IBM i におけるオープンソースの現状はどうなっているか
オープンソース ソフトウェアは、IBM i スタックの確固とした構成要素になっています。しかし、IBM i のショップは、今日、どのようなオープンソース ソフトウェアを使用しているのでしょうか。その答えは、Fortra社の最新の市場調査レポート「IBM i Marketplace Survey」の結果によって明らかにされるようです。
今では意外に思えるかもしれませんが、オープンソースは、常にIBM i サーバーのソフトウェアの不可欠な要素であったわけではありません。20年前にPHPがこのプラットフォームにやって来るまでは、IBM i のショップが選ぶことができたのは、プロプライエタリなソフトウェアのみでした。
しかし今日では、IBM i のショップには、選ぶことのできるオープンソース製品が何百もあります。IBM i サーバーのオープン性のおかげで、PHPまたはPythonランタイム、Java仮想マシン、あるいはAIX実行可能ファイル(PASEランタイムを介して)上で稼働できる製品であれば、ほぼ何でもIBM i サーバー上で稼働します。
「2024 IBM i Marketplace Survey」は、オープンソース ソフトウェアがIBM i サーバー上で健在であることを示しています。Fortra社が2023年末に実施したこの調査では、PHPやNode.jsのようなオープンソース言語も、HTTP ServerやGitのようなオープンソース ユーティリティも、IBM i コミュニティによって定期的に採用されていることが示されています。
まずは言語に関して言えば、Javaは、IBM i のショップによって使用されているオープンソース プログラミング言語の中でも、飛び抜けて人気の言語であり、「Marketplace Survey」の回答者の42%が使用しているということです(JavaのいくつかのバージョンはOracle社が管理していますが、IBMによってIBM iで採用されているバージョンを含めて、オープンソース バージョンもあります)。過去6年間にわたって、そのレベルで比較的安定していると言えるでしょう(図1を参照)。
オープンソース プログラミング言語の2位は、3者がほぼ同率で並んでいます。Pythonのシェアが20%、PHPとNode.jsがそれぞれ18%で続きます。
2020年のPythonおよびNode.jsの使用率の特異的な上昇(その年、両言語は約25%まで急増し、翌年には約10%減少していることがグラフから見て取れます)を除けば、長期的な傾向としては、時間の経過とともにPHPの使用率は緩やかながらも着実に減少し、PythonおよびNode.jsの使用率は緩やかながらも着実に増加しているようです。
IT市場全般でこれら3つのオープンソース言語がどれほど幅広く採用されているか(Javaは言うまでもなく)を考えてみると、IBM i コミュニティでそれらが採用されているということは、IBM i サーバーが、実のところは、最新の言語を稼働する、RPGやCOBOLの知識を必要としない最新のシステムであることの証明となっているとも言えるでしょう。このプラットフォームにとって、これは朗報です。IBM i 以外のIT業界がTypeScriptやRustのような新たな言語の採用へと向かうのにつれて、IBM i コミュニティがどのように反応するのかは興味深いものがあります。
PerlおよびRubyに関しては、市場調査データによれば、それらは単なる一時的な急上昇に過ぎず、使用率は、昨年には約1%~2%へと減少しています。
IBM i コミュニティにおけるオープンソース ユーティリティおよびツールの採用では、活気が生まれそうな兆しも見られます。採用率61%でトップに立つのは、Apache HTTP Serverです。IBM自身がこれをIBM i 向けのプライマリーWebサーバーに採用しています(おそらくIBMのプロプライエタリなWebSphereを稼働し続けている顧客もいるでしょうが、WebSphereの話はしばらく耳にしていない気がします)。
複数年にわたる市場調査データの分析から見て取れるように、ほんの少し前までは、Apache Webサーバーを使用しているIBM i 顧客は半数以下でした(図2を参照)。「Marketplace Survey」のデータによれば、2018年から2022年にかけて、Apache Webサーバーの使用率は28ポイントも急増し、シェア65%でピークに達しています。
ただし、この2年間、Apache Webサーバーの使用率は数ポイントだけ減少しています。これは、Apache Tomcat、Nginxといった、他の2つのオープンソースの代替製品の使用が増えたことによるものかもしれません。Tomcatは、2023年版レポートと2024年版レポートとの間で、5ポイント増加し、使用している調査回答者は27%となりました。一方、Nginxは、「2021 Marketplace Survey」(Nginxが調査に加えられた最初の年)の3%から2024年の7%へと増加しています。
