IBM i のモダナイゼーションの現状に関する調査レポート
IBM i のショップにはそれぞれ、プラットフォームに関する独自の来歴と、変化に対応するための独自のアプローチがあるものです。まだ今が1988年であるかのようにサーバーを稼働しているショップもあれば、時間と資金を投資してシステムおよびアプリケーションをモダナイズしてきたショップもあります。IBM i コミュニティ全体にわたってのモダナイゼーションの現状を把握しておくことは、このIBM i の長い旅路の中のどこに自分が位置しているかを知り、組織が新たな課題や機会に向けて準備をするのに大きな一助となります。
IBM i サーバーは今年で30周年を迎え、それを記念した業界イベントが世界各地で開催されました。これほど長い道のりを歩んできて、さらにまだ進むべき旅程を残しているコンピューター プラットフォームなど、他にあるでしょうか。IBM i サーバーには10年間以上にわたるロードマップが策定されているため、事業運営のためにこのシステムを選んだ組織は、自分で自分を褒めてあげるべきでしょう。良いものを選んだことは間違いありません。
しかし、コンピューティングの世界で30年にわたって成功を収めてきたことを、めでたいことと考える人ばかりではないようです。そのような否定論者たちは、今日のプラットフォームに備わっているなかなかの機能に目を向けることもなく、将来プラットフォームが向かう先についてIBMが語っていることに耳を傾けることもしないで、今日の最新のIBM i サーバーを、レガシーというレンズ越しに眺めているのです。彼らにとってIBM i サーバーというのは、何年も前にミネソタのトウモロコシ畑からやってきたあのAS/400と何ら変わりないのかもしれません。
一部のIBM i のショップがアプリケーションを稼働し続けている様を見れば、こうした見方になるのも、ある程度は仕方ないとも言えそうです。5250グリーン スクリーンを生成する、古いモノリシックな固定フォーマットRPGコードを介して、しばしばサポートが終了した旧式のオペレーティング システム上で稼働していたりするのですから。サーバーやオペレーティング システムが最先端の機能を備えていて、Git、Node.js、Pythonといった最新の開発ツールをサポートしているとしても、IBM i のショップの大多数がそれらを十分に活用しているというわけではないようです。
それでは、ここからどこへ進むのでしょうか。IBM i のショップは、過去のIBM i とのつながりを断ち切ることなく、最新の技術的進歩の恩恵に預かることを可能にするモダナイゼーション プランを、どのようにしたら策定できるのでしょうか。まずは、現在の立ち位置がどこなのか理解し、モダナイゼーションの現状を評価してみることです。
IBM i のモダナイゼーションの現状
過去2年間、筆者の勤務先であるProfound Logic社は、IBM i コミュニティでモダナイゼーションの現状を評価するための調査を実施してきました。コミュニティを総体的に分析する調査は他にもありますが、それに見合うだけの注目を得ていない、こうした重要かつ緊急の問題に焦点を当てた調査は、Profound社の「State of IBM i Modernization(IBM i iのモダナイゼーションの現状)」だけのようです。
出典: Profound Logic社、2017年版「State of IBM i Modernization」レポート
2017年版「State of IBM i Modernization」レポートの調査結果では、2016年の調査と比べて回答率が20%増加し、合計500人以上のIBM i ユーザーから回答を得られたことなど、いくつかの好ましい傾向が見受けられます。また、2016年の調査との比較では、IBM i の最新バージョン(7.3)を採用したユーザーは14%であり、以前のバージョン(7.1以前)の使用は17%減少しています。
言語およびコードに関しては、フリーフォームRPGの使用は75%から79%へ増加し、固定フォーマットRPGの使用は85%から61%へ減少しました。PHPおよびJavaScriptなどのオープンソース言語の使用率は、前年と変わらず高いままです。
もうひとつのプラットフォームの健康バロメーターとして、プラットフォームを使用している開発者の構成があります。新たな開発者の人材難と、迫りつつある現役開発者の大量退職は、2017年の調査回答者の間でも最大の懸念事項だったようです。けれども、開発チームの構成(新規に採用、人員数の変化なし、チームを縮小)は、2016年と2017年とでほとんど変化していません。開発チームの67%が人員数の変化なし、21%が新たな開発者を採用、15%が開発を規模縮小または外注化しています。
