BRMSで高速バックアップ/リカバリーを楽しみましょう
Backup, Recovery, and Media Services (BRMS) で新機能が提供されると同時に、バックアップ/リカバリーの速さが増してきています。IBM の IBM I 向け戦略的バックアップ/リカバリー製品である BRMS は、1 つのサイトに 1 つ以上のシステムがあったり、ネットワーク間でメディアによるデータ交換が必要なバックアップ、アーカイブ、リカバリー環境を管理する包括的なツールです。バックアップとシステム・リカバリーの高速化を実現するため BRMS が提供する多数の機能を見ていきましょう。
並行保存
バックアップ・ウィンドウを減らすテクニックの 1 つに、並行バックアップを使用して磁気テープや仮想磁気テープを複数同時に実行するというテクニックがあります。並行保存操作では、複数の保存ジョブを複数の磁気テープに送信して、同時に、あるいは並行して処理します。
BRMS で並行バックアップを行うには、1 台の磁気テープにライブラリーまたはライブラリーのグループを持つ BRMS 制御グループが 1 つ、さらに別の磁気テープに BRMS 制御グループに別のライブラリーまたはライブラリーのグループが必要です。異なる BRMS 特殊値を複数の磁気テープに並行して保存する BRMS 制御グループを複数持つこともできます。保存ジョブそれぞれが同時に完了するよう、各制御グループのデータ内容のバランスを取る必要があります。覚えておいて欲しいのは、K*INCR または *CUML を使用して変更したオブジェクトを保存する場合、データ・コンテンツのサイズによって各保存の処理時間が変わるということです。
並行 BRMS バックアップを実行する場合、各制御グループのメディア情報は保存しないでください。保存すると、QUSRBRM ライブラリーとロック矛盾が発生しまう可能性があります。制御グループそれぞれにおいて、Automatically backup media information パラメーターを *NONE に変更します。並行バックアップ制御グループが完了した後に Save Media Information (SAVMEDIBRM) コマンドを実行する必要があります。
並行保存では、並行してリストアすることもできます。並行リストアでは、複数のライブラリーを複数の磁気テープを使用してリストアすることで、リストア時間が短縮されます。複数の制御グループで並行リストアする場合、各制御グループのリストアをバッチ・ジョブ実行依頼する場合に STRRCYBRM OPTION(*CTLGRP) ACTION(*RESTORE) コマンドを使用します。
並列保存
BRMS は 2 種類の方法を使用して並列保存を実装しています。IBM は、並列保存サポートを、非常に大きなオブジェクトまたはライブラリーを複数磁気テープ間で分割し、バックアップ・ウィンドウを短縮する必要のあるお客様に対して V4R4 の BRMS で初めて導入しました。この初の並列保存方法は、並列/並列サポートと呼ばれています。並列/並列保存を実行する場合、保存項目の並列リカバリーが必要です。保存で使用したときと同じ数の磁気テープをリストアでも使用する必要があります。磁気テープの数がそれより少ないと、リストアに非常に時間が掛かります。必要な磁気テープ・メディアのマウント、巻き戻し、アンマウントに時間が掛かるためです。
並列/シリアル・サポートと呼ばれている 2 番目の方法は、V5R1 で導入されました。この方法では、並列保存を *ALLPROD、*ALLTEST、*IBM、ALLUSR、*ASPxx などのBRMS 特殊値や汎用値で実行できます。BRMS はライブラリーを複数の保存ストリームに分割します。並行保存の場合のように、ユーザーがライブラリーを分割する必要はありません。
V5R4 以前は、並列保存を指定するバックアップ制御グループには、有効な並列保存項目しか入ることができませんでした。V5R4 から、バックアップ制御グループには、並列保存項目と、並列磁気テープ装置では保存できない項目の両方を入れることができます。BRMS バックアップ制御グループで並列リソースを使用するよう指定し、さらに並列磁気テープ装置では保存できない項目が含まれている場合、非並列項目は、1 台の磁気テープ装置を使用したシリアル保存で自動的に保存されます。こうして、管理が必要な BRMS 制御グループの数を減らすことができます。
並列リソースを使用して、スプール・ファイルを含む、システム全体をバックアップできます。BRMS フル・システム・バックアップで 2 つの並列リソースを使用するよう指定すると考えた場合、制御グループの項目すべてが並列でバックアップされるわけではありません。システム・データ、セキュリティー・データ、構成データ、さらに文書ライブラリー・オブジェクトが、シリアル・モードで 1 台の磁気テープ装置にバックアップされ、*IBM、*ALLUSR と *LINK 並列項目では磁気テープ装置は 2 台使用されます。BRMS は必要に応じて並列モードのオン/オフを切り替えます。
