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IBMi海外記事2011.03.23

IBM Systems Director Navigator for IBM i 7.1

グレッグ・ヒンターマイスター 著

新機能の詳細とその活用方法

確かに長い製品名です。しかしうれしいのは、活用できる機能のリストも製品名と同じくらい長くなったことです。本稿ではリリース7.1の機能強化内容をまとめ、その中でも主要な機能について日々のシステム管理業務にどう役立てるかについて説明します。

概要

IBM i用の3つの主要なシステム管理ツールの違いがどこにあるのかよく聞かれます。ではその違いについてまとめてみましょう(後述の「さらに詳しくは」では、この3つのツールに関する詳細情報が掲載されているウェブ・サイトを一覧にして掲載しています。)

IBM Systems Director:

複数のIBM iのインスタンスや複数台のハードウェア、複数のオペレーティング・システム・プラットフォームをウェブ・ブラウザから管理するのに使用するツールです。複数のIBM iのインスタンスを管理できるだけでなく、AIX、Linux、Windowsなどのオペレーティング・システムも管理できます。しかも単なるOS管理にとどまりません。PowerSystemのハードウェア、HMC、VIOサーバー、System x、BladeCenter、System zなども管理できます。また、ネットワーク資源やストレージ資源を管理するのにも役立ちます。 (このツールからNavigator for iも起動できますが、これについては次で述べます。)

Navigator for i :

複数のIBM iのインスタンスを、インストールされているWindowsアプリケーションから管理するのに使用するツールです。一度に1つのIBM iのインスタンスを直接管理することもできますし、Management Centralを介して複数のIBM iのインスタンスを集中的に管理することもできます。

IBM Systems Director Navigator for i:

1つのIBM iのインスタンスをウェブ・ブラウザから直接管理するのに使用するツールです。Navigator for iは、それ自体が稼働しているIBM iのインスタンス上でシステムの深い部分まで踏み込むことができます。Systems Director Navigator for iがもたらす最大の価値は、IBM i上のコア・システム管理に必要なすべての機能にウェブ・ベースでアクセスできることです。このツールにはブラウザまたはIBM Systems Director製品経由で直接アクセスできます。

さてこれで管理ツールの違いの整理は済みましたので、Systems Director Navigator for i のリリース7.1の機能強化について見てみましょう。

エミュレータ

ウェブのUIでは、今までできなかったことができるようになっていますが、IBM iシステムで素早くアクションを実行してフィードバックを得るにはコマンドラインを使用するのが一番良い、と今まで繰り返し話してきました。Navigator for i 7.1では、図―1に示したウェブ・ベースのエミュレータが利用できるようになりました。エミュレータを起動するには、[システム]カテゴリをクリックして次に[5250エミュレータ]タスクをクリックします。サイン・オンしてしまえば、ワークステーションからファンクション・キーを使用するなど、他のエミュレータと全く同じように作業ができます。ブラウザでもファンクション・キー操作は正確に動作します。サイン・オンする前にポート、コードページ、その他のワークステーション固有の設定を変更することもできます。

他のIBM iシステムの管理

IBMではいつもセキュリティとアクセスに焦点を当てています。リリース7.1ではSystems Director Navigator for iを使用してブラウザのアドレスがターゲットとしているシステムを管理できますし、あるいはデフォルトのシステムを「通過」するように選択してデータ・センター内の他のシステムをターゲットとすることもできます。これは図―2に示す通り、[ターゲット・システム設定]タスクで行います。

ターゲット・システムを設定したら、システム1用のブラウザ・アドレスを使用してシステム2のタスクを実行しながらコンテンツを表示させることもできます。この機能の主な価値は、システム2でフル機能のウェブ・アプリケーション・サーバーが起動されていなくてもいいという点です。このメイン・システムがより直接的なプロトコルを介して接続してくれるからです。もう1つの価値は、この7.1の機能を使用してIBM i 6.1や5.4さえも管理できるということです。さらに、7.1サーバーを介することで、7.1でしか利用できない機能(たとえばエミュレータ)を、ターゲットとする古い6.1システムや5.4システム上で使用することもできます。

ジャーナル管理

ジャーナル管理はいつでもIBM iの主要かつユニークな機能の1つです。その中心となる価値は、システム上のオブジェクトのアクティビティを記録できるということです。ジャーナルはオブジェクトのアクティビティという詳細な履歴を持っているので、オブジェクトが前回保存されて以後に起こった変更を回復することができます。履歴を詳細なオブジェクトの監査証跡として使用することもできますし、履歴を使用してオブジェクトを複製することもできます。

リリース7.1のSystems Director Navigator for iにはジャーナル管理タスクが含まれています。これ以前のリリースでは、ジャーナリングは主に緑色画面でのアクティビティであり、そのうちの一部がSystem i Navigatorで利用できるだけでした。図―3をご覧いただくとおわかりの通り、ウェブ・タスクにはジャーナルとして記録されたオブジェクトの表示、レシーバ(レコードされたものが保存されているオブジェクト)の管理、リモート・ジャーナルの管理、アクティベート、ディアクティベート、削除などといったジャーナルに対するアクションの実行なども含まれています。

ファイル、ディスク、ネットワークの強化

IBM iオペレーティング・システムは頻繁にアクセスされるネットワークに接続されますので、以下の機能強化により共有や接続が一層容易になってきます。

PDFサポートの追加:

