるのかについて、少し思いを巡らせていることは確かなようです。
「次の世代を担う新たな開発者たちです」とWill氏は若い新規採用者の写真に触れながら述べます。「今から15年ないしは20年後のチーフ アーキテクトはこの画面の中にいます、と私はZoomミーティングで述べました。もちろん私以外でですが。」