メニューボタン
IBMi海外記事2023.10.11

IBMがサブスクリプションへ全面移行しても、大騒ぎしないこと

Timothy Prickett Morgan 著

IBMが、自社のクラウドやビジネス パートナーによって稼働されているクラウドにPower Systemsマシンを導入しようとしているだけでなく、オンプレミス、IBM Cloud、およびパートナーのクラウドのデプロイメントで、サブスクリプションをベースにした一元的な料金体系で、ハードウェアもシステム ソフトウェアもクラウド使用量モデルの下で提供しようとしてもいることが非常に明白になっています。

2月にお伝えしたように、IBM i オペレーティング システムおよび統合されたDb2 for iリレーショナル データベースは、すでにサブスクリプション料金方式で利用可能となっています。これには、ソフトウェアを利用するためのライセンスと、通常なら、ソフトウェア メンテナンス(SWMA)契約に伴う、継続的なサポートおよびバグ修正の権利が含まれています。SWMAは、非常に厳密なシリアル番号を使用して、特定のシステムでそのIBM i およびDb2 for iソフトウェアを永久に使用するための永続ライセンスに付加して利用するものです。

ずっと昔(つまり、私が生まれる前でもあり、IBM System/360メインフレームで最初に具体化された、私たちが知るような商用コンピューティング業界がビジネスの原動力になり始めていた頃)には、IBMはマシンを販売するのではなく、レンタルしていました(ハードウェアもソフトウェアも。もちろんサポート付きで)。そして、機器のコストが高かったこともあり、IBMのような企業も、プログラミング サービスを通じて、データストア、次いでデータベース、そしてオンラインおよびバッチ アプリケーションの作成を企業に促しました。そうしたアプリケーションにより膨大な手作業による業務プロセスが置き換えられ、こうしたシステムの出現前には不可能だった、まったく新しいプロセスが生み出されることになります。

しかし、IBMの価格設定および販売方式は、レンタルを選ぶよう強く促すものではあったものの、レンタルが唯一の選択肢というわけではありませんでした。顧客は、マシンを購入し、ソフトウェアの永続ライセンスを取得し、ハードウェアおよびソフトウェアのメンテナンス料金を個別に支払うことも可能でした。これはIBMが親切心からそのようにしていたわけではなく、1952年に米国司法省がIBMに対して提起して1956年に同意判決で和解した独占禁止法訴訟の結果を受けてのことでした。10年後の後続の訴訟(1969年に和解)後には、IBMが従わなければならない様々なルールがありました。すなわち、同社のどのコンピューターでもサードパーティの周辺機器およびサポートを認めること、および標準販売価格を顧客に提示し、IBMシステムの購入価格とレンタル価格との間に数学的な規則性があることを保証することなどです。これらのルールは、IBMが2000年に同意判決の合意から解放されるまで、System/3X、AS/400、およびiSeriesラインに適用されました。IBMの製品の価格に関する情報が昔に比べて非常に入手しづらいのは、そういうわけです。

それはもうすべて過ぎてしまったことなのかもしれませんが、Power Systemsラインでのハードウェアおよびソフトウェアのサブスクリプション料金方式とともに、IBMは一巡して元に戻って来たことになります。1990年代には、OS/400スタックおよび関連するライセンス プログラム製品でユーザー ベースの料金方式がありました。マシンおよびユーザーの両方に永続ライセンスが供与されたため、これは、ある意味、中間的なサブスクリプション モデルです。サブスクリプション料金方式は、ユーザーでも、マシンでも、ティアでも、パフォーマンスでも、何でもベースにすることができます。違うのは、サブスクリプション料金方式は、永続ライセンスに付随する漠然とした経時的な使用量ではなく、経時的に明確に記録された使用量をベースにしているという点です。

使用量が不明瞭になる一因としては、永続ライセンスでは、理論的には、企業はそのソフトウェアを永久に使用することができますが、実際上は制限があるということです。それらのライセンスは特定のハードウェアに紐付けされており、物理的理由や、常に増え続ける演算性能やストレージ容量に対するニーズのために、ハードウェアは永久に稼働することはできないからです。多くの企業は、5年、6年、または7年間、AS/400およびIBM i マシンを稼働していますが、中には10年または15年以上まで延長して稼働している企業もあります。けれどもその場合には、技術的負債という、巨大なラ・ブレア・タールピッツ(天然アスファルトの池)にはまり込んで動けなくなり、最新のシステムに比べて、本質的にあまりセキュアでないマシンを稼働することになってしまいます。そして、1980年代には、経済的に非常に理にかなった理由から、ハードウェアを購入し、永続ライセンスを取得してサポートを利用するのが標準的になりました。たいていは、企業はそのコストを長年にわたって繰り延べることができたためです。