今回の調査では、過去のIBM i のレガシーも垣間見えました。使用している(自社製ではなく)サードパーティ アプリケーションの50%以上で最新のGUIが使用されているとの回答は、34%だけでした。回答者の26%では、使用しているすべてのサードパーティ アプリケーションでグリーン スクリーンが使用されていると回答しています。
2017年の調査では、経営幹部がこのプラットフォームについて複雑な気持ちを抱き続けていることも示されています。2017年のモダナイゼーション調査の回答者の36%が、このプラットフォームの展望は明るいと回答し、27%が否定的な見通しを持ち、37%はどちらとも言えないとの回答でした。これは2016年からほとんど変わっていません。ただし、プラットフォームについて明るい展望を持っている理由には勇気づけられるものがありました。IBM i を使用し続ける主な理由として、回答者の大多数がアップタイムと信頼性、セキュリティ、およびサポートの容易さを挙げています。
一部のIBM i を使用している組織が、システムに投資を行わないのはなぜなのでしょうか。記事の冒頭で記したように、組織にはそれぞれ、プラットフォームに関する独自の来歴があるため、多種多様な組織の行動を説明できる共通の原因を見つけようとするのは難しいのかもしれません。
モダナイゼーションの妨げになっているものは何かと調査回答者に尋ねたところ、その回答は、驚くには当たらないと思えるものでした。回答者の26%が「経営幹部が反対」を原因として挙げ、コストが17%でこれに続きました。その他の理由としては、リソース不足(15%)、時間不足(9%)、およびネイティブなIBM i GUIがないこと(7%)が挙げられています。
モダナイゼーションの取り組みを妨げている最大の課題という点では、IBM i ユーザーが挙げた最も多い回答は、旧態依然のUIでした。これに、開発者要員の減少、レガシーなソース コード、経営幹部のプラットフォームに対する信頼不足が続きます。予算不足や、オープンソース開発のためにさらに多くのサポートが必要という回答も挙げられています(ツールの価格とともに、IBMのマーケティング不足というのが、IBM i モダナイゼーションに関する最大の課題の1つとして挙げられているのは興味深いものがありました)。
出典: Profound Logic社、2017年版「State of IBM i Modernization」レポート
こうした調査結果から、大多数のIBM i のプロフェッショナルが自身のプラットフォームで行いたいと明言していること(すなわち、システムのモダナイズ、ユーザー インターフェースの改善、基礎となるコードのアップデート)と、実際に自身のシステムで行っていることとの間で乖離があることが見て取れます。
ここからどこへ向うのか
次年度版の「State of IBM i Modernization」の調査の開始(1月28日まで、https://www.surveymonkey.com/r/it-jungleにてご参加・ご回答いただけます)に当たって、以下に示すような、じっくり考えてみるに値するテーマがいくつか挙げられています。
- 最新のUIおよびモバイル アプリケーションを開発するために、IBM i iのショップがたやすく実施できる方策にはどのようものがあるか?
- モダナイゼーションの場面で、サードパーティ ツールはどのような役割を果たすことができるか?
- 手頃なプロフェッショナル サービスを利用できるとしたら、IBM i の組織はモダナイゼーションにすぐに取り掛かるか?
- モダナイゼーション プロジェクトにおいて、PHPやNode.jsのようなオープンソース ツールはどのような役割を果たすか?
- 経営幹部および意思決定者の間でのIBM i の認識を改善させるために、どのような方策を取ることができるか?
これらはすべて現在公開されている質問ですが、もちろんこの他にも数多くの質問が用意されています。IBM i のプロフェッショナルには、自身のキャリアの基礎を置くことを選んだプラットフォームの将来について思いを巡らせる権利があります。統計データからは、一部のショップではプラットフォームに対する信頼が低下しているものの、プラットフォームを強化し、バージョン7.3へのアップグレードや最新の言語およびUIの使用、このプラットフォームの新たな開発者の採用に多額を投資しているショップもあることが見て取れます。
IBM i のことを「行き詰まり」と見る人もいるようですが、真にその機能や長所を理解している人は、それが真実でないことを分かっています。適度な投資と多少の自信があれば、どのIBM i のショップも、斬新な未来へと向かう道筋を描くことができるのです。ぜひとも、モダナイゼーションについての議論に参加して、ご意見をお聞かせください。2018年版「State of IBM i Modernization」の調査は、https://www.surveymonkey.com/r/it-jungleにてご参加いただけます。