IBM技術ブログ Vol.5 - IBM Bob:次世代AI技術アシスタント(概要) -
はじめに
IBM Bob(Project Bob の新しい名称)は、ソフトウェア開発とテクノロジー分野に特化した高度なAI技術アシスタントです。単なる質問応答システムを超え、コード作成、ファイル操作、システム管理、ブラウザ操作など、開発者の実務を包括的にサポートする統合開発支援AIとして設計されています。この記事は2025年12月現在の情報をもとに書かれています。
IBM Bobとは
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開発の背景
現代のソフトウェア開発は、複数のプログラミング言語、フレームワーク、レガシーシステムとの統合など、かつてないほど複雑化しています。IBM Bobは、この複雑性に対応し、開発者の生産性を飛躍的に向上させるために開発されました。
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設計思想
IBM Bobの設計には、以下の3つの核となる思想があります。
- 実行可能性:質問に答えるだけでなく、実際にコードを書き、ファイルを操作し、システムを変更すること
- 文脈理解:プロジェクト全体の構造を理解し、適切な判断を下すこと
- 反復的改善:開発者のフィードバックを受けて段階的にタスクを完成させること
主要機能
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マルチモーダル動作
IBM Bobは、タスクの性質に応じて最適なモードで動作します。
- Plan(アーキテクトモード)
システム設計、技術仕様の策定、複雑な問題の分解を行います。実装前の計画段階で活用され、Mermaid図を用いた視覚的な設計表現も可能です。 - Code(コードモード)
実際のコード作成、ファイル編集、リファクタリングを実行します。複数のプログラミング言語に対応し、プロジェクトの文脈を理解した上でコードを生成します。 - Advanced(アドバンスドモード)
より高度な開発タスク、複雑なシステム統合、パフォーマンス最適化などを担当し、MCPサーバーと連携することも可能です。 - Ask(アスクモード)
技術的な質問への回答、コード解説、概念説明を行います。実装を伴わない知識提供に特化しています。
図 1:IBM Bob画面イメージとモードの選択 - Plan(アーキテクトモード)
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強力なツールセット
ファイル操作
- 最大5ファイルの同時読み込み
- 精密な差分編集
- 正規表現による検索置換
コード分析
- 横断的コード検索
- ディレクトリー構造の探索
- 関数・クラス定義一覧の取得
実行環境
- CLIコマンドの実行
- ブラウザーの自動操作
- Git差分の取得と分析
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技術仕様
対応OS:macOS、Linux、Windows
統合環境:オープンソース版VSCodeに統合されて提供
言語サポート:Python、JavaScript/TypeScript、Java、RPG、C/C++、Go、Rustなどのプログラミング言語に加え、CLやDDSなどのIBM i 独自言語にも対応
図 2:IBM Bob画面構成
IBM i 開発における活用事例
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レガシーコードの分析
IBM Bobは、数十年前に書かれたRPGコードを読み込み、ビジネスロジックを現代的な言語で解説します。
IBM Bobに「このプログラムの処理フローを説明してください」と依頼すると、以下のような分析結果を提供します。
- プログラム概要
- プログラム内で使用しているファイル一覧
- 処理フロー解説
- 処理の特徴 など
図 3:得意先照会プログラムの処理フローの分析 -
モダナイゼーション支援
RPG固定フォーマットからフリーフォーマットへの変換
保守性向上のため、読みにくい固定フォーマットRPGを、構造化されたフリーフォーマットRPGに変換。%Found()などの組み込み関数を活用した、より保守しやすいコードを生成します。
図 4:固定フォーマットRPGからフリーフォーマットRPGへの変換 IBM Bobは、開発者の指示に従って作業を行います。作業を行う際には、必要な情報の読み込みを要求します。その後、タスクリストを作成し、これから実施する作業の手順を開発者に示し、レビューを受けます。承認されると作成したタスクリストに基づいて実行します。作業終了後、各タスクで実行した内容のサマリーを生成して終わります。
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ドキュメント自動生成
既存のRPGコードから、以下を含む包括的な仕様書を自動生成します。仕様書はマークダウン・ファイルで生成され、グラフィカルな図を含めることも可能です。
- プログラム概要
- 使用ファイル一覧
- 画面遷移図
- 処理フロー
- 計算ロジック
- エラー処理 など
図 5:プログラム仕様書をグラフィカルに生成
開発プロセスの変革
従来の開発プロセスは、要件定義 → 設計 → コーディング → テスト → デバッグ → ドキュメント作成となり、各フェーズで開発者が全作業を実施していましたが、IBM Bob活用後の開発プロセスは以下のようになることが想定されます。
