あなたのIBM i ワインは何年もののビンテージですか?
前回、IBM i オペレーティング システムの新バージョンを目にしたときから、ずいぶん月日が経ちました。従来の例に従えば、このプラットフォームのさらにもうひとつのリリースが、目前に迫っているということでもあります。そして、IBMがテクノロジー・リフレッシュという漸次的なアップグレード プロセスを通じてソフトウェアのアップデートを処理するようになったおかげか、新バージョンのリリースは、以前ほど劇的なイベントにはなりません。オペレーティング システム、ミドルウェア、データベース、およびアプリケーション開発ツールをまとめて更新するというのは、IBMミッドレンジの歴史のほとんどの間、いつも一大イベントでした。
しかし、サポート終了日がとっくに過ぎたオペレーティング システムを使用しているOS/400、i5/OS、およびIBM i のショップも数多くあるようです。これについては、これまで何度も論じてきましたが、ここ数週間、理解を深めようとしていたのは、その顧客ベースにおいてオペレーティング システムのディストリビューション レベルはどのようなものと一般に考えられているか、ということについてでした。これまで、調査データをまとめるだけでなく、いくつかの調査も実施して、その点についてより理解を深めるように努めてきました。このことが特に重要なのは、複数のPower Systemsのリセラーから、OS/400 V5R3およびi5/OS 5.4システムを使用していて、アップグレードを考えている顧客がいるという話を耳にしてきたからです。ちなみに、これらのリセラーにとって自分の営業地域内でありながら、それまで聞いたことのなかった顧客だったようです。
我々も正確な数を把握しているわけではありません。率直に言えばIBMも同様で、どれくらい多くのSystem/36およびSystem/38マシンが今なお世界中に存在しているか分かっていないと思います。IBMが長年、AS/400ラインについて詳しく把握していなかったのと同じです。実際、そんなところだろうと筆者が思うのは、IBMが最初のAdvanced/36を発売した1994年にIBMから聞かれたことがあったからです。Advanced/36は、System/36のSSPオペレーティング システムを稼働した、実際、PowerPCプロセッサーを使用した最初のIBMのミニコンピューターでした(翌1995年のAS/400は、より本格的な64ビットPowerPC ASプロセッサーを使用し、微調整が施されたOS/400 V3R6、そして最終的にはより安定的なV3R7を稼働しました)。当時、IBMから実際に尋ねられたのは、顧客ベースがどれくらいの規模か知らないかということでした。記録が不完全で、1983年にリリースされていたSystem/36の多くの顧客が記録から漏れていたためです。
このようなことは、IT業界では常によくあることです。Microsoftも、世界中にWindows NTおよびWindows Server 2000およびWindows Server 2008の顧客が実際どれくらいいるのか、あるいは何台のマシンでこのソフトウェアが動作しているかを正確には知らないでしょう。ほとんどの顧客が1台のマシンのみ(ときには2台)であるため、System/3XおよびAS/400ベースでは、顧客数と台数は近い数になりますが、Windowsのショップには何倍も多くのマシンがありました。もっともそれらが今も稼働しているかどうかは分かりません。
過去の顧客を見失ったITベンダーに対して、どうこう言おうというのではありません。ビンテージなショップが今もざっとどれくらいあるか把握し、どのようにしたらそうしたショップが前に進めるよう促すことができるのか思案することが大事なのです。先週の月曜日のリード記事、「Rebuilding The Bottom Of The Pyramid」のテーマは、まさにこのことでした。すなわち、Power8ベースのPower S812 Miniを11月のデッドライン(文字通りの死の線)以降も生かし続けることで、企業がビンテージなマシンおよびオペレーティング システムから離れて、最新のIBM i およびPower Systemsの世界への移行するのを促すためのプラットフォームとして利用できるのではないかということです。ワインと異なり、ビンテージの年数を重ねたところで、美味しくなるものではありません。
