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IBMi海外記事2023.08.09

35年目の記念日に、Frank博士が過去を振り返り、プラットフォームの未来に目を向ける

Alex Woodie 著

先週、IBM i コミュニティは、1988年にAS/400が誕生してから35回目の記念日のお祝いで大賑わいでした。IBMは、世界中のファンに向けて開催した3回のウェブキャストで、IBM i の第一人者を何人か招いて話をしてもらう機会を設けました。ヨーロッパのコミュニティのメンバーと話をする中で、S/38およびAS/400のアーキテクチャーの開発に携わったFrank Soltis氏は、プラットフォームは実際には1つだけだったと打ち明けることで口火を切ります。

「他の人とは違う私の経歴の1つは、引退するまで45年間、IBMで働いたことだと思います」と、引退したIBMチーフ サイエンティスト、Soltis氏は、ホスト役のIan Jarman氏に述べています。「45年の間に私が携わったのは、1つのプラットフォームのみでした。そして、そのことは、IBM i とその寿命の長さをよく物語っていると思います。」

S/38とAS/400が本当に同じプラットフォームだとしたら、祝うべき周年の年数が違うのでは、とJarman氏は尋ねます。Jarman氏は1983年にIBMに入社し、S/36およびS/38に携わった後にAS/400のプロダクト マネージャーを務め、現在はミネソタ州のロチェスター研究所でIBM Technology Expert Lab(旧Lab Services)のCTOの職にあります。

「さて、S/38はいくぶんニッチな製品でした」と、IBMでの40年間のフルタイム勤務を経て、 2008年に退職した Soltis氏は述べています(1963年から1968年までは夏季の期間勤務でした)。「あまりに風変わりだったため、どのようなものなのか分からない人も多かったようです。実際、S/38は、想定していたようなSystem/3の後継ではなかったため(S/36がS/3の後継)、IBMも、どう売り込んだらよいか、よく分からなかったようです。」

1988年6月21日のAS/400の製品発表は、S/36とS/38との、ある種の統合を示すものとなりました。Soltis氏によれば、これら2つのシステムは、出自(どちらもロチェスター ラボ出身)と製品名(数字が2だけずれている)は似ているものの、市場での成功という点や技術的基盤という点では著しく異なるということです。

「そのため、アプリケーション数、ユーザー数、システム販売台数の観点から言えば、ロチェスターからの成功例はS/36の方でした」とSoltis氏は述べています。「しかし、S/36は、この時期の他の多くのシステムと同様に、成長には限界がありました。DEC VAXの状況が思い浮かぶかもしれません。新たなプラットフォーム、新たな64ビット プラットフォームへの移行にどれほど苦労したことでしょう。もっとも、S/36も同じような問題を抱えていたのです。しかし、S/38をベースにしながらも、膨大な数のアプリケーションを携え、使い勝手が良かったS/36は、まさにAS/400の開発の鍵でした。」

市場での成功という点で、AS/400がS/36とS/38の両方を完全に圧倒したのは言うまでもありません。このプラットフォームの販売台数は発売直後から急増し、数年後のピーク時には、AS/400は世界各地の110,000もの組織で稼働し、IBMに何十億もの収益をもたらしました。

時間とともにインストール ベースのサイズは小さくなりましたが、先週の35周年祭の様子からも見て取れるように、このプラットフォームは、今もなお企業に大いに頼りにされており、このプラットフォームを使用して仕事をしている人々からも大いに愛されているようです。ビジネス コンピューティング史上最大の成功事例の1つとみなされるべきものとして、目覚ましい勢いが弱まりそうな気配はまったくありません。

これにはシナリオがあったと考えると驚いてしまいますが、Soltis氏によれば、大筋ではそうだったということです。それは、Soltis氏がロチェスター ラボで陣頭指揮を執ったAS/400アーキテクチャーの、人の心を引き付ける特性の1つが、変化からの回復力であるからです。

1988年の製品発表時点では、AS/400は48ビット アドレス指定可能メモリ スペースを利用していました。7年後、このプラットフォームはCISCアーキテクチャーからRISCアーキテクチャーへ移行し、顧客の元に64ビット コンピューティングがもたらされました。上位に位置するソフトウェアに影響を及ぼすことなく、基礎となるハードウェアを取り払うことができるのは、IBMがTIMI(Technology Independent Machine Interface)と呼ぶ見事な技術によるものです。

「当初から目標としていたのは、システムを非常に長い期間にわたって存続させるということでした」とSoltis氏は述べています。「誕生から今日までの間に、IBM i は約25種類の異なるプロセッサー技術を実装されてきたという指摘を受けました。25種類の異なる実装というのは、他のプラットフォームではほとんど不可能なことです。」

今日では、IBM i はIBM Powerプロセッサーにしっかりと定着しています。PowerベースのPowerサーバーで稼働しないIBM i サーバーというのは、今日では想像すらできません。しかし、Soltis氏と彼の同僚がこのアーキテクチャーに組み込んだとてつもない技術的柔軟性のおかげで、Powerの未来は、必ずしも最初から予言されていたわけではありませんでした。

「Powerプロセッサーとの融合も、IBM i の重大な進化であったと思います」とSoltis氏は述べています。「IBMロチェスターのエンジニアは、ご想像の通り、独自のプロセッサーを構築したいと思っていました。もちろん、それは素晴らしいプロセッサーになっていただろうと思いますが、それは違うものとなったでしょう。そして、IBMロチェスターのトップはIBMのプレジデントが務めており(当時はプレジデントがいました)、彼がロチェスターへやって来て、「Powerプロセッサーを使用してもらいたい」と言うのです。」

「そこで、少人数のグループを作り、Powerプロセッサーで必要となるものをすべてまとめました」とSoltis氏は続けます。「ビジネス アプリケーションでは浮動小数点演算は使用しませんが、それが必要でした。単一レベル記憶など、その他諸々必要となるものがあり、それらを組み込むために、Powerアーキテクチャーのオーナーであるリサーチ部門やオースティンのIBMと協働し、長年掛かってそれらはプロセッサーに追加されました。今まさにPower上で稼働しているのですから、そのことによって、このプラットフォームの寿命の長さは保証されるでしょう。」

もちろん、現在、IBM i がPower上で何の問題もなく稼働しているからと言って(そしておそらくこの先何年もそうでしょうが)、いつまでも永遠にそうであるとは限りません。TIMIのおかげで、このプラットフォームはハードウェアの変更に適応できます。そして、ハードウェアに関して言えば、Soltis氏は多くの変化の兆しを目にしているようです。

「兆しが見えている技術のいくつかについて目を向けてみれば、今後、半導体技術に取って代わるかもしれないいくつかの新技術のうち、AIへの関心については疑う余地はなさそうです」と彼は述べています。「IBMは、量子コンピューティングのようなものに重点的に取り組むと発表しました。今日私たちが利用している従来の半導体システムの一部は、今後何年かの間には、これによって取って代わられるだろうと思います。」

「IBM i およびその前身システムで証明できたのは、そうした新技術を容易に取り入れることができるということです」と彼は続けます。「この世界にある非常に多くのシステムについてはそうは言えませんが、そうした技術を取り入れることができるということは、顧客の要件に対応できるということであり、さらには将来の新技術の要件にも対応できるということなのです。」

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