いまERPのアップグレードは必要か
ERPシステムの価値とは何でしょうか?ERPを使っているほとんどの企業で、ERPスイートは日常の業務に非常に重要な役割を果たしています。買掛金といった科目や総勘定元帳を操作する集中機能無しには業務を運営できません。しかしながら、ERPのアップグレードということになると、実行するための必要性と根拠を明確にできず、アップグレードを見送る企業が徐々に増えつつあります。
Rimini Streetが最近行った調査によれば、ERPのアップグレードを取り巻く情勢が、特にOracleの顧客に関して明らかになっています。Oracleの ERPとCRMの顧客に向けて第三者保守とサポートを提供しているRimini社は、全世界のOracle顧客に対して行った第2回年次調査で、Oracleのライセンスを得ているユーザーのほぼ半分が最新のアプリケーションリリースから少なくとも1バージョン遅れたリリースを稼働させています。
回答者の64パーセントが、業務用Oracleアプリの現在使用中のリリースが自社の業務のニーズを満たしていると答えており、41パーセントがアップグレードはコストが高すぎると答えています。この調査は現在のOracleアプリケーションの顧客、443社に対して行われたものです。Oracleによれば、回答者の40パーセントはE-Business Suiteのユーザーで、29パーセントがPeopleSoftのユーザー、19パーセントがJD Edwardsの顧客、17パーセントがSiebelユーザーとなっています。
ただ、RiminiはOracleの顧客にOracleの50%の料金でメンテナンスとサポートを提供しているので中立的な立場とは言えません。年間のメンテナンス料金請求額は初期ERPあるいはCRMライセンスの22パーセントを構成しており、RiminiはOracleから数千万ドルのサポートビジネスを奪い取っていると思われます。
Riminiはとりわけ調査作業が困難なFusion (Oracleの次世代ERPプラットフォーム)を採り上げています。Riminiによれば、Fusionを現在稼働させているのは回答者の8パーセントに過ぎず、60パーセントがOracleのFusionあるはクラウドアプリケーションへの移行は投資対効果の検討対象ではないと答えています。さらに、62パーセントがライセンスとメンテナンスのコストが高額であることがOracle Fusionあるいはクラウドに移行しない理由だと答えています。回答者の約10パーセントがOracleのクラウド製品を使っています。
RiminiのシニアバイスプレジデントDavid Roweは「調査結果はOracleの顧客たちが既存のERPとCRMアプリに満足していること、しかしながらコアの機能を拡張するアプリには関心が強いことを示している」と説明しています。さらに「ITの意思決定者は、ERPプラットフォームをアップグレードして新しいモビリティー、アナリティクス、ソーシャル、及びデジタル性能を加えることは必要としていない」と述べています。
ERPは1990年代の中期から後期にかけて業務の自動化を目的としての需要が多く、これがサーバーの売上を押し上げ、実装のスペシャリストの雇用を促進しました。ただ、ERPのインプリメントのピークはY2Kで、以降は成熟期となってイノベーションは横ばい状態でした。
InforのMAPICSとBPCS環境を稼働させている顧客に向けて生産実行システム(MES)を提供しているCrossroads RMCのソリューション・エグゼクティブAnthony Etzelは「過去30年にわたりERPは向上してきた。大変多くの項目が追加されたがモダナイズあるいは自社の業種に基づいて設定を変える以外には顧客にできる事項が多くは無い」と述べています。
Oracle、Infor、SAPといったERPのベンダーが従来から重点的に取り組んできたのは、iPhoneインターフェース及びFacebookフレンドリーな方法でトラッキングを可能にするソーシャルビジネス機能により、フロントオフィスの生産性を高めることでした。
このことは、Crossroads RMCのような企業にバックオフィスの処理に向けたイノベーションと改善を実現させる余地を残しました。
「焦点の多くが、会計パッケージ、顧客の注文、購入の注文、スケジューリングとプランニングに向けられており、これら全てがフロントオフィス向けである。しかしながら、ショップのフロアーに関して言えば、親の無い子供になっている。どうすればフロアーに容易にデプロイしてそのフロアーからのレポートが得られるであろうか?これはいつもなおざりにされてきた分野だった。我々がこの分野に手を付けたことが成功を収めた所以」とEtzelは述べています。
ERPは大変人気が有りましたが今は以前ほどITビジネスを支配する力は有りません。初期は企業に大きなインパクトをもたらして効率化に大いに役立っていました。ただ、現在ERPシステムは安定しており、ビジネスのプロセスは自動化されて、企業にとってERPシステムは当然必要なシステムになっています。そしてERPはいま収益センターではなくコスト・センターになっています。
現在はビジネスも個人も市場はデジタル化に移行しており、企業は大規模なデータ・ドリブンのリコメンデーションとパーソナライゼーションで充実した優秀なWebサイト、モバイル・アプリケーションを備えることを競っており、すべてが卓越したスケーラブルなクラウドで稼働しています。ほとんどの場合、これらの機能はERPのアップグレードでは得ることができません。