IBM iがEdgeカンファレンスで見つけた場所
IBM iコミュニティは、プラットフォーム特有の性質を持って生まれ、育ちました。それが、IBMのITの世界における長年のありかたでした。今ではもう、そうではありません。iおよびAIXを稼働しているIBM Power Systemsの戦略は、はるかにオープンなものになっています。それはOpenPowerおよびOpenStackの方を向いているからです。Power Systemsのロードマップでは、クラウドおよびコグニティブ コンピューティングが強調されています。先週開催されたIBM Edgeカンファレンスでは、そのことについて疑う余地はまったくありませんでした。それでは、iには何が残されているのでしょうか。
Power Systemsのゼネラル マネージャー、Doug Balog氏によれば、たくさんあるとのことです。IBMは、IBM iに投資し続けるとBalog氏は述べます。7.1、7.2、および7.3とOSを連続してリリースし、企業本体が熱心に顧客の要望をモニターし、応えることで投資への指標としています。
Balog氏は、Power Systemsの山頂から、活気のあるマネージド サーバー プロバイダー ビジネスを取り込むIBM iエコシステムを眺めています。これはクラウドのためのPower Systemsのロードマップにうまく当てはまります。彼はこの眺めが気に入っています。しかしまた一方では、彼は自分が好むものを見ていると信じるだけの理由があります。
「ビジネス モデルとしてIBM iに重点を置くことにしているMSPは世界各地に何百もあります」とGMは述べます。「そうしたMSPは非常に地域的であり、通貨やスキルやモダナイゼーションの問題に奮闘しているIBM iクライアントを狙いに定めています。そうした顧客は支援を求めています。誰かがそれを引き受ける必要があります。MSPが、支援の供給源になります。」
そうした奮闘は現実に存在しています。支援は不可欠です。誰が支援するか、どのようなクラウドが最適なのか、コストはどれくらいかかるか、詳しいことはまだ検討の途中です。
ほとんどの場合、IBM iのMSPは、その地域でよく知られた存在です。彼らは、以前からハードウェアを販売してきたIBMビジネス パートナーであり、長年、ツールおよびソリューションを販売してきた独立系ソフトウェア ベンダー(ISV)です。彼らは、IBM iの顧客ベースと信頼関係を築いており、顧客の問題点を把握しています。また、サービスへのニーズが増加しているのを目の当たりにしてもいます。中・小規模のIBM iのショップへ彼らが送るメッセージは、「システムの運用を弊社にお任せください」というものです。
これは新しいメッセージではありません。2年前の『IT Jungle』のインタビューでBalog氏は、データ センターにIBM iサーバーがあるMSPは200以上あることを指摘しています。過去2年間、そうしたMSPの一部には事業の伸びを報告しているものもありますが、需要は鈍いものでした。MSPは、データ センター クラウド インフラのコストが相当高いことと、自身のサービスに対する需要が限られていることに目を向けていました。しかしながら、しばらくゆっくりと推移した後で、そろそろマネージド サービスが勢いを増してくる頃合いなのかもしれません。こうしたことには時間が掛かるものです。
MSPを後押しするために、IBMは、クラウド サーバー インセンティブ プログラムを発表しています。先日のEdgeカンファレンスで発表されたものです。このプログラムには、数年前から市場にあったものの、クラウド対応のためにパッケージし直した技術が組み込まれた、3つのサーバー オプションがあります。サーバーの料金には、インセンティブが導入されます。これも、まったく新しいものではありません。IBMは1月に、Power SystemsのAIX側でのMSPの動きを刺激するべく、EasyScale料金と呼ばれるプログラムを発表しています。先月には、IBM iサーバーに重点を置いているMSPに、スライド式料金体系が適用可能であることを発表しました。
