HMC管理をネイティブでPowerサーバーのLPARに移行
アウト オブ バンド管理は、IT分野における新しい領域ではありません。そして世界で最も優れた最先端のソフトウェアの多くには、マシンまたはマシン群のステータスを収集する機能や、そうした情報を使ってデバイスの初期構成を行ったり、障害発生時に復旧させたりする機能を持つ、何らかの独立した管理コンソールが備えられています。
ハードウェア管理コンソール(HMC)は、長い間、AS/400、iSeries、System i、およびIBM iラインに存在し続けてきました。人々がそれについて文句を言わなかった頃を思い出せないほど長い間です(その相棒はVirtual I/O Serverであり、名前が示すように、Powerベース システム上の周辺機器へのアクセスを抽象化および仮想化するシステム ソフトウェアのレイヤーを提供します)。HMCのことを、Hardware Mangler Console(ハードウェア破壊コンソール)と呼んでいた人もいれば、ここには表記し難い言葉で呼んでいた人もいました。誰もがHMCは高価過ぎると言ってきましたが、その点については常に正しかったように思います。しかし、管理コンソールの料金として大金を請求することは、あらゆる種類のシステムまたはフレームワークのプロバイダーのあるべき本来の姿とも言えるでしょう。そして、IBM iプラットフォームの統合形態を前提にしてあれこれ考えてみると、HMCファームウェアを備えることで、通常のサーバーの価格の2、3倍の額を支払えば、1台または複数台のIBM iボックスを管理できるようになるというのは、思うほど悪いものではありません。vCenter Serverは簡単に使いこなせる代物ではありませんし、安価でないことも確かです。
企業がHMCについて抱いていた1つの不満は、その機能がOS/400およびIBM iスタック本体に付属しているべきだ、というものでした。特にこれは、IBM iは、すべての付属機能が、使いやすく購入しやすい形で組み込まれている統合プラットフォームだということを売り文句にしていたからこその不満した。また、IBMがPowerアーキテクチャーを促進しようとしていながら、Powerマシン向けのHMC管理スタックをX86サーバー上で稼働させているというのは、直観的に違和感を覚えるだけでなく、逆効果を招きかねないとの批判の声も上がっていました。IBMが長期に渡って、シングル ソケットPowerマシンがHMCスタックを稼働できるようにしていたことを考えると、特にそう思えます。また、1998年にOS/400が論理パーティションを導入し、2000年以降、Linuxが、Power論理パーティション(LPAR)上でサポートされたことを考えても、さらに奇妙です。
世界各地で数多くのHMCが使用されています。そして、 IBMの現在のHMCのサポート ページ では、Version 3のスタックが、今でもサポート対象になっています。これは、遡ること2001年にPower4ベースのシステムの構成および制御を行うために作成されたものです。HCM Version 8は、Power6、Power6+、Power7、Power7+、およびPower8プロセッサーを使用しているマシンを管理でき、これがHCMの最新バージョンということになります。2015年10月にIBMは 発表レター215-390で、仮想アプライアンス フォーマットのHMCスタックの提供を発表しました。このスタックはRed Hat社のKVMハイパーバイザーまたはVMware社のESXiハイパーバイザー上で稼働し、顧客が選んだ任意のX86サーバー上でデプロイすることが可能でした。サーバーは、Intel VT-xまたはAMD-Vハードウェア仮想化拡張機能をサポートするX86プロセッサーを搭載している必要があり、稼働には、4コア以上、8GB以上のメモリー、および160GB以上のディスク容量が必要とされていました。この仮想HMCのライセンス料金は、1年間のソフトウェア メンテナンス(SWMA)込みで3,000ドルです。また、SWMAについては、2年目以降は3年間で別途1,200ドル掛かります。物理HMCは、その2倍以上のコストが掛かります。
もちろん、これは正しい方向へ向けての1歩でした。けれども、その組み合わせには、やはりあの厄介なX86サーバーが含まれていました。しかしこれからは、顧客はHMCでPowerマシンを選択できるようになるのです。9月15日以降、顧客はIBM iシステム上のLinuxを稼働している論理パーティションでHMCスタックを稼働できるようになります。あるいは、Linuxを稼働してHMCスタックをホストしているPowerサーバーを購入することも可能になります。仮想であれ物理であれ、この組み合わせには、X86マシンはもうありません。
