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IBMi海外記事2017.09.28

ミッドレンジの楽観論を検討する

Alex Woodie 著

IBM iサーバーの情勢について、ポジティブにとらえることは難しいかもしれません。一時的に、成長の兆しが見えることもありますが、全体的な市場規模は、以前より大きく縮小しています。「eye bee em eye(IBM i)」と謳うIBMerは、ロチェスターの外にはほとんど見つからないかもしれません。しかし、最近のサードパーティ ベンダーをめぐる合併劇によって、このレガシーなプラットフォームには隠されていた生命がいるかもしれないということが示されました。

先月の超大型買収は、IBM i HAソフトウェア ベンダーの Vision Solutions 社を、 Clearlake Capital Group 社から Centerbridge Partners 社が買収したというものでした。この買収は、 IBM メインフレームおよび Apache Hadoop向けのETLおよびデータ管理ソフトウェアのプロバイダーである Syncsort社とVision社との合併を念頭に置いたものでした。

運用資産約250億ドルの未公開株式投資会社、Centerbridge社が、12億ドルを投じて、IBM iおよびメインフレームに大きなインストール ベースを持つベンダー2社の過半数株式を取得しようとした事実は、そうした「レガシー」プラットフォームが当初考えられていたよりも価値が高い可能性があることを示しているのかもしれません。

「私がSystem iのISVまたはショップであれば、レガシー プラットフォームであるSystem iおよびメインフレームにそのような資金が投じられるとしたら、それは私にとってなかなかの大事件ということになるでしょう」とVision社CEOのNicolaas Vlok氏は述べます。「それは何年振りかという出来事です。Centerbridge社は、私たちがよく知る、愛してやまない世界に巨額の投資を行ったのです。」

『 IT Jungle 』ではそれらの企業の買収価格は知り得るところではありませんが、Vision社の評価額は、前回、1年程前にオーナーが変わった時点と比べて実際、上昇しているそうです。それは、Clearlake社がDouble-Takeビジネスを Carbonite社へ売却する前のことでもありました。売却後、Vision社は、その大部分がIBM iとの関連の深いPower Systems向けのハイ アベイラビリティーおよびディザスター リカバリー ソフトウェアの提供に注力することとなります。

投じられた12億ドルの内訳がVision社とSyncsort社とでおよそ半々だったとすれば(両社ともClearlake社傘下でした)、Vision社の価格はおそらく約4億5千万ドルから6億5千万ドルくらいだったということになります。かなり大ざっぱな金額ですが、少なくとも範囲内には入っていると言えそうです。

Syncsort社との合併後も同社に留まるVlok氏は、この取引が今後5~10年間にとって「変革をもたらし、市場を特徴付ける」ものとなるかもしれないと述べます。

「このプラットフォームは、一部の人々が言うより、はるかに安定的だと思います」と彼は『 IT Jungle』に述べます。「現在そのプラットフォームを稼働している人々は、すぐに他のプラットフォームへ飛び移ろうとはしません。そのプラットフォームを稼働している理由があるからです。これらのプラットフォームのどちらにも、非常に忠実な支持者層があると思います。一部の目敏い投資家は、堅実で利益の上がる市場であることに気付いています。けれども、他の市場において見られるように、市場を荒らそうと参入してくる競争相手もあまり多くいません。そのため、堅実な利益を生む、健全でおそらく低リスクの投資を促進するのです。」

Vlok氏の評価は、過去17年間、統合化が進む状態に置かれていたミッドレンジ市場にとっての朗報であるように思われます。今後何年もの間、特に 年齢を重ねたIBM iソフトウェア企業の創設者たちが出口戦略を模索する ようになるのにつれて、合併・買収はさらに増えて行きそうですが、ミッドレンジのインストール ベースが忠実で、ある程度安定的で、利益が上がるという認識は、継続的な投資の誘因となり得るのかもしれません。

Centerbridge社は、Vision社とSyncsort社の取引を「ビッグ アイアンからビッグ データへ(Big Iron to Big Data)」と称していますが、これは興味深い表現です。Hadoopのような分散型オープンソース システムに象徴されるように、過去5~10年の間、ビッグ データ市場は非常に大きな盛り上がりを見せてきました。そうした盛り上がりは、続いて、ベンチャー キャピタリストによるソフトウェア スタートアップへの数十億ドルの投資へとつながって行きました。