「事業の成長に合わせて支払いを行える料金モデルがあります。少ない投資額で弊社のシステムを導入でき、クライアントの増加に応じてスケールアップ方式で料金を支払う形です」とBalog氏は述べます。C-ClassのPower Systems Enterpriseマシンと呼ばれるクラウド サーバーに、オープン ソース管理ツールと、12か月間のIBMクラウドへのアクセス権が付属します(これらについては来週号で取り上げる予定です。乞うご期待)。
「MSP事業者はこうしたクラウド マシンを購入することになるでしょう」とBalog氏は予想します。「彼らは1つのシステム上で多数のクライアントを稼働させることになり、仮想化機能、HAのためにスケール アップできる1つの筐体が必要となります。」
一方で、この新たなクラウド サーバーおよび価格インセンティブは、オンプレミスでのクラウド環境の構築を計画しているIBM iショップにも利用可能です。
「Powerの顧客(IBM iおよびAIX)からは、核となるインフラをオンプレミスのクラウドへ移行してモダナイゼーションを行いたいという要望が信じられないほどたくさん上がっています」とBalog氏は語気を強めます。「そして、クライアントはオンプレミスのクラウドのままではいたくなくなるものです。彼らは、データ センターにPower Serversがぎっしりと並んだIBMのクラウドに手を伸ばしたくなるのです。サーバー オファリングには、SoftLayer(IBMクラウド)での12か月間のLinux on Powerの利用権が組み込まれています。また、クラウドへのバックアップおよびリカバリーをセットアップするサービスもパッケージに含まれています。」 以前から、IBMビジネス パートナーのデータセンターにワークロードを入れようとするIBM iの顧客にとっての一番の呼び物は、クラウドでのバックアップおよびリカバリーでした。これは、そうしたサービスがクラウドと呼ばれるずっと前から変わりません。
オンプレミスであれ、IBMのクラウドであれ、それらの組み合わせであれ、Power Systemsの戦略は将来を見据えています、とBalog氏は述べます。そのようにさせるのが、彼の仕事です。クラウドの側面は、Linuxやアナリティクスやコグニティブ コンピューティングに重点を置く戦略の一部分に過ぎません。この点については、今週号の別の記事で詳しく取り上げています。
実際のユーザー事例として、オフィス用品販売大手のStaples社が、バックエンド システムを新たなクラウドベース システムへ統合したカスタマージャーニーの成功例を紹介します。特に触れられているわけではありませんが、Staples社では核となっている業務をIBM iで運用していることは広く知られています。内部でのみ使用する情報(オンプレミスで保管)と、外部と共有する情報(IBMクラウドに保管)があったため、同社の選択はハイブリッド クラウドの構築でした。我々のウェブサイト、サプライ チェーン、およびバックエンド システムを運用する鍵となるのはPowerです。アドバイスとしては、まずは始める、クラウドに重みを置く、過剰なことはしない、ということでした。Staples社はサーバー ビルド プロセスを自動化することから始めました。そこから、IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)を構築しました。そうして本番用インフラにまで及びました。
このようにIBM iのショップがPower Systemsのロードマップに率先して挑戦するのを見るのは喜ばしいことです。Staples社がこのような大規模なプロジェクトに取り組むために資源を投じてきたことは明らかです。対極にあるのが、前述した、通貨やスキルやモダナイゼーションの問題に奮闘しているSMBショップと言えるのですが、このケースから見て取れるのは、そうした小規模なショップでも同様に、Power SystemsおよびIBM iが、典型的にプラットフォームに関連付けられていること以外のことを行えるということです。
Balog氏が説明する顧客ベースとは、「プラットフォームから移植しようとしているショップのことではなく、プラットフォームをフルに活用しようしているショップなのです。」
彼はまた、IBM iは、それが生み出す売上の面で安定的だったことについても強調しています。売上は直近の四半期財務報告で1桁台の伸びを示しており、しかもそれは2015年の1年を通しての売上増を受けてのことでした。Power8サイクルの3年目であることを考慮すれば、かなりよい業績と言えます。