手をつないだIBM とAppleの向かう先
今IBM とAppleは無二の親友になっています。両社は企業が従業員にIBMのタブレット用アプリケーションおよびクラウドサービスと共にiPadとiPhoneを与える事業に共同で取り組んでいます。IBMは自社のエンドユーザーにモバイル機器の販売とリースを含むマーケテイングを行おうとしています。ただ、サポートが大変複雑になりそうです。Appleは、遠隔サービスに限定したAppleCareを通して外部サポートの一次提供者の役割を担います。IBMはオンサイトのサポート提供者になります。しかしながら、Windowsを稼働させているユーザーのコンピュータを現在サポートしているチームはどの役割を担うのか明確ではありません。
Appleの電話とタブレットは多くの企業及びその従業員たちから高い評価を得ていることは間違いありません。しかしながら、従業員に個人の機器を業務に使用することを要求している企業にとっては、Apple機器の評価はどうでもいいことといえます。アンドロイドの機器は全世界のスマートフォーン市場の80パーセント以上を握っています。アンドロイドのタブレットはiPadと同じペースで売れており、観測筋がアンドロイドベースの一部分としてAmazonのFireを見れば、Appleが市場の半分とは行かないまでも約三分の一を握っていることが分かるでしょう。ただ、これが全体像ではありません。電話とタブレット市場で、Microsoftが重要な位置づけを築こうとしています。
Microsoftにとっては厳しい環境下での戦いですが、業界はOfficeを有しているこの会社を締め出すことはできません。他方、今までIBMの営業マンからではなくオンラインのストアを通して購入されていたモバイル機器のアプリケーションになると、MicrosoftはAppleとAndroidに数段水をあけられています。またアプリケーションのストアをApple及びAndroidと同等のレベルにすることに注力しているAmazonにさえ、Microsoftは遅れています。
IBMはPCのアプリケーション分野での競争を試み、結果は芳しくありませんでした。IBMの最も明らかな(そして例外的な)成功はNotesで、IBMが有するemailのクライアントと関連サーバーDominoは過去数年間で顕著に伸びました。Notesクライアントはビジネス界の外では人目につきませんが、IBM iシステムとIBMメインフレームのショップではかなりの数のNotesとDominoがインストールされて成功を収めています。IBMはiOSとAndroidに向けたNotesクライアントを提供していますが、Windows用のNotesクライアントほどは普及していません。IBMはiOSのアプリケーションには力を入れていないのでAppleのMailアプリケーションを考えるか、あるいはビジネスユーザーを説得して統合emailクライアントを含むアプリケーションに適合させる方法を見出さなければならないでしょう。
IBMのビジネス顧客がemailをMicrosoft ExchangeサーバーとOutlookクライアントをベースにする場合、全体のプロセスが極めて複雑になる可能性があります。Appleの内蔵メールアプリケーションはMicrosoftのメールサービスで大変スムーズに機能し、またiPhone用のモバイルNotesクライアントとしても巧く機能するはずです。しかしながら、emailサービスのフラグメンテーションによってIBM及び信頼している顧客にとって難しい情勢になり始めています。
もし企業におけるモバイルコンピューティングのemailの局面が扱いにくくなる可能性があるとすれば、従業員がAndroidやWindows電話を使っているIBMのビジネス顧客たちがいかに混乱するかを想像してください。iPhoneでないユーザーをAppleの機器に転向させることは容易ではありません。もし一社でそれらユーザーがターゲットとするユーザー人数の半分を構成していれば、IBMはiOSのサポートと併せAndroidあるいはWindowsのサポートを真剣に考えなければならないかも知れません。
しかしながらIBMのコネクションを使ってビジネス業界からAndroidとWindowsを締め出したいAppleが多分受け容れないでしょう。