要件定義(開発者) → 設計(IBM Bob支援) → コーディング(IBM Bob実装)→ テスト(IBM Bob自動化) → レビュー(開発者) → デプロイ
これにより開発者の役割の進化をもたらし、開発者は低いレベルの実装詳細から解放され、より高いレベルの問題解決に集中することができます。
実践的な活用ガイド
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効果的な使い方
初心者向け
- 小さなタスクから始める(単一ファイルの編集など)
- Ask modeで概念を学ぶ
- 生成されたコードやドキュメントの不明点を説明してもらい、理解に役立てる
中級者向け
- 複雑なリファクタリングに活用する
- アーキテクチャー設計の相談相手として活用する
- レガシーコードの分析と理解に利用する
上級者向け
- 複数モードを組み合わせた高度な活用する。例えば、Planモードで要件を詰めてからCodeモードで生成を行うなどの活用が可能です。
- プロジェクト固有のワークフロー構築 したり、標準化のためのルールを作成するなどの手伝いをしてもらうこともできます。
- チーム全体の生産性向上に活用する。例えばコードレビューのサポートを依頼したりすることも可能です。
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ベストプラクティス
- 明確な指示を出す
IBM Bobにできるだけ詳細なリクエストを出すことが重要です。 - 段階的なアプローチ
1. 要件の明確化 2. アーキテクチャの設計 3. 段階的な実装 4. 継続的なテストなど、開発にあたっては段階的なアプローチを取り、IBM Bobと様々な情報を共有、蓄積していくことが望ましいです。 - フィードバックの提供
生成されたコードを必ずレビューし、IBM Bobに改善点を具体的に指摘し、期待する動作を明示することで、IBM Bobは、期待にあったアウトプットを出力するようになっていきます。
- 明確な指示を出す
未来への展望
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AI協働開発の新時代
IBM Bobは、「AI支援開発」から「AI協働開発」への転換点を示しています。従来のAI支援は、開発者が主導、AIが補助 することで、提案を開発者が実装し、限定的な自動化にとどまっていましたが、IBM Bobの協働モデルは、対等なパートナーシップを構築し、 AIが実装まで担当することができ、包括的な自動化を可能にします。
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ソフトウェア開発の未来
IBM Bobが示す未来のソフトウェア開発は以下のようになることを目指しています。
- 自然言語プログラミング:コードを書く代わりに、意図を伝える
- 即座のフィードバックループ:設計から実装、テストまでの高速化
- 知識の民主化:専門知識がなくても高度なシステムを構築可能
- 品質の標準化:ベストプラクティスの自動適用
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開発者とAIの最適な分業
開発者が担うべき領域としては、 最終的な意思決定、創造的な問題解決、倫理的判断、ビジネス価値の評価などが挙げられます。AIが担うべき領域としては、反復的なタスク、パターン認識、大量データの処理、技術的な実装詳細になることが期待されます。
まとめ
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IBM Bobの革新性
IBM Bobは、以下の点で革新的です。
- 実行可能性:提案だけでなく、実際にシステムを変更できる
- 包括性:設計から実装、テストまでをカバー
- 適応性:プロジェクトの文脈を理解し、適切に対応
- 協働性:開発者との対等なパートナーシップ
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まとめ
IBM Bobは万能ではありません。最も効果的なのは、人間の創造性と判断力、そしてAIの処理能力と知識を組み合わせた協働モデルです。
ソフトウェア開発の未来は、開発者とAIが互いの強みを活かし合う世界です。IBM Bobは、その未来への重要な一歩を示しています。開発者は、AIを恐れるのではなく、新しいパートナーとして受け入れ、共に成長していくことが重要です。
技術は進化し続けますが、最終的な価値を生み出すのは、技術を使いこなす人間の知恵と創造性です。IBM Bobは、その可能性を最大限に引き出すための強力なツールなのです。
現在、2026年の前半の完成を目指して開発を進めています。皆様、IBM Bobの登場にご期待ください。
執筆者紹介
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茂木 映典(もぎ あきのり) 日本アイ・ビー・エム株式会社 1990年:S/36, AS/400のBP様向けテクニカル・サポート部門に入社 2003年:ISEへ出向し、iSeries, System i のテクニカル・サポートとプロジェクト・サポートを実施 2007年:Power Systems テクニカル・セールスに帰任 2017年:システムズ・ラボサービスでマネージャーを担当 2024年1月:IBM Power テクニカル・セールス |