しかし、ビッグ データの盛り上がりは徐々に弱まりつつあります。Webログ、携帯電話、ソーシャル メディア、および様々な他のソースからやって来る構造化されていないデータの山を十分に活用することは、実際には非常に難しいという現実に直面しているからです。特に、すべてをきちんと動かすためには、顧客が数多くのオープンソース製品を自分でまとめ上げなければならないのだとしたらなおさらです。

YahooのようなWebの巨人がHadoopを作り上げるのにどれほど多くの時間と資金を費やしたか(そして、Facebookのような企業が Hadoopをうまく機能させるために今なおどれほど奮闘しているか 、また、 Watsonを実装しようとした病院からIBMがどのようにして撤退するに至ったか )について考えてみると、ビッグ データというのは、話に聞くほど、自動的に動いてくれるものではないことが分かってきます。そうしたことが、ビッグ データの最新トレンドを導きました。すなわち、コードをつぎはぎする必要のない、より統合性の高いプラットフォームが支持を集めるようになっているわけです。[著者からのお知らせ: そうしたビッグ データ業界のトレンドについては、Datanami.comにて詳しく記しています。ぜひともご一読ください。]

「統合」と「複雑性の回避」が、IBM iの設計原則によく似ているように思えるのだとすれば、あなたは注意力の高い方なのでしょう。そして、見たところ、投資家も同様です。これは、非常に上手い組み合わせと言えるのかもしれません。 しかし、「ビッグ アイアンからビッグ データへ」向かう道筋をうまく描くことは、Centerbridge社にとって簡単なことではないでしょう。同社はこの秋、Vision社の事業を、ニューヨーク州を拠点とするSyncsort社に統合しようとしています。両陣営を隔てるあらゆる種類の技術的および文化的な問題に取り組むことが必要になります。ビッグ アイアン陣営が予測可能性、安定性、およびセキュリティというようなものに重きを置くのに対して、ビッグ データ陣営はオープンソース、急激な変化、および機敏性に重きを置きます。

しかし、Centerbridge社の手の内にある強い切り札は、ビッグ アイアンとデータとの関係性です。実際に計測できないほど非常に多くのデータ(1日当たりBlu-rayディスク1千万枚分に相当)が生成されていている時代では、連続した小さなデータ片それぞれの相対的な価値は必然的に下がります。一方、IBM iおよびメインフレーム データベースに置かれている構造化されたデータは、地球上で最も価値の高いデータの1つです。新たな分析技術および手法を用いて、このクリーンで信頼性の高いデータのプールに企業がアクセスするのを支援する事業は、確かに、非常に多くの利益をもたらす事業となるかもしれません。

そこには、大きな潜在的な伸びしろがあります。しかし、たとえうまくいかないにしても、相対的に見れば成長は横ばいであるものの、少なくとも今のところ利益が上がる市場に、12億ドルを残したままにするリスクは、取る価値のあるリスクのように思えます。

「目まぐるしく進化しているプラットフォームであるとは言えませんが、土台は非常にしっかりしています」とVlok氏は述べます。「System iやメインフレームは必ずしも、多くの変化や競争の中で互いにしのぎを削り合っているような、市場をリードするプラットフォームであるというわけではありませんが、身近な存在として当てにできる堅実で安定的なプラットフォームなのです。」

誰もがみな、安定性に重きを置いているわけではありませんが、安定性というのは、ニューヨークやロンドンにいるCenterbridge社の面々が、それに対して少しプレミア料金を支払ってもよいと考えるような特質なのです。「私にとっては、よくある頭を悩ます必要のない安定的な環境の1つです」とVlok氏は述べます。「10年前になくなってしまったと思っていたら、それは間違いでした。そして、今はもうなくなっていると思っていいたら、やはり間違いです。したがって10年後にはどうか考えるとしたら、まったく同じことだと私は思います。」

ビッグ データの尋常でない成長ぶりと見比べたときに、50年間のビッグ アイアンの安定性は、かなり素晴らしいものとして目に映ります。Centerbridge社がその点に重きを置いたという事実こそがまさに、楽観的になることのできる理由と言えるのではないでしょうか。

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