PHPとIBM i:魔法の10年
オンラインの世界で、ワールド ワイド ウェブ(WWW)が誕生してから25年以上が経ちました。今日、社会人の仲間入りをする若者は、WWWのない世界を知りません。しかし、1990年代半ばにグリーンスクリーン端末で作業していた人々にとって、モデム接続したPCで初めて見るWWWは魔法のようなものでした。
そして、その魔法を届ける能力は、当初、PHP/FIと呼ばれた開発言語の登場によって爆発的に広がりました。もともと、1994年にRasmus Lerdorf氏によって開発されたPHPは、Personal Home Pages and Form Interpreter(個人用ホームページおよびフォーム インタープリタ)の略語でした。PHPは、ウェブマスターと呼ばれる新たなタイプの開発者に、動的でインタラクティブなウェブページを比較的簡単に作成する方法をもたらしました。多くのウェブマスターが、コンピューター サイエンスからではなく、デスクトップ パブリッシングの世界からこの職種へ移ってきたため、PHPはプログラミング原則についての深い理解を必要としませんでした。
数年後、Zeev SuraskiとAndi Gutmansという2人の大学生が、学期課題としてPHPを選択しました。彼らはスクリプト エンジンを書き直し、言語の堅牢性とビジネス即応性を示すべく、言語の名前をプロフェッショナル ホームページへと変更しました。その後もう一度、プロジェクト名が変更され、再帰的頭字語である、PHP: Hypertext Preprocessorとなり、現在に至っています。1998年6月には、PHP 3と呼ばれる改訂されたスクリプト エンジンが発表されました。PHPの人気は急上昇し、1999年には、Suraski、Gutmansの両氏はPHPの核となる部分の書き直しを始めました。これがZend Engineとなります。Zendとは、Zeev氏とAndi氏のファーストネームを組み合わせて作った言葉です。また、同じ年に彼らは、イスラエルでZend Technologies社(現Rogue Wave Software社)を設立しました。これはオープンソースのPHP言語を商業的に支援することを目的とするものでした。
今日、PHPは、世界で最もポピュラーなWebおよびモバイル開発のための開発言語となっています。PHPを中心にした、ツール、フレームワーク、IDE、および開発者コミュニティのエコシステムも成長してきました。また、PHPは依然として比較的学びやすい言語ではありますが、PHP開発者の職は、ウェブマスターに比べて、ずっと社会的地位が高く、お金になる仕事です。
箱の中の魔法
基本設計を理解するのに十分なくらいIBM iに深く関わってきた人なら、少なくとも一度や二度は魔法を感じる瞬間があったはずです。SLICから、オブジェクト ベースのオペレーティング システムを経て、世界で最も高機能のデータベース オプティマイザのうちの1つに至るまで、IBM iは常に充分に進歩してきました。
IBM iの機能を称賛する記事がたくさんあります。特に、業界のはるか先を進んでいた技術、たとえば、フラッシュ ストレージの初期の例としての単一レベル記憶について取り上げられることがよくありました。1990年代末まで遡ると、IBMは、システムのメモリーにインデックスを格納できる機能を活用することよって、データベース ベークオフ コンテストでOracleを打ち負かしていました。この機能は非常に先進的だったために、ほとんどのライバル企業は、どのようにしてIBMが勝利したのかまったくわかりませんでした。
まさに魔法です。
魔法を合わせる
2000年代初めには、箱の中の魔法をよそに、ユーザー インターフェースの面でAS/400は今一つであることが明らかになってきました。グリーン スクリーン端末は、マニュアルでのデータ入力にとってはとても効率的であったし、そうであり続けていますが、ネット接続された世界では、ドロップ ダウン リストやチェックボックスを始め、場所や時刻や画面の前のユーザーといった、その場の状況に応じたダイナミックなコンテンツが求められるようになりました。
これと同時に、より速くイノベーションを実現するためのビジネス モデルとして、オープン ソース ソフトウェアが台頭するようになりました。オープン ソース ソフトウェアは、魅力的ではあったものの、2003年にライセンス侵害とオープン ソース ソフトウェアをめぐる訴訟に巻き込まれたIBMにとっては危険を伴うものでした。IBMはアプリケーションのモダナイゼーションに対する、素早い、革新的なアプローチを必要としていましたが、オープン ソースを大規模に採用することは現実的ではありませんでした。
Zend社は、理想的なソリューションを示しました。また、PHPの主要な貢献者であるZend社はPHPの商用バージョンである、Zend Serverを販売していました。Zend Serverは、モダナイゼーションのためのポピュラーなオープン ソース環境を提供する一方で、正式な商用ライセンスも提供していました。こうして、2006年、IBMとZend社は、それぞれの最も強力なIT資産を保護しつつ、何千もの顧客を未来へと向かわせることを可能にするパートナーシップを開始しました。
この10年間、PHPは、顧客が手続き型プログラミングからオブジェクト指向開発へスムーズに移行する支援をしてきました。大規模なモノリシック アプリケーションの構築に慣れているRPGおよびCobol開発者は、手続き型方式でPHPアプリケーションの開発を始めることができ、徐々にフレームワーク アプローチに適応することができます。
魔法を生かし続ける
今後、すべてのIBM iショップの目の前にモバイル開発の波がやってくることに疑いの余地はありません。クライアント サーバーへの進化が業界を直撃し、ユーザーがグラフィカル ユーザー インターフェースを求めたとき、AS/400のショップには、伝統的なグリーン スクリーン インターフェースからデスクトップ モニターへ移行するためのいくつかの選択肢がありました。残念なことに、そうした技術の多くは、結局のところ、一時しのぎだったようです。
他方、PHPは時の試練に耐えてきました。総勢2百万を超える世界中のコミュニティで、PHPはモバイル デバイスの急速な普及に合わせて進化を遂げてきました。Zend Serverは、API構築用の高度に規範的なツールであるApigilityなど、モバイル アプリケーションの開発を簡略化する技術を提供します。アプリケーション開発の次の波は、PHPのような柔軟性の高い開発環境を必要とします。Zend社は、開発チームがアプリケーションを構築する際にモバイル ファーストのアプローチを採用する手助けをしています。
Rogue Wave Software社の一部門となったZend社は、データやビジネス ロジックをIBM iに置いたまま、IBM iショップがこうした最新のインターフェースおよびデバイスへ移行するのを容易にします。IBM iからの大規模な移行が必要となるモダナイゼーション技術は、システムの価値(あるいは、魔法)についての認識を誤らせます。Rogue Wave社とIBMは、協力関係の下、この先何年にも渡って、セキュアで、信頼性が高く、効率の良い、新たなおよび既存のアプリケーションのための環境を提供し続けようとしています。