Git(オープンソースのバージョン管理システム)は、IBM i 界隈で好評を博しているもうひとつのオープンソース プロジェクトです。Gitの使用率は、2018年(Fortra社が調査に加えた最初の年)の12%から2023年の25%へと着実に増加していることが市場調査データから見て取れます(その後、2024年版レポートでは21%へと微減)。Jenkins(新規のプログラムのビルド、テスト、およびデプロイを自動化し、継続的インテグレーション/継続的デプロイメント(CI/CD)パイプラインの一部としてGitとともにデプロイされることが多い)は、過去3年間、7%で、安定した使用率を示しています(「Marketplace Survey」データ)。
IBM i チーフ アーキテクトでCTOのSteve Will氏は、IBM i のショップがアプリケーションをモダナイズするのに伴い、今後数年間でGitおよびJenkinsの採用は増えるだろうと述べています。
「私たちのコミュニティでも、GitやJenkinsなどの採用がますます多くなっているのは間違いありません」と、1月23日の「2024 IBM i Marketplace Survey Results」ウェビナーでWill氏は述べています( こちらでご覧になれます)。「モダナイゼーションが拡がるのとともに、こうした動きが大きく拡がるのを目にすることになると思います。それが顧客の最大関心事の1つであるからです。使用するアプリケーションだけでなく、プロセスやツールをどのようにモダナイズするかということに関心は移って行きます。」
他にも、使用率増加の兆しを見せているオープンソース ツールがあります。その1つは、当初、サーバー、アプリケーション、ネットワーク、コンテナ、セキュリティ、およびクラウド向けの 軽量な構成管理システム となるべく開発された、Ansibleです。Ansibleの使用率は、「2022 Marketplace Survey」(Ansibleが調査に加えられた最初の年)の6%から、2024年版レポートの10%へと増加しています。
オープンソース データベース(PHPまたはPythonのようなオープンソース言語を使用して開発された、プレビルドされたアプリケーションで採用されることが多い)は、市場調査データによれば、IBM i での採用は緩やかながらも着実に減少しているようです。2021年(Fortra社がそれらを調査に加えた最初の年)には、IBM i のショップの18%が、MySQL、MariaDB、およびPostgres(PASEで稼働)のようなオープンソース データベースを使用していたことが「Marketplace Survey」で明らかにされています。しかし、その使用率は翌年には15%へと減少し、2023年版および2024年版レポートでは13%となっています(どうやら、古き良きDb2 for iには敵わないようです)。
Service Commanderは、どこからともなく現れ、シェア5%で「Marketplace Survey」へ初登場を果たしました。このユーティリティ( GitHub経由で利用可能)は、IBM i で様々なアプリケーション、サービス、およびジョブを管理するためのコマンド ライン インターフェースを提供することによって管理者を支援します。
市場調査リストへのもうひとつの新入りは、Apache Kafkaです。このリアルタイム メッセージ バス( 2020年からPASEを介してIBM i でサポート)は、シェア4%で2024年版調査に初登場しています。Kafkaに備わっている、監視対象待ち行列に到着したあらゆるトランザクショナル データを、データ レイクまたはデータ ウェアハウス デスティネーションに迅速に送信できる機能は、クロス アプリケーションおよびクロス オペレーティング システム データの統合の問題に直面しているどのショップにとっても有用な機能です。
Node-REDは、もがきながらも多くの支持を集めてきたオープンソース プロジェクトです。このNode.JSベースのフレームワーク( IBMによって開発)は、JSONフォーマットでイベント駆動型データ アプリケーションまたは「フロー」を作成するのに使用されます。これは、2021年のシェア2%から2023年の4%へと増加した後、2024年には3%へと減少しています。
また、Apache Camel(2つ以上のシステムを接続するために設計されたJavaベースの統合フレームワーク)も、「Marketplace Survey」に初登場しています。このフレームワーク( IBM i には2021年に登場)は、調査回答者の2%によって使用されていました。
オープンソース ツールの使用率に関して不可解なことがあるとしたら、それはBashの動向でしょう。このUnixシェルおよびコマンド言語は、シェア7%で初登場した2021年から、調査回答者の20%によって使用されていた2023年まで、「Marketplace Survey」では力強い採用率が示されていました。ところが、2024年版の調査では姿を消しています。
「2024 IBM i Marketplace Survey Results」レポートは、 こちらでダウンロードできます。