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IBMi海外記事2025.11.26

IBM Ideas Portalに寄せられたIBM i に関する要望トップ10

Alex Woodie 著

IBMは、IBM i オペレーティング システムの新たなメジャー リリースに向けて準備を進めています。新リリースにどのようなものが含まれるのかはまだ分かりませんが、IBM Ideas Portalを通じてIBM i コミュニティがどのような新機能を要望していて、それにIBMがどのように反応しているか調べてみれば、新リリースについて予想する上でのヒントになるかもしれません。

IBMは、顧客を重視する組織であることに誇りを持っていることもあり、現在IBM i コミュニティがどのような機能や修正を求めているかに関しては、IBM i コミュニティからの情報を大いに頼りにしています。そうしたコミュニティへのアウトリーチ活動としては、 COMMON Americas Advisory Council(CAAC)、 COMMON Europe Advisory Council(CEAC)、 Large User Group (LUG)、およびIBMのISV Advisory Councilなど、様々な形態があります。

そして、5番目のアウトリーチ プログラムとして、おそらくもっとも民主主義的と思われるのが、IBM Ideas Portalです。IBM Ideas Portalは、 2022年にRequest for Enhancement(RFE: 機能拡張の要望)プログラムの後を受ける形で始まり、IBM i 顧客が、新たな機能の要望をIBMに提案することを可能にしています。IBMは、提案された機能の提供を承認することも、提案を却下することもあります。

IBM Ideas Portal( ideas.ibm.com/)の素晴らしい特徴の1つは、IBM i コミュニティの他のメンバーも、提案されたアイデアについて投票を行えるところにあります。こうしたフィードバックの仕組みにより、どのアイデアがIBM i コミュニティに対して説得力を持っているのか、反対にそうでないかについて、IBMも把握しやすくなっています。

図1.IBMは、IBM Ideas Portalを通じて提案されたIBM i に関する要望をこのようなステータスに分類しています。

IBM Ideas Portalは、ここ数年の間に人気急上昇となっており、先週時点で、このポータルを通じて提案されたIBM i に関するアイデアは4,330件を超えています。それらのうち、IBMが、提案されたアイデアを基にしてIBM i のアップデートを提供したことは、1,255回あったということになります(「Delivered(提供済み) 1255」)。そして、1,770件のアイデアは「Not under consideration(未検討)」というステータスに分類され、955件のアイデアは「Future consideration(今後検討予定)」というステータスに分類されています。これら以外のステータスについては、図1を参照してください。

はたして、IBM i 顧客はどのようなことを要望しているのでしょうか。どのようなものがIBM i インストール ベースに響いているのでしょうか。ここからは、IBMがまだ提供または却下していないアイデアのうち、最近の(過去5年間での)得票数トップ10のアイデアについて見て行こうと思います(つまり、現在、ステータスが「Future consideration(今後検討予定)」、「Under review(レビュー中)」、「Submitted(提案受付済み)」、「Planned for a future release(今後リリース予定)」となっているものが対象となります)。

  1. 「パス スイッチ向けにマシン プールの最小サイズを設定」 2024年9月提案、246票、「Future consideration(今後検討予定)」

    このIBM i 顧客は、システム停止を原因として、SANアレイがトラフィックを新たなパスまたはポートあるいは「スイッチされたパス」に自動的にルート変更したときに、5250セッションが失われるという事態に見舞われたということです。セッションが失われたのは、マシン プール(物理ストレージ デバイスのコレクション)が小さ過ぎたからでした。この顧客は、パス スイッチの際にシステムにあまり多くのメモリーを使用させないようにするか、最小限の量のストレージが維持されるようにすることを提言しています。CEACは、IBMがこれを優先度「高」のアイデアとして扱うよう勧告しています。