並列リソースを使用してフル・システム・バックアップを設定するには、以下の手順を実行します。
- コマンド・ラインで WRKCLTGBRM と入力し、Enter キーを押します。
- *SYSTEM 制御グループの隣にあるオプション 8 を選択し、Enter キーを押します。
- 2 台の磁気テープ装置名 (例: TAP01 と TAP02) または Backup devices パラメーターに複数の磁気テープ装置を指定した、磁気テープ・ライブラリー (例: TAPMLB01) を指定します。
- Minimum resources パラメーターで 2 を指定します。
- スプール・ファイルを保存している場合、Save spooled file data パラメーターで *ALL を指定します。
- Enter キーを押して、制御グループの変更した属性を保存します。
図 1 は、1 台の磁気テープ装置でどのバックアップ項目がシリアル・モードで処理されるのか、また複数の磁気テープ装置を使用して、並列リソースでどのバックアップ項目が処理されるのかを示しています。以下のバックアップ項目は、並列リソースを指定した制御グループに含まれている場合、1 台の磁気テープ装置で、シリアル・モードでバックアップされます。
- QBRM ライブラリーで、他のライブラリーはなし
- QUSRBRM ライブラリーで、他のライブラリーはなし
- QMSE ライブラリーで、他のライブラリーはなし
- Q1ABRMSFnn で、他のライブラリーはなし
- フォルダー・リスト
- ターゲット・リリースが V5R4 以前のスプール・ファイル・リスト
- ターゲット・リリースが V5R4 以前のリンク・リスト
- BRMS メディア情報の保存
以下の特殊値バックアップ項目は、並列リソースを指定した制御グループに含まれている場合、1 台の磁気テープ装置で、シリアル・モードでバックアップされます。
- *ALLDLO
- *ASPnn
- *DLOnn
- *EXIT とターゲット・リリースが V5R4 以前の SAVDOMBRM コマンド
- ターゲット・リリースが V5R4 以前の *LINK
- ターゲット・リリースが V5R4 以前の *LNKOMTONL
- ターゲット・リリースが V5R4 以前の *LNKOMTLTS
- ターゲット・リリースが V5R4 以前の *LTSOMTONL
- *SAVCFG
- *SAVSECDTA
- *SAVSYS
- *SAVSYSINF
並行保存対並列保存
バックアップ・ウィンドウを減らすには、並行バックアップと並列バックアップを組み合わせたバックアップ戦略を設計する必要があるかもしれません。バックアップ・ウィンドウを *SAVSYS、*SAVSECDTA、*SAVCFG、*SAVDLO などシリアル・モードでのみ保存できるオブジェクトに限定する場合は並行バックアップを使用します。大規模ライブラリーまたはオブジェクト、大規模ディレクトリーおよびファイル、またはスプール・ファイルのバックアップ・ウィンドウを減らすには並列バックアップを使用します。
並列/シリアル・バックアップとして *ALLUSR を実行しながら、*ALLUSR 保存から非常に大規模なライブラリーを省略するのもメリットがありそうです。この非常に大規模なライブラリーは、並列/並列保存サポートにより別途保存されます。
ボリューム・セットごとにリカバリー
V5R4 から、複数のボリューム・セットに保存する場合に、リカバリー・ウィンドウを減らすことができるようになりました。ボリューム・セット単位でリカバリーする新しい関数 (*VOLSET) によって、*ALLUSR、*IBM、*ALLPROD、または *ALLTEST などの特殊値を使用して複数の磁気テープ装置で並列保存を行う場合に、リストア時間が著しく短縮できます。複数の BRMS 制御グループで並行保存を実行する場合に、ボリューム・セット単位でリカバリーすることもできます。この関数を使用するには、十分な数の磁気テープ装置が必要です。ボリューム・セット・ジョブ単位でリストアするごとに磁気テープ装置が 1 台必要になります。
以下の手順で、ボリューム・セット単位でリストアを行います。
- すべての予定ジョブを保留にします。この手順は、使用しているジョブ・スケジューラーにより異なります。
- CHGJOBQE QBATCH コマンドで、MAXACT パラメーターと MAXPTY* パラメーターを実行するリストア・ジョブの数に変更します。リストアが完了したら、これらの値を元に戻すことを忘れないでください。
- STRSBS QBATCH コマンドで QBATCH サブシステムを開始します。
- ENDSBS Q1ABRMNET コマンドで、開始した Q1ABRMNET サブシステムを終了します。
- STRRCYBRM *RESTORE コマンドで BRMS リカバリーを開始するか、すでにシステム・データをリストアしてある場合は、STRRCYBRM *RESUME コマンドを使用します。
- Select action パラメーターで、*VOLSET と入力し、Select volume パラメーターで、リストアする最初のボリューム・セットのボリューム・シリアルを入力します。