もしAppleとIBMが追い求めているビジネスチャンスが米国における中小企業分野では難しい挑戦なのであれば、米国外ではいかに困難であるかが想像できます。
インドにはIBMのソフトウエア開発者が多いのですが、Appleのスマホ使用者は比較的少なく、高収入を得ているIBMの従業員はAppleのスマホを購入する金銭的余裕が有るものの、インドの産業界やサービス分野におけるビジネスユーザーにとっては価格が高すぎます。同様の状況がモバイルコンピューティングに対する強い需要の有る巨大市場、中国及びブラジルにも当てはまります。
電話業界は開発の世界で、ユーザーを惹きつける廉価なスマートフォーンの開発に向かって先を争っており、現時点で首位に立っているオペレーティングシステムはAndroidです。ひとつの例を挙げればLenovoであり、同社はMotorolaのモバイル機器事業を有して、自社の高級モデルよりもはるかに安い価格のAndroid携帯を提供してそのビジネス基盤を構築しようとしています。最も機能の優れたMotorolaの携帯は小売価格で$500~$700ですが、一番売れているモデルははるかに安く、ミッドレンジが$200、エントリーモデルが約$120です。
BRIC諸国のトップ・エグゼクティブたちはAppleフォーンやタブレットを購入する余裕が有りますが、IBMとAppleが自社のビジネスアプリが世界レベルの製品になったときターゲットにしたい中堅クラスのマネージャーは、例えさらに比較的ローエンドのAppleモデルであってもApple製品を購入する余裕は無いでしょう。そしてもしIBMとAppleが今この現実問題への取組を見送る、あるいは先延ばしにして、米国とEUにおけるエンドユーザーに焦点を絞っても一部のビジネスとして成り立つかもしれません。しかしながら、AppleとIBMの製品を購入する余裕のある他国の多くの企業を動かすことはできないでしょう。
さらに企業は自社工場の従業員、小売りに携わる社員、ウエイター、ウエイトレスに至る組織全体にモバイルを使わせようとするので、数百ドルの価格から始まるモバイルでは売り込みが難しいでしょう。
Appleのスマホは極めて優れています。しかしながら、AppleとIBMがアプリケーションを提供し、すべての企業をまとめてサポートするとすれば、両社がターゲットとしたい多くの人々にとっては必ずしも実用的な機器ではありません。そして、もし両社のオファリングが高賃金の有力者のみが経済的にうなずけるものであるとすれば、成功の勝算は極めて低いと思います。Apple-IBMチームに残されている唯一の目標達成の指針は、もしIBMのアプリケーションがインストールされているiPhoneとiPadを押し進めてIBMのクラウドサービスに繋げたいのであれば、すべての従業員、特に給料の高くない従業員にもそのハードウエアとソフトウエアを購入するビジネス顧客を獲得することです。その道を見出すことです。
それはモバイル機器のリースを含むオファリングのセットであるかもしれません。
IBMのクレジット部門が多数のiStuffを購入して期間3年のリースを行うこともできます。リース物件のスマホとタブレットに適切な残存価値を設定して、オペレーティングリースとしての形式を整えることも可能です。しかしながら、IBMは過去PCのファイナンスには強い影響力を持っておらず、PCファイナンスはDellとHPの分野だったようです。したがってIBMが計画の中のファイナンス分野にどのように取組むか、ファイナンスが我々の期待している意義深い役割を真に演じ得るか、これからの課題です。もし、過去IBMがアプリケーションを開発してOSベンダーのアプリケーションストアを通してiOSとAndroid及びWindowsとFireバージョンで提供しようとすれば、容易にできたと考える人もいるでしょう。しかながらIBMはそれを進める勇気を持っていなかったようです。また、Appleがハードウエアとサポートを有利な価格で提供する以外に何を交渉のテーブルに持ち込んだのか、説明は有りません。
我々はAppleとIBMのロマンスの現実の結果が見られる2015年に期待を寄せています。プレスリリース以上の多くのものを生み出すことを切に望んでいます。