今年の2月 、IBMが、P05、P10、P20、およびP30ティア(すべてのティアです)で、Power9およびPower10マシンでのIBM iおよびDb2 for iのサブスクリプション料金方式を提供し始めたことで、顧客は、新しい方式でも、従来の方式(永続ライセンス プラスSWMAサポート)でも、それらのソフトウェアを利用できるようになりました。そして4月のPOWERUp 2023カンファレンスでIBMの上層部は、IBM iスタックの残りのライセンス プログラム製品のサブスクリプション料金方式が年内には始まると述べています。実際、IBMは、IBM iスタックをサブスクリプション料金方式に移行しやすくするために、昨年、LPPのパッケージングを簡素化しています( こちらの記事を参照 )。簡単に言ってしまえば、IBMは、個別に課金されていた多くのLPPを他のLPPにバンドルしたため、多くの製品価格を把握する必要がなくなり、顧客にとっては全体的にコストダウンになったということです。

そして、IBMは、どうあろうと、Powerができる限りクラウド化されるよう急き立てていることから、IBM i LPPのサブスクリプション料金方式は意外に早く始まりそうだと聞いています。噂では、夏が終わらないうちにも、クラウド方式のLPP料金がアナウンスされるかもしれないということです。そうだとすれば、Q4商戦に突入する前に、顧客はそれについて検討する時間が持てることになります。

これは現時点ではまだ噂の段階ですが、実際にLPPのサブスクリプション料金がアナウンスされたら、現行の永続的ソフトウェア プラスSWMA方式と、サブスクリプション料金方式を比較して、経済的な観点から分析を行ってみようと思っています。

しかし、そのことから、実際に次のようなことを考えるようになりました(そして、これはどうしても物騒なことにもなります)。すなわち、 IBMが、IBM i スタックの永続ライセンスおよびソフトウェア メンテナンスの販売をすべて止めてしまうとしたら、どうなるのでしょうか。

そうすることを妨げる米国政府との同意判決はありません。そしてIBMは、年金のような継続的固定収入が常にお気に入りでした。多種多様なSystem zソフトウェア スタックで永続ライセンスが利用可能であるものの、それらは当初から月額レンタル料金で利用可能であり、メインフレームでそのような販売方式が終了することはありませんでした。そしてそれは、顧客とIBMの両方が、予測できる容量に概ね基づく月額料金方式がお気に入りだったからなのです。 たくさん使えば、たくさん支払う のが原則です。クラウドは、ITのパッケージングや料金設定という点では、少しも新しいものではありません。40年前や50年前に企業のデータセンターで稼働していたSystem/360またはSystem/370メインフレームは、今日、企業のデータセンターで稼働しているAmazon Web Services Outpostと基本的には同じでした。もちろん、精度の違いはありますが、こうしたサブスクリプションの概念は非常に古くからあるものです。

Power Systemsインストール ベースが長寿命で持続性が高いことや、それぞれのPowerプロセッサーのアップグレード サイクルの後にはハードウェアおよびシステム ソフトウェア ライセンスの売上がでこぼこになることを考えると、IBMは、でこぼこを平らにして、オンプレミス、クラウド、およびアウトポスト管理方式および経済モデルをカバーする、年金型収入へと、ビジネスのやり方を変えた方がよいのかもしれません。ITのすべてがサブスクリプション モデルへ移行しつつあることを考えると(そして 顧客 が、よりフラットでより予測しやすい方式で、使用するIT機器の料金を支払えることを望んでいることからも)、IBMはこのモデルをPower Systemsに導入したくて仕方がないのだろうと思います。Red Hatは、すでにそうしています。メインフレーム スタックも、すでにそうしています。そして、IBMは、会社全体を(ハードウェア、ソフトウェア、およびサービスにわたって)、サブスクリプション モデルの下で値付けしてもらいたがっているのではないかと思います。

永遠の権利を付与するとみなされている、永続ライセンスが無くなる日が本当にやって来るかもしれません。そのようなIBMの方向転換は、意外に早いと思います。正確にいつになるかは、今はまだ分かりませんが。

あわせて読みたい記事

PAGE TOP