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IBMiコラム2017.05.25

IBM i のウンチクを語ろう
~ その11:オープンって何?-2

安井 賢克 著

皆さん、こんにちは。前回のこのコラムでは、現代のオープン系サーバーとそうでないサーバーとの間に技術的・実質的な違いは無く、1990年代の「オープン・システム」という言葉の影響を受けている印象が、根強く残っているに過ぎないことを見てきました。だからといって、皆がそう自覚しているわけではなく、「これまではIBM i を使ってきたけれど、次期システムはオープンでないと ・・・」、といった発言を聞くことも二度や三度ではありません。私はこのような発言をされる方に遭遇したら、できる限り「何をもってオープンだと判断されていますか」と問い掛けることにしています。これに対する最も典型的な最初の反応は、「?!」といったところでしょうか。誰もが納得している常識に対して、今さら疑問を投げ掛ける人間がいる、という意外性があるようです。そして一呼吸置いた後の反応に対して、どう考えたら良いのだろうか、というのが今回のテーマです。

稼動するアプリケーション・プログラムが豊富にある

この回答の背景には、アプリケーションの選択肢は数多いことが望ましい、そうであればその中から自社に最適なものを選ぶことができる、という理解があるようです。例えばIBM i だと三者択一になるのに対して、Windowsサーバーならば十者択一となり、より優れているとされます。実際には選択肢の数は、単純に多い方が良いわけではないのですが、このコラムの本筋ではないので、とりあえず脇において置きましょう。(この分野に興味のある方は、シーナ・アイエンガー博士著「選択の科学」がお勧めです)

さて、実際に数えたわけではないのですが、Windows上で稼動するアプリケーションの方がIBM i よりも数多いという点について、異論のある方はいらっしゃらないでしょう。ただ数が多いことにどのような背景があるのか、という点に注意を払っておきたいと思います。アプリケーションと言っても、豊富にあるのはERPなどの業務用途のパッケージなのか、それともそれらをより効率的に稼動させるためのツール類、例えば、バックアップ、システム運用、セキュリティ保護なのか、という点に着目する時、Windowsにおいて顕著なのは、これらツールの数の多さではないでしょうか。

企業におけるコンピュータ・システムの目的は、ビジネス遂行を支援するためのアプリケーション・プログラムを稼動させることにあり、決してツールを利用するためではありません。しかしながら目的を達成するにあたり、その環境に足りないものがあれば、本来の目的ではないツールを(止むなく?)導入することになります。IBM i とWindowsとでは、そのような必要性の有無に大きな違いがある、というのがポイントです。それは環境の違い、すなわちオペレーティング・システム(OS)として備えている機能の大小の差によります。

コンピュータ・システムとして機能させるための構成要素を、人、ハードウェア、アプリケーション・プログラムの三者だとしたならば、OSの役割はこれらの中央に位置して、全てが共存し効率よく連携できるようにすることにあります。OS機能が豊富であれば、追加ツールは不要になります。ここでIBM i の製品コンセプトに、「オールインワン」があったことを思い出していただきたいと思います。(当コラム第五回目でも拙文を投稿しています。)すなわちIBM i はアプリケーション・プログラム以外に必要とされる機能を全て備えることで、他のツールを追加導入する必要がない、もしくはその必要性を最小限に抑えることを目指しています。このことは必然的に、IBM i 向けツール市場はWindows向けほどに大きくないことにつながります。

IBM i コラム挿絵1

OSは最低限の機能を備えていれば十分であり、アプリケーション・プログラムにせよツールにせよ、機能毎にベストなものを組み合わせることで、すなわち部分最適の積み上げによって、全体最適を目指すべきである、という考え方もあるかも知れません。しかしながら一般的に、部分最適の積み上げは全体最適にはなりません。保守をも含めた長期的視野に立った時、複数ベンダーによる各製品において、ライフサイクルのずれが生じるのは避けられないため、小刻みに頻繁にバージョン・アップグレード作業を強いられます。これに伴って当然のことながら、統合テストも実施する必要があります。もしくはワークロードをできる限り抑制するために、サポート切れのままで製品を使う、というリスクのある運用を許容せざるを得ないかもしれません。オールインワン型OSであるIBM i においてはこのような心配は無用です。

特定メーカーに囲い込まれることがない

上記のとおり部分最適を積み上げれば、結果的に様々なメーカー製品を採用することになりますので、どこか特定のメーカーに囲い込まれることはありません。しかしながら、各種アプリケーションやツールを導入する場合、自力で作業するだけの力があるユーザーならばともかく、多くのケースにおいてはインテグレータにシステム構築を委ねることになるのではないでしょうか。そうなると特定のメーカーには囲い込まれませんが、特定のインテグレータに囲い込まれることになります。結局は誰かに囲い込まれるのが現実です。

囲い込むのがメーカーかインテグレータか、どちらの状況が一方的に不利ということはありません。むしろ、ユーザーにとっての価値が損なわれてしまわないよう、注意を払うべきでしょう。一度囲い込んだらメーカーやインテグレータは慢心してしまうかも知れませんし、そうなると例えば将来の製品機能強化やコスト・ダウンへの努力が疎かになる可能性も否定できません。仮にいくらメーカーが製品機能を強化したとしても、インテグレータがそれを実装する努力をしなければ、システムは結局「塩漬け」状態に置かれてしまいます。そしてそのインテグレータが気に入らないからと言っても、引き継ぐための情報がシステム毎に明確化されていなければ、他のインテグレータに切り替えることは困難です。もちろんメーカーが機能強化の努力を怠るようなことがあったら論外ですが、製品機能情報は何らかの形で明確化されているのが通常です。囲い込みの力はメーカーよりもインテグレータの方が圧倒的に強いと考えられます。このあたりは是非長期的視野をもって見ていただきたいポイントです。

IBM i においてはIBMがオールインワンを旗印にユーザーを囲い込む、と表現するのであれば、Windowsではインテグレータがより強い力でユーザーを囲い込んでいます。詳しくは別の機会に譲りますが、少なくともIBM i のお客様の製品満足度は極めて高いという事実と、総所有コスト(TCO)は他サーバーに比べて非常に低いという調査結果があります。囲い込まれるとしたらどちらが良いのか、一概に言えるものではありませんが、少なくともIBM i を高く評価する声があるのは紛れもない事実です。

次回もこの「オープンって何?」を続ける予定です。ではまた。

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著者プロフィール

パワーシステム・エバンジェリスト

安井 賢克
やすい まさかつ

2017 年 11 月付けで、日本アイ・ビー・エム株式会社パワーシステム製品企画より、ベル・データ株式会社東日本サービス統括部に転籍。日本アイ・ビー・エム在籍時はエバンジェリストとして、IBM i とパワーシステムの優位性をお客様やビジネス・パートナー様に訴求する活動を行うと共に、大学非常勤講師や社会人大学院客員教授として、IT とビジネスの関わり合いを論じる講座を担当しました。ベル・データ移籍後は、エバンジェリストとしての活動を継続しながら、同社のビジネス力強化にも取り組んでいます。

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