何度も述べてきたので、うんざりさせてしまうかもしれませんが、IBMミッドレンジ ベースのアクティブな顧客、すなわち、比較的新しいマシンおよびオペレーティング システムのリリースを使用し続け、IBMまたはサードパーティのメンテナンスを受け、ソフトウェアパッケージを購入し、ニュースレターを購読している顧客というのは、全体の1/4~1/5程度のようです。残りの顧客と彼らのマシンは、時間の経過とともにひっそり消えて行くのみです。HelpSystems社が毎年の「IBM i Marketplace Survey」を通じて集めているデータが表しているのは、こうしたアクティブな側の顧客ベースであろうと思われます。中にはビンテージなプラットフォームも少し混じっているでしょうが。次のグラフは、昨年10月にHelpSystems社が顧客ベースで調査した、IBM i オペレーティング システムのバージョンについてのデータです。
これらの調査結果をテーマにして行ったウェブキャストの中で述べたように、このような分布のしかたは、Windows ServerまたはLinuxベースのアクティブな部分から想定されるものとほとんど変わりありません。強いて言えば、大方の予想より、IBM i 7.1がいくぶん多く、かなり動きが速かったと言えるでしょうか。これは、あらゆるソフトウェア互換性または認証を保ったまま、新たな機能に合わせてオペレーティング システムに微調整を施すテクノロジー・リフレッシュ方式の登場のおかげです。この調査からは、HelpSystems社の調査回答者の10%がIBM i 6.1以前を使用しており、そのうち半分はi5/OS 5.4以前ということが見て取れます。
これは、昨年末にProfound Logic Software社が実施した2019年「State of IBM i Modernization Survey」調査と符合するものです。その調査では、4%がIBM i 6.1で、5%がi5/OS 5.4以前のリリースであることが示されていました。Profound Logic社の調査では、IBM i 7.3は回答者の59%と、はるかに高いパーセンテージが示され、IBM i 7.2は34%、IBM i 7.1は16%でした。
そのような情報を探しているということを知ってか、ある知り合いのリセラーが、AS/400およびその後継機のメンテナンスを行っているサードパーティの業者に話を聞いてくれたようです。それによると、米国全体の1/4について言えば、同社の500の顧客のうちの約90%が、i5/OS 5.4以前のリリースを稼働していると見積もられるということです(この数には私も仰天しました)。ということは、米国全体では、そうしたビンテージ リリースの顧客は約1,800ということになり、市場の約35%を米国が占めているとすると、世界全体でi5/OS 5.4以前のリリースを使用している顧客は5,000を少し超えるくらいだという計算になります。そして、ここが重要な点です。この数は、メンテナンスに代金を支払っている顧客についてであり、そしてそれはIBMのメンテナンスではなく、サードパーティのメンテナンスということです。当然のことながら、このメンテナンス業者は古いリリースのサポートというニッチ市場を切り開いたわけです。もっとも、パッチを適用する(IBMではこうしたビンテージのリリース向けに新たなパッチは作成しません)ということではなく、何も変わらないにもかかわらず、顧客がそれらの稼働を続ける支援をするということです。
AS/400以降のマシン(つまり、System/3Xマシンでない)を稼働している世界全体のIBMミッドレンジ ベースの150,000の顧客のうち、約30,000の顧客がIBMソフトウェア・メンテナンスに対して代金を支払っているそうです。あらためて言いますが、メンテナンスに対して代金を支払っていない顧客については、詳しく知りようがありません。このサードパーティ業者の業務の残りすべてがIBM i 6.1を対象としているのだとすれば、この業者のメンテナンスを受けているIBM i 6.1の顧客が、世界全体でおそらくもう5,500いることになります。そして、IBMソフトウェア・メンテナンス ベースの約10%がビンテージ リリースを対象にしている(つまり約3,000の顧客)ようであり、また、ビンテージ リリースを対象としてこのサードパーティ業者のメンテナンスを受けている顧客が別に5,500いるということです。IBMおよびこのサードパーティ業者からメンテナンスを受けていない他のベースの部分についてはまったく計算していませんが、これが下限値であり、おそらく、もっと高くなるだろうと思われます。
確かなことが1つあります。このサードパーティのメンテナンス業者におけるビンテージのオペレーティング システムの占める割合は、これらの調査で見られるものより、ずっと高めです。これは、我々が考えるより、おそらくはるかに多くのビンテージ マシンがあることの指標とも言えます。そして、そのことは、前に進むチャンスがあるという意味では良いことであり、これまで非常に長い時間が過ぎてしまったという意味では悪いことです。しかし、楽観的な言い方をすれば、前に進むためには、今ほど良い時機はないのです。