AFPDSやSCSフォーマットなどでプリンタ出力する場合は、これらのプリンタ出力ファイルを選択して[PDFで表示]や[PDFにエキスポート]を選択することが可能になりました。表示を選択した場合は、ブラウザ・ワークステーション上のPDFビューワが即座に出力を表示してくれます。コンテンツをエキスポートするように選択した場合は、保存先のファイル・システムを聞かれたあと、IBM iがコンテンツを変換して指定されたファイル・システムに保存します。ヒント: マップされたネットワーク・ドライブ上に保存した場合、IBM iサーバーに直接アクセスすることのできないユーザーでもプリンタ出力を表示させることができます。

一時ファイル・システム:

Systems Director Navigator for iを使用して一時ファイル・システムを管理することができます。これはIBM i 7.1での新機能で、通常のファイル・システム回復機能に依存しない一時ファイル・システムをアプリケーションが作成することができます。 (たとえば、通常のファイル・システムのフォルダ中に一時ファイルを作成すると外部記憶命令が起動されて、IBM iを再起動したときやシステムがクラッシュしてもそのファイルが存在することを保証します。) 一時ファイルは再起動後に存在している必要はないので、この機能によりパフォーマンスが一段と向上します。ヒント: コマンドCRTUDFS UDFS ('/dev/QASP01/new.tmpudfs')を使って一時ファイルを作成してください。ただしユーザーは*ALLOBJ特権を有していなければなりません。

ディスク管理:

System i Navigatorでよく使用されるグラフィック・ビューでは、システムやディスクがどこに設置されているかをグラフィックに見ることができますが、これがSystems Director Navigator for iでも利用できるようになりました。さらに、ディスク・プールの暗号化もウェブUIから起動、停止することができます。

リモートアクセス用IPv6:

リモート・アクセス・サービスが機能強化されてIPv6をサポートするようになりました。

データベース

IBM iのデータベースを管理することが仕事の1つであれば決断しなければなりません。System i Navigatorを使用してトポロジ・マップを含む必要なすべてのデータベース・タスクにアクセスすることもできますし、Systems Director Navigator for iを使用して日々のデータベース管理タスクにアクセスすることもできます。いずれの場合もそれぞれ価値があるとおわかりいただけるはずです。シンプル・ビュー、パフォーマンス監視や調整、テーブル操作も簡単なウェブ・タスクで可能です。ただしもっと複雑な管理機能は、Windowsワークステーション上のNavigator for iをオープンして行います。

Systems Director Navigator for iの新しいデータベース管理機能には以下が含まれています。

  • データベースのパフォーマンス改善
  • SQLパフォーマンス監視起動時の追加フィルタの使用
  • ジョブ・リストからのSQLパフォーマンス監視の起動(ジョブに問題があった時にすぐに問題を調査するのに便利)
  • 最後にインデックスが構築された時刻の確認(構築に時間のかかるインデックスがある場合、このタイムスタンプを表示させて将来のインデックス構築を計画可能)
  • その他の権限へのアクセスおよびメモリ強化
  • ヘルス・センター:ヘルス・センターはアクティビティ・レベル、オブジェクト数、サイズ制限等、データベースを要約する専用の機能。ヘルス・センターは図―4に示す通りSQL0901カテゴリを使用して[環境制限]タブでさらに詳細な情報を追加で表示することが可能。
  • XML: XMLデータ・タイプを列、スキーマ、変数、プロシージャなどで使用可能
  • ユーザビリティの強化: SQL生成の管理、リストの表示と保存、リストのフィルタリング処理等
  • データベース保守: データベースの管理の一部としてさまざまなオブジェクトを保守する必要あり。リリース7.1では、特別な[保守カテゴリ]でテーブルの再構成や変更、インデックスの構築、検索の構築、制約の保留等を一か所で表示させることが可能。さらに、インデックスの構築を管理しながら新しい進捗ページでその進捗を表示させることも可能。

パフォーマンス

Systems Director Navigator for iのパフォーマンス・カテゴリはウェブUIの中でももっとも頻繁に使用されるタスクの1つです。このカテゴリはウェブUIだけで利用可能です。パフォーマンス・データ調査(PDI: Performance Data Investigator)のグラフおよび関数は緑色画面とSystem i Navigatorで利用可能なデータを使用し、それをグラフにした結果やパフォーマンスの分析結果はウェブUIからのみ見ることができます。

リリース7.1のPDIの機能強化には以下が含まれます。

  • 汎用ヘルス・インジケータ: パーティション全体を表示。つまり基本的にはPDIがOS以外(HMCやIVM)からデータを取得してパフォーマンスを仮想化の観点で理解することを意味する。
  • 物理システムのメトリクス: IBM iインスタンスと同じ場所に設置されている物理サーバー上のすべてのパーティションを横断的にみるプロセッサ・メトリクスなど。
  • 負荷推定機能への統合: 現在のパフォーマンス・データを負荷推定機能に送付して次回のアップグレードをより正確にサイジングする。
  • チャートやグラフの作成: SQL文のカスタマイズなどといった詳細を含む独自のチャートやグラフの作成。
  • 新しいパフォーマンス・メトリクス: SANデータ、仮想入出力サーバー・データ、消費電力データ、仮想メモリ等。
  • メトリクス検索機能: [データ調査]UIで[検索]をクリックしてメトリクスを見つけたら、メトリクスが表示されているところでパースペクティブを開くことが可能。ヒント: この機能強化をIBM i リリース6.1で利用したい場合は、SI35659、SI35663、SI36093のPTFが必要。

さらに

本稿ではリリース7.1におけるSystems Director Navigator for iの機能強化について説明しましたが、Power HA、BRMS、アドバンスト・ジョブ・スケジューラなども機能強化されました。これらについてはいずれまたコラムで詳しく説明します。

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