最新のIBM iテクノロジー リフレッシュの概要
予想に違わず、IBMは本日、春のIBM iテクノロジー リフレッシュを公式に発表しました。IBM i 7.4 TR2またはIBM i 7.3 TR8(あるいはその両方)で利用可能となる主なものとしては、Db2 Mirrorの機能強化、新たなテープ ライブラリー仮想化方式、オープンソースの機能改善、およびDb2、RPG、RDi、セキュリティ関連の新機能などがあります。
数か月前、 IBM 経営陣は、大型のIBM 7.4 TR2およびIBM i 7.3 TR8の公開の日として、カレンダーの4月14日のところに丸印を付けました。これは、翌週、ジョージア州アトランタでPOWERUpカンファレンスが予定されており、ロチェスターおよびトロント ラボのIBM iのエキスパートによるセッション等を通じて、発表される内容についてのIBM iコミュニティの理解を広められる絶好の機会となると考えてのことでした(アトランタでのカンファレンスは中止となりましたが、8月末にフロリダ州タンパで新たなイベントが予定されています)。
言うまでもないことですが、新型コロナウイルスによって様々なことが変わりました。COVID-19のせいで大半の米国人(そして世界中の多くの人々)が無期限のステイホームを強いられているところ、IBMは、IBM iのアナウンスメントを通常のスケジュールどおりに行うべく最善を尽くしているようです。そうした姿勢は、一時的な平常感を演出するだけだとしても、賞賛されるべきものでしょう。
先週、IBM iチーフ アーキテクトのSteve Will氏と、IBMのプロダクト オファリング マネージャーのAlison Butterill氏が、『 IT Jungle 』に対して最新TRについてブリーフィングを行ってくれました。ちなみにWill氏は、本日、米国中部時間の午前10時より、 COMMON Webサイトにて、IBMエグゼクティブのSteve Sibley氏とともに新たなTRについてのウェブキャストを行う予定です。
Db2 Mirrorでの内蔵ディスクのサポートは、数多くのIBM 7.4 TR2の機能強化をもたらしました(Db2 Mirrorは、IBM i 7.3では利用できません)。 2019年に発表された際には 、Db2 Mirrorは、ストレージ エリア ネットワーク(SAN)を使用してデータを保存しているIBM iのショップに制限されていました。中小規模のショップ間のDb2 Mirrorに対する関心は、IBMが予想していた以上のものでした。特にSANを使用していないショップでの関心が高かったようです。そうしたことからIBMは、7.4 TR2でDb2 Mirrorのストレージ サポートを拡張するべく取り組んだということです。この機能については、『 The Four Hundred』の今後の記事で詳しく取り上げる予定です。
ストレージに関するもうひとつの興味深いニュースは、複数の区画を単一のテープ ライブラリーに接続するための新たな仮想化方式に関するものです。IBM iのショップは、仮想入出力サーバー(VIOS)を採用することで、そのようなことを行うことはできました。しかしVIOSは、小規模なIBM iのショップの間で、(控えめに言っても)およそ広く利用されている技術とは言えないため、IBMは、実質的には新たなテープ ライブラリー ドライバーであるものを利用する、よりネイティブな方式によって、改めてそうした状況の改善に取り組みました。詳細については後述します。
新たなTRにより、特にIBM i 7.3 TR8に、セキュリティの面で多数の機能強化がもたらされます。具体的には、IBM i 7.3 TR8で、TLSバージョン1.3がサポートされるようになります。これまではIBM i 7.4でのみのサポートでした。やはりこれまではIBM i 7.4でのみ利用可能だった新たなデジタル証明書マネージャーのインターフェースも、IBM i 7.3 TR8で利用可能になりました。
「7.4および7.3に同時に導入される機能の話をするのが通例なのですが、この件は、このプラットフォームのセキュリティ管理者にとってかなり大きなことです」とWill氏は述べます。「新たな7.4のインターフェースをクライアントが目にし始めると、「このインターフェースは、はるかに見やすい。7.3も同じようにしてほしい」という声がすぐに上がりました。そのようにするとしても、それほど多大な労力は掛かりそうにないことも分かりました。そして、実際のところ、セキュリティ管理者の作業は、はるかに楽になりました。」
IBM iオペレーティング システムの一部ではありませんが、Rational Developer for i(RDi)は、TRの発表とほぼ同時期にアップデートが行われるのが伝統のようになっています。今回のRDiバージョン9.6.0.7には、RPGコードのセグメントをハイライトして、数回ボタンをクリックするだけでストアード プロシージャーを作成できる新機能が追加されます。また、新たなリアルタイムでのSQL妥当性検査およびフォーマット支援機能や、デバッグ時にブレークポイントを設定するための新たなパラメーターも追加されます。
Butterill氏によれば、RPGには、タイムスタンプの一意の値を取得するための組み込み関数など、いくつかの新たな関数が追加されるとのことです。また、プログラマーは、新たな方法でキー付きデータ構造のキー数にアクセスできるようになったと彼女は述べます。さらに、LikeDSキーワードの修飾名に対する機能強化も行われています。
オープンソースの面では、IBMが提供する新たな手法により、IBM iのショップは、IBM iサーバーをインターネットに公開することなく、RPMでオープンソースのアップデートを利用できるようになります。言うまでもなく、RPMは、従来の5733-OPSを置き換える新たなソフトウェア配布方式であり、Python、Git、Node.jsのようなツールや、IBM iで稼働する他のオープンソース ソフトウェアを入手する唯一の方法となっています。Will氏によれば、新方式では、ネットワークに接続されている別のクライアントを介してユーザーがオープンソースのアップデートをRPMからIBM iサーバーへ受け渡すことを可能にする「トンネリング テクノロジー」を利用しているということです。
また、Db2にも、IBM i 7.4 TR2およびIBM i 7.3 TR8で、数多くの新たな機能強化、サービス、および組み込み関数が加わります。たとえば、IBM i内部データ タイプからデータを変換するINTERPRET組み込み関数や、同一のIBM iサーバー上のファイル、またはリモート データベースのファイル(IBM i 7.4のみ)について、ファイルのオブジェクト属性およびデータ(またはその両方)を比較する新たなCOMPARE_FILEツールなどです。
ここ数年間、IBMは、従来のAPIおよびCLコマンドの代わりとして機能するSQLサービスをDb2 for iデータベースに追加してきました。IBMはそうした方針を続けるようで、IFS_OBJECT_PRIVILEGES関数(データベースのOBJECT_PRIVILEGES関数のように機能する)など、数多くの新たなSQLサービスを追加しています。Will氏は、実際に数えてみたところ、今回のリリースには28もの新たなSQLサービスがあったと述べています。
最後になりましたが重要なものとして、IBMが提供するビジネス インテリジェンスおよびアナリティクス ツールであるDb2 Web Queryに対する機能強化について触れておきます。IBMは、EZ-Installパッケージのアップデートを行いました。EZ-Installパッケージは、新規ユーザー向けに製品のインストール作業を簡略化し、また、ビジネス パートナー向けのデモンストレーション ツールとしても機能するように設計されています。また、今回のリリースでは、新規報告書自動作成機能も追加されています。
IBM i 7.4 TR2およびIBM i 7.3 TR8の機能強化のほとんどは5月15日から利用できるようになっていますが、6月まで利用可能とならないものもあります。最新TRの詳細情報については、今後の『 The Four Hundred 』の記事に引き続きご注目ください。