最新のIBM i TRについて掘り下げる
秋のテクノロジー・リフレッシュ(TR)が公開されました。IBM i 7.3および7.4を使用している顧客が利用可能ないくつかの新機能があることは予想通りです。この記事では、オープンソース、システム管理および監視、開発の分野での機能強化について取り上げます。データベースやHA/DRなど、他の分野については、今後の記事でより深く掘り下げる予定です。
まずは、お楽しみのオープンソースから見てみましょう。IBM i 7.3 TR7および7.4 TR1では、ZeroMQとRedisという注目を集めている2つのオープンソース プロジェクトがサポートされるようになりました。
ZeroMQ は、ユーザーが非同期方式で様々な転送メカニズム間でメッセージを送受信することを可能にする汎用メッセージング ライブラリーです。このソフトウェアは、PGM(Pragmatic General Multicast)、プロセス間通信(IPC)、スレッド間通信(ITC)、およびWebSocketだけでなく、TCPおよびUDPのようなプロトコルをサポートしています。AT&T、Microsoft、およびSpotifyといった企業によって本番環境で使用されており、要求-応答(request-reply)、パブリッシュ-サブスクライブ(publish-subscribe)、プッシュ-プル(push-pull)、および排他的ペア(exclusive pair)など、複数のパターンで使用されるように設計されています。
このメッセージング システムは多数の言語をサポートしており、ほとんどのオペレーティング システムで利用可能です。IBM iでは、IBMはZeroMQのPythonバインディングであるPyZMQをサポートしています。これにより、PythonベースのIBM iアプリケーションがこのライブラリーで動作することが可能になります。
Redis Labs社という企業によって開発が管理されており、文字列としてデータを保存できるだけでなく、文字列のリストおよびセット、ハッシュ テーブル、地理空間座標、さらには確率的データ構造など、抽象データ型としてもデータを保存できる機能が特徴的です。
そのため、Redisコミュニティはそのルーツであるキー バリューの域を超えてデータ ストアを拡張してきました。そして今日では、Redisは、必要に応じてJSONドキュメント ストアやグラフ データベースへと姿を変えることができる本格的なマルチモーダル データ ストアになろうとしています。そのうちに時系列データベースとしてさえ機能できるようになるかもしれません。活気にあふれる開発コミュニティにより、たとえば地理空間エクステンションやApache Sparkコネクタなど、その他の重要な機能が追加されています(多くの Nagios 社と提携して、ユーザーがIBM iノードまたはLPARをNagiosダッシュボードに追加するプロセスを支援するウィザードを作成しています。
また、別のウィザードも作成されました。顧客はNagiosダッシュボードから多くのIBM i SQLサービスを監視できますが、このウィザードは、それらのSQLサービスを監視するためのカスタムSQLコードの作成を支援します。詳細については、 こちらを参照してください。
「プラグインは2年前からありました。しかし、これにより、NagiosコンソールにIBM iを追加するプロセスが簡略化されます」とRowe氏は述べます。「数多くの顧客が、Nagiosを使用してITインフラストラクチャーの多種多様なコンポーネントを監視してきました。非常に簡単にIBM iをNagiosコンソールに追加することができるため、1つのダッシュボードでITインフラストラクチャーのすべてを監視できます。」
システム管理および監視の分野では、新たな機能がAccess Client Solutions(ACS)に追加されています。ACSは、多くのユーザー、エンジニア、および管理者がシステムと対話処理する際の標準的なツールとなっているJavaベースのプログラムです。
ACSの機能強化
ACSには、SQL Content Assistなど、いくつかの新機能が追加されました。SQL Content Assistは、IBMによれば「より良いものだけ」をプロンプトする機能ということです。また、「例から挿入」の新機能や、新たな2つのボタン(結果のダウンロード、新たな用例として保存)も加わっています。
グリーン スクリーン プログラマーにとって、今回のリリースでのF8キーの新機能は、うれしい機能と言えるのではないでしょうか。ACSの5250エミュレーターでは、ユーザーは長年、F9ボタンを押して最近使用したコマンドをスクロールする機能を頼りにしてきました。F9ボタンを押し過ぎて、使用したいコマンドを通り過ぎてしまった場合に、F8を押して、そのコマンドへ戻ることができるようになりました。新たなF8キーの機能により、一巡して望みのコマンドへ戻るまでF9を押し続ける必要がなくなります。これは、今回のTRでの一番の新機能と言えるかもしれません。
また、IBMによれば「PASE環境の一部としてネイティブに稼動する」ODBCドライバーをサポートする新たなACS Application Package for IBM iが追加されました。このフィーチャーにより、PHP、Python、およびNode.jsからDb2データベースへのODBCアクセスが可能になる、とIBMは述べています。
RPGの機能強化
開発の分野では、Rational Development Studio for i(RDS)パッケージの新たなDATA-GENおよびDATA-INTO命令に、RPG開発者の注目が集まりそうです。
これとは逆の処理を行うのがDATA-INTO命令であり、DATA-INTOは、ユーザーがJSON型ファイルをRPGのデータ構造へ変換、またはJSONドキュメントをRPGに「shred(細断)」することを可能にする、とIBM iオファリング マネージャーのAlison Butterill氏は述べます。「データベース表ではJSONサポートがありました」とButterill氏は述べます。「しかし、直接使用したい場合には、JSONデータをRPGデータ構造に入れて、好きなように処理することができます。」
また、RPGには、新たなOVERLOADキーワードでの多重定義のサポートが加わります。この新機能により、他の開発言語の一般的な機能である、同じ小さなプログラミングで2つ以上の関数を定義する機能がプログラマーに提供されます。RPGの多重定義では、プログラムは、指定されたパラメーターに応じてどのプロシージャーを呼び出すかを決めます。
また、OPTIONS(*EXACT)も追加されました。これは、呼び出されたプロシージャーが、渡されたパラメーターと同じ値を受け取ることが保証されるようにします。これらのRPGの機能強化の詳細については、 RPG Caféを参照してください。
データベースやHA/DRシステムに対する機能強化など、さらに多くの新機能がIBM i 7.3および7.4に追加されています。それらの新機能については、今後の『 The Four Hundred』の記事で取り上げる予定です。