今はIBM i の一部に過ぎないクラウドは、将来ハイブリッド化が進む
後から考えれば当たり前に思えるかもしれませんが、適切な答えを得ようと思ったら、まずは適切な質問を尋ねなければなりません。そして、それを実践するのが言うほど簡単なことではないと認めるのは、探求心旺盛な情報発信者としては私たちが最初かもしれません。
IBM i オペレーティング システムのレンタル可能なライセンスを稼働するPower Systemsマシンの最初の真のクラウド インスタンスがいつアナウンスされたのか、時系列的に線引きするのは難しいものがありますが、何十年もの間、様々なホスティング プロバイダーがマシンの一部(またはマシン全体)を顧客にレンタルしてきたというのは間違いないでしょうし、また、しばらくの間は、真のクラウドIBM i キャパシティが提供されていると言っても差し支えないでしょう。
2009年1月、Amazon Web Servicesがそのやり方を示してくれた3年後に、 小誌でも初めてIBM iとクラウド インフラストラクチャーについて話題に取り上げ 、そして2011年の「 Wanted: Cloud-i i-nfrastructure 」および「 I, Cloud-i-us」という2つの記事(少なくとも私たちにとっては面白い記事タイトルだと思われました)では、鳴り物入りで支持し始めました。また、2012年4月の「 AWS/400: Amazon Builds An AS/400-oid Cloud 」という記事では、Amazon Web Servicesが、原型とも言えるAS/400と同じくらい統合され、完結した、自動化され、興味深いものを構築していることを指摘し、2010年7月の「 Microsoft Azure: An AS/400 for Private and Public Clouds 」という記事では、Microsoftも同様だと指摘しています。IBMが 当時SoftLayerクラウドと呼ばれていたもの(現IBM Cloud)にPower Systemsを導入 するのに2014年3月まで掛かり、IBM Cloudで稼働するPowerアイアン上で IBM iスライスがベータ版で利用可能になったのは2019年2月 のことで、それから数か月経った6月に、 このサービスはPower Virtual Server(PowerVS)へとリブランドされ、利用料金が実際に明らかにされました。
AWSが開始された2006年3月と、PowerVSが実用的なものとなった時点との間には13年のギャップがあります。そして、2024年現在、IBMは、IBM iスタックのサブスクリプション料金方式への移行にまつわる支障を解消するべく取り組んでいるため、システム ソフトウェアに対する料金と、クラウド インフラストラクチャーに対する料金がほぼ同じくらいになる場合もあります。
マネージド サービス プロバイダーやホスティング プロバイダーは、IBM iプラットフォームを真にクラウド化できるようにするためにIBMがなすべきことを待ちあぐねていました。彼らは独自の道を見い出すか、あるいは、それらを購入しました。たとえば、ハイパースケーラーではMicrosoft/SkytapやGoogle(Googleはやや勢いがなくなっていますが)、そして、Connectria、Fresche Solutions、CloudSAFE、Meridian IT、および長年にわたって取り上げてきた他の多種多様なサービスなどです。
そして今、クラウドは、IBM iプラットフォームの将来の姿ではなく、現在のIBM iプラットフォームの一部分となっています。さらに、その傾向が続けば、IBMがそれほど盛んに話題に取り上げ、また、他の何百ものMSPが賛同し、前提としているハイブリッド クラウドの将来像の一部分となるでしょう。IBM iベースは、オンプレミスのコンピュートおよびストレージ キャパシティと、オフプレミスのそうしたキャパシティとを組み合わせたものへと姿を変えるからです。
そのような状況が認識されなかったのは、2018年末まで、適切な質問が尋ねられていなかったからなのかもしれません。そうした質問が尋ねられたのは、2019年初頭にリリースされるIBM i市場調査レポート向けに調査が実施された2018年末が最初でした。当時、調査に回答した数百名の顧客のうち、83%はIBM iインフラストラクチャーがオンプレミスにあると回答し、6%がクラウド(実際のユーティリティ料金方式のクラウド キャパシティもホスティングも意味する非常に曖昧な用語です)と回答し、11%がオンプレミスおよびクラウドの両方で、ハイブリッド モードで稼働していると回答していました。2年後、その割合は、オンプレミスが84%、6%がクラウドのみ、10%がハイブリッドで、ほとんど同じでした。そして、すべての年のレポートを読み返してみましたが、多少、上下することはあるものの、ほとんど変わりありませんでした。ただし、クラウドおよびハイブリッドへ傾いてはいるようです。
2022年版レポートでは、その割合は、オンプレミスが78%、7%がクラウドのみ、15%がハイブリッドでした。2023年版レポートでは、オンプレミスが82%、8%がクラウドのみ、10%がハイブリッドでしたが、今年、2024年は分岐点となるのかもしれません。グラフを見てみましょう。
今年は、「オンプレミスのみ」は74%へ減少し、「クラウドのみ」は9%、「ハイブリッド クラウド」は17%でした。今年が分岐点と思いきや、そうではないのかもしれません。数ポイントの変動は、おそらく統計的に有意ではないからです。
分岐点を迎えたということになるのは、「ハイブリッド クラウド」の割合がもっと多くなり、「オンプレミスのみ」が50%未満になったときだと思います。また、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド クラウドだけなく、複数のクラウドにまたがるハイブリッド クラウドについての質問を尋ね始めた方がよいとも思います。企業は、複数のIBM iコンピュートおよびストレージ プールに分散させることによって、リスクを軽減しようとしているからです。