IBM、エントリーPower Serversの拡張I/Oを改良
信じられないかもしれませんが、最初のPower9サーバーが出荷されてから2年半が過ぎました。そして、エントリーPower Systemsマシンが初めて発表されてからは2年と少しになります。エントリーPower Systemsマシンというのは、ヒューストン出身のカントリー ロック ブルース バンド(ZZトップ)にちなんで「ZZ」というコードネームが付けられた、Power S914、Power S922、Power S924マシンのことです。そして、今日、これらのマシンについて、I/Oの大改造が行われています。
そしてIBMは、特別にIBM i のショップに向けて、Power S922のシングル コア バージョンを発表しています。そのバージョンのPower S922は、この数年間IBMが販売を行ってきて、 3度目となる営業活動終了日の延期が発表されたばかりのシングル コアPower S812に比べて、取得コストがより低いだけでなく、出費に見合うだけの価値をより多く提供します。
IBMのCognitive Systems部門のスケール アウト システム向けプロダクト オファリング管理担当ディレクター、Dylan Boday氏が、そうしたPower9マシンに対する変更について概要を説明してくれました。より多くの情報が得られたら、詳しく掘り下げるつもりですが、さしあたって、現時点で分かっていることについて述べておこうと思います。
まずは、エントリーPower9マシンに対する機能強化から見てみましょう。もちろんIBMは、同社のハイブリッド クラウドの事業戦略の一環で、これらのマシンを市場に投入していますが、皮肉なことに、顧客は、IBM Cloudでそれらが利用可能になる前に、オンプレミスでの使用のために、これらのI/Oが強化されたエントリーPower9マシンを購入することができます。しかしIBMは、最終的にはこれらのマシンを自社のクラウドに展開することになるだろうと思われます。その理由はすぐに明らかになります。
Power9エントリー マシンのオリジナル バージョンにはモデル名に「A」という記号が、新たなI/O強化バージョンには「G」という記号が付けられているため、それで区別することができます。もし自分がIBMの立場だったとしたら、その名前の付いたインスタンスでGバージョンをクラウドに展開し、古いバージョンをAラベルにリブランドして、それらの価格の値下げを行うことでしょう。AバージョンのI/O機能は、特に、Gマシンとの比較で、Aマシンに接続できるNVM-Expressドライブの数に関して、大幅に低下することになるからです。
Boday氏は、AマシンとGマシンの違いを分かりやすくするために、Power S914、Power S922、およびPower S924マシンの違いを示す3つの表を気前よく提供してくれました。そして、参考までに説明しておくと、製品名の「9」はCPU世代であり、次の数字はソケット数を示し、3番目の数字はマシンの高さ、すなわちラック ユニット数を示します。これは、I/Oおよびストレージ容量の相対的な尺度となります。
概して、IBMは、レガシーなPCI Express 3.0ペリフェラル スロットを取り除き、全面的にPCI Express 4.0ペリフェラルへ移行しようとしています。このことは、Power9'の後継でIBMが行ってくれるだろうと実のところ期待していたことです。 Power9'の後継では新たなメモリー技術を採用とアナウンスされるのを期待していました が、まだそれにお目にかかっていません。PCI Express 4.0への移行により、IBMはシステムにより多くのNVM-Expressドライブを接続することが可能となります。これらは、SATAまたはSASフラッシュ ドライブの使用に比べてはるかに効率的であり、また、コストも大幅に低減されているため、ディスクベースのストレージの代替品になっています。下図は、Power S914 AおよびGシステムの性能データです。
興味深いのは、IBMが、NVM-Express M.2フラッシュ スティック メモリー フォーム ファクターをAシリーズ マシンから撤去し、それらを4つのNVM-Express U.2フォーム ファクターに置き換えていることです。オペレーティング システム イメージのホスティングには、M.2フォーム ファクターが良いと思います。そして、M.2フォーム ファクターは、サイズおよび形状が従来のSSDにより似ているU.2フォーム ファクターと比べて安価です。推測の域を出ませんが、M.2フォーム ファクターは、ミッション クリティカルなシステム向けには、信頼性が基準に達していないのかもしれません。ハイパースケーラーはこれらが大のお気に入りですがが、彼らのソフトウェアおよびストレージはすべて複製されているため、1つのシステムにおける障害については気になりません。V
