ゾンビグリーン スクリーンの逆襲
より優れたグラフィカル ユーザー インターフェース(GUI)が台頭したことにより、何年も前に滅亡したはずのコマンド ライン インターフェース(CLI)が、IT界全般でゾンビのごとく甦りつつあるようです。そして、コマンド ラインの愛は、IBM iへとあふれ出ています。
コマンド ライン インターフェースは、IT界から完全に消え去ったわけではありませんでした。Windows 10のユーザーでさえ、キーボードやマウス、さらにはタッチスクリーンから、DOSプロンプトの黒魔術を呼び出すことができます。しかし、CLIは、まるで厄介者の身内やクレジット カードの借金かのように、様々な理由から(心配や恥ずかしさからでしょうか)、ほとんどが見えないところに隠され、表に出ないようにしておかれてきました。
時代の流れに逆らうことを恐れない幾人かの勇者たちのおかげで(あるいは、レトロな技術を見せたがる流行に敏感なフルスタック エンジニアたちなのかもしれませんが)、CLIはちょっとしたルネッサンス期を迎えつつあるようです。「古風な」(言い換えれば信頼性の高い)システムを頼みにしてきたせいで、主流派となっている技術プロフェッショナルから長いこと見下だされてきたIBM iプロフェッショナルにとっては、これは良い知らせと言えそうです。
主流派の技術ニュース サイト、 ZDNetに掲載されている Simon Bisson氏による記事では、業界がCLI寄りになりつつある現状について記されています( 「Good news for developers: The CLI is back」)。
「1つのペインでコードを書いて、別のタブでそれをテストしながら、同時にビルトイン ターミナル ウィンドウを使用してサービスを構成することができます」とBisson氏は記しています。「アプリケーションの切り替えや、さらにはウィンドウの切り替えさえ、まったく不要です。」
Windows環境におけるDOSプロンプトに加えて、 Microsoft は他の様々なCLIを提供しています。代表的なものとしては、5月にMicrosoftがWindows 10向けに発表した新たなターミナル、Windows Terminalがあります。Windows Terminalでは、開発者は、DOSプロンプト、PowerShell、さらにはLinuxサブシステムなど、複数のタブをハウジングすることができます。
また、Salesforce 社も、開発者がすべてのForce.comアプリケーションにわたって作業を管理することを可能にするシングル コンソールであるSalesforce CLIで、CLAに参入しようとしています。Salesforce社によれば、同社のCLIの主な特長は、開発およびビルド自動化タスクを簡略化できるということのようです。Salesforce CLIは、Salesforce社によって開発が始められましたが、現在は、オープンソース プロジェクトとして維持管理されています。
CLIは、別のオープンソース環境では大きな存在となっています。すなわち、Linux環境です。おそらくLinuxという技術的なルーツのために(少なくともWindowsと比較して)、コマンド ラインはLinuxでより広く使われ、受け入れられています。開発者は、PythonやNode.jsなどの言語で CLIアプリケーションの作成 を行ってさえいるようです。CLIは、JavaやSaclaからPHPやGoまで、様々な言語をサポートするPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)オファリングである Herokuの固有コンポーネントです。
パワー ユーザーは、ずいぶん前からCLIの密かな長所に気付いていました。すなわち、スピードです。キーボードに手を置き、それをうまく使用するための知識があれば(つまりファンクション キーおよびマクロ キーの組み合わせを覚えていれば)、マウスとGUIだけでアプリケーションを操るより効率よく作業できるのは間違いありません。
もちろん、ここIBM iプラットフォームでは、CLIが実際に消えてなくなったことはありませんでした。IBM iのショップに足を踏み入れれば、古き良き、黒地に緑の5250インターフェースを目にするのがほとんどです。IBMは、IBM iアプリを開発し、そのプラットフォームを管理するためのGUIツール( IBMのNavigator for iおよびJavaベースのAccess Client Solutions(ACS)製品など)を提供していますが、多くのIBM iプロフェッショナルたちは、 新たに使用されるようになったMidnight Commander ツールなど、グリーン スクリーン ユーティリティおよびコマンド プロンプトを使用し続けています。
サードパーティ ツールおよびアプリケーション市場でも同じことが言えます。ISVは長い間、GUIとグリーン スクリーンのオプションの提供を強いられてきました。グリーン スクリーンからユーザーを遠ざけようとする試みは、言ってみれば激しい抵抗に遭ってきたわけです。
CLIの使用に関してIBM iがユニークである点は、CLIが伝統的に管理者や開発者だけでなく、実際のエンド ユーザーのメインのインターフェースであったということです。開発者はグリーンスクリーン インターフェースを使用するように5250アプリケーションを設計しました。一方、WindowsおよびLinuxではCLIは主に開発者および管理者によって使用されるものです。
IBM iサーバー上にもWebおよびモバイル アプリケーションが増えており、Windowsファット クライアント(一時的なJavaクライアントはさておき)が引き続き人気であるのにもかかわらず、グリーン スクリーンの使用は、このプラットフォームでは実際、増加しています。
HelpSystems 社の「2019 IBM i Marketplace Survey」によれば、調査回答者の35%は5250グリーン スクリーンが「メインのアプリケーション」であると答えていました。これは、2018年の33.8%から、そして2017年の31.8%から上昇したものでした。アプリケーションは主にグラフィカルだと答えている回答者のパーセンテージは、あまり変わりなく、12%程度です。
それでは、ここでコマンド ライン インターフェースの益々のご活躍を祈って乾杯しましょう。GUIにも魅力的なところがあるのかもしれません。しかし、本当に仕事を片付けたいときは、CLIを選んだほうがよいでしょう。ゾンビWindowsの管理者でも、そのことは分かっています。