Zend Server for IBM i が64ビットに、RPMを介して入手可能
Zend Server for IBM i が、RPMを介して入手できるようになりました(RPMは、IBM i プラットフォームでオープンソース ソフトウェアの入手およびインストールを行う際の標準的な方式となっています)。また、Zend PHP製品のオーナー企業であるPerforce社によれば、IBM i 向けのエンタープライズグレードのPHPランタイムが、64ビット モードで稼働するようになったということです。
Zend Server 2020 for IBM i の リリース ノート によると、新リリースにより、数多くの新機能、変更、および修正がこの製品にもたらされるようです。最も大きな変更の1つは、IBM i 固有のコンポーネントやその他の必要なPECL拡張も含め、すべてのコンポーネントにRPMパッケージが採用されたことです。
IBM i のオープンソース コミュニティでは、オープンソース製品をインストールするための標準的な方式としてRPMおよびYUMが採用されているため、こうした標準方式に準拠することにより、Zend Server for IBM i の顧客はこのソフトウェアにアクセスしやすくなるはずです。
RPMの使用で、IBM i 顧客のPHPの新バージョンへの移行が促進される、と Perforce社のZend担当シニア ソリューション コンサルタントのErwin Earley氏は述べます。
「他のバージョンのZend Serverと同様に、Zend Server 2020は、他のバージョンのZend Serverと並行してインストールすることができます。そのため、アプリケーションのPHPの新バージョンへの横並びマイグレーションが可能となっています」と、Earley氏は『 IT Jungle 』へのメールで述べています。
また、Zend Server 2020 for IBM i は、64ビット アプリケーションとして稼働するようになりました。一方、以前のリリースは、32ビット モードでの稼働でした。ベンチマーク テストによれば、64ビット バージョンは、32ビット バージョンに比べて約5%高速に稼働するとEarley氏は述べています。しかし、64ビットのアドレス指定可能なメモリーを持つことの真のメリットは、安定性と互換性にあると彼は述べます。
「PHPの32ビット バージョンは、ガタが出始めており、32ビットでは解決が不可能でなくとも困難な、いくつかのサポート上の問題が見受けられるようになっていました」とEarley氏は説明します。「そうした問題は64ビットで解決します。互換性という点から見れば、64ビットPHPを使用することで、データベース コネクタとしてODBCを使用することが可能になります。これは、ibm_db2がなくなるということではありません(なくなりません)。もっとも、ODBCは、オープンソース言語とDb2の間の接続での使用について IBMが推奨を表明したものです。」
また、今回のリリースでは、現行バージョンの8.0リリースの1つ前のリリースである、PHPバージョン7.4のサポートが追加されます。一方、PHP 7.1はサポートから外れました。もっとも、そのリリースのサポートは、Zend Serverの次の「長期リリース」とEarley氏が述べているZend Server 2021で、再度追加される予定です。
Perforce社のリリース ノートによれば、ZMailエクステンションのアップデートだけでなく、新たなIBM i 向けの MongoDB エクステンションも追加されるようです(この大規模ドキュメント指向NoSQLデータベースのIBM i での稼働のサポートは 2020年に追加されました)。
また、リリース ノートによれば、Zend Server 2020ユーザーにとっては、ジョブ待ち行列を一時停止および再開する新たな機能がJob Queue APIに追加されたこともメリットと言えそうです。さらに、Zend Server管理プログラムおよびXMLSERVICEをインストールするための新たなインストール プログラムも追加されると同社は述べています。
また、Perforce社は、今回のリリースで新たなAPI認証方式も追加し、トークンによる「べき等」WebAPIアクセスをサポートするようになっています。トークンによるべき等WebAPIアクセスは、「WebAPIを使用する新しい方式です(ZendServerインスタンスでの管理者アクションの実行で使用)」とEarley氏は述べています。「以前は、API認証情報(ユーザー/パスのペア)を使用していましたが、WebAPIで使用するためのトークン(有効期限あり)を生成できるようになっています。また、使用される認証情報に基づいたAPI結果キャッシングも追加され、パフォーマンスの向上につながります。」