PCI Expressスロットの数は同じままであり、PCI Express 3.0スロットを4.0に置き換えたところでは、速度がちょうど2倍になります(16レーン(x16)スロットは、PCI Express 4.0では32GB/秒、PCI Express 3.0では16GB/秒での動作となります)。
以下は、Power S922 AおよびGマシンの比較です。
ご覧の通り、ラック数が減りスペースが狭くなると、I/Oおよびストレージ拡張が非常に窮屈になってしまいます。
そして、以下は、Power S924のAおよびGモデルの比較です。
比較的キャパシティーのニーズが低めの多くのIBM i のショップにとって一番ワクワクする知らせは、メモリー容量64GBのシングル コア バリアントの新たなPower S922があるということです。ここ数年間、製品寿命が延長されてきたPower S812を実質的に置き換えるものです。IBMがPower S912を出すことはなかったため、そのギャップが埋まることになります。詳細な仕様はまだ分かりませんが、現時点で分かっていることを以下に記します。
Boday氏によれば、Power S922のシングルコア バージョン(P05ソフトウェア ティア)の総取得コスト(TCA)は、既存のPower S812の価格に比べて約10%低く(両ケースともディスク ストレージではなくNVM-Expressで推定)、パフォーマンスは2倍(IBMのCommercial Performance Workload(CPW)ベンチマーク テストによる測定)ということです。そして、PCI Express 4.0の機能強化のおかげで、I/Oキャパシティーも2倍となります。IBMがメイン メモリー容量を128GBに倍増しなかったことはやや意外でしたが、このことからすると、IBMは、このマシンが完全にバランスのとれたマシンとなることは望んでいないようです。IBMでは、メモリー フットプリントがより大きい顧客には、より大きい容量の(そしてより高価な)システムを購入してもらいたいと考えているわけです。
ところで、IBM i のショップをターゲットとしているこのシングルコアPower S922バリアントは、ネイティブにIBM i をサポートします。仮想入出力サーバー(VIOS)は必要ありません。このことは、多くのIBM i 顧客にとっては朗報と言えるでしょう。彼らのマシンでは仮想化エンジンとしてIBM i とそのペリフェラルの間に入るこのAIXの媒介を必要としていないか、望んでいないためです。
さて、プレスリリースの時点で、IBM i チーフ アーキテクトのSteve Will氏は休暇中だったのですが、彼は新たなシステムに関する次のようなメモを渡してくれました。
7月14日、IBM Power Systemsに関するいくつかの新たな発表が行われます。それらの発表に合わせて、IBM i 7.4 TR2 PTFグループ(SF99737 PTFグループ レベル2)およびIBM i 7.3 TR8 PTFグループ(SF99727 PTFグループ レベル8)が、7月17日にリリースされます。
新たなTR PTFグループは、数多くのクライアントおよびパートナーから要望のあった1コアS922オファリングを含め、IBM Power S924、S914、S922の新たな「G」モデルをサポートします。
これらのシステムには、Gen4 PCIeおよびGen4 NVMeスロットが備わっているため、新たなデバイスおよびそれらのシステムでの使用のサポートも、PTFグループに含まれています。また、春に発表されたIBM i テープ仮想化機能が、TR PTFグループに組み込まれています。
今後のテクノロジー リフレッシュに関しては、平常への復帰というのが我々の意向です。すなわち、TRを発表し、TR PTFグループをあまり間隔を空けずにリリースして行く予定です。ただし、状況によっては、再び間隔を空けることが必要になることもあるかもしません。その場合には、クライアントが期待されていることについて、よりはっきり理解できることと思います。
最新の情報を提供していただき、Will氏には感謝したいと思います。代表して、お礼を述べます。
詳細については、今後の『 The Four Hundred』の記事で深く掘り下げる予定です。