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IBMi海外記事2014.11.26

Lenovoへの譲渡完了、Power Systemsがセンターステージを取る

Timothy Prickett Morgan 著

IBMはSystem x 部門のLenovoへの譲渡を完了して完全にX86サーバーを手放しました。正確に言えば、IBMとLenovoの両社が営業活動を行っている主要国におけるSystem x 事業の譲渡手続きを終えて、規制機関の承認を取得しました。いま、我々はIBMがPower Systemsプラットフォームにどのようにコミットして行くかを注視するときです。1990年代の終わりにSam PalmisanoがIBMの舵取りを行ったときに始まったサーバーの均質化以来、IBMはいずれかひとつのサーバープラットフォームを、他のプラットフォーム群に対し、先進させることについて極めて慎重を期してきました。遡ればIBMは本質的に同一のPowerベースに基づいたAS/400とRS/6000製品ラインを持っており、これらにプラスしてSystem/390メーンフレームとSystem x X86サーバーを有していました。

これらのマシーンには共通点が少なく、またデザインサイクル、サプライチェーン、マーケティングルートが異なっていました。IBMは、自身のプラットフォームをIntelのプロセッサーをベースにしたプラットフォームと競合させない姿勢を取っていました。2000年代の中期、他のサーバーメーカーと同様に、Advanced Micro Devicesのチップを追加してIntelにプレッシャーを掛け、Opteronプロセッサーがもたらすユニークな利点を顧客に提供しました。理由は不明ですがIntelはXeonラインに目を向けて大量に購入するこれらのサーバーメーカーに寛大です。IBMはHewlett-PackardやDellと違って決してIntelに親密な姿勢を示しませんでした。したがって、我々は、特にIBMがPCビジネスを10年前Lenovoの売却した後は、HPとDellに有利でIBMには不利なチップとチップセットの価格設定およびボリュームディスカウントが有ったと推測せざるを得ません。

Power Systems部門が10年前よりもいまXeonを排除することは残念です。10年前、Cell Powerチップが世界最速で最初のテラフロップスのスーパーコンピュータに搭載されていたとき、Cellは主なゲーム用コンソールに配備されており、Appleは依然PowerPCチップであり、PowerPC組み込みのプロセッサーは多くの産業及びコンシューマー機器にとって自然の選択でした。もしIBMがあのときOpenPower Foundationを立ち上げていれば、ARMは我々の携帯電話やタブレットに決して参入できなかったでしょう。またARMが現在のごとくデータセンターにとって脅威ではなかったでしょう。Powerチップビジネスは数十億ドルを生んでいたかもしれず、IBMはIntelがいまX86アーキテクチャーで行っているようにマイクロサーバーとスイッチに向けた低いパワーのプロセッサーからスーパーコンピュータの作業に向けた複雑な計算を行う、巨大なパラレルチップに至る極めて高機能製品を作り得ていたでしょう。
しかしながら現実は、いまIBMは能力の衰えたPowerエコシステムを再活性化しようとしています。IBMにとってはこれが少なくとも完璧な図面に見えて、Powerを推進する正しい道と確信したのでしょう。時が経てば判ることですが、これが正しい方向であったと私は言いたくありません。

IBMは10月にラスベガスで開催されたEnterprise2014イベントを主催しました。
FPGAとGPUコプロセッサーアクセラレーションによるビッグデータのワークロードに狙いを定めた新Power8マシーンとエンタープライズクラスのE870とE880マシーンがこのイベントを飾りました。E870とE880は前のラインアップPower 795とPower 770+、Power 780+の後継機となるものです。そしていまE870とE880はPower Systemsプラットフォームの卓越したパフォーマンスと進化した機能を訴求するIBMのトップシステムです。IBMは積極果敢にこれらのマシーンのマーケティングを展開し、PowerをX86プラットフォームに対して有利に戦わせるべくチャンネルパートナーを駆り立てるときです。これはまた、PowerがX86マシーンを打破するために大量のデータで武装することを意味します。
IBMはこの戦いをX86上のLinuxとPower上のLinuxとの戦いと位置づけたいのでしょうが、 IBM iとAIXに、同じくLinuxに焦点を絞るべきです。Linuxはいま全世界のサーバー収入の1/4に過ぎませんが間もなく1/3を占めるようになるでしょう。残りは少数のメーンフレームとUnixプラットフォームによるX86上のWindowsが占めています。IBMはAIXとIBM iベースを守ることが必要になりつつあり、Powerが投資に値するプラットフォームとして継続することを望むのであればAIXとIBM iを成長させなければなりません。

LenovoはSystem x部門の買収取引の一部として21億ドルをIBMに支払いました。18億ドルが現金で2億8千万ドルがLenovoの株式です。この金額はこの取引に予測されていた額を約2億ドル下回っていますが、これが実際の金額です。IBMのSystem x部門のゼネラルマネージャーであったAdalio SanchezがいまLenovo Enterprise SystemのシニアバイスプレジデントでGerry Smith社長に直属しています。なお、Sanchezは以前pSeries部門及びメーンフレーム部門のゼネラルマネージャーでした。
LenovoはただSystem x部門を買収しただけではなく、IBMのGeneral Parallel File System (GPFS) とPlatform Computingクラスター管理とJavaメッセージングソフトウエアを含むソフトウエア・ポートフォリオも買い取りました。これらのコンポーネントの全てはPower8マシーン上のIBM独自のアナリティクス・スタックです。IBMはこれらのライセンスをLenovoに授与することにより、直接の競合相手の成長を手助けしています。
疑問に思うかも知れません。理由は簡単です。このソフトウエア・スタック無しでは、またStowageストレージアレーとLTOテープアレーのライセンス無しではLenovoが今回の取引に応じなかったと思われます。またIBMは現金を欲しており、いささか多くをつぎ込み過ぎたかもしれないSystem x部門から逃れたかったからです。時間がたてばわかることです。明らかに分かっていることは、IBMはLenovoと戦ってPowerを売ってゆかねばならず、また基本的に同一のソフトウエア・スタックを使うことになるということです。比較すればAIXとIBM iの顧客ベースを維持、成長させることの方が容易でしょう。数十億ドルが懸かっておりPowerプラットフォームの将来が懸っています。望むらくは、IBMがこの18億ドルを有効に使う計画を立て、もはやSystem xのビジネスのために失うことのない資金をPowerプラットフォームのマーケティングに有効に回して市場を広げてくれることです。

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