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IBMi海外記事2025.12.24

MCPサーバーのベータ版はIBM i をエージェント型AIに開放する

Alex Woodie 著

2024年11月にAnthropic社がModel Context Protocol(MCP:モデル コンテキスト プロトコル)をひっそりとリリースしたときは、あまり多くの注目を集めることはありませんでした。しかし、2025年初めにエージェント型AIの波が大きくなると、突然、このプロトコルはAIアプリケーション、ツール、およびデータ ソースを統合するための新たな標準として迎え入れられるようになりました。MCPがどれほど広く普及しているかについては、今月、IBMがIBM i 向けのMCPサーバーの初期バージョンをリリースしたことからもよく分かります。

10月第2週にフロリダ州オーランドで開催された、IBM TechXchangeカンファレンスで大きく取り上げられたのはProject Bobでした。これは、もっともなことです。Bobは、IBM i 向けのコパイロットを含め、IBMのコパイロット開発に対する熱意を表す 重要な新しい媒体 となっているからです。Bobベースのコーディング コパイロットのデリバリー スケジュールについては明らかではありませんが、初期バージョンはどうやら、IBMにWatson Code Assist for IBM i の計画を打ち切らせるほど、非常に先進的であるようです。WCA for i は、今年の夏には パブリック プレビュー段階 にあり、「蛍の光」が歌われる頃までには提供開始となる予定だったのです。

しかし、IBMは、 TechXchangeで、IBM i のAIの将来に大きな影響を及ぼす、もうひとつの製品をひっそりとリリースしています。すなわち、MCPサーバーです。ビジネス アーキテクトのJesse Gorzinski氏率いるIBMのオープンソース開発チームは、IBM i サーバーがMCPを介して世界と通信することを可能にするプログラムの初期バージョンを開発しました。

Anthropic 社は、開発者がMCPサーバー(データ ソース)とLLM搭載アプリケーション(MCPクライアント)との間でセキュアな双方向接続を構築できるようにする軽量なアーキテクチャーとしてMCPを設計しました。MCP以前には、開発者は、データ ソースまたはツールごとにカスタム コネクタを構築しなければならないことがよくあり、様々な技術による混乱をもたらしました。Anthropic社によれば、MCPは、AIアプリケーション向けのUSB-Cポートのようなものとして機能するように開発されたということです。

ibmi-mcp-serverのGithubページのドキュメンテーションによれば、このオープンソース ソフトウェアは、AIエージェントがYAMLで構成されたSQLツールを通じてIBM i データベース操作にアクセスすることを可能にする、「本番グレード」のMCPサーバーとして機能するように設計されているということです。このプログラムは、「包括的な認証、オブザーバビリティ(可観測性)、およびセキュリティ機能」を備え、エンタープライズ環境に合わせて「特別に作られた」ものだということです。

ドキュメンテーションによれば、IBM i MCP Server(Apache 2.0ライセンスの下で配布)は、IBMが 1年前に初公開した、Db2 for i 向けの新たなMapepireクライアントを使用し、ローカル(または、stdio(標準入出力の略))およびリモート(または、HTTP streamable)接続をサポートするということです。また、OpenTelemeteryのトレーシング、メトリクス、およびパフォーマンス監視のサポートが組み込まれています。このIBM i 向けMCPサーバー(72%はTypescriptで21%はPython)は、型安全性を備え、標準エラー処理が組み込まれているとドキュメンテーションは述べています(残りの7%が何なのかは謎です)。

この製品のアーキテクチャーは、「Logic Throws, Handler Catches(ロジックがスローして、ハンドラーがキャッチする)」パターンを使用して、ビジネス ロジックとトランスポート処理の間で「完全な分離」が確保されるように開発されました。MCPクライアント リクエストが受け取られると、ハンドラーを呼び出し、ハンドラーは入力を検証し、リクエストおよびロジック関数呼び出を作成します。ロジックが正常に実行された場合はリクエスト元に送り返されます。そうでない場合はエラーを生成します。この説明では、かえってややこしくなってしまいそうですので、詳細については、ドキュメンテーションを参照してください。

「このアーキテクチャーは、エンタープライズIBM i 環境で実証済みであり、本番MCPサーバー展開に向けての業界のベスト プラクティスに準拠しています」とGitHubのドキュメンテーションは述べています。「モジュラー設計により、それぞれのコンポーネントが一体的なシステムとして連携して動作しながらも、それぞれが独立した形で開発、テスト、保守を行えるようになっています。」

MCPサーバーは、IBM i 開発者が、IBM i サーバーにアクセスするAIエージェントおよびエージェント ワークフローを作成するのを支援するように設計されています。エージェント ワークフローを開発するには、開発者は、オープンソースのPythonベースのフレームワーク、 Agnoを使用することになるとIBMは述べています。IBM i 向けMCP Serverで使用されてきた初期のクライアントには、Claude Code、Claude Desktop、VSCode、Cursor、Windsurf、Roo Code、LM Studio、OpenCode、Gemini CLI、Cline、およびPythonクライアントなどがあります(Agnoを介して、およびMCPのプロジェクト オフィシャルSDKを通じてのものを含めて)。

MCPの動作の仕組み:概略図

MCPは、データとMCPサーバーとAIエージェントの間での3者間の相互作用を生み出します。
画像提供:IBM

MCPサーバーの開発作業は、しばらく前から進められていました。IBM i チーフ アーキテクトのSteve Will氏は、今年のアナハイムの COMMON POWERUpカンファレンスでの『 IT Jungle 』のインタビューで、 このソフトウェアがプラットフォームの将来像の一部になっている ことをほのめかしてます。

その時点では、Watson Code Assist for IBM i は、まだGA(一般公開)に向けて動いていました。他にもコード アシスタントはありますが、とりわけWCA for i は、MCPクライアントとなって、IBM i 上のMCPサーバーとともに動作していたかもしれません。次世代のAIベースのIDEであるBobに重点が置かれるようになったこともあり、Bobは、IBM i 上のMCPサーバーと通信して処理を行うことができるMCPクライアントの機能を備えることになるでしょう。

IBMは、IBM i のシステム管理タスクにBobが使用されることを想定していませんが、Will氏は、IBM i 顧客がそのような使い方をしても不思議はないと述べています。IBM i プロフェッショナルが、NavigatorやAccess Client Solutionsを経由することなく、自然言語を使用して、どのようなPTFが適用されているかなど、IBM i の現在の状況に関する情報を把握できるようにするAIアシスタントは、他にも開発されているだろうとWill氏は述べます。

MCPは、それらの他のAIアシスタントまたはツールがIBM i にアクセスするための経路となるだろうと、IBMのIBM i プロダクト マネージャー リーダーのYan Zhuo氏は述べています。

「MCPは、そのようなものとして捉えることもできます」と彼女は述べます。「それは、通常はシステム管理者によって行われているタスクの一部を自動化するためのものですが、SQLコードを書く代わりに、平易な言語を使用してそうすることができるのです。」

GitHubでは、IBM i 向けMCPサーバーのプロジェクトは、現在、スター数が11個、コントリビューターが6名、フォーク数が2つとなっています。GA(一般公開)に向けてのスケジュールは明らかにされませんでしたが、IBMのドキュメントは、「2026年に500のツールを提供することを目指しています」と述べています。IBM i 向けMCPサーバーの詳細については、 こちらを参照してください。

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