  2. 「サービス中断なしでのリンク集約NICアダプターの交換」 2025年3月提案、110票、「Future consideration(今後検討予定)」

    このIBM i 顧客は、複数の物理イーサネット リンクを単一の論理リンクにまとめる「イーサネット リンク集約」構成の一部になっているNIC(ネットワーク インタフェース カード)を交換する際に、サービス停止を余儀なくされることについて対応を求めています。サービス停止は、IBM i の回線記述を一時的に無効化する必要があることによるものです。これにより、IPアドレスが無効化されるため、サービス停止は「避けられない」ことになると、その顧客は記しています。PowerハードウェアはNICのアクティブ メンテナンスをサポートしていますが、ソフトウェアはそうではないようです。CEACのメンバーであるSteve Bradshaw氏は、CEACでこの問題を取り上げると述べています。

  3. 「モダンなRPG命名規則をサポートするようにRPGコンパイラー メッセージを拡張」 2021年7月提案、73票、「Future consideration(今後検討予定)」。

    このIBM i 顧客は、RPGでの長いフィールド名の処理方法に苛立ちを感じているようです。コンパイラーは長いフィールド名をサポートしていますが、イベント ハンドラーはサポートしていないため、不一致が生じることになります。CAACおよびCEACはいずれも、この要望をレビューし、2021年に、IBMがこれを優先度「高」とみなすよう勧告しています。しかし、IBMは2022年に、その要望をリリース候補となるアイデアとして取り上げると述べましたが、それを実装する約束がなされているわけではありません。

  4. 「新Navigator for i へのAFP Managerの組み込み」 2022年1月提案、67票、「Future consideration(今後検討予定)」

    このIBM i 顧客は、AFPオブジェクト(コード ページ、コード化フォント、フォント文字セット、およびフォームおよびページ定義など)をインポートする機能を新たなNavigator for i に追加してほしいと要望しています。旧Navigatorでは、AFP Managerと呼ばれる機能でこれらを行うことができましたが、IBMは、アップグレードされたNavigator製品に、こうしたAFP機能を再現していません。一部の顧客にとっては非常に残念なことです。CEACは、IBMがこの要望を優先度「中」の要件とみなすよう勧告しましたが、CAACは、IBMがこの要望を実装しないよう勧告しています。これは、AFP Manager以外に使用できるかもしれない他のオファリングがあるためです。IBMは、この要件を理解し、今後それを提供する可能性があると述べています。

  5. 「CGI PDIでパフォーマンス履歴のPDFレポートを作成可能にしてほしい」 2020年12月投稿、55票、「Future consideration(今後検討予定)」

    このIBM i 顧客は、Performance Data Investigator(PDI)にPM400のような機能がないことに「お怒り」だということです。IBMは、PM400のサポートを終了し、IBM i Navigator内の戦略的なパフォーマンス分析ツールであるPDIへと移行を図っています。この顧客もほとんどの点でPDIの方が優れていると思ってはいるものの、1つ、PDIが劣っているのが、パフォーマンス データについてのレポートPDFをカスタマイズして作成する機能をサポートしていない点だということです。「もう利用できないとなると、それは彼らにとっての1つの最重要課題となります」 CAACおよびCEACはいずれも、IBMがこの要望を優先度「中」として扱うよう勧告しています。IBMは2021年に次のようにコメントしています。「これは単純な要望ではないため、今年のうちに提供されることはありません。パフォーマンス ツール チームは、これを重要な機能と考えているため、今後の提供に向けて取り組んで参ります。」

  6. 「S1022でのIBM-i VMの4コア制限の撤廃」 2024年10月提案、52票、「Under review(レビュー中)」

    この顧客は、プライベート クラウド プロバイダーの間で人気のS1022サーバーで稼働するIBM i 仮想マシンに対して課されている、現行の4コアの制限を撤廃することを提案しています。「この機能強化により、S1022の機能と最新のエンタープライズ ニーズがよりよく整合し、利用可能なハードウェア リソースを最大限に活用できるようになる」と、その顧客は記しています。他のユーザーからも賛成意見がいくつか寄せられ、たとえば、5コア以上のLPARの場合に、顧客がより大型のPower E1080に移行する必要性がなくなるといったコメントも投稿されています。CAACはこのアイデアをレビューし、IBMがこれを実装しないよう勧告しています。「S1022の目的は、費用効率の高いサーバーを提供することにあります」とCAACのプログラム マネージャは述べています。このアイデアは現在レビュー中です。