- F16 キーを押して選択し、F14 キーでバッチ・ジョブ実行依頼します。
- STRRCYBRM *RESUME コマンドを使用し、以前の手順を行って、各ボリューム・セットを選択して、バッチ・ジョブ実行依頼します。
- WRKSBMJOB コマンドでリストアをモニターします。
BRMS で Save-While-Active 保存
BRMS バックアップの save-while-active (SWA) 機能により、アプリケーションが利用できない時間を短縮し、アプリケーションとデータへのユーザー・アクセスを高めます。SWA によりユーザーは、保存処理が同期チェックポイントに達した後にアクティビティーを再開できます。
save-while-active 機能を使用するには、BRMS が SWA チェックポイントに達するまで、アプリケーションとデータへアクセスできないようにする必要があります。SWA チェックポイントに達したら、排他ロックが解除され、ユーザーは通常のアクティビティーを再開でき、BRMS はデータ保存を続けます。特に大規模ファイルでは、SWA チェックポイント到達時間は、実際にオブジェクトを保存する時間より著しく短くなります。SWA チェックポイント到達時間は、チェックポイントされているオブジェクトのサイズではなく、オブジェクトの数で決まります。
BRMS で SWA を設定するには、以下の手順を実行します。
- コマンド・ラインで WRKCLTGBRM と入力し、Enter キーを押します。
- オプション 2 を選択して目的の制御グループを編集し、Enter キーを押します。
- Save-while-active フィールドで SWA タイプ *YES または他の有効な値をアクティブにします。(他の値としては *LIB または *SYNCLIB があります)
- BRMS にチェックポイント・メッセージを送信させる SWA Message Queue フィールドでメッセージ・キューを指定できます。
- SWA 制御グループ入力前に MONSWABRM (Save While Active のモニター) コマンドで *EXIT を作成し、BRMS に SWA チェックポイント・メッセージをモニターさせます。
バックアップのダウンタイムを短縮するため、さまざまな方法で BRMS save-while-active 機能が利用できます。詳細については、『Backup, Recovery, and Media Services for i5/OS』マニュアル: http://publib.boulder.ibm.com/infocenter/iseries/v6r1m0/topic/rzai8/sc415345.pdf をご覧ください。
Lotus Server 向け BRMS オンライン・バックアップ
今日の作業環境では、ユーザーは 1 日 24 時間、週 7 日メールやその他の Lotus Server データベースにアクセスしていますが、ユーザー・データを頻繁かつタイムリーにバックアップすることも重要です。BRMS Online Lotus Server Backup サポートはこうしたクリティカルなニーズに対応します。BRMS オンライン・バックアップでは、同期ポイントを使用せずに Domino、Quickplace やその他の Lotus Server データベースを使用しながら IBM i に保存できます。
これが本当のオンライン・バックアップ・サポートと言えます。このオンライン・バックアップ・サポートにより、システムを終了することなく Lotus Server データベースを使用しながら保存できます。以前の save-while-active サポートでは、チェックポイントに到達するためにアプリケーションを終了したり、コミットメント制御やジャーナリングを使用する必要がありました。代わりの方法として、サーバーの増設、サーバー・データの複製、第 2 サーバーからのバックアップがありました。BRMS による Online Lotus Server Backup により、こうした要件が必要なくなりました。
BRMS をインストールすると、制御グループとポリシーが自動的に構成され、Lotus Notes Server のオンライン・バックアップが実行できるようになります。Online Lotus Notes Server Backup プロセスでは、2 つのバックアップを 1 つのエンティティーにまとめることができます。BRMS と Domino または Quickplace は、パッケージと呼ばれる BRMS の概念を使用して、これを実現します。パッケージは SavBRM (BRM を使用したオブジェクトの保存) コマンドの PkgID (パッケージ ID) パラメーターで特定されます。
Domino または Quickplace は、オンラインで使用中にデータベースをバックアップします。バックアップが完了すると、2 次ファイルがバックアップされ、パッケージの概念により最初のバックアップと関連付けられます。2 次ファイルには、トランザクション・ログやジャーナル情報など、オンライン・バックアップ中に行われたすべての変更内容が入っています。