Perforce社は、以前のリリースのZend Server for IBM i に対して、この他にも約20件の変更を行い、JobQueue APIコマンドやZRayプラグインの不具合など、34件の問題を修正しています。
また、先日、Perforce社は、 2019年末に導入したIBM i 向けのPHPのコミュニティ エディションのアップデートを行っています。コミュニティ エディションとも呼ばれるZend PHPも、64ビット サポートにアップデートされました。これにより、Earley氏がZend Server 2020に関して述べていたのと同様のパフォーマンスおよび互換性の機能強化がもたらされるはずです。Zend PHPでは、発表以来ずっと、RPM配布方式が使用されてきました。
Zend PHPの新リリースには、PHPバージョン8.0(このポピュラーなスクリプト言語の最新バージョン)のサポートも含まれています。IBM i のショップは、サポート契約なしで、コミュニティ サポートを利用することにより、Zend PHPでPHPバージョン7.3、7.4、および8.0を実行することができます。Zend PHPランタイムは、有償サポート契約を追加することによって、PHPバージョン5.6、7.1、および7.2を実行するよう拡張することができるとEarley氏は述べています。
IBM i 向けのPHPは、実に様々なバージョンが飛び交っているため、Earley氏は次のように述べて、情報を整理してくれました。
「Zend Serverは、5250ベースの管理機能だけでなく、監視およびアプリケーション パフォーマンス管理などの最先端のアプリケーション サーバー機能が付属する、認定PHPスタックの卓越したオファリングであることに変わりありません」と彼は述べます。「ZendPHPは、コミュニティPHPのZend社によるビルドおよびデリバリー バージョンということです。これらは別々の製品ですが、共有している機能も数多くあります(すなわち、Apacheのセットアップ、ibm_db2データベース ドライバー、およびILE Toolkit)。」
Perforce社は、Zend Server ProfessionalとZend Server Enterpriseという、2つのバージョンのZend Server 2020 for IBM i を提供しています。それら2つのオファリングの主な違いは、Enterpriseバージョンは365日24時間サポート、Professionalバージョンは9時から5時までのサポートという点だとEarley氏は述べます。
Perforce社では、今もなお、IBM i の顧客にZend Server for IBM i 製品への無償アクセスを利用するよう推奨しています。ただ、昨年5月に、IBMは、2020年6月をもって、12か月間の無償サポートの提供を終了することを 発表しています 。つまり、顧客がPerforce社による無償サポートを受けられるのは、2021年6月までということです。
IBM i 向けのPHPランタイムを含め、すべてのZend PHP関連資産は、現在、Perforce社(2019年にRogue Wave Software社を買収)が所有しています。言うまでもありませんが、Rogue Wave社は2015年に Zend社を買収 した企業です(以前の記事で2016年と記しましたが、2015年でした)。
このIBM i ソフトウェアは、Perforce社の売上高の多くを占めているというわけではないかもしれません。同社の売上高は、Rogue Wave社を買収した2019年には3億ドル、積極的なM&A戦略を受けて2021年には6億ドルに達すると予想されています(ミネソタ州最大手の『 スター・トリビューン』紙による、ミネソタ州ミネアポリスを拠点とする同社の 2019年の企業プロフィール より)。
しかし、未公開株式投資会社の Clearlake Capital 社および Francisco Partners 社によって所有され、 HelpSystems 社の前CEO、Janet Dryer氏が会長を務めているPerforce社は、変わることなく、このIBM i 向けPHPソフトウェアの保守および開発を続けています(同製品は、数ある中でも特に、Prada社、DHL社、およびStarbucks社によって採用されていることが知られています)。「IBM i などのレガシー プラットフォームを今なお稼働している企業が、PHPを使用してモダンなソリューションを構築する支援も行っています」と 同社のWebサイトでは述べています。
Zend Server 2020 for IBM i のリリース ノートは、 こちらでご覧になれます。