  7. 「SQLRPGLEでの複数レベルで修飾されたデータ構造のサポート」 2020年8月提案、49票、「Future consideration(今後検討予定)」

    以前と比べてますます多くのSQLがRPGLEソースに組み込まれるようになっています。「しかし、コンパイラーはまだ、1つのレベルで修飾されたデータ構造のみをサポートしているだけです」と顧客は記しています。「これは非常に厄介です」 複数レベルで修飾されたデータ構造がサポートされると、データ構造内の外部ファイル記述がSQLステートメントに渡される、結合の際に特に有用だと思われます。CAACはこの要望をレビューし、IBMがそれを優先度「高」とみなすよう勧告しています。IBMは、その要望をリリース候補となるアイデアとして使用すると述べていますが、それを提供する約束がなされているわけではありません。

  8. 「RDiの再接続のプロセスを改善してほしい」 2022年3月提案、48票、「Future consideration(今後検討予定)」

    このIBM i 顧客は、VPNを介してサーバーに接続してリモートで作業していた際の、接続がダウンしたときのRDiの挙動が不満なようです。接続がダウンしているときでも、RDiは接続中であると表示し、ソース メンバーのオープンや、以前に開いたソース メンバーの保存など、いつもの作業が失敗しても、その表示のままでした。再接続するかどうかを尋ねるダイアログ ボックスは、ユーザーがIFSでフォルダーやファイルを開こうとしたときにようやく表示されたということでです。この機能強化により、RDiに、ドロップした接続をよりシームレスに処理させることができるようになるでしょう。「再接続するボタンもあると良いかもしれません」 CAACは、この要望が優先度「高」とみなされるよう勧告しています。RDiチームは、次のようにコメントしています。「この要望のテーマは私たちのビジネス戦略と一致していますが、現在開発中であるリリースに関して、何ら約束するものではありません」 これは3年前のコメントですが、現在も検討中のままです。

  9. 「IBM i 向けのClamAV rpmを要望」 2021年5月提案、47票、「Planned for future release(今後リリース予定)」

    このIBM i 顧客は、ClamAV(AIXですでに利用可能なオープンソースのアンチウィルス パッケージ)がIBM i 7.1以降で利用できるようになることを要望しました。「IBM i 向けの商用AVプラットフォームは2つあるのみで、しかも非常に高価です」とその顧客は記しています。「べらぼうに高い値段です。まるで、使い古されたボロボロの自転車なのに、ポルシェ911が買える金額を支払うようなものです。ClamAVのようなものがあったとしたら、他の人にも勧められるようになるかもしれません」 CEACおよびCAACはいずれも、この項目をレビューし、IBMがそれを優先度「中」とみなすよう勧告しています(ただし、サポートが終了しているIBM i 7.1のサポートは除きます)。IBMは、この要望についてまだコメントしていませんが、今後リリース予定としています。

  10. 「PowerHA SystemMirror for iでの、IBM Spectrum Virtualizeの新機能のポリシーベースのHA(新たなHyperswap機能)のサポート(大至急)」 2024年6月提案、46票、「Submitted(提案受付済み)」

    このIBM i 顧客は、PowerHAが「ポリシーベースの高可用性(PBHA)」をサポートすることを要望しています。「PBHA」は、IBM FlashSystem SANをサポートするためのソフトウェア、IBM Spectrum VirtualizeのHyperswap機能に置き換わることになる機能の名称です。残念なことに、アーキテクチャー上の違いがあり、問題が生じるということです。「技術的な観点から言えば、従来のHyperswapは、IBM i ホストには、PowerHA LUNスイッチング構成のシングル クラスターとみなされます。新たなPBHAは、Logical HA区画の概念をベースにしており、IBM i ホストにはデュアル ノード クラスターとみなされます。PowerHA LUNスイッチングは、この構成をサポートすることができません」 CAACおよびCEACはいずれも、IBMがこの要望を優先度「高」の項目として扱うよう勧告しています。

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