独立した管理コンソールを用いて、多数のマシンを一元管理したいユーザー向けに、IBMは 発表レター117-033で、PowerベースのHMCの提供を発表しています。このマシンは、6コアPower8プロセッサー1基、メイン メモリー32GB、2TB SATAディスク2台、および管理対象システム接続用の10Gb/秒イーサネット ポート4口を備えた1Uラック マウント シャーシのサーバーです。このサーバーは製品番号7063-CR1として販売され、リトル エンディアン データ フォーマットをサポートするLinuxバリアントを必要とし、HMCコード レベル8.7.0以上を稼働する必要があります(参考: Power8チップはすべて、リトル エンディアン データ フォーマットをサポートしています。それ以前のPowerチップではサポートしていません)。顧客は、HMCのX86バリアント上で稼働しているのではないことに気付きさえしないのではないかと思います。このパピー マシン(軽量版マシン)の価格は6,875ドルですが、仮想アプライアンスの価格からすると、約半分はソフトウェア ライセンス料であることが分かります。
仮想化に歩を進め、同時にX86マシン上のvHMCを廃用したいとお考えの場合は、 発表レター217-200で示されているように、ようやく、それが可能となります。このvHMCは、IBM i、AIX、およびLinuxもサポートしているPowerVMハイパーバイザー上で稼働します。2015年にvHMCソフトウェアがLinuxへ移植されたのですから、こうなるのは当然とも言えます。このvHMCアプライアンスのPower LPARバージョンは、HMCコードのVersion 8.8.7をベースにしており、Power6~Power8プロセッサーを使用しているマシンを管理することができます。
顧客は自身のデータセンター内でPower HMCおよびPower vHMCコントローラーをうまく組み合わせることができますが、一度に1台のマシンとそのパーティションとその他の機能を制御できるのは1つのコンソールだけなのでないか、と推測されます。Power vHMCの価格は公表されませんでしたが、おそらく、vHMCのX86バージョンと比べてそれほど高価となることはないと思われます。
では、結局のところ、どういうことになるのでしょうか。
HMCについては、様々な考え方を持つ様々な技術者がいます。私が話を聞いた技術者の何人かは、世界中にあるIBM iボックスの約1/3では、どのような仮想化もまったく使用していないため、それらにとってはOperations Consoleで十分だ、と述べます。彼らの話を聞く限りでは、HMCが有用なのは、システムに4つを超えるLPARを追加してそれらの資源を管理したい場合くらいだ、ということのようです。そうでない場合、顧客はIntegrated Virtualization Managerを使用して、2つ、3つのパーティションを作動させるくらいにしておいたほうがよいのだそうです。とは言うものの、その一方では、HMCはストレージ エリア ネットワークへのリンク設定をより簡単にしてくれる、と言う技術者もいます。また、VIOSとうまくインターフェースを取り、上手に管理してくれる、という指摘もあります。
しかし、ある興味深い、実現の可能性がある計画が、現在、進展しつつあります。HMCがPowerマシン上の論理パーティションでネイティブになったことで、すべての大規模ショップで行っていると思われる、予備のHMCを作成する作業はずいぶんと簡単になるかもしれません。IBM PowerHAや、Vision Solutions社のMIMIXのような他のレプリケーション技術を使用している顧客の場合は特にそうでしょう。顧客は、Powerシステム上のLPARでvHMCを稼働させることも、それらのバックアップ ボックス上にミラー パーティションを作成することもできます。そして、プライマリー マシンが失われた場合には、稼働するHMCもリモートで複製するというわけです。現時点では、2台の物理HMCをクロスカップリングするというのは、多少、その場しのぎの感があります。そして、HMCには組み込みのレプリケーション機能がありますが、ポートを通じてそれらをクロス接続するのは、多少、トリッキーであり、それらのポートは管理対象の各Power Systemサーバーにそれぞれ接続されている必要があります。複製されたvHMCは、基本的に完全コピーとなるでしょうし、管理対象の各マシンとは、自動的にリンクされます。
HMCについてあれこれ考えているうちに思い浮かんだのは、vHMCと同じパーティションにPowerVCクラウド インフラストラクチャー管理ツール(IBMによるOpenStackの実装)とPowerSCセキュリティ管理ツールを置くというのも、おそらく理にかなうのではないか、ということでした。もっとも、IBMがそのような構成をサポートするかどうか分かりませんが。しかし、おそらく、すべてのツールは統合され、パーティションに置かれることになって行くのかもしれません。
やはり、IBM iの「i」は、統合(integration)の「i」なのです。