IBM i のウンチクを語ろう
~ その12:オープンって何?-3
皆さん、こんにちは。前回はオープンのメリットとしてよく言われる事の多いコメント、「稼動するアプリケーション・プログラムが豊富にある」、「特定メーカーに囲い込まれることがない」 の意義を考えました。引き続き今回も見てまいりましょう。
ユーザーが多い
IBMの公式情報によると、現在は全世界で15万社以上のお客様がIBM i を現役のサーバーとして導入・利用されています。昨今はIBM i をクラウド・サーバーとして利用されるケースも多くなっていますので、本来はクラウド事業者のユーザー会社もカウントするべきなのですが、メーカーとしてそこまでは把握できていないのが実情です。ただ、単純に数の多寡の話に留まるのではなく、多くのユーザーがいることによってどのような価値を期待しているのか、その真意を考えてみる必要がありそうです。
私個人の経験上、背景にある思惑の中で最も重要なものは、多くのユーザーがいればメーカーのサポートが簡単に打ち切られることはないだろう、という安心感を得たいという思いです。ユーザー数が少なくなれば、メーカーにとってその市場を維持するのが困難になり、いずれは撤退されてしまうかも知れない、という不安の裏返しでもあります。私達はそのような現実を何件か目の当たりにしています。そうなるとユーザーは、他のサーバーへの移行という負荷のかかる作業を強いられます。積極的な理由があるのでしたらまだしも、止むを得ない移行はできる限り避けたい、という思いは世の道理でしょう。そこでIBMはIBM i の将来に対するユーザーの懸念を払拭するために、今後も継続的に投資を行う意向を明らかにしています。特に企業の基幹業務を支えるサーバーですので、メーカーによる長期的なサポートはユーザーのIT計画策定に役立てていただく上でも重要です。IBM i 最新バージョンを基点として、二世代先までの投資計画が公開されており、最新のドキュメントは(https://ibm.biz/BdiMqZ)において参照できます。
技術者・開発者を確保しやすい
特にアプリケーション・プログラムの開発テクノロジーという観点から、独自言語のRPG言語で記述されているプログラム資産をこのまま抱え続けるのは妥当なのか、今後もし改修が必要になった場合にRPG技術者を確保できるのだろうか、といった不安が背景にあります。確かに独自性が高く見た目も古めかしさを感じる構文ゆえに、RPGを「食わず嫌い」の方は多いのかも知れません。ただこれは、いくつかあるRPGのバリエーションの中でも最も古いRPGⅢに対する見方であって、最新のフリーフォーム型RPGには該当しません。そもそもフリーフォームRPGは、将来RPGⅢプログラムが不良資産になってしまうかもしれない、という不安・懸念を払拭し、プログラマー人口を増やすことを意図して登場したテクノロジーです。
プログラマー人口が多いとされる、Java、C、PHP 、Pythonなどといった言語においては、これらのうちどれか一つでも経験があれば、他の言語を新たに学習する上での敷居は低くて済む傾向があります。これは個々の実装は異なっていても、構文は概ね共通、すなわち基本的な文法に類似性があることにその理由があります。文法と言っても自然言語とは違う人口のプログラミング言語ですから、せいぜい処理・定義をする、判断をする、処理の流れを変更する、程度の要素しかないわけですが。 フリーフォームRPGは、RPGではあってもこれら言語との共通性を備えた構文の上に仕様が定められていますので、例えばC言語経験者であれば容易に学ぶことができます。このような敷居の低さは従来のRPGⅢの時代にはあり得なかったことで、今後は「RPG食わず嫌い」の問題は解消されてゆくことでしょう。また既存のIBM i プログラム構造を可視化し(IBM製品名:ARCAD Observer for IBM i)、RPGⅢからフリーフォーム型への変換を行うツール(IBM製品名:ARCAD RPG Converter for IBM i)も用意されていますので、アプリケーションが徐々に移行されると共に、いずれはIBM i における主力プログラミング言語の座を占める日も来るであろうと思います。
そして忘れてはならないのは、フリーフォーム型とは言えRPG言語である以上、コンパイル済みのアプリケーション資産は後のハードウェアや OSバージョンにおいて、そのまま稼動させることができる、というメリットです。基幹業務を担うことを使命とするシステムにおいては、極めて重要なポイントです。一方で、Java、PHP、Pythonといった言語は、バージョン間の上位互換性は保たれませんが、他のシステムとの互換性・共通性を重視した言語だと言えます。すなわちIBM i は、独自のものではあるけれども基幹業務に適している言語と、他システムとの共通性を追求した言語の、二種類を同時にサポートできるのです。
製品情報が巷に豊富にある
本屋で関連書籍が数多く売られている、インターネットで発信されている製品情報がいくらでもある、といった点は確かにメリットです。IBM i のような業務用システムに関する情報発信はメーカーに依存しがちになるのは致し方ないところではありますが、情報はあるところにはある、というのが実情です。参考までに筆者がアクセスする事の多いサイトを以下に紹介しておきます。
- 長期計画など製品戦略 https://ibm.biz/BdswDJ
- 製品マニュアル(Knowledge Center)
https://ibm.biz/BdiSUa(日本語)
https://ibm.biz/BdiSUb(英語) - 製品技術情報(英語)- TR 毎の新機能解説
https://ibm.biz/BdiSU5 - インターネットセミナー https://ibm.biz/BdsTv4
注記がないものは日本語です。これら以外にも当e-BELLNETのように、IBM i販売店による独自の情報発信も盛んに行われています
この「オープンって何?」のシリーズは、オープンとはされていないプロプライエタリ・システムだからと言ってオープン性無くして市場に存在しているわけではないし、オープンシステムのメリットとされるものにも、良く考えてみると諸手を挙げてそのとおりとは言い切れないものもある、といったことを述べてまいりました。オープンシステムはシステムとしての理想的な姿である、というのは行き過ぎた幻想であるわけです。だからと言って、RPGやCOBOLといった旧来からの言語で業務要件の全てを作り上げるべきとも言えません。ではシステムを構築するにあたってどのテクノロジーを採用するのが良いのか、という点を、次回は考えてみたいと思います。ではまた。