BRMS Online Backup を使用してバックアップされた Lotus Notes Server データベースをリカバリーする必要がある場合、BRMS はリカバリー出口を通して Domino または Quickplace を呼び出します。この出口により、Domino または Quickplace は2 次ファイル・バックアップの任意の変更を、リストアされたばかりのデータベースに適用できます。このリカバリー・プロセスではデータの整合性は保たれます。
気を付けて欲しい点として、システム・バックアップ一式をオンラインでの Lotus Server バックアップだけとは置き換えないようにすることがあります。オンライン Lotus Server バックアップはデータベースのバックアップに過ぎません。ライブラリー、Lotus Server IFS ディレクトリー中のファイルなど Lotus Server のその他の重要な部分や Lotus Server 以外のシステム・データは定期的にバックアップする必要があります (例: QUSRSYS, QGPL)。詳細については、BRMS Web サイトの「High Availability Strategy for Online Lotus Server backup」 www-03.ibm.com/systems/i/support/brms/domStrategy.html をご覧ください。
BRMS データベースを再編成する
STRMNTBRM コマンドを実行する場合、Reorganize BRMS database パラメーターを *YES に変更する必要があります。これにより BRMS データ・ファイルのサイズが著しく小さくでき、保存パフォーマンスが向上します。BRMS データ・ファイルの再編成中に BRMS アクティビティーがないことを確認してください。
メンバー・レベル詳細を保存する
BRMS 保存機能の Retain Object Detail 属性で *YES または *MBR を指定すると、保存時間が大幅に短縮できます。BRMS 保存処理では、この時間の多くを BRMS 保存履歴からのメンバー・サイズとメンバー・テキストの両フィールドの取得に費やします。メンバー・サイズやメンバー・テキストの詳細情報が必要ない場合は、以下のコマンドを指定してメンバー・サイズおよびメンバー・テキストの両フィールドの取得を無効にして、保存時間を改善できます。
QSYS/CALL PGM(QBRM/Q1AOLD) PARM('RTVEXTMBR' '*NO')
2 番目のオプションとして、PARM を次のように指定できます。
- *NO ― 拡張メンバー詳細の取得を無効にする
- *YES ― 拡張メンバー詳細の取得を有効にする
- *DISPLAY ― 拡張メンバー詳細が取得中かどうかを表示する
メンバー・サイズとメンバー・テキストの両フィールドの取得を無効にする場合、個々のメンバーをリストアする場合にメンバー・レベル詳細を詳しく調べることができます。しかし、Work with Media Information (WRKMEDIBRM) コマンドの画面では、メンバー・テキストは空白になり、メンバー・サイズには「0」が表示されます。オブジェクト・テキストとオブジェクト・サイズは表示されます。
バックアップ統計レポート
IBM i 6.1 では、BRMS は、表示して印刷できる新しいバックアップ統計レポートを提供します。PRTRPTBRM TYPE(*BKUSTAT) コマンドでレポートが生成され、システムがバックアップ中に長時間メモリーを消費している場所を分析できます。
物理ファイルおよび論理ファイルのリカバリー
私が考える、IBM i 6.1 の大きなバックアップ/リカバリー機能強化としては、ユーザーが待ち望んでいたリカバリー・パフォーマンスの大幅な改善で、これはシステム・リカバリーに利点があります。物理ファイルと論理ファイルが異なるライブラリーにある場合、最初に物理ファイルをリストアする必要があります。そうしないと、論理ファイルがリストアされません。論理ファイルをリストアする、2 番目のリストアは非常に手間が掛かり、貴重なリカバリー時間のほとんどを奪うことがあります。このリカバリー状態は現在、IBM i 6.1 で修正されています。Restore Menu Options 21、22 または 23 でシステムをリストアしている場合、*NONSYS、*IBM または *AL LUSR を指定したRSTLIB コマンドを使用している場合、または BRMS を使用してシステムをリカバリーしている場合、追加の手順は必要なく、失敗した論理ファイルのリストアにさらに時間を掛ける必要はありません。
おわかりのように、BRMS はバックアップ/リカバリーを高速化する多くのオプションを提供しています。これらの新しいバックアップ/リカバリー・パフォーマンス・オプションを実装したら、実装した新しい機能を使用してリカバリー戦略をテストしてください。